救済を
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5つの海に分かれるこの世界。
その海の中でも最も安全だと言われている
黒髪短髪で麦わら帽子を被った青年…名を「ゴール・D・ロジャー」。ロジャーは同じく黒髪で少し伸びた襟足部分を括って本片手に海岸の堤防に座る青年に声をかけた。
「ジョー!! 俺、海に出る事にした!!」
『あー…そう…? 気をつけてな』
「何言ってんだ! 一緒に行こう!!」
『私はいいよ。お前について行くの大変そうだし』
「わっはっは! それは否定できねェ!!」
『事実を言ってるからね』
そう言いながらロジャーの言葉を右から左へ流し手に持っていた本を広げる彼の名を「ゴール・D・ジョー」。彼はロジャーの5つ上の兄であり二人の両親が既に他界している今、互いが唯一の肉親である。そのためロジャーは兄を残して海に出るのを少々渋っているところなのだがジョーは何のその。全く以って気にした様子はなく淡々としておりその瞳は英字を追っている。
そんな兄の姿をみたロジャーは何処となく面白くなくジョーの隣に腰掛け本を覗く。しかしジョーが読んでいる本は何かの小説のようでロジャーは直ぐに興味を無くした。
「なァ一緒に行こうぜ!きっと楽しいぞ!!」
『んー? 一人で行けばいいじゃないか』
「俺は兄貴を置いて行くのは心配だ!」
『心配? 私なら大丈夫だよ』
「俺が止めなきゃずっと本読んでるくせにか?!」
『死にはしない』
「いーや分かんねェぞ?! 気づいたらぽっくり逝ってるかも知れねェ!!」
『そうなったら私は苦しまずに逝けてるからいいかもしれないね』
「Σいや良くねェよ?!」
兄の何とも言えない返しに流石のロジャーも盛大に突っ込むもジョーは変わらずのほほんとしている。本を読んでいる状況で何を言っても無駄だと察したロジャーはガシガシと頭を掻いてから持っていた釣竿を振るう。どうやらその場で釣りをするようでロジャーの投げた糸に繋がる浮きがプカプカと漂う。
ジョー的にはもっと食い下がって来るかと思ったら案外早く引いた事に多少驚いていた。ただその目は本から離れる事はないのでロジャーが気付く事はないのだが。暫く静かな時間が流れる中バシャンと水が弾ける音が響いたことでその静けさは霧散した。
「よっしゃあキタァー!!」
『今日の夕飯は魚か』
「そうだな! ぬぅ…! こりゃ大物だぞ…!!」
『夕飯のために頑張れ』
「任せろ!! う…おぉぉりゃあぁぁあぁぁっ!!」
ロジャーが渾身の力で引き上げればザッパーンと水飛沫を上げて巨大魚が引き上げられた。それを見たジョーは「おー!」と言いながら本が濡れないようにサッと隠しパチパチと手を叩く。陸に引き上げられた魚はその場でピチピチ跳ねて口もパクパク動かし水を欲している。だが彼らの夕飯となるその魚にこの先の運命は既に決まってしまっている。
バッサリ捌かれ彼らの胃袋の中へ入ることに。
「マジででっけェのが釣れたな!!」
『流石ロジャー。持つべきものは優秀な弟だな』
「何言ってんだァ? 優秀って言ったら兄貴だろうが」
『いやいや勉強が出来るからといって優秀とは言えないぞ』
「そうなのか? …ってその言い方俺が勉強出来ねェみたいじゃねェか!!」
『え…出来ないだろ?』
「まぁな!!」
『そこは胸を張って言うところじゃないね』
ジョーの言葉にムンッ!と胸を張って言い切ったロジャーにジョーも苦笑いである。しかしそれでこそロジャーだと思えてしまう所がロジャーの魅力でもあるのだろうともジョーは思う。
こんな性格のためこの島でロジャーを知らぬ者などいないだろうとジョーは思っている。それこそ老若男女関係なくロジャーの裏表ないその性格に好感を抱いてしまうのだから。それは兄として誇らしく思うのと同時に少し羨ましく思う部分もどうしてもあった。ジョー自身があまり社交的とは言えない性格をしているせいだろう。
別に人見知りだとかそういった事ではないがどちらかと言うと静かな空間に居たいタイプなのだ。言ってしまえば弟のロジャーとは真逆のタイプと言えよう。
「もう暗くなるし帰ろうぜ!」
『そうだな。その巨大魚を捌かないとならないし』
「こんだけあればかなり食えるよな!!」
『うん。何十人前のご飯が出来ることか』
「今日はどっちが捌く?」
『ロジャーが釣ってくれたから私が捌くよ』
「じゃあ頼む!」
そう言ってニッカリ笑うその笑顔は「我が弟ながら太陽のように眩しいな」と思うジョー。そんな風に思われているなど知らないロジャーは鼻歌を歌いながら巨大魚を担ぎ歩いた。
そして二人は共に住んでいる自宅へと帰るのだった
( ジョーどうする…!? 家に入らねェ…!! )
( それなら外で解体するしかないな )
( ! さすが兄貴頭いいな!! )
( いや誰でも思いつくと思うけど… )
( 早く捌いて食おうぜ!! )
( そう急かさなくてもー… )
( 道具取って来る! )
(( 相変わらず人の話聞かないなァ… ))
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