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エースを見つけ出してから数日。
ジョーは適当な場所で寝泊まりをしており、体を洗う時はワニが沢山いる川の上流を用いている。まぁ上流となると森の奥の方になるため獰猛な猛獣が多くいて多少痛めつける羽目になったのだが。
そして森の中を散策している時にエースとサボに遭遇したら何故か手合わせをさせられた。なんでもこの辺の奴らは弱すぎて相手にならないがジョーは全ての攻撃を避けて見せたから、らしい。ジョー的にはあまり乗り気ではなかったのだが甥であるエースからの頼みとなると断れず結局相手をしたのだった。
そして今。
ジョーはこの数日間でドーン島を色々見て回ってゴア王国と呼ばれる場所は好きになれないなと彼は思う。貧富格差が酷く中心街は裕福な人たちで溢れておりあのゴミ山が嘘のようだった。だが現実はあのゴミ山に住む人もいるわけでこの国の王は何をしているんだと心底思ったのである。
そこに近づくと嫌な気分になるジョーは極力近づく事はせず森の中を歩き回ることをしていた。今回はそんな森から出て中心街からも離れた場所で見つけた風車が特徴の村に着く。
この村は随分と長閑な場所だとジョーが思っていると一人の少年がどこかへ走って行くのが見えた。「子供は元気に走り回るに限る」と思いながらそれを見ていれば少年が入ったのはBARだった。それを見てジョーも少し飲ませてもらおうと思いそこへ足をむけキィっと戸を開け中へ。
中に入れば数人の客とカウンター席に座る先程の少年と店主だろう年若い女性。女性はいい笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけジョーは少年の座るカウンター席に数席あけて座った。座ったのを見た女性はすぐに水を出してから「旅の方ですか?」とジョーに質問した。
『よく分かったね』
「この村は小さくて皆顔見知りですから」
『あぁなるほど…知らない顔がいればそうなるね』
「ふふ そうなんです」
「オッサンどっかから来たのか? 海賊か?」
「こらルフィ! その言い方は失礼よ」
『ははは! いいんだ気にしないでおくれ。残念だが私は海賊ではないよ』
「ふーん違うのか」
『君は海賊が好きかい?』
「あぁ! おれ今度こそ絶対にシャンクスの船に乗せてもらうんだ!!」
『シャンクス…?』
「ここ最近この村を拠点にしてこの辺を回ってる海賊船の船長さんです」
そういうマキノの言葉に「そう言えば数日前に海賊船を見たな」と思うジョー。あの船がもしかしたら彼女達の言う海賊船なのかも知れないと。ただそれ以上にジョーが気になるのは「シャンクス」と言う名である。
ジョーが思い浮かべるシャンクスはロジャーの船に乗っていたまだまだ幼さを残す麦わら帽子を被った少年の姿。アレからそれなりの月日が経っているのだから一隻の船長をしていてもおかしくはないのだが、その辺ジョーは抜けている。故に「同じ名前の人がいてもおかしくはないよな」とトンチンカンな結論を出していた。
『君はその船長さんが好きなんだね』
「別に好きじゃねェよ!」
「いつも船長さんの話するくせに」
「何しているか気になるだけだ!」
『フフ いいんじゃないか? 誰を好きになるのも憧れるのも君の自由だ』
「 ! しししっおう! おれオッサン嫌いじゃねェな!」
『それは嬉しいね。私も君のような素直な子は嫌いじゃないよ』
ニパッと笑うルフィにジョーも微笑みマキノにはオススメの酒とつまみを頼んだ。
先に酒を出されそれを飲みながらルフィの語るシャンクスの話を延々と聞いていた。ジョーは嫌な顔一つせず話に頷きながらたまに質問したりと完全にルフィに合わせて会話をしている。それを見たマキノは純粋に「良い人」と思いながらつまみを作り終えジョーの前に出した。
『どうもありがとう。とても美味そうだ』
「マキノ! おれにも!」
「はいはい、作ってあるわよ」
「わぁありがとう!」
『お礼をしっかり言えるとは偉いじゃないか』
「もう子供じゃねェからな! それくらい言える!」
『そうか、それは失礼したね』
「本当にな!」
「もうルフィったら…すみません…あ、お名前…」
『あぁ名乗っていなかったね。私はジョーと言う者だ』
「私はここの店主をしているマキノです」
「おれはルフィ! よろしくなオッサン!」
『こちらこそよろしくルフィくん、マキノさん』
互いに自己紹介をしてニッコリ笑ったジョーにルフィとマキノも笑顔で返した。
そしてルフィはまだ話したらないのか食事をしながらもシャンクスの話をしだす。それを変わらず笑顔で聴いているジョーを見た周りの客達も「あの男よく聞いてられるな」と思っていた。結構同じ話が出たりしているのだがジョーは指摘することなく「うんうん」と相槌をうっているのだ。なんの文句も言わず話しを遮ることのないジョーにルフィが話しかけ続けるのは必然だった。
「何度もシャンクスに乗せてくれって頼んでんのに乗せてくれねェんだ!」
『うーん…それは船長さんも色々考えているんじゃないかな?』
「絶対違うね! おれが泳げねェから馬鹿にしてんだ!」
『そうなのかい?なら私と同じだね。私も泳げないんだよ』
「そうなのか?! オッサンだっせーなァ! ダメダメだな!」
(((( Σお前が言うか?! ))))
『そうだねェ…私はダサいしダメダメだ』
(((( Σアンタも認めんのかよ!! ))))
突っ込みどころ満載な二人の会話なのだがのほほんとした空気の中声を出して突っ込む事は出来なかった。ルフィとジョーは「あははは」とお互いに笑っており聞いているこっちが疲れると思う客達。マキノだけはジョーの纏う空気感とか話しを聞く姿勢だとか彼の包容力の高さがルフィを安心させているのだと思った。その感じが何となくルフィの慕うシャンクスとかぶる所もあり、それも要因だろうとマキノは思う。
ジョーが酒を飲み終えつまみも食べ終えたらお金を置いて立ち上がるそれを見たルフィが「もう行くのか?!」と言う。
『そろそろ私も帰らないとならなくてね』
「えー! もっといろよー!」
「こらルフィ! わがまま言わないの!」
「オッサンともっと話してェよ!!」
『嬉しいことを言ってくれるね。なら何時かルフィくんが私を訪ねてきておくれ』
「 ! おれがオッサンのところに?」
『うん。私はこの先の島に住んでいるのだけどね。君が海に出る気があるのなら』
「絶対出る!!」
『ならば私はいつまでも待っているよ。ルフィくんが私の元へ来てくれるのをね』
「分かった!! おれ絶対会いに行く!!」
『フフ、楽しみにしているよ』
そう言いながらルフィの頭をくしゃくしゃと撫でて店を出る。
頭を撫でた際どことなく寂しそうな顔をしたルフィに後ろ髪引かれる思いだが留まる事はできない。己の家はタートル島にありそこで己の家族が待っているのだから帰らない訳にはいかない。
BARを出て来た道を戻っている途中で猪を引きずっているエースとばったり遭遇。
「あっ!」
『やぁエース。猪持ってどうした?』
「これはダダン達に…ってそうじゃねェ! 今日なんで来なかったんだよ!」
『毎日行くとは言っていないぞ? 私も色々見て回りたいしね』
「ぐっ…ならこの後付き合えよ」
『そうしたいのは山々だけれどそろそろ帰ろうと思うんだ』
「はっ?! 今からか!?」
『うん、今から。って事でまた会える時を楽しみにしているよ』
「え、ちょっ…待てよ!」
ジョーは最後にエースに会えてよかったと思いながら挨拶をしてエースの隣を通り過ぎる。エースは本当に行ってしまうのだと分かりひと先ず猪を雑木林に隠しておきジョーを追う。すぐに追ってきた筈なのに追いつけない事からジョーも走っているのだとエースは察した。「そんなにすぐ帰りてェのかよ!」と悪態をつきながらも必死に足を動かした。
その結果ジョーの背を視界に捉える事ができ立ち止まっているジョーの背に容赦なく蹴りをかました。
『ぐっ?!』
「ゼェ…待て…って言ってんだろうが!」
『だからって蹴るかい普通?!』
「うるせェ! オッサンにまだ聞きてェことがあんだよ!」
『聞きたい事…?』
「なんで…なんで死んだ筈の二人が生きてんだ…」
『 ! …その事か…そうだよね。疑問に思って当然だ』
「答えるまで行かせねェからな!」
『分かった分かった。教えるよ。エースは悪魔の実というのを知っているかな?』
「悪魔の実…? サボがなんか言ってた気がする…」
『特別な力を得られる実なのだけれど私もそれを食べてしまってね…まぁ特殊な力を得たわけだ。それでその力を使ってロジャーとルージュさんを助けたんだよ』
そう説明をするジョーなのだがエースはどこか納得していないような顔をしている。ジョーが「これ以上の説明はできないのだが…」と思っているとエースが「分かった」と言う。表情とは裏腹に素直に頷いたことにジョーも驚きを示し目を丸めるも直ぐに笑顔になる。エースには非常に珍しくジョーの言うことは信じられると思っている為すんなりと受け止める事ができた。
一先ず話はしたためジョーはウマヘビを待たせている場所へ向かい始めるのだが何故かエースもついてくる。「見送りをしてくれるのだろうか?」と思いながら歩くこと数分…森を抜けた先は何もない岬とも言えない崖。そんなところに出たことにエースは怪訝な顔を隠しもせずジョーを見上げた。
「帰るんじゃなかったのかよ」
『そうだよ。ここに待たせているんだ』
「待たせてる…? 船も何もねェじゃん」
『私の場合船には乗らないからね』
「 は? 」
ジョーの言葉に意味が分からないエースは本気の「は?」が出て流石のジョーも苦笑いした。「まぁ見てなさい」と言いながらピュイーと口笛を吹けばすぐ近くからザッパァンと姿を見せるウマヘビ。水飛沫を降らせる大型海王類にエースはギョッと目を剥き空いた口が塞がらない状態だ。
ウマヘビはウマヘビでジョー以外の人間がいる事に興味深々でありフンフンと鼻を鳴らしている。普通の海王類よりかなりでかい事はエースにも分かりなんの躊躇いもなく近づくジョーを目で追うしか出来ずにいた。
『この子の名はウマヘビ。私の友だ』
「はぁ?! あり得ねェだろ!! 海王類だろそいつ!! しかもかなりデケェ!!」
『まぁそうだけど…とても優しいし頼りになるんだよ』
「嘘つけ!!」
『嘘ついてどうするんだ。この子には何度も助けられていてね。君の両親を助ける時もこの子のお陰で助け出せたんだ』
「 !! だからってなんで海王類なんだよ! 普通に船でいいだろ?!」
『正論をついてくるね。でもウマヘビに乗った方が断然早くてね。もう船に乗るって考えはないかな』
「ホントなんなんだよオッサン…」
『ははは! まぁ今後慣れていってくれると嬉しいかな。私の住む島も凄いからね。そうだウマヘビ…彼はエース。私の甥で家族だからしっかり覚えるんだよ』
「フンフン…ヒヒン! ブルルル!」
「…ゔ……慣れんのか…コレ…」
ドン引きなエースにジョーは気にすること無くケタケタと笑い「慣れろ」と言う。こんなハチャメチャな事に慣れられるのか不安すぎるエースだが何を言っても無意味なのだろうと幼いながら思う。父親(認めてない)であるロジャーと話した時もそうだがこの兄弟は普通じゃないとエースは心底思った。
そんなこんなでジョーはウマヘビに乗り一応エースへと「一緒に行くかい?」と問うも「行かねェ」と即答。そんなエースに「海に出た時は是非島に寄ってくれ」と言い発ちエースがその言葉に特別返す事はなかった。
それでもエースはジョーの姿が見えなくなるまでその場にとどまるのだった。
*
**
***
ジョーがドーン島を出てウマヘビでしばらく進んでいる時、前方に見覚えのある海賊船。それはあの島に向かっている時に見かけた海賊船でありルフィやマキノが言っていた海賊団だろうとジョーは思った。
とは言え此方は船長の名前を知っているとしても向こうは知らないのだから近づく事はしない。
それは海賊船に乗るシャンクスを始めとしたベックマンやヤソップ、ルウも同じ考えである。彼らもまた数日前に見かけた海王類が泳いでる程度に見ているだけだ。ただシャンクスだけはやはりどこかで見た気がしてならず「うーん…」と頭を悩ませてしまうのだが。
このまま行けばすれ違う感じになるのだがベックマン達は「ぶつからねェよな」と危惧する。あの大きさの海王類にぶつかられたら流石のレッド・フォース号もタダではすまないだろう、と。
互いのバシャバシャと言う水飛沫が聞こえる距離に到達した時、誰もが目を疑った。それもその筈でその海王類の頭の上に人が乗っていたからである。
「おい見ろよ! 人が乗ってるぜ?!」
「マジかよ!! あり得なくねェか?!」
「……一体何もんだ…?」
「あれは…そうだ!もしかして…!!」
「おい! お頭どこ行くんだ?!」
「ちょっと挨拶してくらァ!」
「挨拶…何言ってんだお頭のやつ…」
「さぁな…あの人の奇行は今に始まった事じゃねェ」
「確かに」
他の三人に色々言われているシャンクスであるがそんな事よりも海王類が一番近くを通る場所へと移動した。そこで待っていればヌッと海王類…ウマヘビの顔が数十メートル先を通りその上に乗る人もそれなりに見えた。見えたとは言っても帽子とフードで顔を見ることは出来なかったがその姿に見覚えがあった。
ローグタウンで見かけたあの姿…今でもシャンクスの脳裏に焼き付いて離れない後ろ姿。あの後ジョーの手配書が出回ったことに驚きはしたもののきっとあの時何かをしたのだとシャンクスは思っていた。完全に通り過ぎてしまう前にシャンクスは相手に聴こえるように出来るだけ張り上げて声をかけた。
「ジョーさん!!」
『 ! 』
「あんたジョーさんだろ?!」
『………君は…シャンクスくんか?』
「そうだ! いやァ久しぶりだなァ!!」
『本当にそうだね。随分と大きくなって』
「だははははっ! 初めて会ったの何年前だと思ってんだ!」
『言われてみればそうだ……ん? となると…もしかしてあそこの村を拠点にしてるのって…』
「あぁ俺たちだが…なんで知ってんだ?」
『たまたまそこの村に立ち寄って少し話しを聞いたんだよ。まさか君だったとは』
「名前で普通気づかねェか?」
『うーん…私の中のシャンクスくんはまだ幼いままだったのでね…申し訳ない』
そう言うジョーにシャンクスは「確かにあの時はまだガキだったな!」とケタケタ笑う。
ジョーはシャンクスに呼び止められた事でウマヘビにUターンさせ船と並走している。初めこそ突然名前を呼ばれ驚き警戒したが相手が知っている人でジョーの顔にも笑顔が溢れる。
赤髪海賊団のクルー達としてはお頭と親しげに話す謎の男に興味を持っていた。それ以上になんで大型海王類の頭に乗っているのかの方が気になる所なのだが。
「ジョーさん時間あるか? よかったら寄ってってくれよ!」
『そうだね…折角だし…君たちがいいのならお邪魔しても?』
「いいに決まってんじゃねェか!」
『じゃあ失礼して…』
そう言ってジョーはウマヘビからヒョイっと簡単にレッド・フォース号へ飛び移る。ウマヘビはまたジョーがいなくなってしまう事が不服なようで顔半分だったのをザパァと全て出す。それにはシャンクスのクルー達はギョッとするがぶつかったりして来る事はない。
フンスフンスと鼻息荒いウマヘビにジョーは苦笑いをして「もう少しだけ待っておくれ」と鼻先を撫でる。それに気を良くしたウマヘビはぐんっと胸元あたりまで体を出してバシャっと海の中へ。その時に水飛沫が思いきりたちジョーやシャンクスはもちろん見ていたクルー達までずぶ濡れになる。ジョーに至っては能力者のため海水を被った瞬間力が抜けその場に座り込んでしまった。
「だぁーはっはっはっはっは!! スゲェな…ってジョーさん大丈夫か?!」
『あぁ…大丈夫…後でウマヘビには言って聞かせないといけないけれどね…』
「Σお、おぉ…程々に…?」
『それよりも君たちは大丈夫かい? すまないね…船も水浸しだ…』
「俺たちゃぁ大丈夫だ! なぁお前ェら!」
「まぁ平気だが…想定外ではあるな」
「肉が海水まみれになっちまったけどな!」
「俺は火薬を変えねェとなんねェかな」
『ゔっ…本当に申し訳ない…』
「お前らな! んなこと言う必要ねェだろうが!」
「聞かれたから答えたまでだ」
「その通りだぜお頭ァ!」
などなど…ジョーの言葉に素直に答えたのだがシャンクスは気を遣えと不満気だ。それはそれで居た堪れないジョーは少々肩身の狭い思いをしているが残念ながらシャンクスは気づいていない。
気づいているのは副船長のベックマンであり「アンタの方が気を遣え」と内心思った。
一先ず座り込んでいたジョーは海水まみれのため動きづらいがどうにか立ち上がる。どことなく足取りの悪いジョーを怪訝に思うのはシャンクス以外の三人である。それはそうだろうあんな大型海王類の頭に乗れる人間が地に足つけて覚束ないなど誰も思いはしない。
シャンクスの誘導の元、主甲板へとやって来たジョーは失礼に値するだろうと帽子とフードを取る。そこから覗いた顔に海賊である彼らは見覚えがあり目を大きく見開き驚く。
『先程はあの子が失礼したね…私はジョー。どうぞよろしく』
「……アンタもしかしてゴールド・ロジャーの兄貴って言う…」
『おぉ、初対面で私を言い当てる人に会うのは初めてだね! その通りだよ』
ベックマンの指摘にジョーはどことなく嬉しそうに笑い肯定した。それにはクルー達は先ほど以上に驚き「ええぇぇぇぇ?!」と言う声が響いた。ジョーの手配書も出ているのだから分かる人は分かるだろうが…それはその時に出たものを見た人は、だ。
今は手配書が出てから数年経過しているため手配書も少し歳を重ねたように書き換えられている。しかし目の前にいるジョーは発行された当時と見た目はそう変わっておらず髪色が少し白髪混じりになった程度。
そんな己をしっかりと見極めたベックマンにジョーは「いい観察眼だね」と笑う。その言葉にベックマンは何故かむず痒いような思いになり「…どうも」とだけ答えた。
にしても…このまま水浸しのままなのはいかがなものかと思ったジョーはゆっくりと膝を着き甲板に手をつけた。その行動にシャンクスはもちろん誰もが不思議に思いながら見ている中ジョーが「
「おぉ?! 一瞬で乾いちまった! スゲェなジョーさん!」
「能力者だったのか…」
「にしても何の能力だこりゃ…」
「髪も服も乾いたが甲板だけ濡れてるぜ?」
『すまないね…本来私の能力は生ある者にしか効かないんだ…服とかは間接的に君らが着ているから乾かせたんだ』
「十分だぜ! 確か事象を戻せるとか言ってたよな?」
『よく覚えているね。その通りだよ』
「事象を戻す…? そんな大層な能力…世界政府に見つかったらマズイだろうな」
『その通りだ。そもそも私もおたずね者だから捕まった時点で殺されるのだろうけど』
「いや…殺すより利用しようってのがあり得そうだが」
『……それはそれで嫌だね。そうなった場合は自害するかな』
「おいおいおい! 物騒な話は無しにしようぜ!? せっかく久し振りに会えたんだからよ!」
『ふむ…それもそうだね。たらればの話をしても無意味だ』
「だな」
ベックマンとジョーとで話していたのだがそれを止めたのはシャンクスで二人も不吉な話しをやめた。やはりジョーは頭脳派の人間との話の方が弾むようでベックマンとは随分と馬が合いそうだとシャンクスは思う。昔会った時もなんだかレイリーやクロッカスと話している時の方が生き生きしていた気がしのだから。
そんなこんなで主甲板を適当に拭いてからそれぞれが適当に座り酒盛りを始める。ジョー的にはここまで来ていると言うことは「あの村に行くのでは?」と思うが口にはしない。
シャンクスの言う通りせっかく以前会った少年が立派に成長して一隻の船長をしているのだ。話しをしても何も悪い事はないだろうしいい土産話ができると思ったのである。すぐに飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎとなりジョーもシャンクスやベックマン達と酒を飲む。
そんな中ずっと疑問に思っていたのかヤソップがシャンクスへと問いかける。
「お頭がずっと会いに行きたいって言ってたのはこの人のことか?」
「そうだ! だが全然見つけらんなくてよォ…グランドラインのどっかってしか手掛かりないしな」
『そうだったのかい? まぁロジャー達も私を見つけるの随分と難航していたようだしね…』
「マジかよ! 海賊王までも探すの大変だったのか…」
「アンタは海賊ってわけでは無さそうだが…なぜグランドラインに? 出身は東の海だろう?」
『ロジャーが海に出てローグタウンにいる必要性がなかったからね。せっかくなら私も静かに暮らせる場所を探そうと思ったんだ』
「それでグランドラインに入っちまうのが規格外っつーかなんつーか…」
「まぁロジャー船長の兄貴だからな! 不思議はねェな!」
「「「お頭はな」」」
『まぁ私もグランドラインに入る気は当初はなかったんだよ。気づいたら入ってたからね』
そう何でもない様にケロッとジョーが言うとしばらく沈黙が続いたかと思ったら「はぁあぁ?!」という絶叫。そんなに驚くことかと目を瞬くジョーに対しシャンクスは「だははははっ!!」と膝を叩いて大爆笑。唯一ベックマンは呆れたような表情を見せていてジョーはなんとも言えない気持ちになる。なんて言ったってジョーにとって彼らは随分と年下の壮年と言ってもいい位なのだから。
見た目がそこまで歳をとっているように見えない事から彼らはそれを失念しているのだ。
「はぁー…まさかグランドラインに居た理由がそんなんだとは思わなったな!」
『だろうね。ロジャーにも凄い驚かれたから…レイリーくんは呆れていたね』
「だははははっ!! 副船長らしい!」
「……こう話しを聞いてると本当にあの海賊王の兄貴なんだな…」
「にしては若すぎねェか…? ゴールド・ロジャーの兄貴って事はそれなりに歳いってるよな…?」
「確かにそうだな…おーいお頭ァ! 兄さんの歳いくつなんだァ?」
「ジョーさんの歳ィ…?」
『なぜシャンクスくんに聞くんだ? 私に直接聞けばいいのに…』
「聞きにくいからな!」
『聞こえてる時点で意味ないのではないか?』
「確かに!」
ドッと笑い声がわき「わははははっ!!」と言う声が響き渡る。
そんなに笑う事だろうかと思うジョーは不思議そうにしながらも手にある酒を飲む。ルウに聞かれたシャンクスはそういえばジョーの年齢を聞いた事はなかったなと思う。そもそもロジャーの歳もわざわざ聞いた事はないため二人が何歳差なのかも知らない。
「実際のところジョーさん幾つなんだ?」
『んー…確か…今年で…68…だったかな…』
「68?! 全然見えねェ…」
「完全詐欺じゃねェか?」
「あの手配書が出回っても見つからねぇな」
「確かに! 若さを保つ秘訣は?!」
『秘訣も何も私は能力を使っているから若く見えるんだよ』
そうあっけらかんに言うジョーだがその話しを聞いていた全員が「はっ?!」と言う感じに彼を見る。能力者だと言うのは分かったし事象を戻せるとかって言うのも聞いて分かっている。だがそれがどうして若く見せるのかって言うのが彼らには理解できなかった。ただ一人頭脳派のベックマンだけは「なるほど」と言うように頷いており理解したようだ。
理解出来てない筆頭のシャンクスが「どうやってんだ?」と聞けば全員が聞き耳を立てる。
それを見たジョーは苦笑いをしながら「自分の筋肉や内臓を若い状態に保っている」と言う。まさかそんなことが出来るのかと驚きで一杯な彼らなのだが事象を戻すと言うことは出来るのかとも思う。これ以上考えたらパンクしそうだと殆どの人間が酒に逃げまた騒ぐ。
その様を見て海賊はどこも宴会が大好きなのだなぁ…とジョーが思っているなど知る由もない。ジョーへの質問が落ち着いたのを見計らい今度は彼が気になっていた事をシャンクスに問う。
『シャンクスくんはその傷はどうした? 昔はなかったと思うけれど…』
「あぁこれか…ある戦いでやられたんだ」
『そうか…君に傷を付けるとは相手も強かったんだね』
「そうだな…」
『私の能力であればその傷…無くすことも出来るけれど…なくすかい?』
「………イヤ、これはこのままでいい」
ジョーの提案を断ったシャンクスの瞳の奥には戦った相手を考えたのか強い光が宿り燃えていた。その姿を見て「君も立派な海賊になったんだね」と感慨深く思う。そんなこんなでジョーとシャンクスは意外なところで再会を果たし話に花咲かせるのだった。
( ジョーさんは結局今はどこにいるんだ? )
( 変わらずグランドラインにいるよ )
( えー…全然見つけらんなかったなァ… )
( もし航路上にある島を探していたら見つからないよ? )
( え…ホントか…? )
( 私のいる島は磁気がないからね。ログポースは反応しないんだ )
( そりゃ見つからねェ訳だ!! ロジャー船長もよく見つけられたな! )
( それは私も思ったよ。あぁそうだシャンクスくん。すっかり忘れるとこだった… )
(うん?なんだ?)
( よくも黙っていてくれたね…? )
( えっ…な、何かしたか俺…? )
( 覚悟はいいかい? )
( Σえっ?! なんの話し……ハッ!! いやアレはロジャー船長が…!! )
( 連帯責任だ…!! )
( ぎゃあーっ!! )
( 怖ェ…お頭何しでかしたんだよ… )
( さぁな…あの人が何しでかすかなんて分かりゃしない )
( にしても温厚そうに見えて怒ると怖ェタイプだな )
( だな… )
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