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エースを探すためにタートル島を出て何だかんだあって新たな怪我人(一度死んでる)を助け出してから約二ヶ月過ぎた。一度その怪我人…ドンキホーテ・ロシナンテを棲家へと連れ帰ったりとした事もあり少々時間を要した。
大男を担いで帰って来たジョーを見てロジャー達は驚きはしたものの「兄貴だしな」と状況を受け入れたのである。その後ジョーは「彼を頼む」と言ってから早々にエースを探す為に再度タートル島を出ていくのだった。
甥のエースを探すとは言ったものの、どこを探せばいいのか皆目見当もついていないジョーは一先ず南の海へ。しかしながらなんの情報もないまま早数週間、探せど探せど見つからない甥にジョーは完全お手上げモードである。今ジョーはエースが生まれた南の海を探し回っていたのだが全くと言っていいほど情報がないのだ。
もちろん「ゴールド・ロジャーの息子」と言うビッグネームが付いている事からエースを隠しながら育てているのだろうからそう簡単に情報が出てこられても困るのも事実。だがそれにしても「無さすぎやしないか」とジョーはウマヘビの頭の上に乗りながら考え込んでいた。
『うーん…南の海にはいないのか…そもそも出身地で育てるのもリスクがあるか…?』
などなど…ブツブツと呟きながら色々考えているのだが結局答えが出る筈もなく…。一先ず南の海にはいないのではと言う推測を立てたジョーは別の海に行こうと考えた。そこでまた問題が生じるのだが東の海と西の海どこへ探しに行くかだ…ただ北の海は色々あった為候補から排除している。
二箇所全部を見て回っていたら時間がかかり過ぎるしジョー自身がちょっと面倒だってのもある。そうなると一番いそうな海を剪定して行く他ないと思い色々と考察しだす。
『赤ん坊を育てるのに一番最適だと思われる海はやはり…一番安全だと言われる東の海…か?』
「ううーん…」と頭を悩ませること小一時間…ようやくジョーは進む海を東の海に決めた。ウマヘビに「東の海へ向かっておくれ」と頼めば「ヒヒン!」と答えスイスイと動き出す。
これで間違えていたらまた別の場所を探さねばならないなと内心思いながらジョーはエースが東の海にいる事を切に願った。
*
**
***
ジョーが南の海から東の海へ入れたのはあれから一週間ほど立った頃だった。出来るだけ寄り道をせずに進んできた為そのくらいの日数で東の海へ入れたのである。まぁまだ入れただけであって、これらか何処にいるのかを探さなければならない。
そうは思うも久しぶりに帰って来た東の海に「相変わらず長閑な海だ」とジョーは思う。今やタートル島での生活の方がここでの生活より長いのだが、それでもやはり懐かしさを感じるものがある。
流石におたずね者になってしまった以上、故郷であるローグタウンに出向く事はできないのだが。
一先ずどこかの島で少し休憩してから先へ進もうと考えたジョーは進む中で辿り着いた島へ。もちろん大型海王類に乗っているため島民を驚かせない為に人気のない場所でウマヘビから降りて村の方へ。見知らぬ者が突然現れてもこの村の人達は快く受け入れてくれてとても過ごしやすい島だとジョーは思う。
色々見て回っている時、後ろからドンッという衝撃が足にきて顔だけ振り返り下を見れば少女が尻餅を付いていた。オレンジ色の髪をした少女は鼻元を押さえて痛みを我慢しているようで眉間にシワを寄せながら口はギュッと結んでいる。
そして少女の周りには色々な物が散らばってしまっていた。
「~~~~~っ!」
『あぁ…すまないね。大丈夫かい?』
「そんなとこ立ってないでよ!!」
『これは申し訳ない…。これらは君のかな?』
「あっ! 返してわたしのよ!!」
「こらナミ!! またお前はそんなに物を盗んで…!!」
( 盗んだのか… )
「げっ!」
「何が「げっ」だ全く! ……アンタは村の住民ではないな」
『えぇ、ちょっと旅をしてましてその休憩に立ち寄ったんです』
「そうか。何もない村だがゆっくりして行くといい。ホラこっちに来いナミ!!」
「やだっ! ゲンさん引っ張んないでよ!!」
嵐のような二人…少女のナミとこの村の警備をしているゲンゾウは立ち去って行った。中々にインパクトの強い出会いだなとジョーは思いながらも気にする事なく食事できる店へ入った。食事をしながら考えるのはエースのことで先程の少女と同じ位の年齢だろうかとジョーは思った。
いちいち何年経っただとか数えていないジョーはエースの年齢さえ全く把握していない事に今更気づいた。「これは伯父としてマズイのでは…」と思うものの「なるようになる」と結論が出る。それに年齢を知らずともなんの問題もないだろうとジョーは思うのだ。
そこでふと思ったのは己自身の年齢すらも既に把握出来ていない事に気づいたのだ。タートル島に住んでから随分と長くなるが…そこから年齢を幾つ重ねたのかなど覚えていない。これは流石にマズイか?と思ったジョーだが、それこそ覚えていようがいまいがどうでもいいなと思い至った。
食事しながら百面相のように表情を変えるジョーを見ていた店主に「大丈夫かこの人…」と思われていた。それにさえ考え事に集中しているジョーは全く気づいていないのだが…。
早々に食事を終えジョーはウマヘビを待たせている岬の方へと戻って行く。そんな時背後でジャリッと言う足音が聞こえタバコの香りが漂ってきた。
ジョーが振り返ればそこにいたのは特徴的な髪型をした女性でありジョーに怪しむ目を向けている。
「ゲンさんに聞いて来てみたけど…アンタ只者じゃないね」
『私はただの旅人だけれど…』
「ただの旅人がそんな完璧に気配は消せないよ。お陰で探すの苦労した」
( つい癖で消してしまっていたか… )
「休憩で来たらしいけど本当の理由は?」
『まるで私が嘘をついているような言い方だね』
「こんな何もない村に休憩だけで来るなんておかしいと思うのは当たり前よ」
『ふむ…君は元々軍人か何かかな?』
「だから何?」
『いや、そう考えるのは大体がそう言った人間だろうからね。君の場合はこの村を守りたいのか』
「当然だよ。ここは私の故郷で守りたい家族もいるんだ」
『なるほど…まぁ君が思うような事をする気はないよ。もうお暇するからね』
そう言いながらジョーは立ち去ろうと再び歩き出すが、ふと思い出したように「少女の盗みは良くないな」と言い走り去る。その言葉を聞いた女性…ベルメールは驚きに目を丸め「待てっ!」と言いながらジョーを追いかける。
しかしジョーの足に追い付ける訳もなく…彼がウマヘビの頭に乗り去っていく後ろ姿を見送る形となった。ただ大型海王類を従えているという事実にベルメールに「あの男は危険だ」と思われたなどジョーが知る由はない。
少々予定外な事があったが一先ず美味い食事が取れたから良しとしようとウマヘビと共に進む。こうしてジョーは再びエース探しの旅を再開させるのだった。
*
**
***
『なんて事だ…ここまで見つからないとは…』
ジョーが休憩と称して上陸したココヤシ村から出て更に二週間もの日数が経過していた。それなのに全くと言っていいほど甥であるエースを見つけることが出来ずにいた。「そろそろ本気でしんどいぞ…」とウマヘビの頭の上で項垂れているジョーは今見えている島に最後の希望を持つ。
ここにも居なければ東の海ではなく一度行った北か西の海にいるという事で…更に時間がかかると言うことだ。バシャバシャと進んでいる時それなりの距離はあるが同じ方向に向かっている船…恐らく海賊船を見かける。ドクロの帆を張っているのだから恐らくも何もないが失礼だがこんな辺鄙な場所にも海賊船が来るのかとジョーは思った。今は海賊船を気にしている場合ではなく一先ず人気のないだろう場所にウマヘビを向かわせた。
ジョーが乗っているウマヘビを見かけた海賊船は赤い髪に左目の三本傷と麦わら帽子が特徴的なシャンクスが率いるレッド・フォース号。世界一安全だと言われている東の海に現れた大型海王類と思われるそれがいて彼らは少し騒然としていた。
「カームベルトから逸れたのか」やら「同じ方向に向かってないか」などなど色々な声が飛んでいる。
そんな中シャンクスも勿論その光景を見ているのだがどこか既視感を覚えていた。顔の半分だけを海上に出して進む海王類の全貌を知る事は出来ないがどこかで見た気がしてならないのだ。
「そんなに考え込んでどうしたお頭」
「ベック…いやなァ…あの海王類どっかで見た気がしてよ…」
「そりゃ似たような海王類ならごまんといんだろ」
「そうなんだが…うーん…」
「お頭ァ! あの海王類仕留めたら暫く食料に困らねェぞ!」
「ルウはそればっかかよ! まぁ食料に困らないのは助かるけどよ」
「仕留めようとしてもあの速さには追い付けねェだろ」
「ヤソップなら狙撃出来んだろ? なァヤソップ!」
「あーまぁ出来ねェ事はないだろうが…やんのか?」
などなど…二人も会話に加わりウマヘビを仕留めるかどうかの話で盛り上がっている。そんな会話を聞きながらもシャンクスはじっとその様子を見て考え込んでいた。それを見たベックマンは「珍しい事もあるもんだ」と内心思いながらも口にする事はない。結局船が追いつけるスピードではない事からウマヘビを仕留めることは断念したようだ。それにはルウが心底残念そうに手に持っていた肉を頬張るものだから周りにいたクルーは笑うのだった。
一方ジョーはそんな風に話しをされているなど微塵も思っておらずただただ真っ直ぐ進んでいた。今のジョーはさっさと探していなければさっさと退散しようと言う考えで一杯である。タートル島を出てから既に三ヶ月が経っていて、これでは半年…最悪一年掛かるんじゃないかと思ってしまう。
それだけは回避したいジョーはエースを探し出すのに必死なのである。早く帰りたいのもあるがやはり一番の理由は弟夫婦に息子の様子を教えてあげたいのだ。そのために態々映像電伝虫を預けてきたのだから絶対に見つけ出す気ではいるのである。
ただ全く見つけられていないのが現状だが…。
ともあれジョーはようやく見えていた島に着き崖のようになっている場所から上陸した。
『人を探してくるから少し待ってておくれ』
「ヒヒン! ブルブル!!」
『よろしく頼むよ。にしても毎日の様に機嫌がいいな…』
「ブルヒヒン♪」
『まぁ悪いよりはいいけれど…じゃあ行ってくるよ』
そう言って彼は鬱蒼としている森の中へと足を踏み入れた。そこはタートル島ほどではないものの多くの動物が住んでおり中にはやはり獰猛な獣も多い。まぁジョー的にはサイズ的にも随分と可愛らしい動物達だと思ってしまっているのだが…。
ジョーがそう思おうと獰猛な動物は獲物だと言うように牙を剥が結局返り討ちにされる。そんな事が多々続く中、突然異臭が漂ってきてジョーは腕で鼻を覆うように隠す。隠しても臭いを防げる訳もなく…「鼻が曲がりそうなこの臭いはなんだ」と険しい顔をする。
臭いの元へ向かえば目を見張るような光景が広がっておりジョーは思わず絶句した。大量のゴミが放置され劣悪な環境下の中暮らしているだろう人を見たからだ。
( これは…酷いな…どうなっているんだこの島は… )
ギュッと眉間にシワを寄せながら様子を窺えばゴミの中から食べられる物を見つけた子供が大人に殴られた。痩せ細ってしまっているその子供が大人に敵う筈もなく、せっかく見つけた食料を奪われてしまう。この場でジョーが助けることも出来るが、そうしてしまえば今後あの子供が酷い目に合うのは目に見えている。そのためこの場でジョーができる事は何もなく、ただただ歯痒い思いをする事となった。
何時までもこの状況を見ていると体が勝手に動きそうだと思ったジョーは早々にその場から立ち去る。そんなジョーを影から見ていた二人の少年…エースとサボは明らかにこの島の者ではない出立ちの男を追う。ここの奴らから金品を奪うのも高が知れているからこそ他所からやって来たならそれなりに持っているだろうと言う考えだ。
見つからないように追いかけている二人だが残念ながらジョーにはとうにバレている。ただジョーがなんのアクションもしないのは追って来ているのが子供だと気づいているから。
( ふーむ…あの場所に住む子供だろうか…。追って来られても何もあげられるものがないな… )
そんな呑気な事を考えながらも背後にある気配から意識を逸らすことはしない。ただ追われている状態でエースを探し回るのもどうかと思うジョーはどこか子供達と対峙できる場所を探す。その結果、海を一望出来る岬へと出てその場で追ってが来るのをただ待った。
追って来ている子供達もそこまで来ているのだが出てくる事はせずジョーは待ちぼうけを喰らっている。追うだけ追ってあとは様子見する気か?と思ったジョーは海の方を向いていたが森の方へ振り返る。そして隠れて居るであろう子供達に声をかけた。
『隠れていないでそろそろ出て来たらどうだ?』
( ?! バレてるぞエース! )
( まさかここまで誘導されたのか…! )
( どうする? 今は一人みたいだけど仲間がいるかも知れねェぞ )
( ……なら仲間が来る前にアイツから金品を奪う )
( だな。じゃあ…行くか )
声をかけたのだがやはり出て来ない子供に「うーん…」と頭を悩ませていたらガサッと姿を見せた二人。まだまだ幼い少年たちは手に鉄パイプを持ち完全に臨戦態勢である。「戦う気か?」と思いながらも少年たちの様子を窺うのだがジョーは黒髪の少年が気になっていた。
なんと言うか…子供の頃のロジャーによく似ているとジョーが感じていると少年たちが彼に襲いかかる。二手に分かれて挟み撃ちをするように鉄パイプを振りかざす少年たちを見て「なかなか…」と思う。まぁジョーの敵ではないのだが一先ず彼らの戦いっぷりを見てみようかと避ける事に専念する。
エースとサボは悉く躱され続けている己らの攻撃に焦りが生まれ始めていた。今まで戦ってきたチンピラとかは簡単に倒せていた事もあり、ここまで苦戦するのは2人共に初めてだったのだ。
帽子を被り更にローブのフードをかぶっていて男の顔など分りはしないが二人の中に「ヤベェ奴」と言う言葉が浮かぶ。このまま攻撃をし続けても勝機が見えない二人はバッとジョーから距離をとった。
「このままじゃジリ貧だ!いったん退こうエース!」
( ! エース…? )
「退いてコイツが追って来ない保証はねェ」
「だからって…!」
「サボは先に行け! おれは一度向き合ったら逃げねェ…!!」
少年たちの話を黙って聞いていたジョーはエースが言った言葉を聞き一瞬でサボの後ろに周る。瞬く間の出来事でなんの反応も出来なかった二人は「マズイ!」と思うが既に遅い。ジョーはサボの首裏を手刀で叩き彼を気絶させ地面に倒れ込まないように腕で支える。目の前から消えたかと思えば一瞬でサボを倒したジョーにエースの背に冷や汗が流れる。
目を付けた相手が悪かったとエースが今更気づいても遅くサボは男の手に落ちてしまっている。
無論ジョーとしてはサボをどうこうするつもりは全くなくただエースと二人で話したかったのだ。生い立ちが生い立ちのため出来るだけ人に聞かせたくないとジョーなりの配慮だったがやり方が少々行き過ぎてしまっていて逆効果である。
完全にエースは彼を警戒していてサボをどう助け出そうかと思案しているようだ。それを感じ取ったジョーはグッタリとしているサボをそっと地面に仰向けに寝かせてからエースへ視線を向けた。
『心配しなくても君たちをどうこうするつもりはないよ』
「信用できるか!サボをやっといて…!」
『ふむ…確かにそうだね。ただ私は君と二人で話がしたいんだよエース』
「 ! …何でおれの名前を…」
『まずは自己紹介が先かな。私の名はジョー。ロジャーの兄だと言えば君には伝わるかな?』
「 ?! 」
ジョーの言葉にエースは驚愕な表情を見せ言葉を失いその場に立ちつくす。
実はエース、伯父であるジョーがいる事をガープから見せられた手配書で知ってはいたのだ。ただ追われる身になる前から消息を絶っており今どこにいるかは分からないと聞かされていた。そんな男が突然目の前に現れて驚くなと言う方が無理な話しである。
彼も彼で「随分と驚いているな」と思いながら今まで隠していた顔を帽子を外す事で晒す。素顔を見たエースは手配書で見た顔より年はとっているものの間違いないと思った。
『突然現れて驚いたかな?』
「………………」
『私も追われる身でね…色々あってー…』
「知ってる」
『―――……え?』
「アンタの事は知ってる。アイツのせいで追われる身になったのもジジイに聞いてる」
『おや…そうだったか。ジジイと言うのはガープくんの事かな?まぁそこはいいか』
( ガープくん…?! コイツ…ジジイより年下じゃねェのか… )
『ともあれ君に会えてよかった。探し始めてから三ヶ月も経ってしまって流石に諦めかけたよ』
「 ! …今更なんでおれを探すんだ」
『確かにそうだね…今更だ。アレから随分経ったから………。エース、君今いくつだい?』
「……9…」
『9歳か…そうか、9年も経ってしまっていたか…』
エースの年齢を聞いたジョーは「もうそんなに経ったか」と内心思うも口にはしない。ルージュを見つけ出したはいいがエースは連れて行かれてしまい離れ離れになった親子。そもそもその事自体知らないだろう少年にその事を話すべきかをジョーは考えた。
##name1は##少し話しただけでもエースがロジャーを憎んでいる事はなんとなく察する事ができた。ロジャーの息子だと言うことは伏せてはいるのだろうが、やはりどんな男だったのか聞いたりはしたのだろう。その時に色々と言われたに違いない…世間一般的にロジャーは「大海賊時代」を作った大悪党なのだから。
無論、ジョーにとってはロジャーはロジャーのため恨むも何もないのだが…エースは違う。会ったことも話したこともない父親のせいで嫌なことがたくさんあったのは揺るぎようのない事実なのだ。
立ち話しも何だから座ろうとエースを手招きすれば案外素直に従いジョーの隣に腰を下ろす。その様子を見てからジョーは気になっていることをエースへと問いかけた。
『エースはロジャーが嫌いか?』
「大嫌いだあんな奴…! アイツのせいでおれがどれだけ…!!」
『あぁそうだろうとも…大変だったろうね』
「……アンタは嫌いじゃねェのかよ。アイツのせいで追われてるんだろ」
『手配書が出た時は思う事はあったけれど私はロジャーをよく知っている。一概に嫌いにはなれないよ』
「なんでっ! アイツは大悪党なんだぞ!!」
『世間一般的にはそうだ。でも私にはロジャーはロジャーなんだ。唯一無二の弟だからね』
「 ! ……分かんねェよ…俺に兄弟はいねェ…」
『兄弟というのは血の繋がりが全てではないよ? あの少年…サボくんと言ったかな? 彼とは仲が良いのだろう?』
「まぁ…悪くはねェけど…」
『友情の絆というのは兄弟の絆ととても良く似ていると私は思っているんだ。それに私にも血の繋がりはないけれど手の掛かる弟のような存在がいるんだよ』
「 ! アイツ以外に?」
『そうだよ』
そう穏やかに話すジョーに普段誰であれ警戒心MAXのエースは何故か普通に話せてしまうことに少々戸惑いがあった。しかしその戸惑いごと包み込んでしまうような包容力を持つジョーにどこか安心感も抱いていた。
手配書で見た時はロジャーの兄なのだからアイツのようなクソ野郎なんだと勝手に思っていたエース。だが実際に会って話しをしてみるとそんな事はなくむしろ話し易いし俗に言う「良い人」なのだと分かる。ただ分からないのはロジャーのせいで追われる身にも拘らず嫌いにならないと言うことだけ。
エースは母親に感謝こそすれ父親のロジャーには死んでも感謝する日が来るとは思っていない。そこまで考えてエースはジョーならば己の母親のことを知っているのではないかと思った。
それを聞こうか悩んでいるとふわりと頭を撫でられる感覚に驚きバシッと手を叩いてしまった。
「ぁっ……」
『おっとすまない。驚いたかな?』
「………いや…」
『見れば見るほどロジャーにそっくりだ………はは、そんな睨まないでおくれ』
「アイツに似たって嬉しくねェ!」
『ロジャーに似ているだけではないぞ? ルージュさんの面影もしっかりある』
「 !! おふくろの事知ってんのか?!」
『もちろん知っているとも。そもそもエース、君も何か知っているのかな…?』
「……おれを産んで死んだってジジイに聞いた」
『―――…そうか』
「おふくろの事教えてくれよ」
『ふむ…そうだな。私から見たルージュさんは美しく聡明な人だね。なぜロジャーを選んだのか不思議なほどにね。家事はもちろん完璧にこなすし何より気遣いがとても良く出来る人だよ』
「へぇ…そうなんだな………、」
『……会いたいかい? ルージュさんに』
その言葉にエースはジョーを見上げてから目を逸らして「まぁ…」とだけ言い聞かずとも会いたいと思うのは当然だろう…己の母親なのだから。その願い叶えてあげたいがエースを連れて行く事はやはり無理があるとなれば…とジョーは持って来ていたカバンを漁り何かを取り出した。
ジョーがカバンから取り出したのは四匹の電伝虫。
電伝虫自体を初めて見たのかエースは興味深そうにしており「なんだこれ」と言いたげな表情である。ジョーが連れて来ていた電伝虫は通常タイプの子と盗聴妨害用の子、そして映像電伝虫二匹だ。準備を進めているジョーは白電伝虫を通話用の電伝虫に接続してから受話器を取ってある所にかける。「ぷるぷるぷる」と独特な音が鳴る中、相手が出るのをひたすら待つのみ。
暫くして「ガチャ」っと受話器を取る音がすれば「もしもし?」と女性の声が響く。それに驚いたエースはマジマジと電伝虫を見ていて彼は彼で出たのがルージュだった事に驚いた。
『やぁ私だよ。分かるかい?』
〈 あ、ジョーさんですか? あの人は相変わらずおでんさんと走り回ってて…呼んできますね 〉
『いや今回はロジャーに用はないんだ』
( ?! ロジャーって…アイツは死んだはずじゃ…!? )
〈 そうなんですか? では誰に… 〉
『君だよルージュさん』
「 !? 」
何か会話をしていることからエースは黙って様子を見ていたのだがジョーから出てくる名に驚き目を見開く。すでに処刑されて死んでいるはずのロジャーの名が出たかと思えば今度は母親の名前。しかも今話しているのがいかにも母親であるルージュのような感じを出していた。色々なことが起こり混乱しているエースを尻目にジョーは手に持っていた受話器の通話口を上向きに地に置いた。
そんな中、ルージュの方もジョーが電話をかけてきた理由が己だと知り少々困惑しまっているようだ。
〈 私に、ですか…? 〉
『うん 一番に伝えたくてね。見つけたよ君たちの息子を』
〈 ―――っ!! 本当に…っエースを…! 〉
「っ……!」
『時間が掛かってしまってすまないね』
〈 そんなっ…ありがとう…ございます…! あの子は元気に…していますか? 〉
『それは自分で確かめるといいよ。ほらエース、君のお母さんだ』
「っ……お、ふくろ…」
〈 エース…? エースなのね…っ…ごめんね…独りにしてしまってごめんね…っ 〉
ジョーがエースを見つけた事を伝えれば電伝虫がポロポロと涙を流し始める。
エースはエースで初めて聞く母親の声に嬉しさと、困惑で瞳を揺らしてしまっていた。ルージュの質問にジョーは答えず隣にいるエースへバトンタッチしエースは絞り出した声で母を呼ぶ。その声に受話器越しであるもののルージュは嬉しさが込み上げ更に涙を流しながらエースへ謝った。生まれてすぐ独りにしてしまったことを…ガープに託したとは言えやはり親とは違う。
そんな謝罪を聞いたエースも何を言っていいのか分からず言葉を詰まらせている。必死に涙を流さないように我慢しているから声が出せない可能性もある。そんな我慢したところでルージュ側の電伝虫にその表情が浮かんでしまっているのだが。
それでもポツリポツリと今の生活の話をしていて弾んでいるとは言えないが親子の初めての会話は成功だろうとジョーは思う。
微笑ましくその様子を見ていると遠くから「おーいルージュいるかァ!」と言う声が聞こえる。その声にジョーは「あー…マズイかな?」と思いエースは一体誰だと言いたげな表情だ。
言わずもがなロジャーなのだがバンっと扉を開く音が聞こえるあたりルージュの元へ来たらしい。そして「どうしたルージュ?! どっかイテェのか!?」と泣いてる彼女を見て慌てている様が目の前に浮かぶようだ。
エースをチラリと見ると何となく察しているのか、眉間にシワがグッと寄っている。「これは一悶着あるかな」とジョーが呑気に考えていると「ジョーさんがエースを見つけてくれたの」と言う声。それを聞いたロジャーがルージュから受話器を受け取ったのか少々でかい声が響く。
〈 兄貴! エースを見つけたって本当か!? 〉
『嘘ついてどうするんだ…。今私の隣にいるよ』
〈 隣に?! じゃあ聞いてんのか! 〉
『もちろん。さっきまでルージュさんと話してたんだ』
〈 そうか…それで泣いてたんだな。エースいんだろ? 俺がお前の父親だっつっても分かんねェか! 〉
「……………おれはアンタが嫌いだ」
…………………
………………………………
〈 わははははっ!! 嫌いか! そりゃそうだろうな! 〉
「 ?! 」
〈 俺が処刑された時点でルージュにもお前にも色々な矛先が向くのは分かってたからな。だからこそガープに託したが…俺の選択は間違ってなかった! こうして息子と話せてんだからな! 〉
「ふ…ふざけんな! アンタの息子だなんておれはごめんだ!!」
〈 そうは言っても親子だしなァ……まぁ俺が嫌いならそれはそれで構わねェ! 立派に育ってくれりゃあな! 〉
そう言うロジャーに合わせて電伝虫が二パッと笑いエースはなんとも表現しづらい顔だ。でも嫌いと言う割にはちゃんと話すあたり、やはり父親であると言うのは大きいのかも知れないとジョーは思う。
この後は親子三人で会話を楽しんで(?)いるのだがせっかく映像電伝虫を持って来たのだから合わせてあげたいと思う。まぁ…エース的にはルージュに会いたくてもロジャーに会いたくないかも知れないが…。
ともあれ思い至ったジョーはそっと映像電伝虫を通常の電伝虫の上に置いてエースが映るようにする。
そして楽しく?話している所を悪いがジョーが口を挟んだ。
『楽しんでいるところ悪いんだがロジャー映像電伝虫を預けたよね?』
〈 あん? おーいるぞ…まさか映すってか?! 〉
『こっちはその準備は出来てるよ』
〈 ちょっと待ってろ! 今準備すっからよ! 〉
『はいはい』
「……何すんだ?」
『映像ではあるけど互いに見えるようにするんだよ』
「 ! ……おふくろが見えるのか?」
『うん。エースの姿も二人に見える』
〈 よっしゃ準備出来たぜ! 映してくれ! 〉
『はいはい』
準備が出来たらしいので小さい電伝虫のスイッチを押せばビデオを撮り始める。そして大きい電伝虫で即席で作ったスクリーンに映像を映せば少々見にくいがしっかりと二人が映った。それを見たエースは目を大きく丸め、そしてクシャッと顔を歪めた。泣きはしないがそれでも泣いてしまいそうな表情に画面越しのロジャーは笑いルージュも嬉し涙を流す。
〈 お前ェはそんな顔をしてんだなァ… 〉
〈 ふふ…アナタにそっくり 〉
〈 わははははっ! そりゃ親子だからな! だがルージュにも似てるだろ 〉
「……アンタに似ても嬉しくねェ…」
『ははは! 本当にロジャー嫌われてるなァ』
〈 笑い事ではねェからな? 〉
『エース、ロジャーみたいな男にはなってはいけないよ?』
「絶対ならねェ」
〈 お前ェらな! 流石にそれはヒデェぞ?! 〉
〈 ふふふ 〉
などなど…会話を楽しみ途中ジョーは家族三人での時間も大切だろうと席を外し気絶させたサボの元へ。未だに目を覚まさないサボに「少し強くやり過ぎたか?」と思いながら心配になる。別段強く叩いたつもりはなかったが子供の体には刺激が強かったのかと思い猛省。
このタイミングで目を覚まされても映像に映るロジャーを見られるのは少々困る。しかしここまで眠り続けるのも「もしかして寝不足だったり…?」とか思ったりもした。
先程のゴミ山を見ると寝ようにも寝れる環境ではないのは一目瞭然だからそうも思う。しかしサボの格好を見るとそれなりにしっかりとした服を着ており、あそこに住んでいるようには見えない。「うーん…」と一人悩んでいると、いつの間にかエースが横に立っていた。
『おや…もういいのか?』
「十分話した…」
『そうか。じゃあ片付けないとね』
「………なぁ!」
『ん? どうした?』
「…ありがとう…おれを…探してくれて…。おふくろにも会わせてくれて…」
『フフフ 当然な事をしたまでだよ。だって私たちは家族だろう?』
「 ! ………おぅ…、」
ジョーの言葉に驚いたように目を丸めてから恥ずかしそうにそっぽを向いて小さく頷いた。その姿に笑みが浮かぶジョーはエースの頭をわしゃわしゃと撫でてから電伝虫を片す。そしてジョーは片しながらサボを気にしているエースに声をかけた。
『エース』
「なんだよ」
『今回の事は…誰にも話してはいけないよ』
「 ! ……それはおふくろ達のことか…」
『そうだ。ロジャーは死んでいる事になっているし、ルージュさんも生きてると知れれば追われてしまう。そうなれば生き難い人生になってしまうのは…君が身を以て知っているね?』
「……おう…」
『だから、この事は私たち家族だけの秘密だ。ガープくんにも言ってはいけない。いいね?』
「分かった。オッサンの事も黙ってた方がいいのか」
『うーん…そうだね。ガープくんには黙ってて欲しいかな。けどエースが心を許せる相手なら話しても構わないよ』
「 ! ……分かった」
ジョーの言葉を真剣に聞いていたエースは言わないことを約束し、しっかりと頷いて見せた。それを見たジョーはニッコリ笑って全ての電伝虫をしまい終え立ち上がる。目で追うようにジョーを見上げたエースは「もう行くのか?」と目で彼に問いかけているようだ。それに気づいたジョーは「もう暫くは居るつもりだよ」と言い、ただ「今日はもうお暇しよう」とその場を去る。
その際「サボくんに謝っておいておくれ」と言ってから颯爽と森の中へ入って行った。この後目を覚ましたサボにジョーがいない事でエースが質問攻めにあったのは言わずもがなだ。
( おいエース! さっきのオッサンは?! )
( 帰った )
( 帰ったってエースが追い返したのか!? )
( いや自主的に… )
( はぁ? エースお前…なんか隠してるだろ… )
( ……あのオッサンおれの伯父らしい )
( はぁ?! お前一人だって言ってなかったか?! )
( おれも今日初めて会ったんだよ! )
( マジかよ… )
( ただオッサンが悪かったってよ )
( え…あーうーん…もうなんかよく分かんねェ… )
(( あ…そういやなんで二人が生きてんのか聞くの忘れた… ))
( 良かったなルージュ! 映像とは言えエースに会えてよ! )
( えぇ本当に…ふふ…あんなに大きくなって )
( 兄貴もよく見つけ出してくれたよな! )
( 感謝しても仕切れないわ… )
( だな! なんか礼をしてェがここから出れねェからなァ… )
( ならジョーさんが帰って来た時なるべく豪勢な食事にしましょう )
( おっ! いいな! )
( ようやく見つけたんだからもう少しゆっくりして行ってもいいよね )
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