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ロジャーが公開処刑されてから丁度一年になる今日この頃…ジョーは変わらぬ日々を過ごしている。
ジョーがワノ国のおでんに保護を求めに行ってからも同じだけの月日が流れている。結局今のワノ国で匿えないとなりどこにいようかと亀助と審議を行った結果、結局前半の海へ戻った。
新世界にいるよりは断然安全だろうという両者の意見だったのだ。
そのため以前いたところかは分からないが元々居たであろう場所に戻りのんびり暮らしている。ロジャーは相変わらず目覚めることなく眠り続けており筋肉が落ち随分と体が縮んでしまった感じだ。それでも生きているのだから御の字だと彼は常々思いながらロジャーの世話をしている。
そんなある日
ロジャーの身の回りの世話をした後、ジョーは猛獣達と鬼ごっこという名の地獄の追いかけっこをしていた。ジョーが追いかける側なのだが猛獣達からしたら本当に地獄のような時間なのだ。逃げ切っても地獄、捕まっても地獄といういい事なしの鬼ごっこなのだから。
ジョーらがそんな事をしている時ツリーハウスで眠っていたロジャーが唐突に目を覚ます。バチっと目を開くも鉛のように重い体に対して声もヒューヒューと息が抜ける音だけ。ロジャーは己がどうなったのかとグルグルと考えた結果「死んだんだった!」と思い至る。それにしては普通に生きてきた時と変わらぬ感覚に不思議に思っているのだが。
時折ドガーン!やら「ギャオーン!!」など全く死の世界に感じられない音が響いてくる。
( 何だ…ここは地獄じゃねェのか…? )
声も出なければ体も動かせないロジャーは確認しようにも出来ず、ただただ目の前の天井の木目を見つめるのみ。。する事もなくぼーっとしていると、ギシッと誰かが近づいてくる気配を感じ取る。「敵か?!」と思うも、すぐに「俺死んだんだった」と思い直し強張った体から力を抜く。だが顔を見せた人物を見てロジャーは驚愕に目を丸めることとなった。
『全く…根性のない子ばかりだ…』
( ジョー…!? なんで兄貴が…!! )
『もう少し鍛えないとダメか…なぁロジャー……ぇ…ロジャー!?』
ぶつぶつと呟いていたジョーがロジャーに目を向ければ、目と目がバッチリ合い大いに驚く。ロジャーが目を覚ましている事に驚くジョーと己は死んだ思っているロジャーもまた死後の世界に兄がいることに心底驚いている。だからこそロジャーの頭の中には「なぜ」という疑問ばかりがグルグルと駆け回っていた。
ジョーはバタタっとロジャーの横に駆け寄りペタペタと顔やら頭やら体やらを触りまくる。そうしてもう一度顔を見ればしっかりと己を見てくる同じ漆黒の瞳を見てジョーの緊張が一気に解かれた。
ボロリと大粒の涙が流れ落ち、ぼたぼたとロジャーの上に落ちていく。
ロジャーはロジャーで初めて見たジョーの涙にギクリとし面白いほど動揺して見せる。泣き喚くでもなくただただ静かに涙を流すその姿がやけに綺麗に見えてロジャーは居心地が悪かった。だが次の瞬間、ロジャーの視界がブレたかと思うと次第にジンジンと左頬が熱を持ち始める。その傾向で「殴られたのだ」と気づいた時にはジョーの顔は泣き顔から目も眉も吊り上げ怒りに満ちていた。
『馬鹿野郎!! どれだけ私が心配したと思っている!!』
「………、……」
『お前が…! 処刑されると知った私の気持ちが分かるか!? 生きた心地がしなかったんだぞ!!』
「……………、…」
『この目でお前が処刑されるところを見て…っ!! 怒り憎しみ哀しみ…!! 色々な感情で圧し潰されそうだった!!』
「……、…………」
『今度命を粗末にしてみろ…地獄の果てまで追いかけ何回でも何百回でも私が殺してやるからな!!』
( Σこわっ!!!! )
いつもの温厚な話し方ではなく完全に怒りのままロジャーに想いをぶつけているジョー。ロジャーは自分を想っての言葉だと言う事はわかるが今の状況を理解できていなかった。ジョーの言葉から察するに己は確かに処刑されているのだろうとロジャーは思っている。「目の前で」とジョーが言っていたことからそれは間違いないはずである。
ただそうなると、なぜ自分はこうして目を開き兄の顔を見上げているのかと言うことだ。ここが地獄ならそれもまぁ有り得るのだろうが…兄がいる時点で色々おかしい。
まずジョーが地獄に落ちるようなことなどしていないだろうし、そもそも死んでいる事自体おかしいとロジャーは思う。
( まさか俺が処刑された後に…?! )
と考えるも、おでんと同等に戦えたジョーがそう簡単に捕まって殺されるなど考えられなかった。そもそもジョーに殴られた左頬の痛み…これは間違いなく何度も食らってきた痛みと同じだ。もちろん兄からではなく、海賊として海を渡っているときに幾度となく受けた痛みだ。
完全に「?」が頭上にたくさん飛んでいるロジャーに気づいたのかジョーが小さく息を吐いて現状を話した。
『言っておくけどお前は死んでないよロジャー』
…………………
……………………………
「……?! ………っ!?」
『 ? 声が出ないのか…? まぁ一年も眠ってたらそうなるか…』
( 一年眠ってた!? 冗談だろ!!? )
『残念だが冗談ではないよ。まる一年お前は眠っていたんだ』
相当衝撃だったのかロジャーは目を丸めただただジョーを見上げている。己が死んでいない事にか…それとも一年眠っていた事にかは分からないが。しかしその話が本当ならば体が動かないのも声が出ないのもロジャーは頷けた。
「一年使ってなきゃそりゃ動けねェわ」となんとも楽観的な考えである。それはいいとしても己が生きているこの状況を是非とも説明して欲しいとロジャーは思う。
それをロジャーの表情で汲み取ったジョーはその時のことを話した。
ロジャーの公開処刑の事を知ったのが当日で急いでローグタウンに向かった事。急いだものの間に合わずロジャーに槍が突き刺さるのをこの目で見てしまった事。その後遺体を回収するために処刑台に近づき、その場にいた海兵を全員無力化した事。そして回収したロジャーを連れてここに戻り己の能力を使い生き還らせた事。
簡単に掻い摘んで話をしたのだがロジャー的には開いた口が塞がらない状態だ。
自分は一度死んでいてまた蘇ったのだと、くらにジョーはそう言ったのだから驚くのも無理はない。ジョーの能力を生前一応聞いてはいたがそんな生死を覆す様な代物だとは思ってもいなかった。それはあの場にいた誰もが思っただろう…レイリーでさえ想像しなかった筈である。
事象を戻せるだけでもチート能力であるのにまさか死人を生き還らせるなど前代未聞だ。この能力の事が政府や海軍に知れたらどうなることかとロジャーはそちらの方が心配だった。
『全く…お前のせいで私までおたずね者だよ』
「 ?? 」
『海賊王であるお前の遺体を持ち去ったんだぞ? 追われて当然だよ』
「………、……!」
『ん? 懸賞額を知りたいのか? えーと…確かこの辺に……あぁあった、ほらコレだよ』
「…………?!」
ロジャーの聞きたい事を上手い具合に汲み取るジョーは最近新たに発行された手配書を手に取ってロジャーに見せる。初めて出た時の額は10億ベリーだったのだが今はその人物の事が何も分からない事から額が上がっている。
今は5億上がり15億ベリーとして何もかも不明な男…「unkuown」として世界政府及び海軍が探しているのだ。
それと同時にこの男がロジャーの実の兄である可能性も現在示唆されていた。数十年もの間消息不明であり生きているのか死んでいるのかも分からない存在。だがロジャー処刑のタイミングで現れた謎の男がジョーならば色々辻褄が合うような事が記事につらつらと書かれていた。その為、謎の男と一緒に「ゴールド・ジョー」としての手配書も懸賞金1億ベリーで出てしまったのである。
実際両方ジョーなのであるがそれを知るのは本人と話を聞いたロジャーとおでん、そしてあの場で会ったシャンクスだけだろう。そんな事を掻い摘んで話し両手に己の手配書ロジャーに見えるよう持っている。
『そもそもゴールドってなんだ? 私の名はゴール・Dなのだが人の名も正確に把握出来ない無能なのか?』
( 無能…そりゃワザとやってんだぜ兄貴… )
『そう言えばロジャーの名も途中から変わっていたな? やはり無能なのか…』
( いやだからな、それはワザとそうしてるんだって…だぁー声が出ねェの面倒くせェ!! )
『ん? なんだどうした? 喉渇いたか?』
( 違ェ! いや喉はちょっと渇いたが根本が違ェ!! )
『うーん…やはり会話が出来ないのは不便だね』
( そうだよな! 何とかしてくれ! )
『今のロジャーでは筆談も出来ないし…本当は自力で回復してもらおうと思っていたけれど…』
( Σおいマジか!? どんだけ時間かかんだそれ!! )
『でも仕方ないね。声だけは私が戻そう』
そう言ってジョーはロジャーの首元に手を置いて「
ジョーも突然むせたロジャーを気遣い、いつでも飲めるよう側に置いておいた水を飲ませた。入っていた全ての水を飲み干したロジャーは再度「ケホッ」とむせてから咳払いをする。
ようやく張り付いていた感覚が抜けたのか「ふぅ…」と一息ついた。
「助かったぜ…一年も話さねェと声でねェもんだな! わははははっ!」
『私にとったら笑い事ではないんだけどね…』
「ついでに体も何とかならねェか? 動かせねェのは不便過ぎるぜ」
『体の方は自力で何とかしてもらうよ』
「そこを何とか…」
『私に多大なる心労を与えた罰だと思いなさい』
「ゔ…それは本当にすまなかった…」
『本当にね。私の寿命が縮んでしまうから今後は隠し事はしないでもらいたいね』
「あー…それを言われると…」
『………まだ何か隠しているの?』
「怖ェよその顔! 話すからやめろその顔!!」
まだ話していない事があると知るとジョーはニッコリと笑っているのに笑っていない。その表情が昔から大の苦手だったロジャーは冷や汗を流しながら懇願する。だがジョーは「話の内容によるかな」とだけ言い、それを聞いたロジャーは「あ、終わった」と思う。
これから話す内容は100%ジョーが怒る内容なのだから。
「あー…そのな? 実はよ…俺ァ不治の病を患っててだな…」
『不治の…病…? 初耳だね?』
「Σいやだから…」
『正直に言ってごらん? 私に会いに来た時点で…どうだったんだい?ん?』
「…もう先がないのは分かってー…Σ!?」
『そうか…その時話せたのに私に敢えて黙っていたんだね…? それにレイリーくん達もグルになって黙っていたとは…どうしてくれようか…』
「ま、待ってくれ! アイツらは関係ねェ! それに言わなかったのにも理由が…!!」
『問答…無用…!!』
「えっ…ちょっ……!!」
ロジャーの「ギャア―――!!!」と言う叫びがこだまし猛獣達を震え上がらせた。余談だがこの時、レイリーやおでん、クロッカスなどジョーの病を知っていたメンバーも同時期に背筋が凍ったとか何とか。
ジョーに何をされたかは想像に任せるとしロジャーは顔色悪くグッタリとしている。普段であれば心配する所だが残念ながらこのような状態にしたのはジョー自身。故にこの場にロジャーを心配してくれる者は誰もいない。
怒り心頭なジョーはブツブツと何か言いながらも横になっているロジャーの体に触れ能力を使う。何処が悪くなっているのか分からないジョーは取り敢えず細胞と内臓を能力で完全回復させる。そんな事されていると気付いていないロジャーは相変わらずグターとしていた。
そんな時、何かを思い出したように「ルージュ!!」と声を上げる。体が動かせていたならきっと飛び起きていたに違いない程の声量だった。ジョーはジョーで「何事?」と言いたげな表情でロジャーを見下ろしている。
『突然なんだ…ルージュ、と言ったのかい?』
「そうだルージュだ!! 俺の女!」
…………………
………………………………
『………え?』
「Σそんなに俺に女がいるの不思議か?! いやこの際今はそんなこたァいい! ガキが生まれんだ!!」
『は? いや、ちょっと待って欲しい…色々情報が入り過ぎて理解が…』
「だから俺のガキが生まれんだ!!」
『ロジャーの…子供…? え、冗談だろう? ロジャーだぞ?』
「Σさっきから酷ェな! 俺に恨みあんのか?!」
『怒りならあるよ? あと私の中でロジャーの信頼度はゼロに等しい』
「うぐっ…黙ってたのは悪かったて! それにこの件は本当だ! 信じてくれ!!」
『それが本当だとして…私の甥か姪と言う事か…』
「そうだ!」
『いや待て、この歳では孫の方がしっくりこないか?』
「あー…そうかも…ってそうじゃねェ! 俺が言いてェのは恐らくルージュも海軍に探されてるって事だ!」
『 ! なるほど…海軍はロジャーと関わりを持った者を探し出すと言いたいんだね?』
「あぁ…だから一応生まれてくるガキはガープに頼んではある!」
『ガープって…確か海軍じゃなかったか?』
「アイツは信用できる! きっと守ってくれる!」
『と言うか生まれると言っているけどもう生まれているんじゃないか?』
「えっ…」
『ロジャーが生まれてくるのを知っているという事はルージュさん?が妊娠しているのを知っていた事になる。つまりはお前が海軍に捕まる前に知っていて、その後捕まり公開処刑となっていく訳だが…』
と説明するジョーの言葉に「所々棘がスゲェんだが…」と思わず突っ込むロジャー。そして「俺は捕まってねェ自首したんだ」とその言葉が聞こえているはずだがジョーはピクリと反応するもそのまま話しを進める
ロジャーが捕まったにせよ自首したにせよ投獄されていた期間があったはずである。ジョーはその時のことを把握できていなかったためどれくらい投獄されていたかは知らない。だがそれでも一週間かそこらは投獄されていたと考え、そこから処刑と繋がる。そして処刑後ジョーが助けたもののずっと眠ったままだった…一年もの間ずっと。
そうジョーはつらつらと語っていく。
初めこそジョーの話を真剣に聞いていたロジャーだったが仮定やら何やらが長く右から左に流れる。終いには「結論を言ってくれ!」と匙を投げるようにジョーに言う。それを聞いたジョーも一度口を閉じてから「だから」と前置きをしてから結論を言う。
『長く見積もってもルージュさんが身籠ってから今日まで20ヶ月ほど経ってる事になる。本来出産まで大体が10ヶ月弱なのだから約10ヶ月前にはもう生まれていてもおかしくないだろう』
「マジかよ!! ならルージュを探しに行かねェとな!!」
『探しに行く…? その体でか? 不可能だろう?』
「だから治してくれ頼む!」
『断る』
「Σなんでだ!!」
『さっきも言ったろう…これは罰だって。それにさっき聞き捨てならない事も言っていたね?』
「え゛……俺なんか言ったか…」
『捕まったんじゃなく自首したって? お前は馬鹿なのか? いや、それは今に始まった事ではないのだけど』
「ほんと俺に対して酷い言いようだぞ兄貴!! 流石に泣くぞ?!」
『勝手に泣けばいい』
「Σひでぇーな!」
ロジャーはルージュを探しに行くために喉の時のように治して欲しいと懇願するが彼は拒否。その理由が理由だけに何を言っても無駄なのはロジャーもひしひしと感じてはいる。感じてはいるのだが諦めることができないのも事実だった。
なんたって己と関係をもち尚且つ己の子供を産むのだから政府が黙っているはずがない。間違いなく己の足取りを追っている筈の海軍がルージュと子を見つけ出していたら殺されてしまうだろう。己が死ぬのは構わないが、それだけは絶対にロジャーは許せないのである。子を産むルージュにも生まれてきているだろう子供にもなんの罪もないのだから。
それはジョーだってもちろん分かってはいるし助けてやりたい気持ちもある。なんたって弟の嫁と甥か姪なのだから血縁関係があると言っても過言ではない。だがロジャーに行かせるわけにはいかないのだ。彼は処刑され死んだ事になっているのだから。
『諦めるんだロジャー。お前は行けないよ』
「絶対行ってやる! 兄貴に止められたって探しに行くぞ!!」
『だからその体では無理だ。ちゃんと動けるまで早くても半年…いや一年以上はかかるかも知れないぞ』
「んなもんやってみねェと分かんねェだろ!」
『……まぁ言うのは自由だからね…』
「有言実行する!」
『取り敢えずそのルージュさんはどこ出身なんだい?』
「あん? ルージュの出身?
『南の海か…どこの島とか分からないのか?』
「あー…確か…バテリラってとこだ」
『彼女の容姿は?』
「容姿? そりゃあ美人だぜ! ウェーブ掛かった長い髪で頬にそばかすが散ってんのがまた堪らなくてな!」
『惚気はいらないが…ふむ…分かった。私が行ってこよう』
「えっ!? ホントか!!」
『流石に放って置けないからね。ロジャー関連なら尚更』
そう言いながら出かける準備を進めるジョーにロジャーは「一言多いが助かる」と心底思う。ぶっちゃけジョーの言う通り筋肉の落ちた今の体では元に戻すのにどれだけ掛かるか分ったものではない。それでも一年以上もかけるつもりはないが、そんな長くルージュと子供を放っておく訳にもいかないのだ。だからこそ己の代わりに行ってくれると言うジョーには感謝しても仕切れないのである。
必要な物をカバンに詰め込み、ここ最近触れることのなかった剣を腰に下げて準備万端。
ただ動けもしないロジャー一人を置いて行っては飲食も出来ないため大変な事になる。そのため「致し方ない」と言いた気に飲食できる程度に体を回復しておくことに。ロジャーは多少動く事ができるようになった事に「おっ!」と嬉しそうにゆっくりと起き上がる。
「助かったぜ! それにしても動けるっていいな!」
『そりゃそうだろうね…。まぁこれで死にはしないだろうし…あと猛獣達をよろしく頼むよ』
「何すりゃいいんだ?」
『いや別に何もしなくてもいいんだけど苛めたりしないでくれれば』
「苛めねェよ! そもそも今の俺ならアイツらにも負けらァ! わっはっはっはっは!!」
『まぁ…確かに…無理はしないでくれよ? 何かあったら亀助さんを頼るといい』
「カメスケ? 誰か他にもいんのか?」
『居るといえば居るかな? そもそもこの島だと思ってたのが亀助さんだから』
「は…? 今俺たちが居るところがカメスケ?」
『うん。だから何かあったら頼るといいよ』
そう言いながらジョーは詳しい事は言わずにツリーハウスを出て行ってしまう。ロジャー的にはもっとちゃんと説明してほしかった思いだがジョーが急いでいる理由も分かる。そのため「ルージュを頼む!」とだけ言いジョーもその声に後ろ手で答えるだけだった。
ジョーが亀助の尾の方を只管に歩いていれば彼に気づいたウマヘビがザッパァと顔を出す。ウマヘビはジョーが荷物を持っているのを把握し出かけるのだとどこかウキウキした雰囲気である。
『ウマヘビ、今回は南の海まで行きたいんだが頼めるかい?』
「ブルヒヒン!」
『よし、じゃあ早速行こう』
「ヒヒン!」
ウマヘビの頭の上に乗り「よろしく」と言う意味を込めてポンポンと頭を叩けばひと鳴きしてから進みだす。
こうしてジョーは一人の女性を探しに南の海へと向かうのだった。
*
**
***
亀助を出てから数週間。
ウマヘビのお陰でカームベルトをスムーズに進めるため、あっという間に着く事ができた。島の雰囲気的にとても長閑な感じがするそこはジョーはとても過ごしやすそうだと思う。ただ今はのんびりしている暇はないため一先ず「ルージュ」という女性を探すことに。ジョーもおたずね者になってしまっているので顔を隠すように帽子をかぶっている。
そのため少々目立ってはいるのだが特にこの島の人は気にしないようだ。
誰かに聞くのが一番手っ取り早いのは分かっているのだが彼女はひっそりと過ごしているのではないかとジョーは思う。ロジャーと関わりがあると言うだけで政府に探されるのだからジョーならそうすると思うのだ。だからと言って闇雲に探しても意味はないのも分かっている。
( どうする…どうやって探す…? )
取り敢えず街中を歩いてみているのだが明らかにジョーは浮いてしまっていて居心地が悪い。子供を産むのに郊外へ出る事はあるか?やはり街中のどこかで産むのかなどなど…。考えても埒のあかない考えが次から次へと思い浮かんでは消えるのを繰り返している。
そんな中ジョーの視界に入ったのは黒髪に白髪混じりの大きな体をどこか小さくして歩く姿。それが嫌に目に入り訝しげにしながらも怪しまれない程度の歩調で隣を通り過ぎたのだが、その男性が大事そうに抱えて歩く赤ん坊に思わず目がいってしまう。男性は赤ん坊の方にばかり気を取られておりジョーの視線には気づいていないようである。
「おぎゃあー! おぎゃあー!」
「おーよしよし! 泣くでないぞォ~エース~」
( あの赤ん坊…もしや…いやでも時期的におかしいか…? )
別に赤ん坊が産まれるのが珍しいわけでもないためジョーは気にしつつもルージュを探して歩く。この時、ジョーがガープの顔を知っていればこの先の未来が少し変わっていたかもしれない。ジョーは「ゲンコツのガープ」と言う名を知っていてもロジャーの敵だったことから顔を全く覚えていなかったのだ。
気を取り直して探し続けること数十分…ジョーはようやくロジャーから聞いた特徴と似た女性を見つける事ができた。しかしその女性は既に亡くなってしまっており、さすがのジョーも動揺を隠せなかった。
近場にいた人にどうしたのか聞けば身篭っていた子を産み落としたらそのまま…と言うことらしい。
確かに彼女を見つけられた…だがこんな結果だなんて誰が思おう?誰も思わなかったはずだ。ジョーはもちろんのことロジャーだってルージュが出産で亡くなってしまうだなんて思っていないだろう。このままルージュをここに置いていくのも気が引けてしまいジョーはロジャーの元へ連れて行ってあげようと考えた。
あとはルージュが産んだはずの子供がどこにいるのか再度その人に問えば大柄の男性が連れて行ったとのこと。それを聞いて「まさかさっきの赤ん坊がそうだったのか?!」とジョーは急いで来た道を戻る。
しかし通りすがってからそれなりに時間が経っていた事もあり、その男性も赤ん坊も既にいない。
『くそっ…しくじった…!』
血が滲みそうなほど握り拳を作ってから深く息を吐き出し眠っているルージュの元へ戻る。そして色々教えてくれた人に「身内のためこちらで弔う」とだけ行ってルージュを連れ出すのだった。
ウマヘビの頭に乗ってルージュに潮風が当たり過ぎないよう自分の着ていたシャツを頭から被せている。ジョーはこの後ロジャーになんて言えばいいのかとグルグルと色々考えているのだがいい案は浮かばない。そもそも腕の中にいるルージュが事実を物語っており言い訳もクソもないのだが。
バテリラを出てから数日で亀助の元へ戻ってこれたのはいい…いいがやはり気が進まないジョー。
ウマヘビから降りてゆっくりとした足取りでルージュを抱えて生活拠点まで歩く。ゆっくりと歩いている筈なのだが着きたくないと思うことはすぐ着いてしまうのは何故だろうとジョーは思う。なんと言うことかロジャーは自力で歩けるほどになっているようで大虎と戯れて遊んでいる。
『ロジャー…、』
「 ! 兄貴戻った、か…。腕の中の…ルージュか?」
『そうだと思う…。お前の言った特徴と合っているから…』
そうジョーが頷きながら満足に動けないロジャーのそばへと寄りルージュにかけていたシャツを取り見せる。ルージュを見たロジャーは目を見開きそして悲しそうに目を閉じてから「すまねェ」とか細く呟く。二人きりにしてあげようとロジャーの腕の中にルージュを渡しジョーはその場を離れて行った。
ジョーは一人亀助の頭の上に行き、そこに腰を下ろして水平線をただ黙って見つめる。そんなジョーに気づいている亀助もそっとしておいた方がいいのは分かるが、あえて声を掛けた。
《 どうしたのだ辛気臭い空気を纏いおって 》
『弟が目覚めたのは亀助さんも騒々しいので分かってると思うけど…ちょっと色々あって…』
《 あの小僧か! ワシの事を亀ジジイと言いよったわ! 》
『それは…申し訳ない…。言葉遣いがなってなくて…』
《 フォッフォッフォッ!別に怒っておりゃあせん! 其方はどうしたのだ? 弟が目覚めたのだろう?喜ばんか 》
『もちろん嬉しいですよ? 待ちに待ったんですから…ただ弟には愛した女性がいたんです。その人の事を聞いて動けない弟の代わりに私が探しに行って来たのですが…』
《 おらなんだか… 》
『いえ居たには居ました。ただ…何があったのか分かりませんが私が行った時には亡くなっていたんです』
《 ! そうか…そりゃ辛かったのォ… 》
『私はいいんですよ…それより辛いのはロジャーの方です…きっと自分を責めてる』
《 小僧がなぜ己を責める? 》
『…亀助さんは海賊王って聞いたことあります?』
《 ワシが眠っている間に世界一周した者のことじゃろう? 》
『はい。それが弟のロジャーです』
《 なんと! そりゃたまげた! だから動物達が王が蘇ったとか何とか言っておったのか! 》
『んん? その辺は私には分かり兼ねますが…ロジャーは海賊王として処刑されて私が生かした。世界政府はロジャーの身の回りを洗い出し、親しい者を片っぱしからきれいにして行っているようです。私も近親者として探されていますが…まぁ亀助さんのお陰で隠れ仰せていますけど』
《 そうであったのか…難儀な兄弟じゃのォ… 》
ジョーの話に亀助は時には相槌をしそしてただただ聞きに徹しておりジョーは心底ありがたく思う。
ロジャーは自分の所為だとずっと己の生ある限り責める続けるのだろう。それを分かっていて何もしないほどジョーも鬼ではないし、そんなロジャーを見たいとも思わない。
ただジョーは生かしたいから生かすと言うふうに私利私欲でこの能力を奮っていいのか悩んでいた。たまたま手にした力で、たまたま使い勝手が良くて、たまたま生き還らすことが出来ただけ。人理の理をことごとく覆すのは本当にいいことなのか…ジョーには判断のしようがない。ただ言えるのはロジャーを生き還らせて後悔は全くないと言うこと。
そこまで考えてジョーは「それなら悩む必要ないじゃないか」と思い至る。身に宿る能力はすでに己の一部と同じで、それを使って悔いのない選択をして何が悪いのかと。
『亀助さんありがとう。心が決まりました』
《 フォッフォッフォッ! ワシは何もしておらぬよ、人間の人生は短い…悔いのないようにのォ 》
『はい その通りですね。悔いのないよう施してきます!』
そう言ってジョーは亀助の頭から甲羅の方へ走って行きガサガサと雑木林を抜けロジャーの元へ。ロジャーは先ほどと変わらぬ姿勢でルージュを腕に抱いて悲しみに暮れているようだ。
『そんな顔お前に似合わないぞ』
「 ! …はは…流石にこりゃあキツい…」
『あぁ…私もだよ…だから彼女もお前のように…
「 !! 」
『……どうだ? 彼女の体は暖かくなってきているか?』
「あ…あぁ!! 顔色も良くなって…! ありがとう兄貴! 本当に感謝する…!!」
『いいんだ…彼女は私にとっても家族だろう?』
「 ! おう!」
ジョーが能力を使うと、みるみるうちに冷たかった体が暖かくなっていき肌の色も変わった。青白かった顔と唇が赤みをさしていき胸もゆっくりと上下し始め呼吸しているのが分かる。それを見届けてからジョーは「はぁー…」と深いため息をついて、片膝ついていたのをドサっと尻をつけた。
『ロジャーの時もそうだったが恐らく目を覚ますまでにそれなりの時間がかかるから…身の回りの世話は頼むよ』
「あぁ任せてくれ! ところでよ…その場にいたのはルージュだけだったのか?」
『 ! …ベッドに寝かされていたのは彼女だけだった…けど…すまない。しくじってしまった』
そういうジョーにロジャーは「何言ってんだ?」と言いたげな表情をしながら事の経緯を聞く姿勢をとった。
「しくじったって…どう言う意味だ?」
『子供をガープと言う海兵に任せたと言っていたろう?』
「あぁ、アイツなら守ってくれると思ってな」
『恐らくその男が赤ん坊を連れて行ったの見たんだ…まさかその男がガープだとは気づかずに…私の失態だ…!』
「いや ちょっと待ってくれ。ジョーはガープの顔知らねェのか?」
『その知ってて当たり前みたいな言い方はなんだ? 海兵の顔なんて覚えているわけないだろう』
「いやいやいや! アイツ結構有名だぞ?! 知らない方があり得ねェよ!」
『お前達の敵だっただろうが。別に知る必要はない』
「わははははっ! そんな理由か!?」
『悪いか? ってそうじゃない。その男からお前達の子を…』
「あぁその事なら気にしなくていいぜ! ガープなら約束を守ってくれるさ!」
『ロジャーがそう言うならいいが…子供は両親といた方が幸せじゃないか?』
「今の俺たちじゃあ世界を見せてやれねェ。それならガープの元で伸び伸び暮らした方がいい!」
『……そうか。お前らしいよ』
「自由が一番だからな! ところでよ、ガキは男だったか? 女だったか?」
『あー…見た目じゃ判断は…ただ…そう、確かエースと呼んでいたな…』
「エースか! なら男だな! きっと俺に似て強くていい男になるぜ! わはははははっ!!」
そう高らかに笑うロジャーを見て本当に気にしていないのかとジョーは思う。ロジャーがそう言うのならば己がいつ迄もうじうじとしている訳にもいかないと気持ちを切り替えるジョー。ロジャーの言う息子のエースがいい男になるかどうかは別として、きっと強い子に育つのだろうとは思う。
両親とは一緒にいられる訳ではないが、それでも逆境を乗り越えて強く逞しく生き抜くと。ただいつかは家族三人で会えたらいいとジョーは心の中でただただ思った。
それと同時にジョーはある疑問も抱える事となる。
それは何故この時期にロジャーの息子…エースが生まれたのかという事だ。話を聞く限りじゃ既に臨月を迎え出産しているはずで生まれて数ヶ月の赤ん坊のはず。それなのにジョーが見て聞いたのは生まれたばかりの赤ん坊で…疑問が残ったのである。その事を考えたところで答えが出ないのも分かっているため頭の片隅にしまっておく事にした。
この後、何時迄もルージュを腕に抱えておくわけにも行かずロジャーの寝ていたツリーハウスに寝かせる。
一先ずロジャーもそこで寝起きしてもらう事にしジョーは適当な場所で過ごす事となる。初めこそそれをよしとしなかったロジャーだが「彼女の世話するんだろ?」と言うジョーの言葉に折れた。
取り敢えずよく読む本だけそこから引っ張り出してきてジョーは大虎を背に読書を開始した…否、しようとした。ロジャーがツリーハウスから出てきてゆっくりとした足取りで兄の前に立ち一言。
「俺のリハビリを手伝ってくれ!」
ドンッ!と効果音がつきそうな程の仁王立ちでそう言うロジャーにジョーはキョトンと目を瞬く。筋力が著しく低下して動くのもままならないのだからリハビリをするのは当然である。ただジョー的には体を戻さなかったのは不治の病を黙っていたり何だりした罰だ。そう言ったはずなのだが己にリハビリを手伝って欲しいと言うロジャーに一瞬気が抜けたのである。
ジョーの背もたれと化していた大虎はそんな会話を聞いて理解し「コイツ本気か?!」と言いたげな表情だ。しかしそれに気付いていないロジャーは再度「リハビリを手伝ってくれ!」と頼み込む。
『……私が手伝う道理はないよ』
「なんでたよ! いいじゃねェか頼むぜ!」
『なぜ私が完全に戻さなかったか忘れたのか?』
「俺への罰だろ? 分かってんぜそれは! リハビリくらい手伝ってくれてもいいじゃねェか!」
『リハビリくらい…? どうやらお前はリハビリを甘く見ているらしい』
「え”…( 嫌な予感… )」
『いいだろう。手伝うよリハビリ』
「あー…いや、やっぱり俺一人で…」
『遠慮するな。みっちりリハビリしてやろう』
「Σ本気でイヤな予感しかしねェ…!!」
『さて…始めようか』
「ちょっと待っ……!!」
「ギャアー!!」と言う数日前にも上がったロジャーの叫びがこだます事となるのだった。
*
**
***
地獄のリハビリが始まってから数時間…。
ようやく休憩が取れたロジャーは「リハビリの鬼かよ」と内心思っていた。もちろん口にしたら後が怖いので絶対声に出すことはないのだが。
ジョーの施すリハビリは最初のうちは真面であったのだが時間が経つにつれどんどん怪しくなっていった。最終的にロジャーはジョーから必死に逃げると言うおかしな状況に陥ったのである。
ジョーのリハビリから逃げると言う訳ではなくリハビリの一環として逃げていたのである。謂わば、普段猛獣達が強制的に行っている地獄の鬼ごっこをする羽目になったのだ。初めこそ「ただの鬼ごとか」と思っていたのだがそれが間違いだったと直ぐに思い知る。
本来鬼ごっことは追いかける鬼が逃げている者をタッチして鬼が変わる遊びだ。しかしジョーがやる鬼ごっこはずっとジョーが鬼であり、タッチする代わりに拳が飛んでくる。こんな満身創痍な体でなければロジャーも「面白ェルールだな!」と楽しんだ事だろう。
しかし今のロジャーに楽しむ程の余裕はなくジョーの覇気付きの拳を避けて逃げる事が精一杯だった。ある意味今の体でジョーの拳を避けられる事自体凄いのだが必死過ぎてロジャーは分かっていない。なんたってジョーはそれなりに本気で拳を振り下ろしているのだから。その本気さに「俺を殺す気か?!」とロジャーが言うもジョーはなんのその。「安心しろ、死んだらまた蘇生してあげるから」と恐ろしい程の笑顔で言ってのけたのだ。
後にその時のジョーほど恐ろしいものはないとロジャーは語る。
そんなこんなありロジャーは「ゼェハァ」と息を切らせながら座り込んでいる。逆にジョーはケロリとしていて疲れなど知らんと言いたげなほど涼しい顔をしている。
「これリハビリなんだよな…?」
『もちろん』
「あれがか?! 当たってたら死んでんぞ俺!!」
『結果的に無事なのだからいいだろう? それに今回で大分動けるようになったんじゃないか?』
「言われてみりゃそうだが…それにしてもやり方ってもんがだなァ…」
『危機的状況の方が何倍も動きが良くなるものだよ』
「確かに断然動けるようにはなったけどよ…死ぬかもって思ったの久し振りだぜ?」
『何を言ってるんだ? 実際一度死んでるのだからどうって事ないだろう?』
「……ジョー、結構根に持つタイプか…」
『なんだ知らなかったのか? 私はかなり根に持つ』
「マジかよ面倒くせェ!!」
『面倒くさいとはなんだ失礼だね全く』
ロジャーの言葉にムッとしたジョーはジトリとグッタリ座っている弟を見る。
兄が根に持つタイプだなんて共に育ってきたのに初めて知ったロジャーはこの先ずっと言われ続けるのではないかと思った。そのため思わず「面倒くさい」と言う心の声が漏れ出てしまったのである。それを面白く思わないジョーは口をへの字に曲げて不機嫌を表しているのだが怖くはない。なんたってジョーの本当の怖さを既に身をもって知っているのだら。
不機嫌そうにしていたジョーなのだが「そう言えば」と何かを思い出したような顔をする。そしてついさっきまでの不機嫌はどうしたと突っ込みたくなる程平然とロジャーを見た。
そんな兄を「切り替え早ェな…」と内心思うロジャーだが今度は口にしなかった。
『ロジャーがまだ眠っている時にね、おでんくんの所に行ったんだよ』
「おでんとこってワノ国だろ? まさか新世界まで行ったのか?!」
『うん。ワノ国は鎖国してるって言っていたからロジャーを匿ってもらおうと思ってね』
「そうだったのか…だがワノ国にいねェってことはやめたって事だよな? 何かあったのか?」
『それがおでんくんが旅に出ている間に彼の父親が亡くなってしまったらしくてね。本来後継者はおでんくんなんだけど居なかったから代わりの者が将軍に就いたらしいんだ』
「それならおでんが戻ったんなら将軍の座を返すべきだろ」
『そうなんだけどね…。簡単に言えば乗っ取られた訳だけど、そいつのバックにあー…なんて言ったかな…タイ…』
「 ? バックに誰か付いてんのか」
『そうなんだけど…なんだっけね…? タイトー…? なんか違う気が…カイトー?』
「もしかしてカイドウの事か?」
『あぁそうそうカイドウ…そうカイドウ。そいつが居てと言う感じではなかったけど手が出せないようだったよ』
「まぁおでんの力ならカイドウに引けを取らないだろうしな…。つかよ兄貴相変わらず人の顔も名前も覚えなさ過ぎじゃねェか?」
『そんな事はないだろう? レイリーくん達は覚えているよ』
「そりゃ俺の船に乗ってたからだろ…」
『………そんな事はないよ?』
( 今の間は絶対そんな事あるな )
『私の事はいいんだ。ちょっとおでんくんが気になってね…』
「そんな気になんなら残りゃ良かったじゃねェか」
『そのつもりで何かあれば協力するって言ったんだけどね…断られた』
そう言って肩を竦めるジョーを見てロジャーは「おでんが断るって事はそんなに心配しないでも…」と思う。おでんは自分一人で突っ走って行く事が殆どだが、だからといって馬鹿ってわけではない。まぁ周りからは随分とバカ殿だのなんだの言われていたらしいが…それでも周りをしっかりと見ている。
だからこそジョーの申し出を断ったと言うことは自分たちでなんとか出来ると考えていると言うことだろう。それ以外にも己の保護を求めて行ったと兄が言っていたことから、その辺も配慮されたのだろうがとロジャーは考えた。
『まぁ何かあったら連絡するように電伝虫を預けて来たのだけど』
「電伝虫? そういやツリーハウスに色んな電伝虫いたな? コレクションかと思ったぜ」
『そんなことすると思うか?』
「だってよ、白い電伝虫なんかスゲェ貴重じゃねェのか?」
『あー…あの子は確かに入手するのに手間取ったよ…なんせ盗聴防止用の子だからね』
「へぇ…誰かに盗聴される予定でもあるのか?」
『まさか! 念には念を、だよ』
「ふぅーん…まぁなんにせよ、おでんに電伝虫渡してあんなら平気だろ」
『ならいいけど…』
なんとも煮え切らない言い方であるがジョーもこれ以上とやかく言ったところで意味ないことを理解している。そのため、おでんから連絡があれば何がなんでもすっ飛んで行こうと考えいている。ともあれ、これ以上おでんの事で話すことはなくなったため「さぁやろうか」とジョーが再開を促す。その言葉にロジャーは「まだやるのか?!」と驚きの顔を見せるのだがジョーはとっても笑顔である。
そんな顔を見せられては逆らえるはずもなく…ロジャーは渋々立ち上がり、この後もジョーの地獄のリハビリを受けるのだった。
( ぎゃあっ―――!! )
( まだまだァ!! もっとキビキビ動けロジャー!! )
( 動けるかァ!! っぶねェ!? )
( そら! どんどん行くぞ…!! )
( 待った待った!! )
( 待ったなし…!! )
( どわっ!? 今の当たったら死んでるぞ?! )
( かもな! )
( 兄貴は手加減を覚えろよ…!!! )
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