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ロジャーがジョーに会いに来てから一年の月日が経った時、新聞を大いに賑わせ世界を震撼させた。
ついに最果ての島…後に「ラフテル」と呼ばれるようになる島へと到達し、この世界の全てを見てきたのだ。その事は直ぐに全世界へと知れ渡り、ロジャーはいつの間にか「海賊王」と呼ばれた。そして政府は彼の名を「ゴール・D・ロジャー」ではなく「ゴールド・ロジャー」として手配書を再発行したのである。
その新聞が発行されてから数日遅れて知るところとなったジョーは「やり遂げたか」と嬉しそうに笑った。派手好きなロジャーの事だから「海賊王」と呼ばれる事にたいそう喜んでいるのだろうとジョーは思う。今どこの海を渡っているのかなど知る由もないが、この先もロジャーらしく生きて欲しいとジョーは思うのだった。
一方のロジャー海賊団は船長からの話があると甲板に集まっていた。
そしてロジャーから発せられた「ロジャー海賊団は解散する!」と言う言葉に船員達は涙を流す。そして己が一番最初に船を降りることも告げ、その後レイリーに何かを話しレイリーは珍しく涙を流した。
海賊王となったロジャーに挑む海賊は増え海軍もまたロジャーを捕まえようと躍起になった。ロジャーを唯一追い詰める事のできるガープやセンゴクと言った見知ったメンツが彼を追う。しかし悉く躱されてしまいロジャー達は海底を進みグランドライン前半の海へと戻って来ていた。レイリーやおでん、クロッカスなどから兄であるジョーに会わなくていいのかと問われたが答えは否。
ロジャー曰く「今会えばきっと兄貴にバレる」と言うことであり会いに行くのを拒否したのだ。
きっと新聞で己の活躍を見てくれていると思っているロジャーはそれ以上語る必要はないと。そうしてロジャーは人知れず海軍のいない島で大量の薬と共に下船し仲間達と笑顔で別れたのだった。
*
**
***
それから一年が経ったある日。
ロジャーが海軍に捕縛されロジャーの故郷であるローグタウンで公開処刑が行われる事が発表された。捕縛とは言うものの本当はロジャーが自首したのだが、それを知るのはその前に会っていたレイリーだけだろう。もしかしたらロジャーを知る人ならおおよその予想を立てているかもしれないが。海賊王が捕まった事もそうだが、それ以上に公開処刑となることが世界中から注目を集めた。
そんな中そのことをまだ知らないのが完全に孤立しているロジャーの兄・ジョーその人。場所が場所だけにニュースクーも近寄り難いらしく週に一度来てくれればいい方だ。ジョーは変わらぬ日々を過ごしていたのだが今回ニュースクーが持ってきた新聞を見て絶句する事となる。
海賊王ゴールド・ロジャーの公開処刑が決定
そう大々的に載せられた見出しを読んだ瞬間ジョーから殺気と共に覇気が撒き散らされた。新聞を握る手に力が篭りグシャッと握りつぶされたそれは次読む時とても苦労するだろう。読む予定があればの話だが。
ジョーが読んだその新聞が発行されたのは今より数日前のものであり今日まさにこれから刑が執行される。そんな事させる訳にはいかないとジョーは急ぎ出かける準備を進め故郷であるローグタウンへ。
『絶対に…死なせはしないぞロジャー…!!』
ジョーにしてはとても珍しく鬼気迫る凄みがありウマヘビもビビったが彼を乗せ海を全速力で進むのだった。
ジョーがロジャーの公開処刑の事を知った時から暫し遡った時分。
ローグタウンには海賊王の最期を見ようと多くの人が集まっていた。その中を堂々とした足取りで処刑台までを歩くロジャーの顔には笑みさえ浮かんでいる。この場にはロジャー海賊団の一員だった者が多数おり、バギーやシャンクスも涙を流しながらその場にいた。そして後に名を轟かせる事となる若き青年達の姿もそこにはあった。
そして誰もが気になっているだろう事はロジャーが見つけた「ひとつなぎの大秘宝」の有無である。その言葉を聞いたロジャーは笑いながら「俺の財宝か?」とその質問に答えた。
「欲しけりゃくれてやる! 探せ…この世の全てをそこに置いてきた!!」
そうロジャーが言った瞬間、処刑執行人の持っていた槍がロジャーの体へと深々と突き刺さった。その時もロジャーの顔から笑顔が消える事はなくロジャーの最後の一言で「大海賊時代」の幕開けとなる。
処刑が滞りなく行われていた時、弟を助けにきたジョーもまたローグタウンへ到着していた。ロジャーの最期の言葉を辛うじて聞き取れた距離であったがロジャーらしい最期だったとも思う。ただだからといって処刑される意味が分からないジョーは真っすぐに処刑台へと歩いていく。
ロジャーの最期の言葉を聞いて誰もが海に駆り立てられ我先にと海へ駆ける者たちの波に逆らう姿はある意味目立つ。そんな男に気づいたのは麦わら帽子を被り涙を流すシャンクスでありローブを深く被っているその人に既視感を覚えた。思わずじっと見てしまっているシャンクスに気づいたジョーは迷う事なく少年に近づきポンと肩を叩く。
『行くがいい…あとは私に任せなさい』
「 !! 」
そう言ったジョーの言葉と聞き覚えのある声にシャンクスは目を見開き通り過ぎて行った彼の背を見た。その後ろ姿が今まで見て来ていたロジャーの姿と重なりシャンクスの目には更に涙が浮かび上がる。安心感のある背を目に焼き付けてからシャンクスは言われた通りその場を離れた。
ジョーは足早に…だがどこか落ち着いた足取りで処刑台へと着実に近づいていた。海賊王の処刑ということでかなりの数の海軍が配備されており、ここからロジャーを奪取するのは中々に難しい。
しかしジョーにはそれが視界に入っていないと言うように、ただただロジャーの遺体を降ろしている人間を見ている。その扱い方がとても雑でジョーの中に沸々と怒りが込み上げていくのと同時にビリッと覇気が漏れる。その覇気に気づいた力ある海兵はローブを身につけ顔の見えない不審な男に気づく。直ぐ上に報告と臨戦態勢を取らねばならないと動こうとしたが、ジョーの方が早かった。
『
瞬時にその海兵に近づいたかと思えば顔面に手を当てそう呟くと海兵は瞳から生気が抜けその場に膝から
己以外この場で動いている者がいないのを確認してからジョーは地に寝かされているロジャーの側へ。ロジャーは口元に笑みを携えたまま「悔いはない」と言いた気に静かに眠っている。それを見てキュッと眉間に皺を寄せ「馬鹿者が」と悪態を吐いてからガバッとロジャーを担ぎ上げその場を後にした。
後にこの事件が広がるかと思われたが、こんな失態を知られる訳に行かない政府が揉み消したのだった。
直ぐにウマヘビに乗って己の住む亀の元へ帰ってきたジョーは追手が来ないか少々気にしていた。処刑台のそばに居てロジャーの遺体を動かしていた者達は全員無力化してある。だが他に見ているものがいたら後を尾けられている可能性を捨てきれない。
ロジャーをツリーハウスの一室に寝かせてからウマヘビに近海に軍艦がいないか確認してくるよう頼む。それを理解したのかウマヘビは一言「ブルヒヒン!」と鳴いてから海底へ潜って行った。それを見届けてからロジャーの元へ戻り痛々しい傷を見て再び険しい顔をしてから弟の体に触れる。
『戻って来い馬鹿者……
そうジョーが口にして能力を使うと傷が見る見るうちに消えていき生気のなかった顔に色が戻る。冷たくなっていた体も少しずつではあるが暖かくなって来て首元で脈を取ればしっかり感じられた。そこまでチェックしてようやくジョーは詰まっていた息を「はぁ~…」と深く吐き出した。
リスやサル、鳥などの小動物たちも見守るように窓から中を覗いておりロジャーの様子を見て近づいくる。先にジョーに擦り寄り撫でて貰ってから寝ているロジャーの方へ移動し近くで寝る姿勢をとる動物達。それを見たジョーは「温めてくれているのか?」と小さく笑みを溢しながら呟き小動物達をもう一度撫でた。次から次へと集まってきた動物達で埋もれるように寝ているロジャーに思わず苦笑いが漏れる。
『この子達にも心配かけるとは…早く目を覚ませロジャー』
そう言ってからジョーはツリーハウスから出て下で待機していた大動物達の元へ。そしてジョーは大虎の上へ登り疲れた体を癒すようにそこで横になり眠りに落ちるのだった。
*
**
***
それからと言うものジョーは甲斐甲斐しく未だに眠り続けているロジャーの身の周りの世話をしている。少し上体を起こして水や流動食を飲ませたり、体をタオルで拭いたり、筋肉が衰えすぎない様に動かしたり…。様々なサポートをして日々を過ごすと同時に追っての有無の確認もしている。
新聞を持って来たニュースクーに「毎日持って来て欲しい」と脅…頼み今や毎日読めている。その新聞で情報収集をしているのだがロジャーの処刑は滞りなく終えたと書かれていた。何者かに連れ去られたやらそう言う事は政府や海軍の沽券に関わる為書かれる事はない。しかし新たに発行された手配書の何者かの懸賞金額が初めてにしてはかなり高額だった。
写真がないからか手書きで描かれたそれを見たジョーは「これ私か?」とだけ思った。一応ジョーを見た海軍は無力化して来たが、その場には一般人も多数いて、何よりローグタウンは彼らの故郷であるわけで…そこから漏れたようだ。ただジョーは今までロジャーやレイリーと言った大海賊の懸賞額を見ていた為少々感覚がズレている。ジョーの手元に手配書の額は10億ベリーであり、初めての手配書で出される額ではない。
それもその筈で海賊王の処刑を終えたのち警備軍を無力化しその遺体を持って行かれてしまったのだから。記事には一体何者なのかと言う事が書かれ載っているが、この真相を知るのはジョーのみぞ知る。否…あの時遭遇したシャンクスもこの手配書の人物がジョーであると分かっているかもしれない。
とまぁ色々情報を集めているとジョーを躍起になって探しているのが分かるのである。
『…このままここに居ては遅かれ早かれ見つかるかな…。何処か隠れるのに最適な場所は…』
そう眠るロジャーの傍に腰掛けながら「うんうん」考えてふと浮かび上がったのが「ワノ国」だった。
皆でこの島に会いに来てくれた時に出会い頭色々あった和装をした男、おでんの故郷。酒盛りしている時におでんが話しているのを聞いていたのだ…今はまだワノ国は鎖国国家なのだと。いつか来たる新たな王の為にワノ国も開国しなければならないと熱く語っていたおでんを鮮明に覚えていた。
『彼ならば…匿ってくれるかも』
そうと決まればジョーはワノ国を目指そうと心に決め、この島を一時的に出る準備を始める。ただジョーは知らない…今やワノ国もおでんが話していた様な平和な国では無くなっている事に。
移動するにあたってジョーにも大きな不安があり、それは万が一ロジャーを海に落としてしまった場合だジョーは能力者のため泳ぐ事が出来ないのでそうなったら助け出す事は不可能だ。最悪心中することになるかもしれない。
そう悶々と考えながら準備をしている時ジョーは一つのある可能性を思いつく。それは今住んでいるこの亀ごと移動できないかと思ったのである。今までこの亀が生きているのか既に亡くなっているのか確かめた事はない。確かめずとも不自由なく過ごして来れたのだからそれも当然だろう。
『けれど…問題もある…。能力を使うにしても生きてるのと死んでるのでは使い方が違う…うーん…』
更なる壁にぶち当たったジョーは再び頭を悩ませるも一先ず確認してみるのが先決だと考えた。思い立ったが吉日、準備していた手を止めて早速亀の頭部であろう部分へ。これだけ大きければ首から頭部までの距離もそれなりにある。
そもそも首を伸ばしっぱなしな時点で「死んでいるのでは…」とジョーは今更思う。頭部に着いてトントンと叩いてみてもまぁ反応が返ってくるはずもなく…少々気は進まないが確認する為に仕方ないと手に覇気を纏わせ少し強めに頭部を殴る。ドンッ!と頭の先から尾の先まで響き渡る衝撃にココに住む動物達が騒ぎ出す。そんな動物達に内心「申し訳ない」と思いながらも亀の反応を待った。
その時
ゴゴゴゴゴゴッと今まで沈黙を保っていた亀が動き出し海に浸かっていた顔の半分が全て露わになる。まさか本当に生きているとは思っていなかったジョーは心底驚きながら亀の様子を伺う。
そしてジョーは更に驚く事となる。
《 ここは…どこじゃあ… 》
( 喋った…のか…?! )
《 ワシの頭に何か当たったような…気のせいかのォ…ワシも老いたしのォ… 》
『あー…申し訳ないのだけれど私の声は聞こえるだろうか?』
《 それにしても長い事寝とった気がするのォ。フォッフォッフォッ 》
( 駄目だ聞こえてない… )
《 さて…もう一眠りでもしよう 》
『えっ?! あの‼ 話をしたいのだが…! 聞こえているだろうか‼』
《 んん~? 誰じゃワシの頭の上で騒いどるのは… 》
『貴方の甲羅の上に住まさせてもらってるジョーと言うものです!少し話がしたくて寝ている所少々手荒な方法を用いて申し訳ない!』
《 ワシを起こした? フォッフォッフォッ! それはまた異な事をする人間もいたもんだのォ!まるでミズタキの様なやっこじゃのォ! 良かろう其方の話し聞こうではないか! 》
『(ミズタキ…?)実は最近追われる身になりまして身を隠したいと思っているんです。そこで思いついたのがワノ国と言う場所なのですが、ここからだとかなり離れていて…貴方に連れて行って欲しいのです』
《 ワノ国が遠いとな? ふむ…其方…ジョーと言ったか。ここは一体どこかのォ? 》
『あー…正直私もよく…ただグランドラインの前半の海だと言う事だけです』
《 む?! ここは新世界ではないのか!? 》
『え、はい…違いますけど…』
《 どうやらワシは長い事流されていたようだのォ…フォッフォッフォッ! 》
そんな事を言いながら笑う亀に言葉を失うジョーは仕方ないだろう。「フォッフォッ」と笑い続ける亀に対してジョーはどう反応して良いのか困った。言葉から察するにこの亀は元々新世界に住んでいたのは窺える。
ただ長い事流されたとはどう言う事なのか、この海に詳しくないジョーには理解しかねた。その為何も言えずに黙っていると亀の方からここに居る事になっただろう経緯を話し始めた。
《 いつだったか魚人島に用があって行ったのだが…その後から記憶がない故にそこで眠ったのだろうなァ 》
『え、あー…そうなんですね…』
《 うむ、ワシはのォ元々ワノ国近海に住んでおったのだよ 》
『えっ?!』
《 その国に住む大将軍が奇怪な男でなァ。おぬしの様にワシの背に住んだ事があったわい 》
『さっき言っていたミズタキという方ですか?』
《 そうじゃ。奴め妻も子供もおったくせにワシの背に長い事居座りおったわ! フォッフォッフォッ! 》
『なんだか…以前聞いた話と似た展開…』
《 其方の周りにもその様な輩がおるか。幾年経とうとも変わらぬものよのォ 》
『彼もまたワノ国出身らしいです。世界を見てみたいと海賊船に乗ったそうで…』
《 ほほう? もしやその者スキヤキという名ではないか? 》
『いえ彼はおでんと言う名ですが…』
《 ふぅむそうか…ミズタキの息子ではなんだか… 》
そう言う亀にジョーは内心「おでんくんはミズタキと言う方の孫か?」と思う。なんとなく話を聞く限り行動がよく似ている様な気がするのである。破天荒と言うか何というか…たった一日の間柄だが何事にも真っ直ぐな人間なのはよく分かった。そんな性格はおでんの祖父から受け継がれているのではないかと思ったのである。
ともあれ話が随分と逸れてしまったが元々ワノ国近海に住んでいた亀はそこに行く事を了承した。新世界にあるワノ国に行くには海底にある魚人島を通って行くのだと説明を受けるジョー。まぁ亀が大き過ぎて魚人島内に入る事は出来ないのだが魚人島の横を通り抜けて新世界へと入る事になる。その話を聞いたジョーは悪魔の実の能力者であり怪我をして動けぬ弟がいる事も話した。
それを聞いた亀…名を亀助と言うらしい彼は笑いながら「問題ない」と言った。海底に潜る時点でジョー的には大いに問題大ありなのだが亀助はなんのその…。大丈夫の一点張りでジョーが心底不安に思ったのはご察し頂けるだろう。
『本当に大丈夫なんですか…』
《 其方も疑い深い奴よのォ。ワシに任せておくといい 》
『はぁ…分かりました。亀助さんを信じます…。ただ私も微力ながら手助けを』
《 ん? 一体なにをー… 》
『
《 お、おぉ? なんだか力が漲ってくるぞ! 》
『亀助さんの身体年齢を若返らせておきました』
《 それが其方の食した悪魔の実の能力か! 礼を言うぞジョー! では向かうとしよう 》
そう言った亀助はゆっくり…だが着実に動き出した。
ジョーはそれを見てから何時迄も頭の上にいる訳にはいかない為断りを入れてから甲羅の方へ移動した。生活拠点地に戻れば動物達は何が起きたか分からずただただ怯えて一箇所に集まっている。あの獰猛な大動物たちまでもそうなっているのだから相当な事が起こっているのだと察する。取り敢えず何でもないから気にするなと言う事を言い聞かせてから、いつもウマヘビが居た場所へ。
足早に向かえばウマヘビもまた困惑した様に亀助の後を追いかける様に着いて来ている。そしてジョーの姿を見つけた瞬間安心した様に「ブルルルッ!」と鳴く。
『ウマヘビ! これから私達は新世界に向かうことになった! お前はどうする? 着いてくるか?』
「ブルヒヒン!!」
『そうか! ならこのまま着いて来てくれると助かる!』
「ヒヒン!」
相変わらず何を言っているか分からないジョーだが着いてくると言ってる気がしたのである。現にウマヘビはスイスイと亀助の後を追いかけているのだから疑いようもないのだが。それを確認し終えたジョーはロジャーが寝ているツリーハウスへようやく戻った。スヤスヤと眠る姿はまるで何もなかったかの様に思わせるほどだ。
実際のところはロジャーは間違いなくあの時処刑され人生の幕を一度閉じた。しかしそんな人間の理を覆す様にジョーの持つ能力で再びこの世に呼び戻したも同然。
ジョー自身、生死をどうにか出来るとは思ってはいなかったが一か八かだった。どんな事象も戻せるのならロジャーが死んだと言う事象をも無かった事に出来るのではないかと。博打に近かったが結果的に良い方に転んだのだから良かったと思う。
そんな事をロジャーの寝顔を見ながら考えていると再びゴゴゴゴゴッと言う音と振動。なんだと窓から外を覗けば色々な所から泡…の様なものが甲羅全体を覆い尽くして行く。ジョーは知らないが簡単に言えばコーティングされている様な感じである。その状態で亀助はゆっくりと海へ潜って行っている事にジョーは内心ヒヤヒヤだ。しかしそれも杞憂に終わり、泡で覆われていることで海水が入ってくる事はなかった。
むしろ幻想的な光景が広がっておりジョーはしばらくその景色に目を奪われた。こうしてジョーは亀助の協力の元ロジャーを連れてワノ国を目指すのだった。
*
**
***
亀助が移動を始めてからどれ位の時が経ったのか…殆ど海底を進んでいる為ジョーには判断出来ない。それでもそれなりの月日が経過しているのだろうと勝手に思っていた。途中、亀助の言っていた魚人島なるものを通り過ぎた事から恐らく新世界には入っている。その程度しか今のジョーには分かりはしないのだ。
一方ある程度の月日が経つもののロジャーは相変わらず眠ったままで目覚める兆しがない。流石にジョーも心配になって何度も脈を測ったり何だりしたが医者ではないジョーに分かる事は少ない。今はただただロジャーが早く目覚める事を祈るしかないのだろうとジョーは思う事にした。
そう思いながら出来るだけロジャーの側にいるのはいつ目覚めても良いようにだ。その為今もジョーは傍に腰掛けのんびりと読書をしている最中である。
そんな時、今までも何度か荒波に乗ったことがあるものの今回はその比ではない。グラグラと揺れ動く事で何処かに捕まっていないと倒れそうになるほどだ。咄嗟にロジャーの体を支え、何処かにぶつかったりしない様にした。
『一体なにが起こっているんだ…? 亀助さん本当に大丈夫なんだろうね…?』
と呟いてしまうくらいにはこの揺れようは尋常ではないのである。船酔いならぬ亀酔いしそうな勢いな揺れの中でも眠り続けるロジャーを少々恨めしく思ってしまう。だがそう思ったところでなんにもならないだろうと首を横に振りその邪念を振り払う。
何時迄この揺れに耐えねばならないのかと思っていると、それは突如なくなった。荒波から穏やかな波に変わったのは非常に有難いが余りにも変わり過ぎではないかと思うジョー。
これが新世界なのかと思っているのだが実際の所ワノ国の周りの海流が酷いだけである。もちろん前半の海とは比べ物にならない程危険な海であるのは事実であるが。ジョーはロジャーを先程の所にしっかりと寝かせてからツリーハウスを出て外を確認する。亀助の頭部の方へ向かえば眼前には確かに島があり物凄く鬱蒼とした森である。
『……亀助さん、ここがワノ国ですか?』
《 うむ ここがワノ国じゃ。この先に九里なる場所があり更に奥に花の都があるのじゃとミズタキは言うとったわ 》
『成る程…ならこの先は私が行っておでんくんに会うしかなさそうですね』
《 そうなるのォ。なに心配せんでも其方の弟はワシが守ってやるわい! フォッフォッフォッ! 》
『えぇよろしくお願いします。私のたった一人の家族なので』
《 うむ! 任された。そちらは任せたぞ 》
『はい』
亀助と今後のことを少し話してから簡単に準備をしジョーは首を伸ばして砂浜に降りやすくしてくれた亀助の頭から降りる。少し離れた所にはしっかりと着いて来ていたウマヘビもウロウロとしながらジョーを見ている。「無事かー」と手を振るとウマヘビは「ブルヒヒン!」と元気よく返事をした。それを確認してからジョーはおでんを目指してワノ国を巡る事となる。
只管に歩く事数十分か数時間か…最近ずっと時間の感覚のないジョーはただただ足を動かした。この国に保護を求め、この国の出身であり亀助に話しを聞く限りワノ国でも地位あるおでんを探す。そして辿り着いたのは寂れた…と言っては失礼かも知れないが、その言葉が浮かぶような場所。
そこの住民は皆継ぎ接ぎだらけの着物を身に纏っており、いかにもお金が足らないような風体だ。
その場所…九里に住む者たちは突然現れた見知らぬ男に驚き、民家に直ぐに隠れてしまう。そんな様子を見ていた彼は「この国は平和なのではなかったのか…」と訝しげな表情を見せる。これ以上この地に足を踏み入れてはいけないような気がしてきたジョーはどうしようかと頭を悩ませる。このまま戻ってもロジャーを安全な場所へ移動できるかと言われるときっとそれはない。
となると、やはり一度おでんに会って話しを聞くのが良いのだろうと改めてジョーは思ったそんな時…。
ジョーの目の前に現れたのは刀を腰に携え如何にも戦えると言った装いをした3人の侍。その姿がとてもおでんを彷彿とさせ、この侍達ならおでんの居場所を知っているのではないかと考えた。そうジョーが考えていると先に口を開いたのは目の前の侍達である。
「そこのお前何者だ!!」
「ここ九里に一体何ようで参った?!」
「答えによってはこの場から去って貰います!!」
黒い髷をした男と奇抜な格好をした男、そして綺麗な容貌をした男と思われる侍3人。その人らに問われたジョーは答えを間違えたら戦いになりそうだと内心思いながら慎重に言葉を選ぶ。
『私の名はジョー。ここに住んでいると言う知り合いと話がしたい』
「話しだと…?」
「一体誰の事だ…?」
「あのような格好をしているのはカイドウの一味くらいしか居ませんよ」
「うむ…主は誰に会いに来た! 名を知っているのなら申せ!!」
『彼の名は「おでん」…一年ほど前この国から遥離れた場所で会った事がある』
「おでん様?!」
「まさかおでん様が外に出ていた時に…?!」
「しかし鵜呑みにするわけにも…!」
『貴方たちが私を信用出来ないのは分かっているつもりだ。だから私はここから動かない。おでんくんに取り次いで欲しい。あの時一戦交えたジョーが会いに来たと』
そう真っ直ぐに伝えれば侍達…名を錦えもん、カン十郎、菊の烝達は互いに顔を見合わせた。
見知らぬ目の前の男は我らが主人の「光月おでん」に目通りを頼んでいる。しかも己らの立場を察してかその場から動かないとまで言うのだから驚きで一杯だった。もし目の前の男がカイドウの手下であったならこんな会話もままならないだろうと錦えもんは思う。
どうするべきか考えていた三人は更なるジョーの行動に驚き言葉を発する事すら出来なかった。突然地に膝をついたかと思うと「お願いします」と深々と頭を下げてきたのである。それを見た錦えもんはキュッと口をきつく結んでから共にいるカン十郎と菊に「ここで待て」と言い走り去る。二人は錦えもんが何を言いたかったのか直ぐに察し、そのまま地に座っているジョーから目を離す事はない。
ダダダッと急いで我らが主人のおでんのいる「おでん城」へと向かう錦えもん。そのままの勢いでおでんのいる最上階まで階段を駆け上がり襖の前で膝をついて中に声をかけた。
「おでん様! 錦えもんにございます!! 至急お話ししたい事が…!!」
「む? 錦か? どうした、入れ!」
「失礼つかまつる!」
「どうしたそんなに息を切らしてまで」
「九里に見知らぬ者が現れ話しをした所おでん様にお会いしたいとの事!」
「おれェ~? 面倒だなァ…一体どこの誰だ?」
「名をジョーと…あの時一戦交えたジョーと言えば伝わると」
「Σ何ィ?! ジョーだと?! なぜワノ国に…いやそれよりも早くここに連れて来い!!」
「宜しいのですか?! ここにはトキ様もモモの助様、日和様もいらっしゃるのです!」
「構わん! ジョーならばなんの問題もない!!」
「……分かりました。連れて参ります」
そう言って錦えもんは来た道を戻りその場に残ったおでんは態々ここまで会いに来たジョーの事を考えた。ロジャーが公開処刑されこの時代が大きく動き出したのは新聞を読んだおでんも知っている。読んだ時は砂浜を走り回りながら泣き、笑い、そしてまた泣いたのだから。
次にきたる「王」のために己がいない間に変わり果ててしまったワノ国をより良き国にしなければならない。ジョーにワノ国はとてもいいところだと語った身としては今の状況はとても見せられたものではないのだ。だが遠路遥々この閉ざされた国にまで来てくれたと言うのならもてなさない訳にはいくまい。ジョーもまた突然押しかけた時には己の所為で一悶着はあったものの、もてなしてくれたのだから。
暫く待っていると外からこちらに向かって歩いてくる見知った三人の侍たちとジョーの姿。その姿を目にしたおでんは考えるより先に体が動き、その場から飛び降りていた。突然上からズンっと降ってきた大男に目を丸めるジョーとギョッとする侍たち。
そんなもの気にしないと言うようにおでんはジョーに笑いかけた。
「ジョー!! 久しいな!!」
『おでんくん…君は本当に想定外なことを仕出かす人だね。だが、うん…久しぶりだ』
そう言って握手を交わす二人を見た三人は「本当に顔見知りだったのか」とやっと確信できた。
積もる話もあるだろうとおでんはジョーを屋敷の中に招き入れ、適当な部屋に入りドサっと畳に座る。それを見た##nam1##も倣うように畳に腰掛ければ前のめり気味におでんはジョーに問う。
「まさかここまで来るとは思っていなかったぞ! 一体どうした?」
『単刀直入に言うけれど…私を…いや「私たち」を暫くこの国で匿って欲しい』
「匿う? ジョーをか? そもそもあの島自体が隠れ家みたいなもんだったろう?」
『状況が変わった…君も知っているのだろうおでんくん』
「 ! …ロジャーの死か…やはり近親者であるジョーも狙われるか」
『私の事はいいんだ…。私は世間の目からロジャーを隠したい…。おでんくん、ロジャーは生きている』
そう言ったジョーの言葉におでんは言葉を失い、ただただ驚愕の表情をして見せた。
真っ直ぐに己を見ているジョーが嘘を言っているようには見えないし、こんな嘘を言うような人間でもないのをおでんは知っている。そのためロジャーは今も生きているのだと案外すんなりと受け入れる事ができたおでん。
「そうか…ロジャーは生きて…そうか…!!」
『記事には出ていないけれど処刑後、私がロジャーの遺体を回収してその後生き還らせた』
「そうか生き還……Σ生き還らせた?!」
『私の能力の話はしただろう? 一か八かだったけれど…一応成功したんだよ』
「まさかそんな能力があろうとは!! 今ロジャーは?!」
『あの日からずっと眠り続けているよ…。だからこそ政府の目も海軍の目もないこの国に匿って欲しいんだ』
「なるほど…それで前半の海から遥々ここまで来たのか…」
ジョーが遠路遥々
その姿を見たジョーも「何かマズイことでもあるのか」と内心思うも、おでんの出方を窺った。難しい顔をして思い悩むおでんはロジャーを安全な場所に隠したいと言うジョーの言葉には賛成だった。しかし今やこの国が安全かと問われると答えは否であり、むしろ危険極まりないだろう。
何せカイドウと言う海賊がこの島に居座りワノ国をバカなオロチと乗っ取ろうとしているのだから。それを分かっていてジョーとロジャーを匿ってやるなどおでんには間違っても言うことは出来ない。
「匿いたいのは山々だが…今のワノ国は平和とは程遠い」
『 ! 』
「おれがいない間に将軍としてこの国を守っていた父が死に、その将軍の座をバカに乗っ取られた」
『…侍達が言っていたカイドウと言う者かい?』
「そいつは海賊でオロチのバックについておってな…。奴を討とうとしたが邪魔が入って出来ずじまいよ」
『なるほど…そうだったのか…せっかくここまで来たし何か手伝えることがあるか?』
「ジョーがいてくれりゃそりゃあ百人力だが…これはおれたちの戦い! 迷惑はかけられん!!」
『迷惑だなんて考えなくていい。私にとっては君の事も弟のように想っているんだよ』
「 ! 」
『全てを一人で抱え込まなくていいんだ…。君は一人じゃないよおでんくん』
「…………その言葉だけで十分…! やり遂げられる!!」
『……やれやれ君も大概頑固な性格なようだね。仕方ない…ならこれを持っておいて欲しい』
「これは…電伝虫?」
『私の元に直通で繋がるように設定してある。何あったら連絡してほしい…必ず力になるよ』
「かたじけない! ありがたく頂戴する!!」
どこからか取り出した電伝虫をおでんに渡せばおでんは大層有り難そうにそれを受け取った。それを見ただけでも今の状況がどれほど逼迫しているのか分かるようだが、あくまで自分たちで解決したいらしい。それならばジョーがこれ以上言える事はないため、ならばせめてと電伝虫をおでんに渡したのである。
この後やはり今のワノ国にいるのは危険だと言う事になりジョーはここで匿って貰うのを断念せざる得ない。おでんが言うのだから間違いないだろうし邪魔になるくらいなら立ち去った方が良いだろうと思う。
危険と言うのならこの場に長いは無用だろうとジョーが立ち上がるとおでんがそれをすかさず止める。
「待て待て! もう行くのか?!」
『うん。私はお暇するよ』
「そんな急がんでも良かろう?! もてなすと言ったではないか!!」
『あぁそうだったね。でも私が居ては君の部下達は良く思わないのではないかな』
「それは問題ない! それにおれの妻子にも会って行ってくれ!」
……………………
…………………………………
『おでんくん君…結婚していたんだね』
「Σそこか?! そもそも今更じゃないか!?」
『私の所に来てくれた時はそんな話ししていないだろう? 君は勝負の一点張りだった』
「む…そうだったろうか…? わはははっすまん!」
『別にいいんだけどね? ただ妻子がいてよく旅が出来たなとは思うよ』
「トキは理解ある女だからな! 寧ろ背を押された!!」
『それはまた…いい人を妻に娶ったものだね』
「おれもそう思う!!」
わはははっと大口開けて笑うおでんに釣られる様にジョーも「フフフ」と笑う。なんだかロジャーと話している様な感覚になって何とも言えない気持ちでもあった。それでも顔にはおくびにも出さず、おでんとの会話を楽しんだ。
結局彼はもてなしてもらう事となり今いる部屋から出て上階へ向かうおでんの後に続く。最上階へ来たかと思えばおでんは何の躊躇いもなくスパンっと襖を開けて中へ。すると中から「父上!」と言う元気な声が響いてきた。その事から今来た部屋はおでんとその妻子の部屋なのだとジョーは察し中に入るのを躊躇う。
流石に見ず知らずの男がこの部屋に入るのを躊躇うのは致し方ないだろう。
だがそんな事を考えたところで相手はおでん、ひょっこり顔を出して「早く来い」と手招きされる。そんなおでんの腕に抱かれている息子とも目がバッチリ合ってしまえば、そのまま引き返す事など出来ようもなかった。部屋の中に入れば奥の方には奥方であろう赤ん坊を抱く美しい女性。
「ようこそいらっしゃいました」
『いや…寧ろ突然押し掛けて申し訳ない』
「うふふ とんでもありません。私 光月おでんの妻 トキと申します」
「それモモの助、次はお前だ!」
「はい! 拙者モモの助と申します!」
「それでこの子が日和です」
『これはこれはご丁寧に…私はゴール・D・ジョーだ』
「トキ! ジョーはロジャーの兄者だ!」
「あっ以前伺った島の…! ご挨拶も出来ないで…」
『いや此方こそ来ている事を知らずにいたからお互い様だよ』
「おでんさん話していなかったのですか?」
「すまんな! わははははっ!」
そう愉快におでんが笑うとトキも仕方なさそうに笑顔になりとても幸せそうな家族である。
しかし先程この国が平和な国ではなくなっていると聞いたジョーはこれも一時的なのだろうと思った。光月一家の幸せを奪おうとしている将軍の座を乗っ取ったオロチとそのバックにいるカイドウに憤りを感じた。ジョーが協力を申し出たとしても「ワノ国の事はおれが何とかする!」とおでんは言うのだろう。そもそも先程その様な話をして断られているのだから再度言っても答えは同じだろう事は想像に難しくない。
何よりジョーも現在人の手が必要なロジャーの側を長期間離れる事は出来ない事もある。ただ、この家族から笑顔が消えない事を祈るしか出来ない事を歯痒く思うのだ。そんな事を考えているとジョーの傍にやって来ていたモモの助は不思議そうに首を傾げジョーを見上げている。それに気付いたジョーは「何でもないよ」と言いながらモモの助の頭を撫でる。
『お前はおでんくんの様な破天荒は大人になってはいけないよ?』
「Σジョー?! それはどう言う意味だ?!」
『え、そのままの意味だけど…君はもう少し落ち着きを持った方がいい』
「ゔっ…」
「父上はとても立派な方です!!」
「モモの助…!!」
『出来た息子だ。本当におでんくんの子か?』
「さっきから酷いぞジョー!! まるでレイリーのようだ!!」
『レイリーくんか…懐かしい名だね…元気にしているといいが』
そう懐かしげに目を細めているジョーの姿は本当にロジャー以外の…あの時訪れた者達も大切に思ってくれているようだ。それがありありと伝わってくるような優しい眼差しをしているのである。それに己も入っているのだと思うと兄弟のいないおでんには少々むず痒いものがあった。白ひげは兄弟分として接してくれていたがジョーから伝わる感じはそれとは少し違うのだ。だがそれも嫌なものではなく嬉しく思うのだからジョー独特な何かを持っているのだろうと思う。
先程会ったばかりだと言うのに息子のモモの助も随分とジョーに懐いているようで彼の膝の上に座っている。彼も彼で満更でもなさそうな顔でモモの助の相手をしているので子供が好きなのかとおでんは思った。
「ジョーは子供が好きか!」
『そうだね嫌いじゃないよ。子供は純粋無垢で美しい』
「んん? そんな事思っておったのか?」
『だってそうだろう? 大人になると色々見えてきてしまう…勿論聡明な子であれば幼くとも分かるのだろうけれど』
「……うむ、そうだな」
ジョーの言葉に思う事のあるおでんは静かに頷いて見せ彼の膝上にいるモモの助の頭を撫でた。その様子をただ黙って見ていたトキもまた彼らがなんの話をしているのか察していた。ジョーがこの国の状況を知っている風な言い方をする事からおでんが話したのだと。それだけジョーのことを信頼しているのだと知ったトキは嬉しいのと同時に遣る瀬無さも感じてしまう。妻である己が夫であるおでんを支えなければならないのだが彼は一人何かを抱え込んでしまっている。
家臣にも誰にも言わずにただ一人その大きな肩に乗せてしまっているのだ。その肩の荷をジョーになら預けられるのではないかとトキは期待してしまったのである。
「さて」とジョーが声を出しながら膝に乗せていたモモの助を下ろしゆっくりと立ち上がる。
『長居してすまなかったね、本当にそろそろお暇するよ』
「そうか…あまり引き留めても悪いよなァ…」
『別に今生の別れではないんだ。そうだね…今度はロジャーと共に会いに来よう』
「 ! そうか! 楽しみにしていよう!!」
ジョーの言葉におでんは目を丸めてからニカっと笑顔を見せ、その時が待ちどおしいと思う。「帰るでござるか…?」と言うモモの助に彼は「また来るよ」と言いながら頭を撫でる。どこか寂しそうではあるものの「分かったでござる!」と笑顔を見せた。ジョーはトキと腕に抱かれている日和にも挨拶をしてからおでんの案内の元屋敷を出る。
その途中途中でおでんの家臣である者とすれ違う事があったが警戒しているようで近づいてくる事はなかった。それだけおでんを慕っているのだと言うことが伝わり「いい人達だね」と彼は呟いた。その言葉を拾っていたおでんは「だろう!」と自慢げに胸を張り言うのだった。
おでんは屋城の下まででなくわざわざ砂浜の方まで見送りに来てくれていた。だが、その場に船などなくただただ青い海が広がっているだけである。
「ジョー…一体どうやって来たんだ?」
『亀助さんに乗せてきてもらったんだよ』
「カメスケさん…?」
ジョーの言葉に「?」をたくさん飛ばしているおでんを尻目に彼はピーっと口笛を吹く。するとザッパァンと水飛沫をあげて顔を出したのはおでんも見覚えのあるウマヘビである。その後ゆっくりと、だが確実に上昇してきた大きな何かにおでんは開いた口が塞がらない状態だ。全貌が現れた時おでんの目はキラキラと輝きだし「おぉぉお?!」と両手を挙げて叫んでいる。
「なんじゃあこりゃあ!!」
『紹介するよ。こちら亀助さん』
「スゲェ!! ジョーはスゲェなぁ!!」
《 騒々しい童がおるのォ 》
「Σ喋った!?」
『亀助さん、この子がおでんくんですよ』
《 ホウホウホウ…お主がミズタキの孫か…フォッフォッフォッ! そっくりじゃのォ! 》
「ミズタキ…!? おれの爺様だ!! 知ってるのか?!」
『ミズタキさん、亀助さんの甲羅に居座ってたらしいよ』
「なんと!? そんな奇怪なことを…!!」
『君が奇怪とか言う?』
亀助とミズタキが知り合いだと知ったおでんは随分と驚いているようだ。どうやら祖父とは言え、そう言った話しをした事はなかったらしい。亀助はおでんを見てとても楽しそうに笑っており、それに釣られておでんも笑っている。一先ず二人での会話が盛り上がっているようなのでジョーは亀助の頭から首をつたい甲羅へ。
ロジャーを寝かせているツリーハウスを覗けば変わらぬ姿で眠っている。横に腰掛けサラリと髪を撫でてから箱に入れておいた水を取り出しゆっくりと飲ませた。とその時「ロジャー!!」と言う大きい声とともに入ってきたおでんは涙でぐしゃぐしゃな顔をしている。
「ロジャー…!! お前はスゲェ男だ…!! お前がこの世界を変えたんだ!!」
『……我が弟ながら私も凄いと思うよ』
「そうだろう…!? うっえぐ…!!」
『フフフ、ほら男の子だろう? そんなに泣いていたらロジャーに笑われてしまうよ』
「ゔぅ…! それは嫌じゃあ!!」
眠っているロジャーを見てか、それともこの大海賊時代を作り出した事にかおでんは号泣である。彼的にはむしろそれだけ周りの目も気にせず涙を流せることに羨ましさを感じていた。ロジャーが処刑されてから今までジョーは一度も涙を流していないのだから。
そんなこんなでおでんは一目ロジャーに会えて良かったと言い亀助から降りて行った。おでんは亀助と二人で話していた時、この島は安全ではないと話していたようでここから離れる事に異論はないらしい。ここまで運んで貰っておいて本当に申し訳ない思いで一杯だが亀助がいなければジョーは移動手段がないのだから。
『それじゃあおでんくん、また会おう』
「おうとも!! 今度は平和なワノ国を見せてやりたい!」
『楽しみにしているよ。ただ私の言ったことを忘れてはいけないよ、いいね?』
「 ! 無論だ! おれは一人ではない!!」
『うん。君を慕う子達がいる。もちろん私も君の味方だ』
「あぁ!!」
こうしてジョーはおでんとの再会を果たしワノ国を後にするのだった。この数年後に最悪な結末が待っているなど今のジョーが知る由もない。
( おでんくんは相変わらずおでんくんだったね )
( ………………… )
( 早く目覚めておくれロジャー…そしたら一緒に会いに行こう )
( 楽しかったなァモモの助! )
( はい父上!! 今度はいつ遊びに来てくれますか? )
( うーん…いつだろうな! わははははっ! )
( 聞いてないんですか?! )
( すまんな! )
( おでんさん、モモの助、湯が沸きましたよ )
( おぉそうか! 皆で入ろうではないか! )
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