ブラザーコンプレックスおまけ話
2022.7.23発行「ブラザーコンプレックス」のおまけ冊子
「全治三ヶ月ですね」
仕事中に客同士の喧嘩に巻き込まれて腕を骨折した
医師の診断では骨のズレも無いからキレイに治るだろうとのことだ
よりにもよって夏の暑い日にギプスをはめ、憂鬱な気持ちで帰るとイライが持っていた皿を落としかける
「ど、どうしたのそれ!?」
「仕事でうっかり骨折してさ」
「大丈夫...?」
「そこまで痛くはないけど利き手が使えなくて不便だな」
仕事は労災で休みをもらえたけど、治るまでは食事や日常生活が大変だ
ただでさえイライに家事の多くをさせてしまっているのに、片手がこれじゃ余計に負担をかけてしまう
ト椅子に座り、膝に乗ってきたトラチャンを撫でてため息を吐いた
「家事は出来る限りやるけど、水周りはギプスが外れるまで任せてもいいか?」
「治るまで安静にしてなきゃ、こんな時くらい甘えてよ」
そう言って少し嬉しそうに夕飯のオムライス運んでオレの隣に座った
そしてスプーンで掬うと、オレの口元に近づける
これはもしかして...
「あーん」
「マジか、マジかっ」
「昔おじいちゃんが生きてた頃、自宅介護でよく食べさせてあげてたんだ」
「イライは優しい子だなぁ」
初あーんにテンションが上がったのも束の間、介護と言われて見えない涙を流す
てっきりラッキーイチャイチャだと思ってたのに
でもイライが食わせてくれるオムライスは美味しい
「お風呂はどうするの?」
「ビニール被せて濡らさないようにしろって言われた」
「シャンプー大変だね、ナワーブ髪の毛長いのに」
「...ひとりじゃ難しいかもしれないな」
少しだけ「僕が洗ってあげる♡」という期待を込めてそう言ってみた
イライのことだからきっと恥ずかしがって無理だろうけど、既に裸を見せ合った仲だしワンチャン狙えるかもしれない
「お風呂も手伝おうか?」
「えっいいのか?」
「入浴介助もやってたから得意だよ」
あれ?オレ、恋人じゃなくて介護対象になってないか?
その後それはそれは丁寧に体を洗われ、寝る時まで寄り添って献身的に世話をしてくれた
怪我を理由にイチャイチャする夢は叶わなかったけど、これはこれで悪くない
なんといかイライの母性に子供がえりした気分だ
...そして何日も引きこもって甘え続けた結果
「なんだこれ、地獄絵図か」
家に見舞いに来たウィリアムは、暗い部屋でトラチャンと一緒に床に転がるオレを見てドン引きしていた
「ようウィリアム」
「ようじゃないだろ、昼間っから何寝てるんだよ」
「イライが大学から帰ってくるまでトラチャンとお留守番してるんだ」
「にゃあん」
「お留守番って...オレが来たんだからせめて起きろよ」
ウィリアムが部屋の電気をつけて持ってきたケーキを冷蔵庫に入れる
あーあ、早くイライ帰ってこないかなぁ
「喉乾いた」
「ほら、水飲めよ」
「イライが飲ませてくれないと飲まない」
「は!?何言ってんだお前キモっ」
「フフフッイライはな、オレを甘やかすのが大好きなんだぜ」
「うわぁ...」
「イライによしよしされたい」
「まぁ面白いから動画で撮っとくか」
ウィリアムに撮られた動画が後の黒歴史になるということを、この時のオレはまだ知らない
「全治三ヶ月ですね」
仕事中に客同士の喧嘩に巻き込まれて腕を骨折した
医師の診断では骨のズレも無いからキレイに治るだろうとのことだ
よりにもよって夏の暑い日にギプスをはめ、憂鬱な気持ちで帰るとイライが持っていた皿を落としかける
「ど、どうしたのそれ!?」
「仕事でうっかり骨折してさ」
「大丈夫...?」
「そこまで痛くはないけど利き手が使えなくて不便だな」
仕事は労災で休みをもらえたけど、治るまでは食事や日常生活が大変だ
ただでさえイライに家事の多くをさせてしまっているのに、片手がこれじゃ余計に負担をかけてしまう
ト椅子に座り、膝に乗ってきたトラチャンを撫でてため息を吐いた
「家事は出来る限りやるけど、水周りはギプスが外れるまで任せてもいいか?」
「治るまで安静にしてなきゃ、こんな時くらい甘えてよ」
そう言って少し嬉しそうに夕飯のオムライス運んでオレの隣に座った
そしてスプーンで掬うと、オレの口元に近づける
これはもしかして...
「あーん」
「マジか、マジかっ」
「昔おじいちゃんが生きてた頃、自宅介護でよく食べさせてあげてたんだ」
「イライは優しい子だなぁ」
初あーんにテンションが上がったのも束の間、介護と言われて見えない涙を流す
てっきりラッキーイチャイチャだと思ってたのに
でもイライが食わせてくれるオムライスは美味しい
「お風呂はどうするの?」
「ビニール被せて濡らさないようにしろって言われた」
「シャンプー大変だね、ナワーブ髪の毛長いのに」
「...ひとりじゃ難しいかもしれないな」
少しだけ「僕が洗ってあげる♡」という期待を込めてそう言ってみた
イライのことだからきっと恥ずかしがって無理だろうけど、既に裸を見せ合った仲だしワンチャン狙えるかもしれない
「お風呂も手伝おうか?」
「えっいいのか?」
「入浴介助もやってたから得意だよ」
あれ?オレ、恋人じゃなくて介護対象になってないか?
その後それはそれは丁寧に体を洗われ、寝る時まで寄り添って献身的に世話をしてくれた
怪我を理由にイチャイチャする夢は叶わなかったけど、これはこれで悪くない
なんといかイライの母性に子供がえりした気分だ
...そして何日も引きこもって甘え続けた結果
「なんだこれ、地獄絵図か」
家に見舞いに来たウィリアムは、暗い部屋でトラチャンと一緒に床に転がるオレを見てドン引きしていた
「ようウィリアム」
「ようじゃないだろ、昼間っから何寝てるんだよ」
「イライが大学から帰ってくるまでトラチャンとお留守番してるんだ」
「にゃあん」
「お留守番って...オレが来たんだからせめて起きろよ」
ウィリアムが部屋の電気をつけて持ってきたケーキを冷蔵庫に入れる
あーあ、早くイライ帰ってこないかなぁ
「喉乾いた」
「ほら、水飲めよ」
「イライが飲ませてくれないと飲まない」
「は!?何言ってんだお前キモっ」
「フフフッイライはな、オレを甘やかすのが大好きなんだぜ」
「うわぁ...」
「イライによしよしされたい」
「まぁ面白いから動画で撮っとくか」
ウィリアムに撮られた動画が後の黒歴史になるということを、この時のオレはまだ知らない