花の病



【ナワーブ~独白~】

袋いっぱいの花を焼却炉に投げ入れ、

「うっ...ハァ、はっ」

袋いっぱいの花を焼却炉に投げ入れ、火を付けて忌まわしいそれを燃やす
ウィリアムが面倒くさがって袋に入れたまま燃やさずに積み重ねた花も一緒に燃やすと焼却炉からもくもくと煙が上がった

「ったく、いつも注意してるのに」

花に触れれば花吐き病が感染するからもっと慎重に扱えと昨日注意したばかりだ
これは本当に気をつけなければいけない、オレがウィリアムに感染させてしまったようにイライに感染させるわけにはいかないのだ
あの時は迂闊だった、ウィリアムが処分し損ねた花を拾ってしまうなんて
それに花に気を取られるキャラじゃないだろ

「うっ...ハァ、はっ」

ヒラッと口から舞う花を手のひらで受け止めグシャッと握り潰した
戦場にいた頃に感染してから今まで色恋沙汰とは無縁だったから気にもしていなかった、それなのにまさかこんな場所で発症するなんて...

「イライ...」

吐き出した青い花弁がイライの瞳のようでフッと渇いた笑いが洩れる
自分を捨てた婚約者を一途に想い続けるイライがオレを見てくれる日なんて来るわけが無い
それでもイライが好きで花を吐き続けてしまう
まったく不毛な恋だ
ウィリアムにはオレみたいな苦しい思いをして欲しくない
病を伝染してしまった責任感もある、あいつの片想いが実るように協力は惜しまないつもりだ

「おーい!ナワーブ!」

声に振り返るとウィリアムがニカッと笑ってこちらに走ってきた

「ウィリアム、花はちゃんと燃やせって昨日言っただろう」
「まぁ怒んなよ、もう花の心配はいらねぇからさ!」

照れたように笑うウィリアムにまさかと目を見開けばウィリアムがうんと頷く

「喜べ、無事両想いだ」
「まじか」
「白銀の百合、あれすげぇ綺麗だったぞ」
「それでお前の好きな奴って誰だったんだよ」

あれだけ考えても出てこなかった片想いの相手とこんなに早く結ばれるとは思ってもみなかった、この荘園の女は皆一筋縄ではいかい連中ばかりなのに

「イライだ」
「......え」
「ははっ驚いたよな?男同士だけどナワーブなら偏見も無いと思って...喜んでくれるか?」

サーッと全身の血が引いていく

「ああ、よかったな」
「サンキューな!」

白銀の百合はどんなものなのか
ウィリアムの言うようにすごく綺麗なのだろうか
......それをオレも見たかった

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