時をかけるジョゼフ

「嘘、本当に戻れた」


フィルムをキャッチすると、池を挟んだ向こうで占い師と納棺師が見つめ合っていた
既視感のある光景に息を飲んだ
僕は写真家として本当に優秀みたいだ
すると想像通り納棺師がこちらに気付き視線を寄越し、続けて占い師もこちらを見て会釈した
ああ、今君たちは死を覚悟し最後に愛を囁きあったところなんだったなんて
干渉するつもりはなかったが自分の中で何かがぐっと込み上げてきた
僕にもまだこんな感情が残っていたのか.....とうの昔に悲しい思い出と一緒に置いてきてしまったと思っていたよ


「ねぇ君達!写真はいかがかな?」


声を張り遠くても聞こえるように言うとふたりの足が止まった
どうしたものかと顔を見合わせているのでカメラを構える


「さぁ、いい顔をして」


池の向こうで少し戸惑いながらも、占い師がカメラに向かい笑うと納棺師も並んでカメラを向いた
パシャリ
シャッターを押すと占い師が「ありがとう」と声を張った


「これはあなたの気まぐれですか?」
「ああ、そうだ僕の気まぐれだよ。明日も撮ってあげるからふたりで来るといい」
「ええ、ゲームに呼ばれなければ」


そう言い残し去っていった
これで何かが変わるとは思わないが過去に干渉したのだ、少しくらい変化があってもいいだろう
だが次の日もそれ以降もふたりが姿を現すことはなかった、未来は変えられなかったのだ
ふたりの決心はそう簡単に崩れないものなのだろう
仕方なく、またフィルムをクルクルと回した
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