時をかけるジョゼフ

その写真を撮ってから数日後のことだった


「イライとイソップなら死んだよ」


あれからあのふたりを見かけなくなって、ゲームの最中傭兵に聞いたらとんでもない言葉が返ってきた
.......死んだ?占い師と納棺師がどうして
ハンター達は皆知らないのかそんな事誰からも聞いてない
...いや、そう言えばハスターは何か知っていそうだったが口にするタイプじゃないのかもしれない


「あいつら恋仲だったんだけど、イライには婚約者がいて荘園を出れば離ればなれになるから、それが嫌でいっそ2人で死のうって思い至ったみたいだ」


納棺されたイライの隣でイソップも眠るように死んでたよ
と、酷く元気の無い声で言葉を紡がれた
なにか死に対してトラウマでもあるのか傭兵が肩と握った拳を震わせている
ハァとひとつ溜息を吐き、投降しゲームを強制終了させた

まさか心中とはね...
あの時の神秘的な美しさは死を受け入れて愛を誓い合った者の儚さだったのかもしれない
遠くてよく見えなかったが生気が無かったようにも思える
別に彼らが死のうが生きようがどうってことないからいいんだけど
面倒くさいサバイバーが2人いなくなって良かったとも思えるくらいだ
自室に戻りフカフカのソファに凭れかかりあの日の写真を見返す


「これは君達の遺影だね」


もう二度と会うことの無い彼らに黙祷を捧げる
僕の写真の中で君たちは永遠に生き続けるから安心してくれ
出会って間もないけれど意外と彼らに愛着があったのかもしれないな、と少し思い耽りフィルムを指先でくるくると回した


「これ、ひょっとしてフィルムからあの時に戻れたりするのかな」


写真の中にその時の人や物を閉じ込め生かすのが自分の能力ではあるが、遡るとなるとゲームじゃ数秒程度だ
それに戻ったところで干渉するほどおせっかいでもない

......まさかな
そう思いながらもフィルムをクルクルと音を立てて長めに回した
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