第4章「風の子供」
「よし、フータ。おめー一人じゃまた魔物に襲われるかもしれねえ。おめーの家まで連れてってやるよ。いいよな、蘭丸。」
「うーん…。仕方ないな…。」
「フータ、おめーの家はどこなんだ?」
「…分かんねえ。おいら、フータって名前以外、何にも覚えてねえ。」
フータは、頭を抱えながら言った。
「何だって?…困ったな。」
蘭丸は複雑そうな顔をした。
「そっか。んじゃ、俺たちと一緒に行くか?」
エンマはぽんとフータの頭に手を置いた。
「え?」
頭を抱えていたフータは、顔を上げてエンマを見た。
「俺たちは、花霞の里って所に向かってんだ。おめーも行く所がねえなら、一緒に行こうぜ。」
「エンマ!何勝手なことを言ってんだ。」
蘭丸が困惑したように言った。
「だってよ。何にも覚えてねえってんだぜ。帰る家がなきゃ、かわいそうだろうが。別にこいつ一人増えるくらいいいだろ。」
「うーん…。」
蘭丸は腕を組んで、何か考えるように顔をしかめていた。
「いいのか?一緒に行っても?」
ぱあっと、嬉しそうな顔をして、フータはエンマを見ていた。
「ああ。俺が連れて行ってやるよ。」
「ありがとう!えーと…、エンマの兄貴。」
フータは頭をかきながら、はにかんだように笑った。
「兄貴?ははっ、フータ、おめー、俺の弟分になるってのか。」
「へへっ。おいらを助けてくれたから。」
「…しょうがないな…。」
蘭丸はため息をついた。
林を出て、川原に戻ると、蓮花が待っていた。
「ルート確認はばっちりよ。あら、その子は…?」
「魔物に襲われていたのを助けたんだ。」
エンマが言った。
「おいら、フータ!エンマの兄貴の弟分になったんだ。」
フータはすっかり元気になって、蓮花に挨拶した。
「へえ、そうなの。私は蓮花よ。フータは、どうしてエンマの弟分に?」
蓮花は、微笑んで言った。
「助けてもらったし、行く所がなくて困ってたおいらを、一緒に連れて行くって言ってくれたから。」
「まあ…。エンマにも、優しい所があるのね。」
蓮花にそう言われて、エンマは照れたようにぷいと横を向いた。
「…でも、蓮花。この子を里に連れて行くのは…。」
蘭丸は、フータに聞こえないように、小声で蓮花に言った。
「里の掟は分かってるわ。だけど、こんな所に放ってはおけないでしょ。こんな小さな子を。」
「それはそうだが…。」
「フータは、名前以外何にも覚えてねえんだ。そんな奴を放っておくなんて出来ねえだろ。頼む、蓮花、蘭丸。フータも一緒に連れて行ってくれ。」
「勿論よ。エンマに頼まれなくてもそうするわ。」
そうは言ったものの、内心、蓮花も、里の掟のことを考えていた。
花霞の里に住む者は皆霊力を持ち、魔物から人間を守るために、霊術の修行を積み、魔物と戦う。花霞の里が天霊山の麓にあり、人間世界の中で最も魔物の棲む世界に近いため、彼らが砦となって、魔物の侵入を防がなければならないのだ。
そのために、霊力を持たない、魔物と戦う術もない人間を、里に入れることは出来ない。それが掟であった。里の者全員が、魔物と戦う力を持っていなければならない。例え子供だろうと、年寄りだろうと、花霞の里に住む者は皆、魔物と戦うことが出来るのだ。
しかし、魔物から人間を守るのが一番大事なことだ。ここでフータを置き去りにした所で、魔物にやられるのは明白だ。とりあえず、安全な里へ連れて行き、それから今後のことを考えればよいだろう。
蓮花は瞬時にそう判断して、フータを連れて行くことにしたのだった。
フータは、何も知らずに無邪気に跳ね回っている。
花霞の里の方角から、柔らかな風が吹いてきた。
フータは、その中で、鳥のように着物の袖を振って、羽ばたくような動作をしていた。
「うーん…。仕方ないな…。」
「フータ、おめーの家はどこなんだ?」
「…分かんねえ。おいら、フータって名前以外、何にも覚えてねえ。」
フータは、頭を抱えながら言った。
「何だって?…困ったな。」
蘭丸は複雑そうな顔をした。
「そっか。んじゃ、俺たちと一緒に行くか?」
エンマはぽんとフータの頭に手を置いた。
「え?」
頭を抱えていたフータは、顔を上げてエンマを見た。
「俺たちは、花霞の里って所に向かってんだ。おめーも行く所がねえなら、一緒に行こうぜ。」
「エンマ!何勝手なことを言ってんだ。」
蘭丸が困惑したように言った。
「だってよ。何にも覚えてねえってんだぜ。帰る家がなきゃ、かわいそうだろうが。別にこいつ一人増えるくらいいいだろ。」
「うーん…。」
蘭丸は腕を組んで、何か考えるように顔をしかめていた。
「いいのか?一緒に行っても?」
ぱあっと、嬉しそうな顔をして、フータはエンマを見ていた。
「ああ。俺が連れて行ってやるよ。」
「ありがとう!えーと…、エンマの兄貴。」
フータは頭をかきながら、はにかんだように笑った。
「兄貴?ははっ、フータ、おめー、俺の弟分になるってのか。」
「へへっ。おいらを助けてくれたから。」
「…しょうがないな…。」
蘭丸はため息をついた。
林を出て、川原に戻ると、蓮花が待っていた。
「ルート確認はばっちりよ。あら、その子は…?」
「魔物に襲われていたのを助けたんだ。」
エンマが言った。
「おいら、フータ!エンマの兄貴の弟分になったんだ。」
フータはすっかり元気になって、蓮花に挨拶した。
「へえ、そうなの。私は蓮花よ。フータは、どうしてエンマの弟分に?」
蓮花は、微笑んで言った。
「助けてもらったし、行く所がなくて困ってたおいらを、一緒に連れて行くって言ってくれたから。」
「まあ…。エンマにも、優しい所があるのね。」
蓮花にそう言われて、エンマは照れたようにぷいと横を向いた。
「…でも、蓮花。この子を里に連れて行くのは…。」
蘭丸は、フータに聞こえないように、小声で蓮花に言った。
「里の掟は分かってるわ。だけど、こんな所に放ってはおけないでしょ。こんな小さな子を。」
「それはそうだが…。」
「フータは、名前以外何にも覚えてねえんだ。そんな奴を放っておくなんて出来ねえだろ。頼む、蓮花、蘭丸。フータも一緒に連れて行ってくれ。」
「勿論よ。エンマに頼まれなくてもそうするわ。」
そうは言ったものの、内心、蓮花も、里の掟のことを考えていた。
花霞の里に住む者は皆霊力を持ち、魔物から人間を守るために、霊術の修行を積み、魔物と戦う。花霞の里が天霊山の麓にあり、人間世界の中で最も魔物の棲む世界に近いため、彼らが砦となって、魔物の侵入を防がなければならないのだ。
そのために、霊力を持たない、魔物と戦う術もない人間を、里に入れることは出来ない。それが掟であった。里の者全員が、魔物と戦う力を持っていなければならない。例え子供だろうと、年寄りだろうと、花霞の里に住む者は皆、魔物と戦うことが出来るのだ。
しかし、魔物から人間を守るのが一番大事なことだ。ここでフータを置き去りにした所で、魔物にやられるのは明白だ。とりあえず、安全な里へ連れて行き、それから今後のことを考えればよいだろう。
蓮花は瞬時にそう判断して、フータを連れて行くことにしたのだった。
フータは、何も知らずに無邪気に跳ね回っている。
花霞の里の方角から、柔らかな風が吹いてきた。
フータは、その中で、鳥のように着物の袖を振って、羽ばたくような動作をしていた。
3/3ページ
