第11話「刻印」
「その剣、相当大事なものみたいだね。」
ラムは微笑みを浮かべて、フィンの隣に座った。
「僕の気配に気付いて飛び起きた途端、剣を掴んだからね。」
「猟師なんだ。当然だろう。危険を察知したからな。」
「僕が危険だと?」
「その通り。」
フィンはラムに目もくれずに言った。
「残念だなあ。そんなふうに思われるのは。確かに、僕はアリスたちを殺そうとしたけどね…。」
ラムはため息をつき、フィンを見つめた。
「時々、自分でも分からなくなるんだよ。急に怒りが込み上げてきて、何もかも滅茶苦茶にしてやりたくなる。何かを破壊したり、殺したりすると、すっきりするんだ。何故かは分からないけど。」
真顔でラムは言った。
「でも今はそんな気は起こらないんだ。本当だよ。こんなことは久しぶりさ。分かってるんだ。それが、フィンのおかげだってことは。誰に嫌われても気にしない。でも、フィンには分かってもらいたいんだ。」
「だったら、まず、アリスとテキーラに謝るんだな。ジンジャーにも。お前は、バンパイアを皆殺しにすると言ったんだからな。俺に媚びる前に、あいつらに謝るのが先だ。」
「そうだね。すっかり忘れてたよ。」
ラムは、微笑みを浮かべた。
「…それで、何日かかるのかな。その、ルビーという所までは。」
「何だと…?」
フィンは思わず聞き返した。
「今、何て言った?」
「え?いや、だから、ルビーまで何日かかるのかなって。非常食をここでためておきたいんだ。」
ラムは、抜け目のない目で辺りを見回した。ここには、当然、何人もの旅人が泊まっている。
「…聞いていたのか?」
「何が?」
「俺は、お前には何も言ってない。」
「あれ?変だね。何かルビーに行くって言われた気がしたんだけど。違うのかい?」
「確かに、ルビーに行くつもりだが…。」
心の中でのテキーラとの会話 の中では言ったが。
その晩、フィンたちの馬車の御者一人を残して、休憩所にいた人々は皆殺しにされた。
殺したのは、ラム一人ではない。
ジンジャーもテキーラも、人々の血を頂いたに違いない。
しかし、大半はラムによるものだった。
「これだけあれば十分だ。」
ラムは、注射器のようなものを取り出して、人間にぶすりと刺してそこから血を採り、用意していた何本かの酒瓶に注ぎ込んだ。
「何してんだ…?」
ジンジャーとテキーラが、それを不審な目で見ていた。
「非常食さ。」
にっこりと笑って、ラムは答えた。
「やりすぎだ。」
「大丈夫。一人は生かしておいた。彼にはまだ働いてもらわないといけないからね。」
ラムの傍に、御者が倒れていた。
「おい、いい加減に目を覚ませよ。」
気を失って倒れている御者の顔を、ラムは軽く蹴った。
「ううっ…。」
御者は、一滴も血を採られていないようだった。かすり傷一つも負っていない。
しかし、目を覚ました御者は、死体の山を見て悲鳴を上げた。
「ぎゃああああ!!」
「実は、さっき魔物が現れてね…。」
ラムは、微笑みを浮かべながら、御者に顔を近付けて言った。
「つい今しがた、僕たちが退治した所だったんだ。残念ながら、生き残ったのは、僕たちだけなんだけどね。」
「そ…そんな…。」
がくがくと震えている御者の肩に、ラムは手を置いた。
「これから、すぐ出発したいんだ。行ってくれるね?」
御者の震えが止まった。
「はい。猟師さま…。」
まるで操り人形のような動きで、御者は立ち上がった。
「お前…何かしたのか?」
ジンジャーがラムに聞いた。
「何が?」
「今の…どう見てもおかしいだろう。」
「何もおかしいことはないよ。さあ、馬車に乗ろうじゃないか。その中で、君たちに改めて謝りたいし。」
馬車に一足先に乗り込むラムの後ろ姿を、ジンジャーとテキーラは黙って見つめていた。
その更に後方で、フィンは一連の様子を窺っていた。
「怖い…。」
フィンの後ろで、アリスが震えていた。
「でも…気になるの。」
アリスの瞳は、馬車の中に向けられていた。
ラムは微笑みを浮かべて、フィンの隣に座った。
「僕の気配に気付いて飛び起きた途端、剣を掴んだからね。」
「猟師なんだ。当然だろう。危険を察知したからな。」
「僕が危険だと?」
「その通り。」
フィンはラムに目もくれずに言った。
「残念だなあ。そんなふうに思われるのは。確かに、僕はアリスたちを殺そうとしたけどね…。」
ラムはため息をつき、フィンを見つめた。
「時々、自分でも分からなくなるんだよ。急に怒りが込み上げてきて、何もかも滅茶苦茶にしてやりたくなる。何かを破壊したり、殺したりすると、すっきりするんだ。何故かは分からないけど。」
真顔でラムは言った。
「でも今はそんな気は起こらないんだ。本当だよ。こんなことは久しぶりさ。分かってるんだ。それが、フィンのおかげだってことは。誰に嫌われても気にしない。でも、フィンには分かってもらいたいんだ。」
「だったら、まず、アリスとテキーラに謝るんだな。ジンジャーにも。お前は、バンパイアを皆殺しにすると言ったんだからな。俺に媚びる前に、あいつらに謝るのが先だ。」
「そうだね。すっかり忘れてたよ。」
ラムは、微笑みを浮かべた。
「…それで、何日かかるのかな。その、ルビーという所までは。」
「何だと…?」
フィンは思わず聞き返した。
「今、何て言った?」
「え?いや、だから、ルビーまで何日かかるのかなって。非常食をここでためておきたいんだ。」
ラムは、抜け目のない目で辺りを見回した。ここには、当然、何人もの旅人が泊まっている。
「…聞いていたのか?」
「何が?」
「俺は、お前には何も言ってない。」
「あれ?変だね。何かルビーに行くって言われた気がしたんだけど。違うのかい?」
「確かに、ルビーに行くつもりだが…。」
心の中でのテキーラとの
その晩、フィンたちの馬車の御者一人を残して、休憩所にいた人々は皆殺しにされた。
殺したのは、ラム一人ではない。
ジンジャーもテキーラも、人々の血を頂いたに違いない。
しかし、大半はラムによるものだった。
「これだけあれば十分だ。」
ラムは、注射器のようなものを取り出して、人間にぶすりと刺してそこから血を採り、用意していた何本かの酒瓶に注ぎ込んだ。
「何してんだ…?」
ジンジャーとテキーラが、それを不審な目で見ていた。
「非常食さ。」
にっこりと笑って、ラムは答えた。
「やりすぎだ。」
「大丈夫。一人は生かしておいた。彼にはまだ働いてもらわないといけないからね。」
ラムの傍に、御者が倒れていた。
「おい、いい加減に目を覚ませよ。」
気を失って倒れている御者の顔を、ラムは軽く蹴った。
「ううっ…。」
御者は、一滴も血を採られていないようだった。かすり傷一つも負っていない。
しかし、目を覚ました御者は、死体の山を見て悲鳴を上げた。
「ぎゃああああ!!」
「実は、さっき魔物が現れてね…。」
ラムは、微笑みを浮かべながら、御者に顔を近付けて言った。
「つい今しがた、僕たちが退治した所だったんだ。残念ながら、生き残ったのは、僕たちだけなんだけどね。」
「そ…そんな…。」
がくがくと震えている御者の肩に、ラムは手を置いた。
「これから、すぐ出発したいんだ。行ってくれるね?」
御者の震えが止まった。
「はい。猟師さま…。」
まるで操り人形のような動きで、御者は立ち上がった。
「お前…何かしたのか?」
ジンジャーがラムに聞いた。
「何が?」
「今の…どう見てもおかしいだろう。」
「何もおかしいことはないよ。さあ、馬車に乗ろうじゃないか。その中で、君たちに改めて謝りたいし。」
馬車に一足先に乗り込むラムの後ろ姿を、ジンジャーとテキーラは黙って見つめていた。
その更に後方で、フィンは一連の様子を窺っていた。
「怖い…。」
フィンの後ろで、アリスが震えていた。
「でも…気になるの。」
アリスの瞳は、馬車の中に向けられていた。
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