第8話「邂逅」

 目を開けると、皆がアリスを見ていた。
 フィン、ジンジャー、テキーラ。
「フィン!」
 アリスは、起き上がって、フィンに抱きついた。
「怖かった!本当に!」
 アリスは泣き出した。
「お前がバンパイアで良かったよ。普通なら、死んでいた。」
「…あたし…また…変身して…。誰かに傷つけられた…。それだけ覚えてるの。」
「猟師がいたんだ。まあ、あの状況では、仕方なかったな。幸い、死んだ人はいなかったよ。お前に壊された建物はたくさんあるが、建物なら直せるしな。」
「うう…。テキーラも、無事だったのね…良かった…。」
 アリスは涙目で、テキーラを見た。人型のテキーラは、にっこりと笑って見せた。
「アリス…すまない…。」
 ジンジャーが謝った。しかし、アリスは何も答えなかった。ジンジャーを見ようともしない。フィンに抱きついたまま、泣き続けていた。
「アリス。ジンジャーが自分の血をお前に分けたんだ。ひどく出血していたからな。ジンジャーも、責任を感じていた。礼ぐらい、言ってやれよ。」
「お礼なんて!」
 アリスが声を上げた。
「ひどいわ!あんなにいやだって、言ったのに!許せない!絶対に、許さないんだから!ジンジャーなんて、大嫌い!!」
 アリスは大声を上げて、ますます泣きじゃくった。
 それを見て、ジンジャーは悲しそうな顔をしていた。
「…言い訳にしかならないと思うが…。どうしても…確かめたいことがあったんだ…。どうしても、抑えられなかった。俺は…本当にひどいことをしてしまった…。仲間を裏切ったも同然だ…。」
 ジンジャーは、立ち上がって、部屋から出て行こうとした。
「おい。どこへ行くんだ。」
 フィンがジンジャーの肩を掴んで止めた。
「俺は一人で、仲間を探すよ。これ以上、アリスを危険な目には遭わせたくない。」
「何言ってんだ。仲間はここにいるだろ?」
「俺は、ブランデーを探しているんだ。」
「じゃあ、アリスとテキーラはどうなるんだ?仲間に会えて、嬉しがっていたじゃないか。また一人になるのか?」
「俺がいると、危険だ。」
「そんなふうに自分を責めるな。これから気を付ければいいだけのことだ。何を確かめたかったのか、話してくれ。」
「…フィン。アリスとテキーラを、頼む。」
 ジンジャーは部屋から出て行った。
「頼むって、おい!」
 フィンは、後を追いかけたが、宿の外のどこにも、ジンジャーの姿は見当たらなかった。
「…あーあ。」
 部屋に戻ったフィンは、頭を抱えた。
「…あたしがあんなこと言ったから…?」
 アリスが、顔を両手で覆ったまま、言った。
「大嫌いなんて…。」
「…関係ないよ。ああいう奴なんだろう。ジンジャーは、お前があんなことになって、ひどく苦しんでいた。自分のせいでアリスを危険にさらしたってな。何があったのかくらい、話してくれたって…。あいつが一人でいなくなる方が、俺にとっては迷惑だってのに…。」
「あたしが、いけないのね…。あたしが、自分の力を抑えられないから…。ジンジャーは、仲間を探すためにあのオカリナを使いたいのに、あたしのせいで、それも自由に出来なくて、困ってて…。あたしは、いろんな人に迷惑かけてる…フィンにも…。あたしは…どうすればいいの…?」
「どうもこうもない。仕方ないだろ。お前もジンジャーも、自分を責めすぎだ。もっと気楽に考えろよ。」
「ウイ!」
 テキーラが頷いて、アリスの頭を撫でた。
「テキーラ…。」
 また、大粒の涙を流して、アリスはテキーラに抱きついた。
「俺は、ジンジャーを探しに行って来る。待ってな。」
 フィンはトパーズの町を駆け回った。
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