第7話「交錯」

「おい、お前、猟師だな。」
 帽子を被り、背中に銃を装備した男が、乱暴な口調でフィンに話しかけてきた。
「ああ。あんたも猟師だろ?」
「その通りだ。ここら一帯は俺が頂いたぜ。魔物が出ても、俺が退治するからな。てめえらには渡しゃしないぜ。だいたい、何だ、その剣。今どきそんなもんで戦えんのかよ。」
「まあ…こう見えてもね。一応は…。」
「何へらへら笑ってやがる。出てけっつってんだよ。何なら、ここで勝負するか?負けた方が出てくって条件で。」
「いやあ…それは困るなあ。別にあんたの邪魔する気はないから。ただこの町に来ただけで。」
「俺はな、他の猟師は皆商売がたきだと思って排除してんだよ。それが例え弱い奴だろうとな。それに、腕を磨くためでもある。魔物だけが相手じゃつまんねーしな。」
 男は、拳を突き出した。
「おめーに武器は使わねーよ。素手で勝負だ。」
「やめて!」
 アリスが飛び出してきた。
「ガキには関係ねー!引っ込んでな!」
「アリス。その通り。お前には関係ない。どうしても、俺と戦いたいらしい。」
 フィンは、アリスを後ろに引っ込めた。
「やる気になったか。」
 男は、余裕の表情だった。
 しかし、一瞬で、その表情は青ざめ、恐怖に怯える顔つきになった。
 フィンは、ただそこに立っていただけだった。
 傍目には、何もしていないのに、突然、男が一人で震え出したように見えた。
 男は、何も言わずにその場から一目散に逃げ出して行った。
「何だ…?今の…。」
 野次馬で集まっていた人々は、今にも戦いが始まるかと期待していたが、男が逃げたことで期待が裏切られ、拍子抜けしていた。
 男は、恐怖を感じて逃げたのだ。
 フィンの背中の方から出ている何かに。
 フィンは、男を睨み付けたわけでも、威嚇したわけでもない。
 幻覚でもない。本物の恐怖。呪い。
 フィンには、そのようなものが、宿っていた。
 呪われた気配が、フィンを恐ろしく見せていたのだ。
 人間の本能に訴える恐怖が、男を襲ったのだ。
「フィン…?」
 ジンジャーにも、何が起こったのか分からなかった。
「…良かった。出て行かなくて済んで。」
 振り返って、フィンは笑った。
「今、何をしたんだ?」
「何が?」
「何がって…何かしたんだろう?あの男は、お前を見て、震えていた。」
「別に何も。何か忘れ物でも思い出したんじゃないか?」
「フィン…お前は一体、何者なんだ?俺たちを出会わせてくれたことには、感謝している。だが、何故だ?何故、今まで出会えなかった仲間に出会えたんだ?お前と会ってからすぐに…。偶然とは思えない。お前は、何なんだ?人間でも、魔物でもない…。」
「俺は人間だ。猟師だ。それ以外の何者でもない。」
 フィンは真顔で言った。
「いや、違う。それなら、とっくに俺はお前の血を吸い尽くして、殺している。お前だけは、殺したくないんだ。」
「俺といれば、仲間に会えると思ってるから、殺せないんじゃないのか?」
「そうじゃない。俺は、人間を憎んでいる。だから、人間を殺す。だが、お前はただの人間じゃない。」
「ま、何とでも思ってていいさ。俺だって、血を吸われて殺されたくないしな。」
 フィンは笑って歩き出した。
 それ以上、ジンジャーは聞けなかった。
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