ニアリーイコールに近づける
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※学生軸、同級生設定
side you
高校1年、春。その人を一目見た瞬間、私は彼に釘付けになった。
色素の薄めで、指通しが良さそうな髪がふわりと揺れる。髪色と同色の、切れ長な瞳が私をまっすぐに射抜く。形の良い唇が動いて、零れ落ちた綺麗な声が私の鼓膜を震わせた。
「好きです……」
「え?」
梟谷学園高校1年、佐藤萌。人生で初めて、リアルの推しができました。
〜
あれから約2年。3年となった今でも、私の熱量はまったく冷めていない。だって木葉秋紀とかいう男、冷める要素が無さすぎる。文武両道、容姿端麗、さらに性格も良いときた。しかもただ運動神経が良いだけじゃなく、強豪であるうちの男バレのスタメン。初めて試合を観た時には、真剣にボールを追う姿が格好良くて惚れ直した。もちろん推しとして、ではあるけど。
「おはよう木葉くん、今日も格好良いね」
「はよ、相変わらず俺のこと好きだよな佐藤」
「だって推しだし!推しに愛を伝えるのは大事だから!」
「はいはいありがとー」
そんな私は、何故か木葉くんと仲が良い。最初は面白がられているだけだと思っていたけれど、それだけじゃ2年も友人を続けないだろう。だから、彼が平凡な私と仲良くしたがるのかはいまいち分かっていない。でもまぁ、推しとたくさん話せるならそれに越した事はない。毎日朝の挨拶を交わせるのだって友人の特権だ。
……なんだけど。最近は、少しだけ困っている事がある。
昼休み。友達と喋りつつお弁当を食べていれば、ひょいと後ろから中身を覗く誰か。言わずもがな、木葉くんだ。
「お、うまそ。佐藤なんかちょーだい」
「……やだ」
距離の近さにどきどきして、返事が素っ気なくなってしまう。ここ最近は毎回のことなのに、一向に慣れる気がしない。
「えぇ、なんでだよ。普段のお前なら喜んで!とか言いそうなのに」
「今日はだめ」
「それ昨日も一昨日も聞きましたー」
「言わないでよそれ……」
いつの間にか横にいた友達は消えていて、代わりに不満そうに此方を見つめる木葉くんが座っている。いつもならその綺麗な瞳をじっと見つめ返すことができるのに、今は何故か目を逸らしたくて仕方ない。
最近の私は、時々変になる。これが私の困りごと。今だって、少し前の私なら笑顔で木葉くんのお願いに応えてたはず。なのにどうして、前みたいに彼と接せないんだろう。
「なー、いい加減折れても良くね?」
「う……」
「そんなにやなの?」
「っちが!そういうんじゃない!」
「じゃあなんでだめなんだよ」
少し眉を下げて、不安げに尋ねる木葉くんに、思わず大声で言い返す。すると至極真っ当な問いが返ってきて、言葉に詰まった。どうして、私は頑なに拒否してるんだろうか。お弁当のおかずをあげるくらい、友達同士でもやる事で、だから私と木葉くんがしたって何にもおかしくないのに。でも普段私が友達にあげるかって言われたら違うし、まわりもそこまでやってる子はいない気もする。あれ、じゃあ結局理由は何?一生懸命に頭を働かせて考えるけど、どれだけ考えたって答えは出なくて。
「……わかんない」
自分の不甲斐なさが嫌になって俯く。もう何もかもが分からなかった。
「じゃあさ」
ちょっとだけ顔を上げる。木葉くんの表情を窺えば、さっきと打って変わってなんだか楽しそうに見えた。
「これは俺の予想兼願望みたいなやつなんだけどさ、言っても良い?」
「うん?」
木葉くんの端正な顔が近づいてきて、薄い唇がそっと耳元に寄せられる。秘密話を打ち明けるみたいに、小声で囁かれたその内容は。
「佐藤が俺のこと、男として意識してるからだと思うんだけど、どうですかね」
一気に顔を赤くしてはくはくと口を動かす私を見て、木葉くんはくすくすと笑っていた。
(使えるものは利用しなきゃ、な)
side you
高校1年、春。その人を一目見た瞬間、私は彼に釘付けになった。
色素の薄めで、指通しが良さそうな髪がふわりと揺れる。髪色と同色の、切れ長な瞳が私をまっすぐに射抜く。形の良い唇が動いて、零れ落ちた綺麗な声が私の鼓膜を震わせた。
「好きです……」
「え?」
梟谷学園高校1年、佐藤萌。人生で初めて、リアルの推しができました。
〜
あれから約2年。3年となった今でも、私の熱量はまったく冷めていない。だって木葉秋紀とかいう男、冷める要素が無さすぎる。文武両道、容姿端麗、さらに性格も良いときた。しかもただ運動神経が良いだけじゃなく、強豪であるうちの男バレのスタメン。初めて試合を観た時には、真剣にボールを追う姿が格好良くて惚れ直した。もちろん推しとして、ではあるけど。
「おはよう木葉くん、今日も格好良いね」
「はよ、相変わらず俺のこと好きだよな佐藤」
「だって推しだし!推しに愛を伝えるのは大事だから!」
「はいはいありがとー」
そんな私は、何故か木葉くんと仲が良い。最初は面白がられているだけだと思っていたけれど、それだけじゃ2年も友人を続けないだろう。だから、彼が平凡な私と仲良くしたがるのかはいまいち分かっていない。でもまぁ、推しとたくさん話せるならそれに越した事はない。毎日朝の挨拶を交わせるのだって友人の特権だ。
……なんだけど。最近は、少しだけ困っている事がある。
昼休み。友達と喋りつつお弁当を食べていれば、ひょいと後ろから中身を覗く誰か。言わずもがな、木葉くんだ。
「お、うまそ。佐藤なんかちょーだい」
「……やだ」
距離の近さにどきどきして、返事が素っ気なくなってしまう。ここ最近は毎回のことなのに、一向に慣れる気がしない。
「えぇ、なんでだよ。普段のお前なら喜んで!とか言いそうなのに」
「今日はだめ」
「それ昨日も一昨日も聞きましたー」
「言わないでよそれ……」
いつの間にか横にいた友達は消えていて、代わりに不満そうに此方を見つめる木葉くんが座っている。いつもならその綺麗な瞳をじっと見つめ返すことができるのに、今は何故か目を逸らしたくて仕方ない。
最近の私は、時々変になる。これが私の困りごと。今だって、少し前の私なら笑顔で木葉くんのお願いに応えてたはず。なのにどうして、前みたいに彼と接せないんだろう。
「なー、いい加減折れても良くね?」
「う……」
「そんなにやなの?」
「っちが!そういうんじゃない!」
「じゃあなんでだめなんだよ」
少し眉を下げて、不安げに尋ねる木葉くんに、思わず大声で言い返す。すると至極真っ当な問いが返ってきて、言葉に詰まった。どうして、私は頑なに拒否してるんだろうか。お弁当のおかずをあげるくらい、友達同士でもやる事で、だから私と木葉くんがしたって何にもおかしくないのに。でも普段私が友達にあげるかって言われたら違うし、まわりもそこまでやってる子はいない気もする。あれ、じゃあ結局理由は何?一生懸命に頭を働かせて考えるけど、どれだけ考えたって答えは出なくて。
「……わかんない」
自分の不甲斐なさが嫌になって俯く。もう何もかもが分からなかった。
「じゃあさ」
ちょっとだけ顔を上げる。木葉くんの表情を窺えば、さっきと打って変わってなんだか楽しそうに見えた。
「これは俺の予想兼願望みたいなやつなんだけどさ、言っても良い?」
「うん?」
木葉くんの端正な顔が近づいてきて、薄い唇がそっと耳元に寄せられる。秘密話を打ち明けるみたいに、小声で囁かれたその内容は。
「佐藤が俺のこと、男として意識してるからだと思うんだけど、どうですかね」
一気に顔を赤くしてはくはくと口を動かす私を見て、木葉くんはくすくすと笑っていた。
(使えるものは利用しなきゃ、な)
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