ヤイバ
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これまで少しずつメールでのやり取りを重ね、名前殿の人となりについて、おおまかではあるが知る事ができた。
中でも甘いもの、いわゆるスイーツの話題となると、気分が上がっているのが文面上でも充分に伝わってきた。
一緒にケーキを食べたあの夜に、スイーツ好きだという事は既に理解はしていたが。
そんな彼女を、事務所のカフェに誘ってみようと考えた。
昼間はカフェ、夜はバーとして営む店が、事務所には存在する。
一応、事務所関係者以外の人間も出入りできるのだが、利用客は少ない。
目立たない佇まいからして、きっと儲ける為の商売として営んでいるわけではないのだろう。
それはさておき、理想を言うならば、彼女が知らない穴場のスイーツショップにでも誘う事ができれば、間違いなく喜んでもらえるのだろうが……
女子が喜ぶような甘美なる香り漂うお洒落なスイーツショップを、拙者は知らない。
知っているのは、男が喜ぶような脂っこい店ばかり……
事務所のカフェにも甘いデザート系メニューは存在し、それが特別美味しいかは微妙である。
しかし、失礼な言い方だがそんな半端なスイーツしかないカフェだという事を承知で声をかけたのは、自分が所属するバンド、シンガングリムゾンズをもっと知ってもらいたいからだ。
カフェは所属バンドのポスター等、自然と話題になる内装になっていると思う。
……彼女は、尊敬する先輩であるロムが所属するシンガングリムゾンズを応援してくれている。
自分もメンバーなのにロムが所属しているからとしか言えないのは情けないのだが……
尊敬する先輩が所属する事務所のカフェという事であれば、彼女は興味を持ってくれる人物だと思う。
そして、自分たちのバンドをもっと身近に感じてもらいたい。
……彼女が事務所のカフェを知ってくれて、時々でもいいから顔を出してくれるようになれば……会える機会が増えるのでは?という、我ながら実に男らしくない思惑も少なからずある。
それに、外で2人で会おうなどといきなり誘うのは風流がない。……気がする。
拙者の誘いに名前殿の承諾を無事に得て、そして約束の当日、事務所に1番近い駅で待ち合わせをした。
道中、女子をエスコートするのは男の基本ステータスだろう。
車道側を拙者が歩く。
この日を所謂デートと呼んでいいのかはわからない。
しかし、そう意識してしまっている拙者は緊張気味で、彼女となかなか目を合わせられないでいるのだが、比較的にお互い正面を向いて目的地へ向かう今だけは、その不自然さを誤魔化せていると思う。
お喋りしながら事務所まで向かう道中、時間は正午近くを回ろうとしている。
真夏の日差しとこの気温、名前殿の体調は大丈夫だろうかと思い至ったその瞬間。
背後からギュッと抱きついてくる感覚。
こっ、これは……いったいどういう状況なのだっ!?
突然の事に内心混乱しながら、何とか言葉を紡ぎ出す。
「こっ、こんな昼間から公衆の面前で……い、意外とだっ、大胆なのだなっ……だ、だがっ、武士道をリスペクトする拙者、人前でい、イチャつくなどっ……だが、お主から距離を詰めてくれるのは嬉しい誤算……ゆ、故に、いつでもウェルカム……」
……やたら噛んでしまった事は言われなくとも自覚している……。
とりあえず、ズレてしまった眼鏡の位置を直しながら深呼吸。
こんなテンパり気味の状態では、後ろを振り返る事など到底できない。
平常心、平常心……
「ヤイバさん、何言ってるんですか?!この人具合が悪そうなので手伝ってください!ヤイバさーん!」
…………
後ろから拙者に抱きついて来たのは名前殿ではなく、通りすがりの熱中症患者。
ふらふらとおぼつかぬ足取りになっていた所、たまたま近くにいた拙者にしがみついたといった状況だったようだ。
幸い重度ではなさそうで、日陰に避難させた後、間も無くし合流した連れの者が病院へ連れて行った。
…… 名前殿がこうなっていてもおかしくないこの状況、思い違いの人違いであったがドキドキしていた場合ではなかったと反省……
彼女の体調を尋ねると問題ないとの事で安心した。
そしてふと考える。
拙者の盛大な勘違いの言葉は、果たして彼女にどの程度聞かれていたのか?
確認する勇気はないが、なんとなくばつが悪い思いで彼女の顔を見ると、目が合ってしまった。
「どうかしましたか?」
そう言う彼女はただただ可愛らしく、何でもないと適当に笑って誤魔化した。
……ツッコんで来ないという事は、いちいち気に留める事ではないのか、もしくは無かったことにしたいのか、してくれたのか……もしかすると内容なんてほとんど聞こえていなかったのかもしれない。
頭の中で様々な可能性がぐるぐると巡っている。
1番こうあって欲しくない可能性、
もし全て聞かれていたのなら……
そう考えると羞恥心が半端なく……今すぐ両手で顔を覆って叫びたいっ!!!
いや……もう深く考えるのはよそう。
それが利口だ。うむ。
あれこれ考えている内に、事務所まではもうすぐだった。
中でも甘いもの、いわゆるスイーツの話題となると、気分が上がっているのが文面上でも充分に伝わってきた。
一緒にケーキを食べたあの夜に、スイーツ好きだという事は既に理解はしていたが。
そんな彼女を、事務所のカフェに誘ってみようと考えた。
昼間はカフェ、夜はバーとして営む店が、事務所には存在する。
一応、事務所関係者以外の人間も出入りできるのだが、利用客は少ない。
目立たない佇まいからして、きっと儲ける為の商売として営んでいるわけではないのだろう。
それはさておき、理想を言うならば、彼女が知らない穴場のスイーツショップにでも誘う事ができれば、間違いなく喜んでもらえるのだろうが……
女子が喜ぶような甘美なる香り漂うお洒落なスイーツショップを、拙者は知らない。
知っているのは、男が喜ぶような脂っこい店ばかり……
事務所のカフェにも甘いデザート系メニューは存在し、それが特別美味しいかは微妙である。
しかし、失礼な言い方だがそんな半端なスイーツしかないカフェだという事を承知で声をかけたのは、自分が所属するバンド、シンガングリムゾンズをもっと知ってもらいたいからだ。
カフェは所属バンドのポスター等、自然と話題になる内装になっていると思う。
……彼女は、尊敬する先輩であるロムが所属するシンガングリムゾンズを応援してくれている。
自分もメンバーなのにロムが所属しているからとしか言えないのは情けないのだが……
尊敬する先輩が所属する事務所のカフェという事であれば、彼女は興味を持ってくれる人物だと思う。
そして、自分たちのバンドをもっと身近に感じてもらいたい。
……彼女が事務所のカフェを知ってくれて、時々でもいいから顔を出してくれるようになれば……会える機会が増えるのでは?という、我ながら実に男らしくない思惑も少なからずある。
それに、外で2人で会おうなどといきなり誘うのは風流がない。……気がする。
拙者の誘いに名前殿の承諾を無事に得て、そして約束の当日、事務所に1番近い駅で待ち合わせをした。
道中、女子をエスコートするのは男の基本ステータスだろう。
車道側を拙者が歩く。
この日を所謂デートと呼んでいいのかはわからない。
しかし、そう意識してしまっている拙者は緊張気味で、彼女となかなか目を合わせられないでいるのだが、比較的にお互い正面を向いて目的地へ向かう今だけは、その不自然さを誤魔化せていると思う。
お喋りしながら事務所まで向かう道中、時間は正午近くを回ろうとしている。
真夏の日差しとこの気温、名前殿の体調は大丈夫だろうかと思い至ったその瞬間。
背後からギュッと抱きついてくる感覚。
こっ、これは……いったいどういう状況なのだっ!?
突然の事に内心混乱しながら、何とか言葉を紡ぎ出す。
「こっ、こんな昼間から公衆の面前で……い、意外とだっ、大胆なのだなっ……だ、だがっ、武士道をリスペクトする拙者、人前でい、イチャつくなどっ……だが、お主から距離を詰めてくれるのは嬉しい誤算……ゆ、故に、いつでもウェルカム……」
……やたら噛んでしまった事は言われなくとも自覚している……。
とりあえず、ズレてしまった眼鏡の位置を直しながら深呼吸。
こんなテンパり気味の状態では、後ろを振り返る事など到底できない。
平常心、平常心……
「ヤイバさん、何言ってるんですか?!この人具合が悪そうなので手伝ってください!ヤイバさーん!」
…………
後ろから拙者に抱きついて来たのは名前殿ではなく、通りすがりの熱中症患者。
ふらふらとおぼつかぬ足取りになっていた所、たまたま近くにいた拙者にしがみついたといった状況だったようだ。
幸い重度ではなさそうで、日陰に避難させた後、間も無くし合流した連れの者が病院へ連れて行った。
…… 名前殿がこうなっていてもおかしくないこの状況、思い違いの人違いであったがドキドキしていた場合ではなかったと反省……
彼女の体調を尋ねると問題ないとの事で安心した。
そしてふと考える。
拙者の盛大な勘違いの言葉は、果たして彼女にどの程度聞かれていたのか?
確認する勇気はないが、なんとなくばつが悪い思いで彼女の顔を見ると、目が合ってしまった。
「どうかしましたか?」
そう言う彼女はただただ可愛らしく、何でもないと適当に笑って誤魔化した。
……ツッコんで来ないという事は、いちいち気に留める事ではないのか、もしくは無かったことにしたいのか、してくれたのか……もしかすると内容なんてほとんど聞こえていなかったのかもしれない。
頭の中で様々な可能性がぐるぐると巡っている。
1番こうあって欲しくない可能性、
もし全て聞かれていたのなら……
そう考えると羞恥心が半端なく……今すぐ両手で顔を覆って叫びたいっ!!!
いや……もう深く考えるのはよそう。
それが利口だ。うむ。
あれこれ考えている内に、事務所まではもうすぐだった。