仁王雅治 短編集
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眠気がさしてきた午後、昼寝をしようと今日も屋上に上がる。
昼寝が目的なので、人気のない時間を狙ってよく屋上へ行くのだが、どうやら今日は先客がいるようだ。
柵が立っているその縁に座っていたのは、クラスメイトの苗字 名前。
「隣いいかのぉ」
見知らぬ誰かが居たのなら、昼寝する気も失せて早々に立ち去っていたのだが、
俺は苗字の隣に腰掛ける。
「珍しいのぉ、ここで苗字に会うなんて」
苗字はいつもより元気がない様子だ。
その手には一粒のチョコレート。
「うん。ちょっとねー…」
そう言いながら、苗字は口の中へチョコレートを放り込む。
…ああ、今日はバレンタインデーか。
この元気の無さは、きっと思いを伝えたい誰かがいたけど諦めたか、玉砕したかのどちらかか…
苗字に好きな相手がいるなんて知らなかったが。
「それ、俺にも1つくれんかのぉ」
「ごめん、今口に入れたこれが最後」
苗字はチョコレートを含んだ自分の口を指差し言った。
「なら、その最後の1つ、俺がもらうわ」
俺はそっと苗字に口付ける。
前触れなくされた行為に、固まっている様子の苗字。
そして徐々に顔が赤くなる。
「どんだけ食い意地はってんの⁉︎ほんと信じらんない!」
苗字は勢いよく立ち上がると、走って屋上から出て行ってしまった。
…怒っとる怒っとる。
ちなみに俺は、よくポケットに飴やチョコを入れていて苗字もそれを知っているが、甘いものに目がないわけでも、食い意地がはっているわけでもない。
「…伝わらんのぉ」
俺と苗字はけっこういい仲だと思っていたんだがのぅ。
苗字の方は、俺を意識すらしていなかったのかもしれない。
僅かに口に残っている、俺ではない誰かの為のチョコレートの味。
複雑な気持ちを抱きながら、俺は目を閉じた。
昼寝が目的なので、人気のない時間を狙ってよく屋上へ行くのだが、どうやら今日は先客がいるようだ。
柵が立っているその縁に座っていたのは、クラスメイトの苗字 名前。
「隣いいかのぉ」
見知らぬ誰かが居たのなら、昼寝する気も失せて早々に立ち去っていたのだが、
俺は苗字の隣に腰掛ける。
「珍しいのぉ、ここで苗字に会うなんて」
苗字はいつもより元気がない様子だ。
その手には一粒のチョコレート。
「うん。ちょっとねー…」
そう言いながら、苗字は口の中へチョコレートを放り込む。
…ああ、今日はバレンタインデーか。
この元気の無さは、きっと思いを伝えたい誰かがいたけど諦めたか、玉砕したかのどちらかか…
苗字に好きな相手がいるなんて知らなかったが。
「それ、俺にも1つくれんかのぉ」
「ごめん、今口に入れたこれが最後」
苗字はチョコレートを含んだ自分の口を指差し言った。
「なら、その最後の1つ、俺がもらうわ」
俺はそっと苗字に口付ける。
前触れなくされた行為に、固まっている様子の苗字。
そして徐々に顔が赤くなる。
「どんだけ食い意地はってんの⁉︎ほんと信じらんない!」
苗字は勢いよく立ち上がると、走って屋上から出て行ってしまった。
…怒っとる怒っとる。
ちなみに俺は、よくポケットに飴やチョコを入れていて苗字もそれを知っているが、甘いものに目がないわけでも、食い意地がはっているわけでもない。
「…伝わらんのぉ」
俺と苗字はけっこういい仲だと思っていたんだがのぅ。
苗字の方は、俺を意識すらしていなかったのかもしれない。
僅かに口に残っている、俺ではない誰かの為のチョコレートの味。
複雑な気持ちを抱きながら、俺は目を閉じた。
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