煉獄杏寿郎
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私はキメツ学園の女教師である。
この学校の先生も生徒も独特な人が多くて、大変さを感じつつも楽しくやっている。
職員室の私の机は、歴史教師である煉獄先生の隣だ。
彼は、お昼はだいたい食堂で済ませているが、今日は久々にお弁当を持ってきたようだ。
私のお昼はと言えば、だいたいは自分で作ったお弁当。
時間に余裕がある時には、気分転換に中庭で食べる時もあるが、職員室の自分の机で済ます事がほとんどだ。
だから、彼が時々隣で食べるお弁当を何度か見た事がある。
今日の彼のお弁当は、今まで見た事のあるお弁当と雰囲気が違う。
言うなれば、大胆なまさに男の弁当、という感じである。
私は思い切って尋ねてみた。
「煉獄先生、今日のお弁当、もしかして自分で作ったお弁当ですか?」
「最近弁当作りを勉強中でな!良かったら味見してみてくれないか?」
そう言われると、是非食べてみたい。
私は卵焼きを一切れもらって味見する。
「マズっ!」
大胆ではあるが許容範囲内の見た目であるのに、何故にこんなにマズイのか⁉︎
私はついうっかり、感じたままにハッキリと言ってしまった。
マズイだなんて、私はなんて失礼な事を……!
しまったと思ったが、もう遅い。
どう誤魔化そうと、きっと苦しい言い訳にしかならないだろう。
落ち着いて、私。
考えるんだ。このピンチをどう乗り越えるかを……
「私のお弁当のおかず、どれでもいいので1つ食べてみません?」
自分で言うのはなんだけど、私はわりと料理上手である。
こうなったら、私のお弁当を食べてもらって、実力の差を見せつける。
残酷だが、自分のお弁当がマズイという事をまざまざと思い知らせるしかない。
少々心苦しいが……
「美味いな!」
彼は美味い美味いと私のお弁当を食べている。
私の手作りお弁当を気に入ってくれたようだ。
私がマズイと批判した事はノーコメントで、ひたすら私のお弁当を褒めてくれる彼。
……何だか心が痛い。
心が痛いのだが、美味しいと言われると嬉しいもので、次々に減っていく自分のお弁当を眺めていた。
そして、気づいた時にはお弁当は空になり、私のお昼ご飯はなくなってしまった。
「すまない、どれもこれも美味だったもので、つい……な!」
「ついな!じゃないですよ!私のお昼ご飯……」
「なら、俺の弁当はどうだ?」
「さっきマズイって言ったじゃないですか!食べません!」
私はお昼ご飯がなくなった悲しさと、空腹によってより苛立ったその勢いで、キッパリと断った。
マズイと言った事をどうにか丸く収めようとしていたのに……その過程を自分自身で台無しにしてしまった。
……アホか、私は。
もう何と言われても仕方ない。
私が黙っていると、
「苗字、俺に料理を教えてくれないだろうか?」
思いもよらない事を言われた。
そりゃ私で良ければ全然教えるけれど……
自分の為のお弁当なら、他の誰かに作ってもらった方が早いのでは?等と、本人の上手くなりたいという意思を無視し、余計な事を考えてしまう私。
彼の為になら毎日だって手料理を振る舞いたい、そんな女の人はわりと多いと思うのだ。
まあ、そんな余計な事は自分の心に留めておいて……私は当然の疑問を尋ねてみた。
「なぜ、料理が上手くなりたいんですか?」
「弟に、美味しい弁当を作ってやりたいのだ」
ああ、そうか。
彼は確か実家暮らしだった。
ご実家に一緒に住む弟さんに手作り弁当を持たせてあげたい兄、なんて弟思いの優しいお兄さんだろう。
「まあ、私で良ければ教えますけど…」
教えますけど、いったい何処で?
料理ができる環境を確保できなければ教えられない。
適当な場所が浮かばない私は、自然と歯切れの悪い答えになってしまう。
彼に教えるのが嫌だというわけではなく。
料理のできる環境……きっと私と同じ事を考えていたのだろう、しばらく黙っていた彼が不意に言った。
「新しい部活動を作るのはどうだ?お弁当研究部はどうだろう!」
「……私とあなたが顧問になって、生徒に教えながら上達していくっていう、そういう事ですか?」
「いや、俺が部員で、顧問は苗字だ!どうだ⁉︎」
いや、どうだって言われても……
「生徒がいない部活動なんて、承認されないですよ!それに、ここの生徒の入部率は悪くないので、今更新たな部活に人が集まりますかね?それに、衛生管理の問題とか結構厳しそうですよ?」
新たな部活を需要がないのに作るだなんて、そんな面倒な事はしたくない。
だって、需要がないんだもの。
彼は腕組みをし、黙り込んでしまった。
雰囲気的に、新たな部活を作る事は諦めてくれたようだ。
恐らく、新たな妙案を考えているのだろう。
彼に料理を教える事は嫌ではないが、ここで諦めてもらっても私は構わない。
そう考えていると、溌剌とした声で新たな提案が彼の口から発せられる。
「よし、俺の家にしよう!それなら何の問題もないだろう!」
「問題あります!」
何を言い出すんだ、この人は!
私は思わず大声を出してしまった。
何事かと私へ注がれる周りの先生達の視線が痛い……
すみません何でもないですと、ペコペコと頭を下げ謝る。
椅子へ座り直した私は、小声でも聞こえるように椅子ごと彼の更に側へ寄り、言った。
「あなたの家って、実家でしょ?ご実家にお邪魔するなんて、緊張します」
それに、私の事を何と説明するのか。
正直に料理を教わる為と言った所で、ご両親は信じるだろうか?
表向きはそう言うけど実は恋人なんでしょう?そう思われるのも何だか恥ずかしい。
「駄目か?」
そんな私の胸中など知る由もなく、あっけらかんと彼は言う。
「駄目です。私が緊張しますので」
緊張する理由はいちいち説明しなかった。
言わなくても察してもらいたいんだけどなぁ……
彼の表情を見ると、次の手立てが浮かばないのか、
私の目には、シュンと項垂れる子犬のように映ってしまった。
……何だか可哀想になってきてしまった。
ただ料理が上手くなりたいだけなのに、私にあれも駄目、これも駄目と言われているのだ。
自分自身が悪者のような気さえしてきた。
「私の家にします?一人暮らしの家なので、狭いキッチンですけど……」
気がつけば、私はそんな事を口走っていた。
「……いいのか?」
流石の彼も、本当に私の家でいいものか聞き返してくる。
「あなたの実家にお邪魔するよりマシですから。私の都合に合わせてもらう事になりますけど、それでも宜しければ……」
当然、場所が私の家なら、家主の私の都合に合わせてもらう事になるので、それでもいいのか念押しする。
「すまないな。では、宜しく頼む!」
彼にそう言われ、本当に私が料理を教える事に決定したのだが……
彼の料理の腕前を上げる事ができるのか、彼を家へ招くに当たりお部屋のセンスに自信がない等、今更ながらいろいろな不安が押し寄せてくる私であった。
この学校の先生も生徒も独特な人が多くて、大変さを感じつつも楽しくやっている。
職員室の私の机は、歴史教師である煉獄先生の隣だ。
彼は、お昼はだいたい食堂で済ませているが、今日は久々にお弁当を持ってきたようだ。
私のお昼はと言えば、だいたいは自分で作ったお弁当。
時間に余裕がある時には、気分転換に中庭で食べる時もあるが、職員室の自分の机で済ます事がほとんどだ。
だから、彼が時々隣で食べるお弁当を何度か見た事がある。
今日の彼のお弁当は、今まで見た事のあるお弁当と雰囲気が違う。
言うなれば、大胆なまさに男の弁当、という感じである。
私は思い切って尋ねてみた。
「煉獄先生、今日のお弁当、もしかして自分で作ったお弁当ですか?」
「最近弁当作りを勉強中でな!良かったら味見してみてくれないか?」
そう言われると、是非食べてみたい。
私は卵焼きを一切れもらって味見する。
「マズっ!」
大胆ではあるが許容範囲内の見た目であるのに、何故にこんなにマズイのか⁉︎
私はついうっかり、感じたままにハッキリと言ってしまった。
マズイだなんて、私はなんて失礼な事を……!
しまったと思ったが、もう遅い。
どう誤魔化そうと、きっと苦しい言い訳にしかならないだろう。
落ち着いて、私。
考えるんだ。このピンチをどう乗り越えるかを……
「私のお弁当のおかず、どれでもいいので1つ食べてみません?」
自分で言うのはなんだけど、私はわりと料理上手である。
こうなったら、私のお弁当を食べてもらって、実力の差を見せつける。
残酷だが、自分のお弁当がマズイという事をまざまざと思い知らせるしかない。
少々心苦しいが……
「美味いな!」
彼は美味い美味いと私のお弁当を食べている。
私の手作りお弁当を気に入ってくれたようだ。
私がマズイと批判した事はノーコメントで、ひたすら私のお弁当を褒めてくれる彼。
……何だか心が痛い。
心が痛いのだが、美味しいと言われると嬉しいもので、次々に減っていく自分のお弁当を眺めていた。
そして、気づいた時にはお弁当は空になり、私のお昼ご飯はなくなってしまった。
「すまない、どれもこれも美味だったもので、つい……な!」
「ついな!じゃないですよ!私のお昼ご飯……」
「なら、俺の弁当はどうだ?」
「さっきマズイって言ったじゃないですか!食べません!」
私はお昼ご飯がなくなった悲しさと、空腹によってより苛立ったその勢いで、キッパリと断った。
マズイと言った事をどうにか丸く収めようとしていたのに……その過程を自分自身で台無しにしてしまった。
……アホか、私は。
もう何と言われても仕方ない。
私が黙っていると、
「苗字、俺に料理を教えてくれないだろうか?」
思いもよらない事を言われた。
そりゃ私で良ければ全然教えるけれど……
自分の為のお弁当なら、他の誰かに作ってもらった方が早いのでは?等と、本人の上手くなりたいという意思を無視し、余計な事を考えてしまう私。
彼の為になら毎日だって手料理を振る舞いたい、そんな女の人はわりと多いと思うのだ。
まあ、そんな余計な事は自分の心に留めておいて……私は当然の疑問を尋ねてみた。
「なぜ、料理が上手くなりたいんですか?」
「弟に、美味しい弁当を作ってやりたいのだ」
ああ、そうか。
彼は確か実家暮らしだった。
ご実家に一緒に住む弟さんに手作り弁当を持たせてあげたい兄、なんて弟思いの優しいお兄さんだろう。
「まあ、私で良ければ教えますけど…」
教えますけど、いったい何処で?
料理ができる環境を確保できなければ教えられない。
適当な場所が浮かばない私は、自然と歯切れの悪い答えになってしまう。
彼に教えるのが嫌だというわけではなく。
料理のできる環境……きっと私と同じ事を考えていたのだろう、しばらく黙っていた彼が不意に言った。
「新しい部活動を作るのはどうだ?お弁当研究部はどうだろう!」
「……私とあなたが顧問になって、生徒に教えながら上達していくっていう、そういう事ですか?」
「いや、俺が部員で、顧問は苗字だ!どうだ⁉︎」
いや、どうだって言われても……
「生徒がいない部活動なんて、承認されないですよ!それに、ここの生徒の入部率は悪くないので、今更新たな部活に人が集まりますかね?それに、衛生管理の問題とか結構厳しそうですよ?」
新たな部活を需要がないのに作るだなんて、そんな面倒な事はしたくない。
だって、需要がないんだもの。
彼は腕組みをし、黙り込んでしまった。
雰囲気的に、新たな部活を作る事は諦めてくれたようだ。
恐らく、新たな妙案を考えているのだろう。
彼に料理を教える事は嫌ではないが、ここで諦めてもらっても私は構わない。
そう考えていると、溌剌とした声で新たな提案が彼の口から発せられる。
「よし、俺の家にしよう!それなら何の問題もないだろう!」
「問題あります!」
何を言い出すんだ、この人は!
私は思わず大声を出してしまった。
何事かと私へ注がれる周りの先生達の視線が痛い……
すみません何でもないですと、ペコペコと頭を下げ謝る。
椅子へ座り直した私は、小声でも聞こえるように椅子ごと彼の更に側へ寄り、言った。
「あなたの家って、実家でしょ?ご実家にお邪魔するなんて、緊張します」
それに、私の事を何と説明するのか。
正直に料理を教わる為と言った所で、ご両親は信じるだろうか?
表向きはそう言うけど実は恋人なんでしょう?そう思われるのも何だか恥ずかしい。
「駄目か?」
そんな私の胸中など知る由もなく、あっけらかんと彼は言う。
「駄目です。私が緊張しますので」
緊張する理由はいちいち説明しなかった。
言わなくても察してもらいたいんだけどなぁ……
彼の表情を見ると、次の手立てが浮かばないのか、
私の目には、シュンと項垂れる子犬のように映ってしまった。
……何だか可哀想になってきてしまった。
ただ料理が上手くなりたいだけなのに、私にあれも駄目、これも駄目と言われているのだ。
自分自身が悪者のような気さえしてきた。
「私の家にします?一人暮らしの家なので、狭いキッチンですけど……」
気がつけば、私はそんな事を口走っていた。
「……いいのか?」
流石の彼も、本当に私の家でいいものか聞き返してくる。
「あなたの実家にお邪魔するよりマシですから。私の都合に合わせてもらう事になりますけど、それでも宜しければ……」
当然、場所が私の家なら、家主の私の都合に合わせてもらう事になるので、それでもいいのか念押しする。
「すまないな。では、宜しく頼む!」
彼にそう言われ、本当に私が料理を教える事に決定したのだが……
彼の料理の腕前を上げる事ができるのか、彼を家へ招くに当たりお部屋のセンスに自信がない等、今更ながらいろいろな不安が押し寄せてくる私であった。
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