石田雨竜
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「石田くんに頼みがあるんだけど……ちょっと話聞いてくれる?」
ある日の学校の昼休み、突然僕に話しかけてきたのは最近転校して来たばかりの苗字さんだった。
……それにしても、転校生多いな、このクラス。
「一緒にお昼食べながら話そー?」
初めて話すのに、妙に馴れ馴れしい人だ。
僕が何の返事もしない内に、隣の席に座った彼女はもう机の上に昼食を広げている。
彼女の昼食は、サンドイッチ2切れとフルーツ牛乳のようだ。
仕方なく、僕も自分のお弁当を机に広げた。
「わぁ!石田くんのお弁当美味しそう♪」
と、勝手に中身を覗いてくる。
本当に馴れ馴れしい。
「それで、話って?」
早く会話を終わらせたかった僕は、自分から彼女に促した。
「えっと……あのね、石田くんって、お裁縫得意なんでしょ?お洋服作るの手伝ってほしいんだけど……」
「断る」
僕は短く答えた。
「えー?!何で!?」
何で?
それはこっちのセリフだ。
何で僕が?
誰の為のどんな服かなんて聞くまでもなく、僕にそんな事を手伝う義理はない。
だからこの話はもう終わりだ。
再び箸を進める僕の前の席に移動した彼女は、僕へ向けて不意に携帯電話を突き出した。
「そんなに複雑じゃないんだよ?こんな感じの……」
彼女が指差す画面には、真っ赤なワンピース。
いや、ロングドレス?
「なぜ僕に頼む?他にも頼める人がいるだろう?」
「だって石田くん、手芸部でお裁縫が上手だって聞いたから……」
「君を手伝う義理はない」
「上手な石田くんに手伝ってもらいたいの!」
キッパリと断る僕に尚詰め寄ってくる彼女は、簡単に引き下がるつもりはないようだ。
「小川さんのぬいぐるみを直してあげてたのを見たの!あっという間に。凄いなって思ったの。それを見ちゃったら、石田くん以外考えられなくて……!」
彼女にそんな気はないだろうが、僕が、小川さんにはやってあげるのに苗字さんにはやってあげない、というようにも聞こえる。
教室でお昼を摂る生徒がちらほらと居る中で、僕たちの会話が耳に入った誰かもそんなふうに解釈していたら、それは何だか嫌だった。
小川さんと苗字さんに対する差は何なのかと……
単純に難易度や手間の差で、洋服を一から作る手間と、ぬいぐるみのほつれを直す程度の作業は同等ではないからだ。
だから断っているのだか、そんな事情はお構いなしに、おもしろおかしく解釈されるのは癪だ。
何とかうまく断る理由がないかと考えていたところ、黒崎が教室に入って来た。
……嫌な予感しかしない。
「石田と苗字が一緒に飯なんて珍しいな」
頼むからそっとしておいてくれという僕の願い虚しく、黒崎が声を掛けてきた。
そうなれば当然、苗字さんは、実はかくかくしかじかで……と説明を始め、
「手伝ってもらえば?石田、そういうの得意だろ?」
という、僕が望まぬ予想通りの展開になってしまった。
「黒崎!無責任な事を言うな!」
「お前、自分の服作ったりしてんじゃん」
「黒崎くん、味方してくれてありがとう!あともうひと押し!」
押せば何とかなると思っているのだろうが、僕はそう簡単に了承したりはしない。
そう思っていたのだが……
「どうしたの?黒崎くん。」
「何事だ?」
井上さんに朽木さんだ。
このままだと面倒な事になりそうだ……
「わ、わかったよ!とりあえず詳しい説明を聞かせてもらうけど、それを聞いた上で無理なら無理とハッキリと断らせてもらう!」
とりあえずの了承をしてしまった。
放課後、部活が終わったらエントランスで待ち合わせする約束になっていた。
約束の場所へ向かいながら、僕は昼休みに見たロングドレスの画像を思い出していた。
あれは通販サイトの画像のようだった。
質にこだわるならば材料費は馬鹿にならないし、デザインがシンプルなものほど綺麗に仕上げるのは難しいと思う。
彼女はそれを分かっているのだろうか?
こんな感じのが作りたいと見せてきた販売品で気が済むのなら、是非そうしてもらいたいものだと思う。
……何故手作りにこだわるのだろう?
彼女が見せてくれた真っ赤なドレス、彼女なら難なく着こなすだろうと想像できた。
ロングドレスを作成したとして、彼女はいつそれを着用するのか?
……別に彼女に興味を持ったわけではない。
ただ疑問に思っただけだ。
エントランスへ着くと、そこには既に苗字さんの姿があった。
「石田くん、おつかれさまー!」
何が楽しいのか、苗字さんはニコニコと元気そうだ。
「早速だけど、話していたドレスの事なんだけど」
面倒事はさっさと終わらせたいと思っている僕は、挨拶もそこそこに早速本題に入り、自分の考えを説明した。
「手作りしたいのには理由があって……」
僕の説明を聞いた苗字さんの返答はこうだった。
彼女は、幼少の頃に祖母がプレゼントしてくれた赤いドレスが、サイズアウトして着られないのをずっと残念だと感じていた。
たまたま小川さんのぬいぐるみを繕っていた僕を目撃して、その手際の良さから、僕にお願いしたらどうにか生かしてまた着用できるかもしれないと考えたそうだ。
祖母からのプレゼントか……
僕は今は亡き最も尊敬する祖父を思った。
「そういう事なら手伝っても構わないよ」
祖母からプレゼントされたドレスを、着用できなくなった今も大事にしている苗字さんの話を聞いたら、断る事はできなかった。
この先の事はまた後日、今日はもう遅いから解散する事にした。
もうこれ以上話す事はないと、別れの挨拶をして自宅の方向へ歩き出したところ、苗字さんに呼び止められた。
「石田くん待って!連絡先交換しよう。その方がこれから先、スムーズでしょ?」
そう言いながら携帯電話を取り出す苗字さんに向かって、その必要はないと片手で制しながら言った。
「携帯電話は持っていない」
「そうなの?不便じゃない?」
「僕はひとり暮らしだから。だから出費はなるべく抑えないと」
「……家族いないの?」
聞きづらそうに尋ねてくる。
「そういうわけじゃないけど……まあ、君には関係のない事だよ。じゃあ、また明日」
面倒な事を引き受けてしまったと、ため息をつきながら帰路につく。
引き受けたからにはしっかりと手伝うつもりだが、妙に馴れ馴れしい彼女と、これから完成まで何度となく顔を合わせ作業をするのだと思うと、やはりため息が出てしまうのだった。
ある日の学校の昼休み、突然僕に話しかけてきたのは最近転校して来たばかりの苗字さんだった。
……それにしても、転校生多いな、このクラス。
「一緒にお昼食べながら話そー?」
初めて話すのに、妙に馴れ馴れしい人だ。
僕が何の返事もしない内に、隣の席に座った彼女はもう机の上に昼食を広げている。
彼女の昼食は、サンドイッチ2切れとフルーツ牛乳のようだ。
仕方なく、僕も自分のお弁当を机に広げた。
「わぁ!石田くんのお弁当美味しそう♪」
と、勝手に中身を覗いてくる。
本当に馴れ馴れしい。
「それで、話って?」
早く会話を終わらせたかった僕は、自分から彼女に促した。
「えっと……あのね、石田くんって、お裁縫得意なんでしょ?お洋服作るの手伝ってほしいんだけど……」
「断る」
僕は短く答えた。
「えー?!何で!?」
何で?
それはこっちのセリフだ。
何で僕が?
誰の為のどんな服かなんて聞くまでもなく、僕にそんな事を手伝う義理はない。
だからこの話はもう終わりだ。
再び箸を進める僕の前の席に移動した彼女は、僕へ向けて不意に携帯電話を突き出した。
「そんなに複雑じゃないんだよ?こんな感じの……」
彼女が指差す画面には、真っ赤なワンピース。
いや、ロングドレス?
「なぜ僕に頼む?他にも頼める人がいるだろう?」
「だって石田くん、手芸部でお裁縫が上手だって聞いたから……」
「君を手伝う義理はない」
「上手な石田くんに手伝ってもらいたいの!」
キッパリと断る僕に尚詰め寄ってくる彼女は、簡単に引き下がるつもりはないようだ。
「小川さんのぬいぐるみを直してあげてたのを見たの!あっという間に。凄いなって思ったの。それを見ちゃったら、石田くん以外考えられなくて……!」
彼女にそんな気はないだろうが、僕が、小川さんにはやってあげるのに苗字さんにはやってあげない、というようにも聞こえる。
教室でお昼を摂る生徒がちらほらと居る中で、僕たちの会話が耳に入った誰かもそんなふうに解釈していたら、それは何だか嫌だった。
小川さんと苗字さんに対する差は何なのかと……
単純に難易度や手間の差で、洋服を一から作る手間と、ぬいぐるみのほつれを直す程度の作業は同等ではないからだ。
だから断っているのだか、そんな事情はお構いなしに、おもしろおかしく解釈されるのは癪だ。
何とかうまく断る理由がないかと考えていたところ、黒崎が教室に入って来た。
……嫌な予感しかしない。
「石田と苗字が一緒に飯なんて珍しいな」
頼むからそっとしておいてくれという僕の願い虚しく、黒崎が声を掛けてきた。
そうなれば当然、苗字さんは、実はかくかくしかじかで……と説明を始め、
「手伝ってもらえば?石田、そういうの得意だろ?」
という、僕が望まぬ予想通りの展開になってしまった。
「黒崎!無責任な事を言うな!」
「お前、自分の服作ったりしてんじゃん」
「黒崎くん、味方してくれてありがとう!あともうひと押し!」
押せば何とかなると思っているのだろうが、僕はそう簡単に了承したりはしない。
そう思っていたのだが……
「どうしたの?黒崎くん。」
「何事だ?」
井上さんに朽木さんだ。
このままだと面倒な事になりそうだ……
「わ、わかったよ!とりあえず詳しい説明を聞かせてもらうけど、それを聞いた上で無理なら無理とハッキリと断らせてもらう!」
とりあえずの了承をしてしまった。
放課後、部活が終わったらエントランスで待ち合わせする約束になっていた。
約束の場所へ向かいながら、僕は昼休みに見たロングドレスの画像を思い出していた。
あれは通販サイトの画像のようだった。
質にこだわるならば材料費は馬鹿にならないし、デザインがシンプルなものほど綺麗に仕上げるのは難しいと思う。
彼女はそれを分かっているのだろうか?
こんな感じのが作りたいと見せてきた販売品で気が済むのなら、是非そうしてもらいたいものだと思う。
……何故手作りにこだわるのだろう?
彼女が見せてくれた真っ赤なドレス、彼女なら難なく着こなすだろうと想像できた。
ロングドレスを作成したとして、彼女はいつそれを着用するのか?
……別に彼女に興味を持ったわけではない。
ただ疑問に思っただけだ。
エントランスへ着くと、そこには既に苗字さんの姿があった。
「石田くん、おつかれさまー!」
何が楽しいのか、苗字さんはニコニコと元気そうだ。
「早速だけど、話していたドレスの事なんだけど」
面倒事はさっさと終わらせたいと思っている僕は、挨拶もそこそこに早速本題に入り、自分の考えを説明した。
「手作りしたいのには理由があって……」
僕の説明を聞いた苗字さんの返答はこうだった。
彼女は、幼少の頃に祖母がプレゼントしてくれた赤いドレスが、サイズアウトして着られないのをずっと残念だと感じていた。
たまたま小川さんのぬいぐるみを繕っていた僕を目撃して、その手際の良さから、僕にお願いしたらどうにか生かしてまた着用できるかもしれないと考えたそうだ。
祖母からのプレゼントか……
僕は今は亡き最も尊敬する祖父を思った。
「そういう事なら手伝っても構わないよ」
祖母からプレゼントされたドレスを、着用できなくなった今も大事にしている苗字さんの話を聞いたら、断る事はできなかった。
この先の事はまた後日、今日はもう遅いから解散する事にした。
もうこれ以上話す事はないと、別れの挨拶をして自宅の方向へ歩き出したところ、苗字さんに呼び止められた。
「石田くん待って!連絡先交換しよう。その方がこれから先、スムーズでしょ?」
そう言いながら携帯電話を取り出す苗字さんに向かって、その必要はないと片手で制しながら言った。
「携帯電話は持っていない」
「そうなの?不便じゃない?」
「僕はひとり暮らしだから。だから出費はなるべく抑えないと」
「……家族いないの?」
聞きづらそうに尋ねてくる。
「そういうわけじゃないけど……まあ、君には関係のない事だよ。じゃあ、また明日」
面倒な事を引き受けてしまったと、ため息をつきながら帰路につく。
引き受けたからにはしっかりと手伝うつもりだが、妙に馴れ馴れしい彼女と、これから完成まで何度となく顔を合わせ作業をするのだと思うと、やはりため息が出てしまうのだった。
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