五条悟
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「みんな、おはよ〜……」
情けない事に風邪をひいたらしい僕。
いつも雑な扱いをされる僕。
だけど、こんな時くらいは心配してくれるよね?僕の可愛い教え子たち。
そんな事をぼんやりと考えながら、わざとらしいくらい具合悪そうに教室のドアを開けながら朝のあいさつをする。
体がだるいのは本当だ。
30分くらいの遅刻で顔を出した僕にトゲのある非難の言葉を向けてくる生徒たちは、そのくせあまり意に介していない様子だ。
いつものコトって事だろう。
僕としても、そんな事より体調の悪さを心配してほしいんだけど……その事については言及する気配はない。
仕方ないから、わざとらしいけどハッキリと言う事にする。
「いやぁ〜、僕、風邪ひいちゃったみたいでね?具合が悪いんだよね……心配してくれる?」
「……先生も風邪ひく事あるんだ…… 」
最初に口を開いたのは最近転入してきた教え子の名前。
最強と豪語してるくせに嘘でしょ?とばかりに、意外そうな顔をしている……少しバカにしてるよね?
「そりゃ風邪くらいひく事もあるでしょーよ……僕の事、なんだと思ってんの?人間だよ?真っ当な……」
「真っ当な?それは知りませんが、風邪なら安静にしていた方がいいと思いますけど」
至極当然な事を冷静に言う恵。
相変わらず真面目だね〜……心配はしてくれないか。
「病気の状態で頑張られてもさ。自分はそれで満足かもしんないけど、感染されるかもしれないうちらは迷惑でしかないし」
野薔薇は野薔薇で真っ当なんだけど……もうちょっと優しさを混ぜてくれてもよくない?
「今日は自習って事で、良いんじゃね?」
サッパリと言い放った悠二のひと言で、今日は一日自習という事にみんなが同意する。
自習と言うものの、まあ、臨時休暇だよね。
今日1日どう過ごすかなー、なんてこぼしながら、各々教室から出て行こうとする。
僕を置き去りにして……寂しいねー。
本当に置いて行かれるのは虚しいので、みんなの列について一緒に教室を出た。
「僕はとりあえず医務室で休む事にするよ……」
誰に聞かれる事もないが、一応そんな事を言ってみる。
返事なんて期待してないけど、一応ね。
医務室まで行くのは面倒だな……
保健室の方にしよう。
医務室まで行けば硝子がいるだろうし、今は早く横になりたい……
保健室とはいわゆる保健室で、今はあまり使われていない。
誰もいない静まり返った保健室のベッドに潜り込む。
やば……寒気してきたかも……
ベッドに深く潜り寒気に耐えていると、部屋の扉が開く音がした。
「先生居る?医務室の方にいないみたいだったから……」
名前の声だ。
「……居るよ。僕の事、心配で来てくれたの?」
名前は僕の問いかけには答えず、代わりに部屋の隅にある薬品棚を開け閉めする音が聞こえてきた。
薬品棚といっても、ほとんど使われてない今は薬品は何にも入っちゃいないけど。
「あ、あった。……はい、先生」
名前は棚から体温計を探しだしてくれたようで、僕は差し出された体温計を受け取り、腋下に差し込む。
……39.2℃。
思ってたより高いな。
「高いですね。氷枕でも持って来る?」
体温計を覗き込む名前にそう言われたが、寒気がするからと断ると、近くにあるもう一台のベッドから剥ぎ取った布団を雑に被せられた。
2枚の布団を被ってる状態は少し重いが、これで少しは寒気がマシになるかもしれない。
「何か温かい飲み物持って来るね?」
そう言って名前は保健室を出て行った。
日頃の振る舞いのせいで、風邪くらいではみんな心配してくれないのだという事は自覚している。
でも、まさか、本当に心配して来てくれたのだろうか?
ほんのりいい香りを漂わせて、名前は戻ってきた。
「先生、体、起こせそう?」
僕が言われた通りに上体を起こすと、目の前にマグカップが差し出される。
あぁ、いい香りの正体はこれか。
寒気がするという僕の為に、名前ははちみつ入りホットミルクを作ってきてくれたようだ。
「……飲めます?」
何の確認もなしに作ったはいいけど僕が牛乳嫌いだったらどうするの?と思いつつも、素直に嬉しかった。
「うん。ありがと」
そう答えて僕はマグカップを両手で包むようにして受け取り、フーフーと息を吹きかけながらゆっくりと口に運ぶ。
甘いのが好きな僕の為か、ほんのりではなく、ちゃんと甘い。
「風邪くらいで情けないねー、教え子に看病してもらうなんて」
「油断しちゃダメです。風邪って怖いから……」
自虐っぽく話す僕に対し、真面目な様子で答える名前。
「……うん、そうだね」
僕は軽口を叩くのをやめ、それ以上は何も言わず、ホットミルクをゆっくりと飲み干した。
空になったマグカップをすかさず手に取った名前は、すぐさま保健室を出て行った。
シンとする保健室。
1人では広すぎる室内に僕ひとり。
なんとなく心細い気持ちになるのは、決してうるさいわけじゃないけど、さっきまで側に居た名前が居なくなったからだろうか。
大人のくせに、風邪をひいてこんな気持ちになるなんてね、思ってもいなかった。
…… 名前は戻ってくるかな?
風邪が感染るといけないから、もういいよって、言わないと……体が、だるい……そんな事を考えているうちに、僕はすぐに眠ってしまったようだ。
目覚めると、窓から夕日が差し込んでいて室内は真っ赤に染まっていた。
体は汗だくで……高熱特有の関節の痛みやダルさはだいぶ軽減されていた。
寝る前に感じていた寒気も、今はもう感じない。
ベッドの傍らには、丸椅子に座った格好で上半身をベットに預け眠る名前の姿。
僕が寝ている間、側にいてくれたんだ……まだ短い付き合いだけど、本当に僕の教え子なのかな???
……いくらかスッキリとした頭になり思い出した。
そういえば、名前は風邪が原因で家族を1人亡くしていたはず。
だからか。
普段は雑な扱いなのに、風邪に対して少し大袈裟じゃない?ってくらい心配してくれたのは。
僕の事も、それなりに大事に思ってくれてるってコトね。
そんな事を思いながら、スヤスヤと眠る教え子を眺める僕の口角は穏やかに上がっていた。
次の日。
すっかり元気に戻った僕は、廊下ですれ違った硝子に呼び止められた。
「名前が先生の風邪が感染ったって、薬取りに来たんだけどさ……まさかとは思うが、さとる、生徒に手を出したわけじゃないよな?」
「そんなわけないでしょー?確かに可愛い教え子だけど、そういう可愛いじゃないからね?僕ってそんなに信用ない?」
硝子とそんな会話をした後、名前の部屋を訪れた。
扉をノックすると、
「はーい」
と、中から野薔薇の声。
「入るよ?」
声をかけてから、返事は待たずにズカズカと室内に入る。
「こういう事になるから、無駄な頑張り根性で無理して出てくんなって言ったのよ」
相変わらずの優しさが分かりづらい言い方。
野薔薇らしくて好きなんだけどね、実は。
「そうだね。僕が悪かったね。今度から気をつけるよ。……野薔薇が側に居てくれるなら心配いらないね」
「油断してた私も悪いけど……元気になったら先生に何か奢ってもらうって、決めた。先生、余るほどお金持ってそうだし」
名前は軽口を叩けるくらいには元気そうだし、そういう訳なら長居は無用だ。
「あんまり高いものねだられても困るんだけどね。じゃ、何がいいか考えておいてよ」
そう言って、僕は差し入れのスポーツドリンクを置いてさっさと部屋を後にした。
すっかり元気になった名前。
あれから随分と時間が経っているけど、名前からまだあの話はない。
後日、僕の方から尋ねてみた。
「もう決めた?奢るって、約束したよね」
「え?本当にいいの??」
「うん。いいよ」
名前は冗談で言ったつもりだったんだろうけど……自分の風邪が感染ったって事で、罪滅ぼしをしたい気持ちがないわけではない僕は、奢る事に何の不満もない。
頷きながら返事した。
「なら少し考えさせて!約束、忘れないでね?先生」
名前は一体何をねだってくるんだろう。
……こういう約束って、意外と楽しいもんだな。
情けない事に風邪をひいたらしい僕。
いつも雑な扱いをされる僕。
だけど、こんな時くらいは心配してくれるよね?僕の可愛い教え子たち。
そんな事をぼんやりと考えながら、わざとらしいくらい具合悪そうに教室のドアを開けながら朝のあいさつをする。
体がだるいのは本当だ。
30分くらいの遅刻で顔を出した僕にトゲのある非難の言葉を向けてくる生徒たちは、そのくせあまり意に介していない様子だ。
いつものコトって事だろう。
僕としても、そんな事より体調の悪さを心配してほしいんだけど……その事については言及する気配はない。
仕方ないから、わざとらしいけどハッキリと言う事にする。
「いやぁ〜、僕、風邪ひいちゃったみたいでね?具合が悪いんだよね……心配してくれる?」
「……先生も風邪ひく事あるんだ…… 」
最初に口を開いたのは最近転入してきた教え子の名前。
最強と豪語してるくせに嘘でしょ?とばかりに、意外そうな顔をしている……少しバカにしてるよね?
「そりゃ風邪くらいひく事もあるでしょーよ……僕の事、なんだと思ってんの?人間だよ?真っ当な……」
「真っ当な?それは知りませんが、風邪なら安静にしていた方がいいと思いますけど」
至極当然な事を冷静に言う恵。
相変わらず真面目だね〜……心配はしてくれないか。
「病気の状態で頑張られてもさ。自分はそれで満足かもしんないけど、感染されるかもしれないうちらは迷惑でしかないし」
野薔薇は野薔薇で真っ当なんだけど……もうちょっと優しさを混ぜてくれてもよくない?
「今日は自習って事で、良いんじゃね?」
サッパリと言い放った悠二のひと言で、今日は一日自習という事にみんなが同意する。
自習と言うものの、まあ、臨時休暇だよね。
今日1日どう過ごすかなー、なんてこぼしながら、各々教室から出て行こうとする。
僕を置き去りにして……寂しいねー。
本当に置いて行かれるのは虚しいので、みんなの列について一緒に教室を出た。
「僕はとりあえず医務室で休む事にするよ……」
誰に聞かれる事もないが、一応そんな事を言ってみる。
返事なんて期待してないけど、一応ね。
医務室まで行くのは面倒だな……
保健室の方にしよう。
医務室まで行けば硝子がいるだろうし、今は早く横になりたい……
保健室とはいわゆる保健室で、今はあまり使われていない。
誰もいない静まり返った保健室のベッドに潜り込む。
やば……寒気してきたかも……
ベッドに深く潜り寒気に耐えていると、部屋の扉が開く音がした。
「先生居る?医務室の方にいないみたいだったから……」
名前の声だ。
「……居るよ。僕の事、心配で来てくれたの?」
名前は僕の問いかけには答えず、代わりに部屋の隅にある薬品棚を開け閉めする音が聞こえてきた。
薬品棚といっても、ほとんど使われてない今は薬品は何にも入っちゃいないけど。
「あ、あった。……はい、先生」
名前は棚から体温計を探しだしてくれたようで、僕は差し出された体温計を受け取り、腋下に差し込む。
……39.2℃。
思ってたより高いな。
「高いですね。氷枕でも持って来る?」
体温計を覗き込む名前にそう言われたが、寒気がするからと断ると、近くにあるもう一台のベッドから剥ぎ取った布団を雑に被せられた。
2枚の布団を被ってる状態は少し重いが、これで少しは寒気がマシになるかもしれない。
「何か温かい飲み物持って来るね?」
そう言って名前は保健室を出て行った。
日頃の振る舞いのせいで、風邪くらいではみんな心配してくれないのだという事は自覚している。
でも、まさか、本当に心配して来てくれたのだろうか?
ほんのりいい香りを漂わせて、名前は戻ってきた。
「先生、体、起こせそう?」
僕が言われた通りに上体を起こすと、目の前にマグカップが差し出される。
あぁ、いい香りの正体はこれか。
寒気がするという僕の為に、名前ははちみつ入りホットミルクを作ってきてくれたようだ。
「……飲めます?」
何の確認もなしに作ったはいいけど僕が牛乳嫌いだったらどうするの?と思いつつも、素直に嬉しかった。
「うん。ありがと」
そう答えて僕はマグカップを両手で包むようにして受け取り、フーフーと息を吹きかけながらゆっくりと口に運ぶ。
甘いのが好きな僕の為か、ほんのりではなく、ちゃんと甘い。
「風邪くらいで情けないねー、教え子に看病してもらうなんて」
「油断しちゃダメです。風邪って怖いから……」
自虐っぽく話す僕に対し、真面目な様子で答える名前。
「……うん、そうだね」
僕は軽口を叩くのをやめ、それ以上は何も言わず、ホットミルクをゆっくりと飲み干した。
空になったマグカップをすかさず手に取った名前は、すぐさま保健室を出て行った。
シンとする保健室。
1人では広すぎる室内に僕ひとり。
なんとなく心細い気持ちになるのは、決してうるさいわけじゃないけど、さっきまで側に居た名前が居なくなったからだろうか。
大人のくせに、風邪をひいてこんな気持ちになるなんてね、思ってもいなかった。
…… 名前は戻ってくるかな?
風邪が感染るといけないから、もういいよって、言わないと……体が、だるい……そんな事を考えているうちに、僕はすぐに眠ってしまったようだ。
目覚めると、窓から夕日が差し込んでいて室内は真っ赤に染まっていた。
体は汗だくで……高熱特有の関節の痛みやダルさはだいぶ軽減されていた。
寝る前に感じていた寒気も、今はもう感じない。
ベッドの傍らには、丸椅子に座った格好で上半身をベットに預け眠る名前の姿。
僕が寝ている間、側にいてくれたんだ……まだ短い付き合いだけど、本当に僕の教え子なのかな???
……いくらかスッキリとした頭になり思い出した。
そういえば、名前は風邪が原因で家族を1人亡くしていたはず。
だからか。
普段は雑な扱いなのに、風邪に対して少し大袈裟じゃない?ってくらい心配してくれたのは。
僕の事も、それなりに大事に思ってくれてるってコトね。
そんな事を思いながら、スヤスヤと眠る教え子を眺める僕の口角は穏やかに上がっていた。
次の日。
すっかり元気に戻った僕は、廊下ですれ違った硝子に呼び止められた。
「名前が先生の風邪が感染ったって、薬取りに来たんだけどさ……まさかとは思うが、さとる、生徒に手を出したわけじゃないよな?」
「そんなわけないでしょー?確かに可愛い教え子だけど、そういう可愛いじゃないからね?僕ってそんなに信用ない?」
硝子とそんな会話をした後、名前の部屋を訪れた。
扉をノックすると、
「はーい」
と、中から野薔薇の声。
「入るよ?」
声をかけてから、返事は待たずにズカズカと室内に入る。
「こういう事になるから、無駄な頑張り根性で無理して出てくんなって言ったのよ」
相変わらずの優しさが分かりづらい言い方。
野薔薇らしくて好きなんだけどね、実は。
「そうだね。僕が悪かったね。今度から気をつけるよ。……野薔薇が側に居てくれるなら心配いらないね」
「油断してた私も悪いけど……元気になったら先生に何か奢ってもらうって、決めた。先生、余るほどお金持ってそうだし」
名前は軽口を叩けるくらいには元気そうだし、そういう訳なら長居は無用だ。
「あんまり高いものねだられても困るんだけどね。じゃ、何がいいか考えておいてよ」
そう言って、僕は差し入れのスポーツドリンクを置いてさっさと部屋を後にした。
すっかり元気になった名前。
あれから随分と時間が経っているけど、名前からまだあの話はない。
後日、僕の方から尋ねてみた。
「もう決めた?奢るって、約束したよね」
「え?本当にいいの??」
「うん。いいよ」
名前は冗談で言ったつもりだったんだろうけど……自分の風邪が感染ったって事で、罪滅ぼしをしたい気持ちがないわけではない僕は、奢る事に何の不満もない。
頷きながら返事した。
「なら少し考えさせて!約束、忘れないでね?先生」
名前は一体何をねだってくるんだろう。
……こういう約束って、意外と楽しいもんだな。
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