第百一話※R-18表現アリ

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名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)
スタンドからの呼ばれ方(77話で使用)

舞台はとあるカントリー風な民家。


(あ&神)「「ジングルベール、ジングルベール、クリスーマスー♪」」


たき火が燃えているその部屋では、少女神楽とその姉である音莉が(パンツ一丁で両手を広げて片足立ちしている新八と言う名の)クリスマスツリーに飾り付けをしていた。


てっぺんに星を乗せ、その耳にはメガネをかける。


(神)「できたー! お姉ちゃん、出来たよ!」


(あ)「うん! …お母様、クリスマスツリーの飾りつけ終わったよ!」


(妙)「まァ素敵! やっぱり無理してでも用意してよかったわね」


(あ)「やっぱりツリーがないと雰囲気でませんものね」


(神)「(ここはどこかの国のごくごくありふれた平和な家庭。今年も私達はいつもと変わらずごくごくありふれた平和で穏やかなクリスマスを過ごしていた)」


(新)「(どこがありふれてんだ! 人間植木鉢があんぞ!? つーかなんでツリー役!? メガネしか飾りねーぞ!? つーかなんで音莉さん『様』づけ!?)」


(神)「ママ、今年こそきっとサンタさん来てくれるよね? 私イイ子にしてたもの」


(妙)「さて、どうかしら。パーティー用のミートパイをつまみ食いしてしまうような食いしん坊さんの所には来てくれないかも」


(あ)「バレてないと思った? ちゃんと見てたよ。神楽もおっちょこちょいなんだから」


(神)「もう! ママとお姉ちゃんったら!」


(妙)「うっふっふっふ。ジョークよ。サンタさんには内緒にしておくわ」


(あ)「でも、もうつまみ食いしちゃダメよ?」


(神)「はーい。うっふっふっふ」


(新)「(腹立つ…アメリカン小芝居はもういいから早く寝てサンタ待てよ! 足痺れてきてんだよ、こっちは!)」


そしてその頃、ソファーでは…


(長)「はむ……はは、無理もないさ。ママのミートパイはテキサス一だからな」


長谷川が出来たてのミートパイを食べていた。


(新)「(テキサスなの!? ここ!)」


(長)「サンタにも是非食べてほしいものだ。おっと、あれ以上太らせたらトナカイから苦情が来るかな? あーっはっはっは!」


(新)「(パパまでうぜーよ。家族揃ってウィットに飛んでてうぜーよ!)」


(神)「見て、ママ、お姉ちゃん! ゴキブリがミートパイにたかってるわ!」


(妙)「アラ、大変!」


バコッ!


(長)「ふごっ!」


お妙が触角の生えてきた長谷川の後頭部をスリッパで殴り、長谷川の顔がミートパイに突っ込む。


(新)「(ゴキブリかーい! どんだけウィットにとんだゴキブリ!? お父さん役やるんじゃなかったのかよ!)」


(あ)「多分最近出てたゴキブリの親玉だわ。これで一掃できましたわね」


(新)「(ゴキブリの親分(パパ)!? 出演した意味ねーだろ! じゃあパパはどこ!?)」


(妙)「このパイはパパの仏壇に供えておきましょう」


そう言いながらお妙は長谷川を仏壇の方へと転がした。


(新)「(なんでテキサスに仏壇?)」


(神)「パパ、ミートパイ好きだったもんね。きっと喜んでくれるよ!」


(あ)「いいなぁ、お父様。お母様のミートパイ丸々一個食べられるなんて…」


(新)「(いいも何も、喜ぶワケねーだろ! 今やただのゴキブリパイだよ!)」


(神)「(私のパパはベトサム戦争の英雄。五年前のクリスマス、戦地から私達の元に届いたのは約束していたプレゼントではなく、パパが戦死したという知らせだった)」


(新)「(ねェ、なんかムダに重たい話になってきたんだけど…)」


(神)「(敵と交戦中、懐から何かを落としたパパは弾丸が飛び交う中それを取りに戻りハチの巣にされた。パパの死体は原型が解らなくなる程…パイまみれだったという)」


(新)「(ただのパイ投げ祭りじゃねーか! なんでパイ投げ祭りで戦死してんの!? 一体どんな英雄だったの!? パパ!)」


(神)「(パイまみれのパパの腕には大切そうにあるものが抱かれていた。そう…それは私とお姉ちゃんへのプレゼント……約束したミートパイだった)」


(新)「(そこも!?なんでパイまみれでパイ大切に抱いてんだよ! どんだけミートパイまみれなんだよ、この家族! もういいだろ! ミートパイって言ってりゃアメリカンなカンジになると思ったら大間違いだぞ!)」











(神)「(あれから五度目のクリスマスがきたけれど、私はまだ、お姉ちゃんに無理言って譲ってもらったあのミートパイをつまみ食いできずにいる)」


布団に潜る神楽の膝の上には、カビの山となっているミートパイだったであろうものが入っていた箱が乗っていた。


(新)「(出来るワケねーだろ! ナウシカの腐海みたいな事になってんじゃねーか!)」


(神)「(パパを失った悲しみ…そしてパパを死なせてしまった自責の念。私がそれらを乗り越えられるまで…このパイをつまみ食い出来るようになるまで、一体私は何度クリスマスを過ごせばいいのだろうか。私は…ホントは知っていた。例えサンタなんかが来た所で私の本当に欲しい物はもう…手に入らない事を……)」


そして神楽はその箱を枕の上の台の上に置くと、灯りを消してやがて眠り始めた。


(新)「(重たっ! とんでもねェフリしちゃったよ! どうすればいいんだよ、こんなの。一体サンタさんは何をプレゼントすれば正解なんだ!?)」


するとしばらくして窓の外に人影が現れた。


(近)「………」


その人影…サンタである近藤は、そのカビ山のミートパイの箱を横目でじっと見つめていた。











そして次の日。


(神)「(翌朝、目を覚ました彼女が目にしたものはサンタのプレゼントでも母がくれたプレゼントでもなかった。……無残に食い荒らされた父の形見であるミートパイだった)」


(妙)「オーマイガー! 泥棒よ、泥棒の仕業だわ! なんて事なの!? サンタどころか泥棒に入られるなんて…」


(あ)「折角のお父様の形見が…どうしてクリスマスはいっつも私達から何かを奪っていくのよ!」


(神)「(騒ぎ立てる母親の姿。悲しみに暮れる姉の姿。最低の朝…最低のクリスマス……でも彼女は不思議と穏やかな気分に包まれていた。まるで長い間自分を縛り続けていた呪縛から解放されたように。父が許してくれたように感じた。父が『前に進めよ』と背中を押してくれているように感じたのだ)」


そして家中が悲しみに明け暮れる中、神楽は家の中をご機嫌でスキップしながら駆け回る。


(神)「(神様が私の代わりにミートパイをつまみ食いしてくれたのかな…? 神様がお腹を壊す絵を想像してクスリと笑った)」


そして神楽がトイレの扉を開ける。だがその瞬間、神楽は驚いてその場で固まってしまった。


(神)「(でもそれは神様の仕業でも、まして泥棒の仕業でもなかった)」


…なんと、トイレの便器にウ○コで『メリークリスマス』と書かれていたのだ。


(神)「サ、サンタさん…」
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