第九十七話(月詠篇)
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~no side~
満月が煌々と照らし、賑やかな音が鳴り響く吉原桃源郷。
そんな街を一望できる建物から、月を眺めている男がいた。
(?)「思いもしなんだ」
その男が放った言葉に、先程まで共に戯れていた女が髪をとかしながら振り返る。
(?)「まさか吉原で…月が見れるようになるとは……」
「やだ、何言ってるんですか? 旦那が吉原に来るようになったのは吉原が解放されてからでしょ?」
女が男の腕に自分の腕を絡める。
(?)「…いや」
「えっ?」
(?)「遠い昔に…あったのさ」
女は男を不思議そうに見上げる。
(?)「天井は閉じていたが…だがその頃にも月はあった。小さくとも健気で美しい月が」
男は満月を見ながら、一人言のようにそう呟いた。
・
・
・
・
その頃、吉原の街ではとある騒ぎが起きていた。
「「待てェェェェェェェェ!」」
「はぁ、はぁ…」
百華の者達から逃げ回る、一人の男。
するとその前に…
「………!」
(月)「………」
月詠が現れ、男は足を止めた。
「はぁ、はぁ…」
前には月詠、そして後ろを振り返れば百華の女達。
「くっ…」
挟み撃ちにされた男は歯を食いしばる。
だが男が再び前を見ると、そこには月詠の姿はなかった。
と次の瞬間…
バシッ…
「っ……!」
バタン…
瞬時に男の背後に回った月詠が男の首のツボを攻撃すると、男はその場に倒れた。
そして百華の女が男の懐をまさぐる。
(月)「…またか」
月詠がそう言うと、百華の女は男の懐から取り出した、袋に入った白い粉…非合法薬物を月詠に見せる。
「今月に入ってもう七件目です」
(月)「最早捨て置くワケにはいくまい。このままでは吉原は取り返しのつかない事になる」
「それと…」
もう一人の百華の女が月詠に何かを耳打ちする。
(月)「…そうか」
・
・
・
・
そして男を捕らえた月詠は街を巡回し始める。すると…
ドン!
すれ違いざまに店から出てきた男…先ほど月を仰ぎ見ていた男とぶつかる。
(?)「申し訳ない」
(月)「いや、こちらこそ」
そしてそのまま何事もなかったかのようにすれ違う二人。
(?)「立派になったな…月詠」
その男の言葉は月詠には聞こえなかった。
だが月詠が振り返ると、その男の姿はもうなかった。
(月)「ふー…」
月詠はその男が消えた先を見つめながら、キセルの煙を吐いた。
そう…月詠はすれ違いざまに見たのだ。あの男の首の後ろに…蜘蛛の入れ墨があるのを…。
───月明かりが照らす吉原桃源郷。そこに張り巡らされた蜘蛛の巣…その主は、捕らわれた獲物を食らおうとしていた。
満月が煌々と照らし、賑やかな音が鳴り響く吉原桃源郷。
そんな街を一望できる建物から、月を眺めている男がいた。
(?)「思いもしなんだ」
その男が放った言葉に、先程まで共に戯れていた女が髪をとかしながら振り返る。
(?)「まさか吉原で…月が見れるようになるとは……」
「やだ、何言ってるんですか? 旦那が吉原に来るようになったのは吉原が解放されてからでしょ?」
女が男の腕に自分の腕を絡める。
(?)「…いや」
「えっ?」
(?)「遠い昔に…あったのさ」
女は男を不思議そうに見上げる。
(?)「天井は閉じていたが…だがその頃にも月はあった。小さくとも健気で美しい月が」
男は満月を見ながら、一人言のようにそう呟いた。
・
・
・
・
その頃、吉原の街ではとある騒ぎが起きていた。
「「待てェェェェェェェェ!」」
「はぁ、はぁ…」
百華の者達から逃げ回る、一人の男。
するとその前に…
「………!」
(月)「………」
月詠が現れ、男は足を止めた。
「はぁ、はぁ…」
前には月詠、そして後ろを振り返れば百華の女達。
「くっ…」
挟み撃ちにされた男は歯を食いしばる。
だが男が再び前を見ると、そこには月詠の姿はなかった。
と次の瞬間…
バシッ…
「っ……!」
バタン…
瞬時に男の背後に回った月詠が男の首のツボを攻撃すると、男はその場に倒れた。
そして百華の女が男の懐をまさぐる。
(月)「…またか」
月詠がそう言うと、百華の女は男の懐から取り出した、袋に入った白い粉…非合法薬物を月詠に見せる。
「今月に入ってもう七件目です」
(月)「最早捨て置くワケにはいくまい。このままでは吉原は取り返しのつかない事になる」
「それと…」
もう一人の百華の女が月詠に何かを耳打ちする。
(月)「…そうか」
・
・
・
・
そして男を捕らえた月詠は街を巡回し始める。すると…
ドン!
すれ違いざまに店から出てきた男…先ほど月を仰ぎ見ていた男とぶつかる。
(?)「申し訳ない」
(月)「いや、こちらこそ」
そしてそのまま何事もなかったかのようにすれ違う二人。
(?)「立派になったな…月詠」
その男の言葉は月詠には聞こえなかった。
だが月詠が振り返ると、その男の姿はもうなかった。
(月)「ふー…」
月詠はその男が消えた先を見つめながら、キセルの煙を吐いた。
そう…月詠はすれ違いざまに見たのだ。あの男の首の後ろに…蜘蛛の入れ墨があるのを…。
───月明かりが照らす吉原桃源郷。そこに張り巡らされた蜘蛛の巣…その主は、捕らわれた獲物を食らおうとしていた。
1/25ページ