第二十一話
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依頼人さんの依頼内容を聞きながらの食事を終え、現在私達はお屋敷の縁側に腰かけていて。
その最中、先程依頼人さんが言っていた話を思い出す。
「一代で角屋をここまで大きくして、江戸一番の花火師と呼ばれた人だったのですが…。病気で倒れた母の面倒を見るって言って引退して以来様子がおかしくなって。夜中に徘徊したり2、3日家を開けたり、手に負えなくなってしまいまして…」
今そのお爺様は、雪景色の中、拾い庭でワンちゃんを撫でており、神楽ちゃんもそこに付き添っている。
「よーしよし、ジャンクロードワンダム。今日も毛だらけだな、お前。なんで顔まで毛生えてんだ、よーしよし」
(神)「へェ、ジャンノークソーガンダムっていうんだ、カワイイネ」
「違う違う、ジャンクッソーマミレだ」
(神)「へぇ、クソマミレジャンって言うんだ、カワイイネ」
「そうそう、マイケル J.ドッグスってんだ」
(あ)「……すごい、全く会話がかみ合ってないのに何故か成立しちゃってる」
(新)「……気が合うみたいですね」
(銀)「にしても男ってモンは脆いねェ。女は旦那が死んでも結構元気にやってくもんなのよ、意外と。でも男ときたら嫁さんに先立たれるとみるみる弱っちまうもんなァ、悲しいがな」
(新)「いや、まだ奥さん死んでませんよ」
(あ)「………」
私…銀さんが先に死んじゃったら、世間一般の女性のように元気に過ごしていけるだろうか。
(あ)「(…それは、自信ないかも)」
だって、私が迷って立ち止まった時、今手を引いてくれるのは銀さんの大きな手で。
その手がなくなってしまったら、私はきっと…自分を見失ってしまうような気がするから。
(あ)「私、銀さんがいなくなったら、きっと生きていけないです。ショック死しちゃうかも…」
……きっと今の私は、彼がいなくなったら、彼の後を追ってしまうだろうから。
そんな私を見て、銀さんはニヤリと笑う。
(銀)「なーに、 音莉ちゃん、可愛い事言ってくれるじゃねーか。そんなに銀さんの事好きか、大好きか?」
(あ)「そ、それはその…そうかも、しれないですけど……」
今さらになってすごく恥ずかしいことを口走ってしまったと少しだけ後悔してしまう。
(銀)「まァ俺も音莉が側にいないだけで普段の半分も力が出ねェってくらいだからよォ、俺も脆いモンよ」
(新)「いや、それただやる気がないだけじゃ…」
(あ)「と言いますかそれは流石に言い過ぎでは…」
(銀)「いやいや、言っとくけどお前が思ってる以上に銀さん音莉にベタ惚れだからね? まァ…毎朝毎晩のキスだけじゃ、やっぱ銀さんの特大の愛情は全部伝りきれねーモンな」
(あ)「も、もう…!」
(銀)「だから音莉」
ふいに銀さんの大きな手が、私の頭の上に置かれる。
(銀)「何度も言ってるが…一人で無茶すんじゃねーぞ、心も身体も。ちゃんと俺の側で、俺に護られててくれ。俺の手の届く範囲にいてくれよ。じゃなきゃ…お前に先立たれちゃ、俺はきっと後を追っちまうからよ」
その銀さんの温かい手、声色がいつもの銀さんとは少し違う気がして…いつもより、切実な願いが込めらている気がして、一瞬唖然としてしまったけれど、静かに頷いてみせれば、銀さんは目を細めて笑ってくれる。
……そう、結局男であれ女であれ、一番大好きな人が、それも長く寄り添ってきた人がいなくなるのは、言葉で言い表せられない悲しみがきっとある。
だけれど。
(あ)「……でも奥様、聞いた感じじゃもう長くはないんですよね」
(新)「三年前に倒れてからずっと寝たきりなんですって。その面倒見るから花火やめたってのに、そのせいであんなになっちゃうなんて。やっぱり花火好きだったんだ…そう思うとなんかお爺ちゃんもかわいそ……」
言いかけていた新八君が、突然言葉を切った。
(あ)「新八君、どうかした……って、あっ!」
新八君の視線の先…庭では、ワンちゃんと戯れていたハズのお爺様が松の木に登っていたのだ。
(新)「クソジジイ、何やってんだ!」
新八君と慌てて木に駆け寄るも、お爺様は「ひゃっほー!」と声を上げながら止まる気配がない。
(神)「愛人に会いに行くんだって」
(新)「いるかァァァァァァ、んなもん! また屋敷を抜け出してフラフラするつもりだな、降りてこい!」
すると銀さんが「どけ」と言いながら木刀を片手に私達の横を通り過ぎていき。
(銀)「わたああああああっ!」
木刀を振り上げたかと思えば、お爺様を乗せたまま松の木を根元からバッサリぶった斬ってしまった。
(新)「えええええええええ!?」
倒れていく松の木と共に、お爺様は真冬の池にダイブしてしまう。
(銀)「油断も隙もありゃしねーな」
(あ)「あ、あの…流石にやりすぎじゃないですか? 世話ですよ、世話。抹殺じゃないですよ、抹殺じゃ。ていうかこんな寒い日の池…風邪ひいちゃうじゃ済まないんじゃ……」
しかしそんな私の心配をよそに、お爺様が雄たけびを上げ華麗に宙返りを決めながら、池から飛び出してきたのだ。
(あ)「え、えええええええええっ!」
と、というかかなりの御年だと思うのですが、先程から木登りだったり池に落ちても無傷だったり、どんな身体能力をしていらっしゃるのでしょうか。
(新)「あっ、まだ諦めてませんよ!」
(銀)「何!?」
そのまま屋敷の庭を自由に走り出したお爺様を、私達も必死で追いかける。
(銀)「なんだよ、あの元気。本当に老人か!?」
すると今度はお爺様がエスカルゴを四つ…私達に向けてフリスビーのように放ってきたのだ。
そのエスカルゴは、綺麗に四つの軌道に分かれて飛んできて…一体どんなコントロール力なのだろうか。
(銀)「ていや!」
(神)「ほあた!」
(あ)「はああっ!」
私達はそれぞれ、木刀、傘、ハリセンでエスカルゴを弾き飛ばし。
(新)「あたっ!」
…新八君は鼻に直撃してしまって鼻血を出してしまっているけれど。
しかし弾き飛ばしたエスカルゴもまた、屋敷の屋根を崩れさえ、部屋の襖を破って…二次災害を生んでしまう。
(新)「ちょっと、家壊してません!?」
(銀)「たあああああっ!」
痺れを切らした銀さんは、今度は手にしていた木刀をお爺さんの方に投げ飛ばし。
「おわああああっ!」
流石のお爺さんも、屋敷の部屋の襖に衝突しながらも木刀をかわし。
そしてお爺さんがスライディングしながら襖をなぎ倒して侵入し、
銀さんと神楽ちゃんまでもが襖を蹴り倒して侵入した、その部屋は。
(新)「あっ…」
(あ)「やっちゃった…」
……運の悪いことに、奥様の松さんが眠っている部屋であった。
その最中、先程依頼人さんが言っていた話を思い出す。
「一代で角屋をここまで大きくして、江戸一番の花火師と呼ばれた人だったのですが…。病気で倒れた母の面倒を見るって言って引退して以来様子がおかしくなって。夜中に徘徊したり2、3日家を開けたり、手に負えなくなってしまいまして…」
今そのお爺様は、雪景色の中、拾い庭でワンちゃんを撫でており、神楽ちゃんもそこに付き添っている。
「よーしよし、ジャンクロードワンダム。今日も毛だらけだな、お前。なんで顔まで毛生えてんだ、よーしよし」
(神)「へェ、ジャンノークソーガンダムっていうんだ、カワイイネ」
「違う違う、ジャンクッソーマミレだ」
(神)「へぇ、クソマミレジャンって言うんだ、カワイイネ」
「そうそう、マイケル J.ドッグスってんだ」
(あ)「……すごい、全く会話がかみ合ってないのに何故か成立しちゃってる」
(新)「……気が合うみたいですね」
(銀)「にしても男ってモンは脆いねェ。女は旦那が死んでも結構元気にやってくもんなのよ、意外と。でも男ときたら嫁さんに先立たれるとみるみる弱っちまうもんなァ、悲しいがな」
(新)「いや、まだ奥さん死んでませんよ」
(あ)「………」
私…銀さんが先に死んじゃったら、世間一般の女性のように元気に過ごしていけるだろうか。
(あ)「(…それは、自信ないかも)」
だって、私が迷って立ち止まった時、今手を引いてくれるのは銀さんの大きな手で。
その手がなくなってしまったら、私はきっと…自分を見失ってしまうような気がするから。
(あ)「私、銀さんがいなくなったら、きっと生きていけないです。ショック死しちゃうかも…」
……きっと今の私は、彼がいなくなったら、彼の後を追ってしまうだろうから。
そんな私を見て、銀さんはニヤリと笑う。
(銀)「なーに、 音莉ちゃん、可愛い事言ってくれるじゃねーか。そんなに銀さんの事好きか、大好きか?」
(あ)「そ、それはその…そうかも、しれないですけど……」
今さらになってすごく恥ずかしいことを口走ってしまったと少しだけ後悔してしまう。
(銀)「まァ俺も音莉が側にいないだけで普段の半分も力が出ねェってくらいだからよォ、俺も脆いモンよ」
(新)「いや、それただやる気がないだけじゃ…」
(あ)「と言いますかそれは流石に言い過ぎでは…」
(銀)「いやいや、言っとくけどお前が思ってる以上に銀さん音莉にベタ惚れだからね? まァ…毎朝毎晩のキスだけじゃ、やっぱ銀さんの特大の愛情は全部伝りきれねーモンな」
(あ)「も、もう…!」
(銀)「だから音莉」
ふいに銀さんの大きな手が、私の頭の上に置かれる。
(銀)「何度も言ってるが…一人で無茶すんじゃねーぞ、心も身体も。ちゃんと俺の側で、俺に護られててくれ。俺の手の届く範囲にいてくれよ。じゃなきゃ…お前に先立たれちゃ、俺はきっと後を追っちまうからよ」
その銀さんの温かい手、声色がいつもの銀さんとは少し違う気がして…いつもより、切実な願いが込めらている気がして、一瞬唖然としてしまったけれど、静かに頷いてみせれば、銀さんは目を細めて笑ってくれる。
……そう、結局男であれ女であれ、一番大好きな人が、それも長く寄り添ってきた人がいなくなるのは、言葉で言い表せられない悲しみがきっとある。
だけれど。
(あ)「……でも奥様、聞いた感じじゃもう長くはないんですよね」
(新)「三年前に倒れてからずっと寝たきりなんですって。その面倒見るから花火やめたってのに、そのせいであんなになっちゃうなんて。やっぱり花火好きだったんだ…そう思うとなんかお爺ちゃんもかわいそ……」
言いかけていた新八君が、突然言葉を切った。
(あ)「新八君、どうかした……って、あっ!」
新八君の視線の先…庭では、ワンちゃんと戯れていたハズのお爺様が松の木に登っていたのだ。
(新)「クソジジイ、何やってんだ!」
新八君と慌てて木に駆け寄るも、お爺様は「ひゃっほー!」と声を上げながら止まる気配がない。
(神)「愛人に会いに行くんだって」
(新)「いるかァァァァァァ、んなもん! また屋敷を抜け出してフラフラするつもりだな、降りてこい!」
すると銀さんが「どけ」と言いながら木刀を片手に私達の横を通り過ぎていき。
(銀)「わたああああああっ!」
木刀を振り上げたかと思えば、お爺様を乗せたまま松の木を根元からバッサリぶった斬ってしまった。
(新)「えええええええええ!?」
倒れていく松の木と共に、お爺様は真冬の池にダイブしてしまう。
(銀)「油断も隙もありゃしねーな」
(あ)「あ、あの…流石にやりすぎじゃないですか? 世話ですよ、世話。抹殺じゃないですよ、抹殺じゃ。ていうかこんな寒い日の池…風邪ひいちゃうじゃ済まないんじゃ……」
しかしそんな私の心配をよそに、お爺様が雄たけびを上げ華麗に宙返りを決めながら、池から飛び出してきたのだ。
(あ)「え、えええええええええっ!」
と、というかかなりの御年だと思うのですが、先程から木登りだったり池に落ちても無傷だったり、どんな身体能力をしていらっしゃるのでしょうか。
(新)「あっ、まだ諦めてませんよ!」
(銀)「何!?」
そのまま屋敷の庭を自由に走り出したお爺様を、私達も必死で追いかける。
(銀)「なんだよ、あの元気。本当に老人か!?」
すると今度はお爺様がエスカルゴを四つ…私達に向けてフリスビーのように放ってきたのだ。
そのエスカルゴは、綺麗に四つの軌道に分かれて飛んできて…一体どんなコントロール力なのだろうか。
(銀)「ていや!」
(神)「ほあた!」
(あ)「はああっ!」
私達はそれぞれ、木刀、傘、ハリセンでエスカルゴを弾き飛ばし。
(新)「あたっ!」
…新八君は鼻に直撃してしまって鼻血を出してしまっているけれど。
しかし弾き飛ばしたエスカルゴもまた、屋敷の屋根を崩れさえ、部屋の襖を破って…二次災害を生んでしまう。
(新)「ちょっと、家壊してません!?」
(銀)「たあああああっ!」
痺れを切らした銀さんは、今度は手にしていた木刀をお爺さんの方に投げ飛ばし。
「おわああああっ!」
流石のお爺さんも、屋敷の部屋の襖に衝突しながらも木刀をかわし。
そしてお爺さんがスライディングしながら襖をなぎ倒して侵入し、
銀さんと神楽ちゃんまでもが襖を蹴り倒して侵入した、その部屋は。
(新)「あっ…」
(あ)「やっちゃった…」
……運の悪いことに、奥様の松さんが眠っている部屋であった。
