第百九十六話(さらば真選組篇)
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~no side~
あちこちから黒煙が漂う中、総悟、神楽、信女の三人はそこに立っていた。
(沖)「てめェ…一体どういうつもりだ。そこどけ」
(神)「どいていいアルか? 本気でやりたいなら続ければいい。迷ってるならやめろ。もしお前らが本気だったなら、私は無事じゃなかったけどな」
(沖&今)「「………」」
(神)「音莉の教えアル。何か目的をしっかり持っているんじゃなかったら…迷いのある、自分も相手も傷つけるだけの戦いなんて、しちゃダメって。私が友達と喧嘩した時に、音莉は言うてたネ」
(沖)「音莉はてめーの母ちゃんか」
(神)「そうアル、音莉は私のもう一人の大事なマミーネ。だから私のマミーの教えをありがたく受け取るアル」
(沖)「…そうかい」
(神)「とにかくこのままじゃ黒い警察も白い警察も潰されるアル。こんな事やってる場合じゃないネ」
(沖)「誰のせいだと思ってんだィ。コイツらはな…」
(神)「コイツ"ら"の事は知らない。でも、信女(コイツ)の事は知ってるアル。コイツが昔何をやったかなんて知らない。でも、今のコイツは知ってるアル。悪い奴じゃないアル」
そう言いながらも神楽が思い出すのは、共に国盗り合戦で戦った事…共に缶蹴りをした事。
(神)「音莉だって、銀ちゃんの昔の事なんて気にせず、ずっと今の銀ちゃんを見てるアル。…今の銀ちゃんから、昔の銀ちゃんがやった事をそれでも意味がある事だったんだと捕らえようとしてるアル。お前だって、今のコイツの事を見ようとすれば出来るハズネ」
だがその背後…信女が神楽の首元に刀の切っ先をあてがう。
(今)「このまま後ろからアナタを斬り殺しても?」
舌打ちをしながら、総悟が刀を構える。
(今)「何も知らない…私はそういう事が出来る人間」
(神)「いいアルヨ。お前が本当にそうしたいと思ってるなら、好きにしろヨ」
緊迫した空気が流れる中、それでも神楽は、信女の方を振り返ると…
(神)「でも…もう泣くなヨ」
…そう言いながら見せた優しい笑みは、共に過ごしてきた"彼女"の笑みに似た、柔らかい笑み。
(沖)「(似てる…似てやがる、音莉の笑みに)」
まるで…親子のように、柔らかく全てを包み込むような笑み。一緒に過ごしていればここまで似てしまうものなのかと総悟は内心感じた。
(神)「自分にもうウソはつくなヨ。私もそうだった。でもここで…みんなと出会って変わった。新八が、銀ちゃんが…音莉が、いっぱい私を甘やかしてくれて、私は…本当の自分になる事が出来た。この地球(ほし)は自由の星ネ。自分の生きたいように生きていいアル」
さっと、その場に柔らかい風が吹く。
(今)「(私は、命令されれば誰だって殺せる。そうやって育てられた。そうやって生きてきた。なのに、あの人と…松陽と出会っておかしくなってしまった。あんな風に生きられたら…そう思ってしまった。初めて人が斬れなかった。全部奪っておきながら、とどめをさせなかった。私に出来るのは、異三郎を終わらせてあげる事だけ)」
信女が思い出すのは、少し髪も伸びた自分が、縁側で夕日を眺めていた時の事。
(佐)「人を斬るのはもう嫌になりましたか?」
背後から近づいてきた佐々木に、信女は「別に」と返す。
すると佐々木は『マスタードーナツ』と書かれた箱を床に置き、自身も信女の横であぐらをかいて座る。
(佐)「ドーナツ…好きでしたよね?」
佐々木はドーナツを二つ手に取ると、一つを信女の方に差し出し、信女も無表情のままそれを受け取る。
そしてドーナツを頬張る佐々木を眺めていると…
(佐)「食べなさい。これからは私も一緒に食べます」
(今)「………!」
信女が目を見開き、刀を構える。
総悟もその殺気に気付き、神楽を護ろうとする…が、すぐに標的が違う事に気が付いた。
信女が神楽を押しのけつつも、そちらに飛んできていた錫杖を弾き返す。
だが…
グサリッ!!
(神&沖)「「………!」」
…さらに飛んできていた小刀が、信女の腹に刺さったのだ。
そのまま崩れ落ち、膝をついてしまう。
(神)「信女ェェェェェェェェェェ!!」
慌てて信女に駆け寄る神楽と総悟。
(神)「オイ、しっかりするアル!」
たちまち腹部が白から赤に染まっていくが、信女は荒い息をしながらもトランシーバーを取り出した。
(今)「黒縄島に展開する全部隊に伝える。直ちにこの戦場から離脱しなさい。上空部隊は敵艦隊をけん制すると共に、地上部隊の退却を援護を」
『この声は…今井副長!?』
『し、しかし…長官は敵を殲滅するまで戦い続けろと……』
(今)「異三郎(ちょうかん)は…多分もう戻ってこない。ここからは各自、自分の命を再優先に行動して。例え、見廻組がなくなっても」
しかしトランシーバーの向こうからは、「お待ちなさい!」という佐々木の声が返ってくる。
(佐)『信女さん! 一体何があったんですか!? 信女さ…』
だが襲ってきた奈落の男に、佐々木の持っていたトランシーバーは弾き飛ばされてしまっていた。
そしてそこまで伝え終わったと同時に、前のめりに体勢を崩してしまう信女の身体を神楽が受け止める。
(神)「信女!!」
(今)「行って。早く。私の気が変わらないうちに。早くしないと………来る」
その時、総悟は自身の刀を持つ右手が震えている事に気付いた。
と次の瞬間…
ドォォォォォォォォォォォォォン!!!
と爆撃のような音が響き、それがまるで超音波のように総悟達の身体へと響く。
音の出所を見てみれば…
(今)「国の命さえさらう……本物の死神(からす)が」
……見えた、一人の人影。
その男は編傘を被り、長い麦色の髪をなびかせ、黒いマスクをし……ただ、並々ならぬ雰囲気を醸し出していた。
その存在はまるで…絶望を想起させるよう。
その男は総悟達の前で立ち止まる。
(?)「…骸、一度ならず二度までも、主(あるじ)を裏切りますか。一度目は…この私を。二度目は佐々木(あのおとこ)を。どちらも命(めい)は同じだった。あの男を斬る事だった」
「私を斬れ。それが私の復讐だ」
昔…佐々木の言葉を思い出しながら、信女は腹に刺さった小刀を抜くと、立ち上がる。
それと同時にボタボタと血が滴り落ちる。
(今)「私はもう…誰の命(めい)にも従うつもりはない」
「食べなさい。これからは私も一緒に食べます」
(今)「それが、異三郎であろうと、あなた達であろうと」
腹の傷を押さえながら、信女は刀を地面に突き刺し、それを杖の代わりにしてなんとかそこに立つ。
(今)「誰を斬る事になろうとも、自分の意志でこの剣をふるう…それが、私の贖罪」
(?)「……骸、どうやら君の羽は、とうの昔に散っていたようですね。その羽ではもうどこにも飛べはしない。どこにも逃げられはしない」
と次の瞬間、男の姿が一瞬にして消えた。
かと思えば…
(今)「………!」
……気が付けば、男は信女の背後。
(?)「真(まこと)の八咫烏の羽からは、何者も逃れられはしない」
そして男が一瞬にして刀を抜くが、それを瞬時に神楽が割り込み、傘で受け止める。
(神)「ぬおおおおおおおおおおおお!!」
なんとか地面に足をふんばる神楽。その神楽が蹴りを一つ入れ、男はそれを拳で受け止める。
だが神楽が攻撃をし、男が防御していたにも関わらず、男の防御の拳一つのおかげで、神楽が蹴りを食らわせたその足の肉がさけて血が吹き飛んだ。
(神)「なっ…!」
(?)「ほう…これは珍しい夜兎(こうさぎ)が一羽。だがまだ身体の使い方も知らないようだ」
と次の瞬間、男の強烈な蹴り一つで、神楽が数十メートル吹き飛ばされる。
だが神楽は血まみれになりながらも瞬時に体勢を整え…
(神)「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!」
と男に向かっていくが、男は神楽の顔面を容赦なく蹴り飛ばし、そのまま地面に叩きつける。
(?)「どの道皆死ぬ運命(さだめ)。順序は問いませんよ?」
神楽の顔面を踏み潰そうとする一方、男は刀を構える。
その背後からは…
(今)「ふっ!」
(?)「骸」
信女が飛び上がり、刀を振り下ろすも、男はそれを易々と受け止めてしまう。
しかし信女も、刀の向きを変えて男の顔面を切り裂こうと男の前で宙返りをする。
…が、男の編傘が少し切れたのみで、刀の切っ先は男がつまんでいた。
(今)「………!」
ドォォォォォォォォン!!
と信女は頭から地面に打ち付けられ、血を吐く。
そして男が刀を垂直に振りかざした時…
(?)「………!」
シュン! と小刀が飛んできてそれを弾き返し、それと同時に総悟が眼前に迫ってきており、その刀を弾き返す男。
総悟は刀を構えるが、男の雰囲気にのまれ、刀がカタカタと音を立てていた。
(沖)「(武者震い…じゃねーな、残念ながら)」
視界の端に、暗殺剣の使い手と恐れられる信女が、夜兎族である神楽が地面に這いつくばっているのをおさめる。
(沖)「(怯えてるワケじゃねェ。だが…身体が先に気づいちまった。初めて勝てねェかもしれねェ敵が、目の前に立っている事に)」
と次の瞬間、気が付けば男は眼前に迫ってきており、いつの間にか総悟の右肩に深い傷が出来ていた。
そしてまた背後から襲ってきた男に今度は反応し、刀で受け止めるが、いつの間にか背中側が斬られており、そこからまた血が吹き出す。
ガキン! と、刃と刃が重なり合う。
(沖)「てめェ…一体何者だ」
(?)「虚(うつろ)」
…男の光のない目が、赤く光る。
(今)「天に仕えながら、天に辿り着いた烏。天照院奈落…先代首領にして、天導衆になった男……虚」
そして総悟の刀を弾き返した男は、また刀を振り上げ…
あちこちから黒煙が漂う中、総悟、神楽、信女の三人はそこに立っていた。
(沖)「てめェ…一体どういうつもりだ。そこどけ」
(神)「どいていいアルか? 本気でやりたいなら続ければいい。迷ってるならやめろ。もしお前らが本気だったなら、私は無事じゃなかったけどな」
(沖&今)「「………」」
(神)「音莉の教えアル。何か目的をしっかり持っているんじゃなかったら…迷いのある、自分も相手も傷つけるだけの戦いなんて、しちゃダメって。私が友達と喧嘩した時に、音莉は言うてたネ」
(沖)「音莉はてめーの母ちゃんか」
(神)「そうアル、音莉は私のもう一人の大事なマミーネ。だから私のマミーの教えをありがたく受け取るアル」
(沖)「…そうかい」
(神)「とにかくこのままじゃ黒い警察も白い警察も潰されるアル。こんな事やってる場合じゃないネ」
(沖)「誰のせいだと思ってんだィ。コイツらはな…」
(神)「コイツ"ら"の事は知らない。でも、信女(コイツ)の事は知ってるアル。コイツが昔何をやったかなんて知らない。でも、今のコイツは知ってるアル。悪い奴じゃないアル」
そう言いながらも神楽が思い出すのは、共に国盗り合戦で戦った事…共に缶蹴りをした事。
(神)「音莉だって、銀ちゃんの昔の事なんて気にせず、ずっと今の銀ちゃんを見てるアル。…今の銀ちゃんから、昔の銀ちゃんがやった事をそれでも意味がある事だったんだと捕らえようとしてるアル。お前だって、今のコイツの事を見ようとすれば出来るハズネ」
だがその背後…信女が神楽の首元に刀の切っ先をあてがう。
(今)「このまま後ろからアナタを斬り殺しても?」
舌打ちをしながら、総悟が刀を構える。
(今)「何も知らない…私はそういう事が出来る人間」
(神)「いいアルヨ。お前が本当にそうしたいと思ってるなら、好きにしろヨ」
緊迫した空気が流れる中、それでも神楽は、信女の方を振り返ると…
(神)「でも…もう泣くなヨ」
…そう言いながら見せた優しい笑みは、共に過ごしてきた"彼女"の笑みに似た、柔らかい笑み。
(沖)「(似てる…似てやがる、音莉の笑みに)」
まるで…親子のように、柔らかく全てを包み込むような笑み。一緒に過ごしていればここまで似てしまうものなのかと総悟は内心感じた。
(神)「自分にもうウソはつくなヨ。私もそうだった。でもここで…みんなと出会って変わった。新八が、銀ちゃんが…音莉が、いっぱい私を甘やかしてくれて、私は…本当の自分になる事が出来た。この地球(ほし)は自由の星ネ。自分の生きたいように生きていいアル」
さっと、その場に柔らかい風が吹く。
(今)「(私は、命令されれば誰だって殺せる。そうやって育てられた。そうやって生きてきた。なのに、あの人と…松陽と出会っておかしくなってしまった。あんな風に生きられたら…そう思ってしまった。初めて人が斬れなかった。全部奪っておきながら、とどめをさせなかった。私に出来るのは、異三郎を終わらせてあげる事だけ)」
信女が思い出すのは、少し髪も伸びた自分が、縁側で夕日を眺めていた時の事。
(佐)「人を斬るのはもう嫌になりましたか?」
背後から近づいてきた佐々木に、信女は「別に」と返す。
すると佐々木は『マスタードーナツ』と書かれた箱を床に置き、自身も信女の横であぐらをかいて座る。
(佐)「ドーナツ…好きでしたよね?」
佐々木はドーナツを二つ手に取ると、一つを信女の方に差し出し、信女も無表情のままそれを受け取る。
そしてドーナツを頬張る佐々木を眺めていると…
(佐)「食べなさい。これからは私も一緒に食べます」
(今)「………!」
信女が目を見開き、刀を構える。
総悟もその殺気に気付き、神楽を護ろうとする…が、すぐに標的が違う事に気が付いた。
信女が神楽を押しのけつつも、そちらに飛んできていた錫杖を弾き返す。
だが…
グサリッ!!
(神&沖)「「………!」」
…さらに飛んできていた小刀が、信女の腹に刺さったのだ。
そのまま崩れ落ち、膝をついてしまう。
(神)「信女ェェェェェェェェェェ!!」
慌てて信女に駆け寄る神楽と総悟。
(神)「オイ、しっかりするアル!」
たちまち腹部が白から赤に染まっていくが、信女は荒い息をしながらもトランシーバーを取り出した。
(今)「黒縄島に展開する全部隊に伝える。直ちにこの戦場から離脱しなさい。上空部隊は敵艦隊をけん制すると共に、地上部隊の退却を援護を」
『この声は…今井副長!?』
『し、しかし…長官は敵を殲滅するまで戦い続けろと……』
(今)「異三郎(ちょうかん)は…多分もう戻ってこない。ここからは各自、自分の命を再優先に行動して。例え、見廻組がなくなっても」
しかしトランシーバーの向こうからは、「お待ちなさい!」という佐々木の声が返ってくる。
(佐)『信女さん! 一体何があったんですか!? 信女さ…』
だが襲ってきた奈落の男に、佐々木の持っていたトランシーバーは弾き飛ばされてしまっていた。
そしてそこまで伝え終わったと同時に、前のめりに体勢を崩してしまう信女の身体を神楽が受け止める。
(神)「信女!!」
(今)「行って。早く。私の気が変わらないうちに。早くしないと………来る」
その時、総悟は自身の刀を持つ右手が震えている事に気付いた。
と次の瞬間…
ドォォォォォォォォォォォォォン!!!
と爆撃のような音が響き、それがまるで超音波のように総悟達の身体へと響く。
音の出所を見てみれば…
(今)「国の命さえさらう……本物の死神(からす)が」
……見えた、一人の人影。
その男は編傘を被り、長い麦色の髪をなびかせ、黒いマスクをし……ただ、並々ならぬ雰囲気を醸し出していた。
その存在はまるで…絶望を想起させるよう。
その男は総悟達の前で立ち止まる。
(?)「…骸、一度ならず二度までも、主(あるじ)を裏切りますか。一度目は…この私を。二度目は佐々木(あのおとこ)を。どちらも命(めい)は同じだった。あの男を斬る事だった」
「私を斬れ。それが私の復讐だ」
昔…佐々木の言葉を思い出しながら、信女は腹に刺さった小刀を抜くと、立ち上がる。
それと同時にボタボタと血が滴り落ちる。
(今)「私はもう…誰の命(めい)にも従うつもりはない」
「食べなさい。これからは私も一緒に食べます」
(今)「それが、異三郎であろうと、あなた達であろうと」
腹の傷を押さえながら、信女は刀を地面に突き刺し、それを杖の代わりにしてなんとかそこに立つ。
(今)「誰を斬る事になろうとも、自分の意志でこの剣をふるう…それが、私の贖罪」
(?)「……骸、どうやら君の羽は、とうの昔に散っていたようですね。その羽ではもうどこにも飛べはしない。どこにも逃げられはしない」
と次の瞬間、男の姿が一瞬にして消えた。
かと思えば…
(今)「………!」
……気が付けば、男は信女の背後。
(?)「真(まこと)の八咫烏の羽からは、何者も逃れられはしない」
そして男が一瞬にして刀を抜くが、それを瞬時に神楽が割り込み、傘で受け止める。
(神)「ぬおおおおおおおおおおおお!!」
なんとか地面に足をふんばる神楽。その神楽が蹴りを一つ入れ、男はそれを拳で受け止める。
だが神楽が攻撃をし、男が防御していたにも関わらず、男の防御の拳一つのおかげで、神楽が蹴りを食らわせたその足の肉がさけて血が吹き飛んだ。
(神)「なっ…!」
(?)「ほう…これは珍しい夜兎(こうさぎ)が一羽。だがまだ身体の使い方も知らないようだ」
と次の瞬間、男の強烈な蹴り一つで、神楽が数十メートル吹き飛ばされる。
だが神楽は血まみれになりながらも瞬時に体勢を整え…
(神)「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!」
と男に向かっていくが、男は神楽の顔面を容赦なく蹴り飛ばし、そのまま地面に叩きつける。
(?)「どの道皆死ぬ運命(さだめ)。順序は問いませんよ?」
神楽の顔面を踏み潰そうとする一方、男は刀を構える。
その背後からは…
(今)「ふっ!」
(?)「骸」
信女が飛び上がり、刀を振り下ろすも、男はそれを易々と受け止めてしまう。
しかし信女も、刀の向きを変えて男の顔面を切り裂こうと男の前で宙返りをする。
…が、男の編傘が少し切れたのみで、刀の切っ先は男がつまんでいた。
(今)「………!」
ドォォォォォォォォン!!
と信女は頭から地面に打ち付けられ、血を吐く。
そして男が刀を垂直に振りかざした時…
(?)「………!」
シュン! と小刀が飛んできてそれを弾き返し、それと同時に総悟が眼前に迫ってきており、その刀を弾き返す男。
総悟は刀を構えるが、男の雰囲気にのまれ、刀がカタカタと音を立てていた。
(沖)「(武者震い…じゃねーな、残念ながら)」
視界の端に、暗殺剣の使い手と恐れられる信女が、夜兎族である神楽が地面に這いつくばっているのをおさめる。
(沖)「(怯えてるワケじゃねェ。だが…身体が先に気づいちまった。初めて勝てねェかもしれねェ敵が、目の前に立っている事に)」
と次の瞬間、気が付けば男は眼前に迫ってきており、いつの間にか総悟の右肩に深い傷が出来ていた。
そしてまた背後から襲ってきた男に今度は反応し、刀で受け止めるが、いつの間にか背中側が斬られており、そこからまた血が吹き出す。
ガキン! と、刃と刃が重なり合う。
(沖)「てめェ…一体何者だ」
(?)「虚(うつろ)」
…男の光のない目が、赤く光る。
(今)「天に仕えながら、天に辿り着いた烏。天照院奈落…先代首領にして、天導衆になった男……虚」
そして総悟の刀を弾き返した男は、また刀を振り上げ…
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