第二百三十二話(歌姫の記憶篇)
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ターミナルを脱出した後、星影の船はターミナル内で爆発を起こした。
後処理をしていた土方さん達が後に万事屋に報告しにきてくれて、彼等が言うには幸いターミナルに大きな損傷はなく、次第に降り出した雨が、その炎をかき消していったという。
そして夜が明けようとしている空には私の心の内と同じ、シトシトと雨が降っており。
万事屋の部屋の隅で一人、膝を抱えて……じいやの遺したペンダントを手に、顔を伏せる。
(あ)「私……」
結局……私はまた護れなかった。
また大切なものを、目の前で失くしてしまった。
……私が、非力なせいで。
両親や星に何かあった時に護りたい……そんな想いを掲げて、じいやに無理を言って教えてもらっていた剣術も私は思う存分活かせなくて、結局護りたかったものを護れず、目の前で消えていき。
……そんな剣を教えてくれた人も、何も恩返しなんて出来ないまま、手の届く距離だったのに消えていった。
散々迷惑だけかけておいて、肝心な時に役に立たない。
(あ)「っ……」
そんな自分に腹が立ち…握る拳に爪が食い込む。
(あ)「(なんで…どうして……)」
───どうして役立たずの私だけが生き残ったの?
そんな思いだけがずっと頭に巡っていて。
(あ)「(いっそ、私も……)」
……一緒に殺してくれたらよかったのに。
そんな事を思っていた時、ゆっくりと部屋の扉が開いて、顔を見せたのは。
(銀)「音莉、軽くメシ作ったんだけど、食うか?」
……銀さんであった。
だけど勿論、ご飯なんて全く喉を通る気配なんてないし、無理やり詰め込んでも全部吐き出してしまいそうだから……その胸の内と共に。
(あ)「……いらない」
そう、冷たく返してしまう。
(銀)「っつっても、お前ここ最近食糧難のせいもあってほとんど食ってねーだろ。…チンピラ警察共からさっき一緒に食糧もらってな。ちょっと食って一旦落ち着いて……」
(あ)「お願いだから、今は一人にさせてよ!」
銀さんの言葉を遮って思わず叫んでしまい、銀さんの言葉もピタリと止まった。
せっかく慰めようとしてくれているのに、なんてひどい事を言ってしまってるんだろう……なんて、余計に自分が腹立たしくなる。
しかし銀さんは怒るどころか、ゆっくりとこちらに近づいてきて。
(銀)「……知ってるか? 女の言う『一人にさせて』は、本当は『一人にしないで』っていう事なのを」
……そう言い、私の前でしゃがみ込んで、小さくなる私の身体を引き寄せてくる。
(銀)「護れなかったなんて思うな。お前は充分よくやったよ……ただ、相手のやり方が姑息だっただけだ。今日の事も、過去の事も」
いつものように、銀さんは私をなだめようとしてくれているけれど……安心させてくれるハズの銀さんの言葉でさえも、今の私ではちっとも納得できなくて。
(あ)「………本当に、出て行ってください」
最低だ、こんな言い方しなくてもいいじゃないか……そんな事は分かっているけれど、今は感情が先行してしまって冷たくそう言い放ってしまい、銀さんの身体を押し返す。
銀さんも流石の私の言葉に、もう無理やり慰めようとはしてこなくて。
(銀)「………ちょっとでも食えそうなら、出てこいよ」
そんな態度をとってしまったのに、銀さんは相も変わらず優しい声でそう告げて、そっと扉を閉めて出て行く。
(あ)「(ごめんなさい…)」
謝りながらも、心の中はその感情……恐怖でいっぱいになる。
今銀さんの温もりを感じてしまったから……余計に。
今は……いつもならどうしようもなく安心させてくれるその温もりが、怖い。
いとも簡単になくなってしまうのを改めて実感したから……そして、何も護れない私が、他人の温もりを感じる資格なんてないって、思ってしまったから。
今は隣にある温もりも、非力な私のせいで一瞬で消え去ってしまうかもしれないから。
そんな事を痛感したから、頭の中でグルグルと考えてしまう。
(あ)「………」
いや、隣にいてくれる銀さんだけじゃない。
もしかしたらこの先、私がいる事でまたみんなを…江戸を、地球を、巻き込むような事があるかもしれない。
(あ)「(それなら、私はみんなの側にいない方が…)」
そもそもこの世に存在していてはいけないのではないか。
(あ)「………」
そうだ………私の持つその特別な力、アルタナが争いの元になるのであれば、私はいっそ───。
だとすれば、私のやるべき事は一つだ。
(あ)「……ごめんなさい」
重たい腰を上げて立ち上がった私は、引き出しに入っていた筆と便箋を手に取ると、机に向かった。
後処理をしていた土方さん達が後に万事屋に報告しにきてくれて、彼等が言うには幸いターミナルに大きな損傷はなく、次第に降り出した雨が、その炎をかき消していったという。
そして夜が明けようとしている空には私の心の内と同じ、シトシトと雨が降っており。
万事屋の部屋の隅で一人、膝を抱えて……じいやの遺したペンダントを手に、顔を伏せる。
(あ)「私……」
結局……私はまた護れなかった。
また大切なものを、目の前で失くしてしまった。
……私が、非力なせいで。
両親や星に何かあった時に護りたい……そんな想いを掲げて、じいやに無理を言って教えてもらっていた剣術も私は思う存分活かせなくて、結局護りたかったものを護れず、目の前で消えていき。
……そんな剣を教えてくれた人も、何も恩返しなんて出来ないまま、手の届く距離だったのに消えていった。
散々迷惑だけかけておいて、肝心な時に役に立たない。
(あ)「っ……」
そんな自分に腹が立ち…握る拳に爪が食い込む。
(あ)「(なんで…どうして……)」
───どうして役立たずの私だけが生き残ったの?
そんな思いだけがずっと頭に巡っていて。
(あ)「(いっそ、私も……)」
……一緒に殺してくれたらよかったのに。
そんな事を思っていた時、ゆっくりと部屋の扉が開いて、顔を見せたのは。
(銀)「音莉、軽くメシ作ったんだけど、食うか?」
……銀さんであった。
だけど勿論、ご飯なんて全く喉を通る気配なんてないし、無理やり詰め込んでも全部吐き出してしまいそうだから……その胸の内と共に。
(あ)「……いらない」
そう、冷たく返してしまう。
(銀)「っつっても、お前ここ最近食糧難のせいもあってほとんど食ってねーだろ。…チンピラ警察共からさっき一緒に食糧もらってな。ちょっと食って一旦落ち着いて……」
(あ)「お願いだから、今は一人にさせてよ!」
銀さんの言葉を遮って思わず叫んでしまい、銀さんの言葉もピタリと止まった。
せっかく慰めようとしてくれているのに、なんてひどい事を言ってしまってるんだろう……なんて、余計に自分が腹立たしくなる。
しかし銀さんは怒るどころか、ゆっくりとこちらに近づいてきて。
(銀)「……知ってるか? 女の言う『一人にさせて』は、本当は『一人にしないで』っていう事なのを」
……そう言い、私の前でしゃがみ込んで、小さくなる私の身体を引き寄せてくる。
(銀)「護れなかったなんて思うな。お前は充分よくやったよ……ただ、相手のやり方が姑息だっただけだ。今日の事も、過去の事も」
いつものように、銀さんは私をなだめようとしてくれているけれど……安心させてくれるハズの銀さんの言葉でさえも、今の私ではちっとも納得できなくて。
(あ)「………本当に、出て行ってください」
最低だ、こんな言い方しなくてもいいじゃないか……そんな事は分かっているけれど、今は感情が先行してしまって冷たくそう言い放ってしまい、銀さんの身体を押し返す。
銀さんも流石の私の言葉に、もう無理やり慰めようとはしてこなくて。
(銀)「………ちょっとでも食えそうなら、出てこいよ」
そんな態度をとってしまったのに、銀さんは相も変わらず優しい声でそう告げて、そっと扉を閉めて出て行く。
(あ)「(ごめんなさい…)」
謝りながらも、心の中はその感情……恐怖でいっぱいになる。
今銀さんの温もりを感じてしまったから……余計に。
今は……いつもならどうしようもなく安心させてくれるその温もりが、怖い。
いとも簡単になくなってしまうのを改めて実感したから……そして、何も護れない私が、他人の温もりを感じる資格なんてないって、思ってしまったから。
今は隣にある温もりも、非力な私のせいで一瞬で消え去ってしまうかもしれないから。
そんな事を痛感したから、頭の中でグルグルと考えてしまう。
(あ)「………」
いや、隣にいてくれる銀さんだけじゃない。
もしかしたらこの先、私がいる事でまたみんなを…江戸を、地球を、巻き込むような事があるかもしれない。
(あ)「(それなら、私はみんなの側にいない方が…)」
そもそもこの世に存在していてはいけないのではないか。
(あ)「………」
そうだ………私の持つその特別な力、アルタナが争いの元になるのであれば、私はいっそ───。
だとすれば、私のやるべき事は一つだ。
(あ)「……ごめんなさい」
重たい腰を上げて立ち上がった私は、引き出しに入っていた筆と便箋を手に取ると、机に向かった。
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