第百九十二話(将軍暗殺篇)

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名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)

~no side~


伊賀の里にある森の木々の間から、ドォォォォォン!! と砂煙があがる。


周りの木々をなぎ倒しながらも、木に背中を叩きつけられたのは、顔面血まみれで、髪が片側だけほどけてしまった神楽だった。


(神)「か、むい…」


ぼやける神楽の視界に映るのは、目の前で足を振り上げる、髪がほどけた神威の姿。



ドスッ!! と神威が容赦なく神楽の顔面を蹴り飛ばし、神楽が遠くに吹き飛ぶ。


(威)「どうした? そんなんじゃ俺は止まらないよ?」


神威の額からも血が流れているが、神楽程ではない所を見ると、神楽が劣勢なのは目に見えて分かった。


(威)「敵の傷を迷う事なく攻めるまではよかったけど…それでもお兄ちゃんとジャレあうには、あと100歩位足りなかったね」


とその時…




ドォォォォォォォォォン!!



と大木が神威の横を通り過ぎて行った。


そして爆風が吹き荒れる。


(神)「パピー似の短足のお前ならな」


神楽が木々の間をまるで忍者のように駆ける。


(神)「本当のマミーと地球のマミー似のモデル体型の私なら…」


バコッ!!



(神)「一歩で足りる!!」


木の側面を蹴った神楽が、神威の頬に拳を一発決めた。



(神)「勝負はこっからアル、バカ兄貴ィィィィ!!」



だが…




バコォォォン!!




(神)「ふぐっ…!」



神威が神楽を蹴り飛ばし、神楽の身体が大木に叩きつけられる。


(威)「やれやれ、本当にバカな妹だ。戦いの基本は敵を知り己を知る事さ。確かにお前が憧れる歌姫ちゃんは小柄だけど足長いしモデル体型だよ? でもよく見ろ。同じ小柄な己の股下の長さと………




………お前の敵を」




神楽を見下しながら、低い声で言い放つ神威。



その神威の姿に、神楽の夜兎の本能が感じた。




────殺られると。




バコォォォォォォォォォォン!!!





神楽の視界が黒に変わり、大木がメキメキと音を立てながら倒れる。




(神)「………!」



神楽は殺されていなかった。


理由も分からず呆然と兄を見上げる神楽。


(威)「敵は、前だけにいるとは限らない」


そう…神威の目の前、神楽の背後に奈落の男達がいたのだ。


その男達は皆、倒れた大木の下敷きになっている。



そして二人はあっという間に錫杖を持った奈落の男達に囲まれてしまった。


(神)「コ、コイツら…!」









~所変わって近藤&土方~


バシュッ!! と近藤が夜兎の一人を斬る。


だが大勢の夜兎達を前にして、近藤の息は既にあがっていた。


それは土方も同じ。


二人と百地は、額から血を流していた。


三人の前にはまだ夜兎の軍勢が残っている。


(百)「どうやらこれまでのようだ。すまなんだ。そなたら武士は将軍の側で華々しく散るのが本懐であったろうに。我等と同じく、日陰に散る道に付き合わせてしまったな」


(土)「へっ、どうせ土の肥やしになるなら、花道だろうがあぜ道だろうが同じだ。なら俺は大将の隣で死ぬ」


(近)「へっ、言ったな? ならば俺の背中…最後まで護ってみろ、トシ」


土方が近藤の隣に並び、二人は刀を構える。


(近)「俺が死なねェ限り、お前も俺を置いて死ぬ事はあるめェな」


(土)「やれやれ。出来るだけ潔く退場してくれる事を願うぜ」


(百)「案ずるな。どちらが先に逝っても、わしの傀儡(くぐつ)術で屍を操ってやるぞよ」


(近)「ケッ、笑えねー冗談だ。行くぞ。侍と忍の最後の足掻きを…見せてやらァァァァァァァァ!!」


夜兎の軍勢が一斉に近藤達に向かってくる。




そして構える三人。




とその時…




ズドォォォォォォォォォォォォン!!!


突如上空から降ってきた爆弾に夜兎達が崖から落ち、近藤達も爆風に耐える。


気がつけば夜兎の中で生きているのは、阿伏兎のみだった。




そしてゴゴゴゴゴゴゴッと地響きが鳴り始め、辺りが影に覆われる。


(近)「あ、あれは…」


近藤が見上げる先…上空には一隻の大きな船が浮かんでいた。


その船の上には城なんかが立っており、ただの船ではない事が分かる。




(近)「あの船はまさか…!」
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