第二百二十話(歌姫消失篇)
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『それでは、国会議事堂創設を記念して、我々の首長、初代総理大臣、ドナルド・ヅランプ君から挨拶を…』
(桂)「ヅランプじゃない、桂だァァァァァァァァァァァ!!」
……多数の議員を前に、総理大臣として壇上に立ったのは、ちょび髭を生やし、相変わらずもウザい程の長い髪をした、桂であった。
急な叫びに、議員席からは困ったような、ざわざわした声が聞こえてきた。
(桂)「……あ、間違えました。ついいつものクセで…。今のは桂じゃなくてカツラの事だ。文春に嗅ぎつけられる前にカミングアウトしておきたくてな」
そして桂は髪の一束を握って、それをブチリと抜いたのだ。
だがしかし、抜いたそこには500円玉大のハゲができており、桂は目じりに涙を浮かべながらも話を続ける。
(桂)「私は日本国初代総理大臣、ドナルド・ヅランプである。今はこうして皆を代表し、壇上からものを言っているが、私は皆より偉いワケでも、特別なワケでもない。そこにいる君達と同じ…メシを食って、クソをして寝るただの人間だ」
その桂の演説は、電気屋のテレビにも映し出されており、行き交う人の中には足を止めてじっと見つめる人達もいた。
(桂)「我々はこれまで将軍という王を担ぎ上げ、その執政により生きてきた。都合の悪い事は全て幕府のせいにして、自らの生き方、国の在り方に責任を負ってこなかった。故に我らは…王を失った」
桂が脳裏に思い浮かべるのは、良き国を作ろうと意気込んでいたものの、惜しくも命を落とした十四代目。そして暴君と言われながらも最後は本当の大切なものに気付き…だが皮肉も気づいた時にはその命を落とした十五代目将軍の姿だ。
(桂)「彼等が最後までその身に背負い、護ったものを我等はムダにするワケにはいかぬ。かつて将軍であった彼等は言った。この国にもう将軍はいらぬと。各々が自ら生き方を決め、その責を負い、力を合わせ国を支えていかなければ立ち行かぬ時代が来たのだと。そう…これからはこの国を生きる民一人一人が、この壇上に上がった小さき将軍 なのだ」
そして、食卓のテレビ、街のモニターにも桂の姿は映し出されており、多くの人が足を止めて桂の言葉に耳を傾けていた。
(桂)「我々一人一人の胸の内に、彼等は…王はまだ生きている。王に恥じぬように生きよう。王に恥じぬ国を作ろう。無数の王が手を結び、国が一つになった時、悲しき過去は我等の誇りに変わる。あの日は国が瓦礫になった日ではない。この国が生まれ変わった日であったのだと!」
そうして桂の言葉に皆が湧いた時。
ドスッ…!!
……そんな音が聞こえてきて、国会内は一瞬で静まり返った。
覆面をかぶった男が、桂を背後から小刀で突き刺していたのだ。
「……え?」
「オイ、あれ…まさか……!」
「我が国の歴史を歪めた奸物が……天誅を下す!」
総理大臣が刺された…まさかの展開に、誰も何も出来ずにいると。
(桂)「それにあたり、新しき国の礎…新しいルールを設けたい」
桂は何事もなかったように、ズボンとケツの隙間に挟んでいた分厚い本を、スーツをめくって取り出した。
男の小刀はその分厚い本に刺さっており、桂の身体には何のダメージもなかったのだ。
(桂)「それがこの"憲法"だ。これからは皆で作る事になるが、基本的な事はここに記しておいた。ジャンプ、サンデー、マガジンの付録につける。各々チェックしておいてくれ」
それを抜き出したと同時に、パンッ! と男をその分厚い本…『日本国憲法』と書かれた辞書のようなもので殴り飛ばし、壁に叩きつける。
「え、今刺されてなかった? あれって暗殺…」
その時、ドドドドドドッ…と地響きにも似た音が鳴り響き……
「ドナルド・ヅランプぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「国を侵す賊に、天誅を下与えんんんんんんんんんんん!!」
国会の扉からも銃や刃物を持った覆面の男達が乱入してきては、桂のいる壇上に向かって銃を乱射し始めたのだ。
だが桂はそれをマイクを片手にひょいと宙返りでかわす。
(桂)「我々の往く道は果てしなく遠く、厳しい」
次第に銃を持っていた男の手が何者かの銃弾に撃ち抜かれ、手から銃が落ちる。
議員達の間にいた、スーツを着て七三分けのカツラをかぶったエリザベスが、口から伸ばした銃で敵を撃ったのだ。
その間にも、集まっていた議員達は次々に逃げていく。
(桂)「だが皆で力を合わせれば、必ずや成し遂げられるハズだ。だからみん……」
気付けば、桂の目の前の座席には、誰一人として残っておらず、代わりに覆面の男達が桂の背後をとり、銃を向ける。
「これがお前達の新しき国か?銃弾数発で崩れ落ちるとは…大した国だな」
(桂)「……他の者には危害を加えなかったな。狙いは俺一人か」
呟くように言い、そして桂はふっと笑って言った。
(桂)「……この俺がまさか天誅を下される側になるとはな。俺はお前達を否定はせんぞ? お前達のような者も、方向は違えどこの国を動かす一つのエネルギーに違いない。だが一つ、忠告しておく」
ちょび髭…いや、つけヒゲをとった桂は、テロ集団の方を向いて、ニヤリと笑って言った。
(桂)「……本物の天誅は、そんな甘いものではないぞ?」
そして両手にいつもの爆弾を携え…
(桂)「革命家たる者、時代に敏感でなければならん。天誅はもう古い。これからは……ユーアーファイアアアアアアアアアアアア!!(お前達は革命家クビだ)」
テロ集団が逃げる間もなく、それを放り投げ、ドォォォォォォォォォォォォォォン!!! と国会議事堂の入り口が吹き飛ぶ勢いでそれを爆発した。
そして、その様子を遠くから見ていた人影があった。
(松)「……そうか、失敗か。気にするな。チャンスはまたあるさ」
テロ集団からの報告を受けていた松平。
そして、そよに新八にたま子だ。
(松)「ま、こんな具合だ。あれが姫のライバル。我が国初の総理大臣、ドナルド・ヅランプこと桂小太郎だ」
(新)「いや、今あなた総理大臣暗殺指示してませんでした? 黒幕やってませんでした?」
そんな総理大臣は、エリザベスと共に議事堂内でテロ集団を蹴り飛ばし、爆弾で爆発させ……とんでもない暴れっぷりを見せている。
(松)「元テロリストに国を負かせるバカがどこにいる? 確かに奴の考案した構造改革案は革新的なものだった。だがそれとこれとは話が別だ」
(新)「なんで…一時は手を組んだ人達がまた元に?」
(松)「所詮は狼達が一時同じ獲物に牙を剥いていたに過ぎねェ。獲物が消えればまた縄張り争いよ」
(新)「だってあの人、あなたの恩人でしょ? 黒縄島で捕まっていた時も…」
「分かっていような? 松平。俺が開けようとしてるのは、お前の閉じ込められた牢獄ではない。新たな時代の扉…もし我等がこの島を脱し、国を建て直す段が来たら…」
「はいはい。幕府にでも新政府にでもどこでも口利きしてやるよ。生きてたらな。生きてたらだぞ?」
(松)「絶対どっかで死ぬと思ってたんだけどなぁ…」
(新)「いや、アンタが作ったんかい、あのモンスター総理!」
(松)「いやだって、あそこではああ言うしかなかったしさ、一回登用して邪魔になったら始末したらいいと思ってたら、アイツ全然死ななくてさ」
(新)「新政府、前よりよっぽど真っ黒だろーが! じゃあ先に仕掛けたのはアンタ…真選組潰されたのもアンタのせいじゃないっすか!」
(松)「奴の始末が終われば帰ってくるさ。そこでだ、万事屋。何故お前にこんな話をしたかと言うと……お前、人殺した事ある?」
(新)「やるかァァァァァァァァァ!! 何の片棒担がせようとしてんだ、アンタ!」
(松)「ここまで聞いてそんな選択肢があると思ってんのか。お前に選べる選択肢は二つ。……殺 るか、殺 るかだ」
(新)「殺すしかねェ!」
松平が新八の額に銃を突きつけた時。
(そ)「片栗虎、もうやめて」
それを制したのは、そよであった。
(そ)「あの人…覚えてたのね」
「桂よ、次会う時はどちらかが首になっていようが」
「ああ、分かってる。残った者が新しき世を創る…異存はない」
(そ)「王はまだ生きている、か…」
そして、そよは青空を見ながら、穏やかな笑みを浮かべて言った。
(そ)「……そうね。きっと…きっと、素敵な国を作ってみせます。見ていてくださいね」
(桂)「ヅランプじゃない、桂だァァァァァァァァァァァ!!」
……多数の議員を前に、総理大臣として壇上に立ったのは、ちょび髭を生やし、相変わらずもウザい程の長い髪をした、桂であった。
急な叫びに、議員席からは困ったような、ざわざわした声が聞こえてきた。
(桂)「……あ、間違えました。ついいつものクセで…。今のは桂じゃなくてカツラの事だ。文春に嗅ぎつけられる前にカミングアウトしておきたくてな」
そして桂は髪の一束を握って、それをブチリと抜いたのだ。
だがしかし、抜いたそこには500円玉大のハゲができており、桂は目じりに涙を浮かべながらも話を続ける。
(桂)「私は日本国初代総理大臣、ドナルド・ヅランプである。今はこうして皆を代表し、壇上からものを言っているが、私は皆より偉いワケでも、特別なワケでもない。そこにいる君達と同じ…メシを食って、クソをして寝るただの人間だ」
その桂の演説は、電気屋のテレビにも映し出されており、行き交う人の中には足を止めてじっと見つめる人達もいた。
(桂)「我々はこれまで将軍という王を担ぎ上げ、その執政により生きてきた。都合の悪い事は全て幕府のせいにして、自らの生き方、国の在り方に責任を負ってこなかった。故に我らは…王を失った」
桂が脳裏に思い浮かべるのは、良き国を作ろうと意気込んでいたものの、惜しくも命を落とした十四代目。そして暴君と言われながらも最後は本当の大切なものに気付き…だが皮肉も気づいた時にはその命を落とした十五代目将軍の姿だ。
(桂)「彼等が最後までその身に背負い、護ったものを我等はムダにするワケにはいかぬ。かつて将軍であった彼等は言った。この国にもう将軍はいらぬと。各々が自ら生き方を決め、その責を負い、力を合わせ国を支えていかなければ立ち行かぬ時代が来たのだと。そう…これからはこの国を生きる民一人一人が、この壇上に上がった小さき
そして、食卓のテレビ、街のモニターにも桂の姿は映し出されており、多くの人が足を止めて桂の言葉に耳を傾けていた。
(桂)「我々一人一人の胸の内に、彼等は…王はまだ生きている。王に恥じぬように生きよう。王に恥じぬ国を作ろう。無数の王が手を結び、国が一つになった時、悲しき過去は我等の誇りに変わる。あの日は国が瓦礫になった日ではない。この国が生まれ変わった日であったのだと!」
そうして桂の言葉に皆が湧いた時。
ドスッ…!!
……そんな音が聞こえてきて、国会内は一瞬で静まり返った。
覆面をかぶった男が、桂を背後から小刀で突き刺していたのだ。
「……え?」
「オイ、あれ…まさか……!」
「我が国の歴史を歪めた奸物が……天誅を下す!」
総理大臣が刺された…まさかの展開に、誰も何も出来ずにいると。
(桂)「それにあたり、新しき国の礎…新しいルールを設けたい」
桂は何事もなかったように、ズボンとケツの隙間に挟んでいた分厚い本を、スーツをめくって取り出した。
男の小刀はその分厚い本に刺さっており、桂の身体には何のダメージもなかったのだ。
(桂)「それがこの"憲法"だ。これからは皆で作る事になるが、基本的な事はここに記しておいた。ジャンプ、サンデー、マガジンの付録につける。各々チェックしておいてくれ」
それを抜き出したと同時に、パンッ! と男をその分厚い本…『日本国憲法』と書かれた辞書のようなもので殴り飛ばし、壁に叩きつける。
「え、今刺されてなかった? あれって暗殺…」
その時、ドドドドドドッ…と地響きにも似た音が鳴り響き……
「ドナルド・ヅランプぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「国を侵す賊に、天誅を下与えんんんんんんんんんんん!!」
国会の扉からも銃や刃物を持った覆面の男達が乱入してきては、桂のいる壇上に向かって銃を乱射し始めたのだ。
だが桂はそれをマイクを片手にひょいと宙返りでかわす。
(桂)「我々の往く道は果てしなく遠く、厳しい」
次第に銃を持っていた男の手が何者かの銃弾に撃ち抜かれ、手から銃が落ちる。
議員達の間にいた、スーツを着て七三分けのカツラをかぶったエリザベスが、口から伸ばした銃で敵を撃ったのだ。
その間にも、集まっていた議員達は次々に逃げていく。
(桂)「だが皆で力を合わせれば、必ずや成し遂げられるハズだ。だからみん……」
気付けば、桂の目の前の座席には、誰一人として残っておらず、代わりに覆面の男達が桂の背後をとり、銃を向ける。
「これがお前達の新しき国か?銃弾数発で崩れ落ちるとは…大した国だな」
(桂)「……他の者には危害を加えなかったな。狙いは俺一人か」
呟くように言い、そして桂はふっと笑って言った。
(桂)「……この俺がまさか天誅を下される側になるとはな。俺はお前達を否定はせんぞ? お前達のような者も、方向は違えどこの国を動かす一つのエネルギーに違いない。だが一つ、忠告しておく」
ちょび髭…いや、つけヒゲをとった桂は、テロ集団の方を向いて、ニヤリと笑って言った。
(桂)「……本物の天誅は、そんな甘いものではないぞ?」
そして両手にいつもの爆弾を携え…
(桂)「革命家たる者、時代に敏感でなければならん。天誅はもう古い。これからは……ユーアーファイアアアアアアアアアアアア!!(お前達は革命家クビだ)」
テロ集団が逃げる間もなく、それを放り投げ、ドォォォォォォォォォォォォォォン!!! と国会議事堂の入り口が吹き飛ぶ勢いでそれを爆発した。
そして、その様子を遠くから見ていた人影があった。
(松)「……そうか、失敗か。気にするな。チャンスはまたあるさ」
テロ集団からの報告を受けていた松平。
そして、そよに新八にたま子だ。
(松)「ま、こんな具合だ。あれが姫のライバル。我が国初の総理大臣、ドナルド・ヅランプこと桂小太郎だ」
(新)「いや、今あなた総理大臣暗殺指示してませんでした? 黒幕やってませんでした?」
そんな総理大臣は、エリザベスと共に議事堂内でテロ集団を蹴り飛ばし、爆弾で爆発させ……とんでもない暴れっぷりを見せている。
(松)「元テロリストに国を負かせるバカがどこにいる? 確かに奴の考案した構造改革案は革新的なものだった。だがそれとこれとは話が別だ」
(新)「なんで…一時は手を組んだ人達がまた元に?」
(松)「所詮は狼達が一時同じ獲物に牙を剥いていたに過ぎねェ。獲物が消えればまた縄張り争いよ」
(新)「だってあの人、あなたの恩人でしょ? 黒縄島で捕まっていた時も…」
「分かっていような? 松平。俺が開けようとしてるのは、お前の閉じ込められた牢獄ではない。新たな時代の扉…もし我等がこの島を脱し、国を建て直す段が来たら…」
「はいはい。幕府にでも新政府にでもどこでも口利きしてやるよ。生きてたらな。生きてたらだぞ?」
(松)「絶対どっかで死ぬと思ってたんだけどなぁ…」
(新)「いや、アンタが作ったんかい、あのモンスター総理!」
(松)「いやだって、あそこではああ言うしかなかったしさ、一回登用して邪魔になったら始末したらいいと思ってたら、アイツ全然死ななくてさ」
(新)「新政府、前よりよっぽど真っ黒だろーが! じゃあ先に仕掛けたのはアンタ…真選組潰されたのもアンタのせいじゃないっすか!」
(松)「奴の始末が終われば帰ってくるさ。そこでだ、万事屋。何故お前にこんな話をしたかと言うと……お前、人殺した事ある?」
(新)「やるかァァァァァァァァァ!! 何の片棒担がせようとしてんだ、アンタ!」
(松)「ここまで聞いてそんな選択肢があると思ってんのか。お前に選べる選択肢は二つ。……
(新)「殺すしかねェ!」
松平が新八の額に銃を突きつけた時。
(そ)「片栗虎、もうやめて」
それを制したのは、そよであった。
(そ)「あの人…覚えてたのね」
「桂よ、次会う時はどちらかが首になっていようが」
「ああ、分かってる。残った者が新しき世を創る…異存はない」
(そ)「王はまだ生きている、か…」
そして、そよは青空を見ながら、穏やかな笑みを浮かべて言った。
(そ)「……そうね。きっと…きっと、素敵な国を作ってみせます。見ていてくださいね」
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