第二百八話(銀ノ魂篇)
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~no side~
(紫)『煌びやかな玉座より戦場の硝煙の中を愛すると言われるそなたも、此度ばかりは故郷 が恋しかろう』
これは、地球に解放軍が攻め入る時よりまだまだ前の事…万事屋がまだくだらなくも笑顔の絶えない日々を送っていた頃の話だ。
宇宙では二隻の戦艦が対峙しており、一方の戦艦に乗り込んでいた紫雀は、相手方の戦艦に無線でそう話しかけていた。
(星)『星に残した妻が出産間近らしいな。こんな所でいつもの如く隣国と粒子砲を撃ち合う暇があるなら、妻の隣でラマーズ法でもしてやったらどうだ。父親の戦場は敵将の前ではない、母親の隣であろう?それとも、戦では万夫不当の英雄が子の親になるのは怖いか? 硝煙の皇子…圓翔よ』
通話の相手は、赤い髪を模した男……圓翔であった。
(圓)「紫雀、それは貴様ら手ぬるき国の父親の話だろう。軍事大国武嶺では、戦場から手ぶらで帰るような無粋な男は父親になれん。妻にケツを蹴られ、戦場に帰される」
圓翔は胸元のペンダントを手に取り、蓋を開けるとそこには美しい女性の写真…彼の妻の写真があった。
(圓)「妻 も戦っている。どちらが"手柄"を上げるのが早いか、競い合いだと言われたわ」
(紫)『流石は硝煙の皇子の妻というべきか。ならば、私も硝煙の皇子の宿敵として恥じぬ戦をせねばなるまい。例え生まれてくる子の父親を奪う事になろうとも』
(圓)「宿敵? ほざけ、紫雀。お前には婚礼も爺様の葬儀も邪魔された。お前の首なら生まれてくる子のいい玩具になろう」
とその時…
「皇子 武嶺から報告が…!」
慌てた様子で圓翔の部下が駆け寄ってきて耳打ちする。
(紫)『フッ…どうやら早くも決着がついたらしいな。勝者は私でもそなたでもない、そなたの妻か』
だがその知らせは吉報ではなく、凶報であった。
・
・
・
・
部下の知らせを受け、圓翔が紫雀との決戦を放り投げてまでして故郷の武嶺に戻れば、そこは荒れ果てた土地に建物の残骸が転がって、黒煙が上がるのみで、最早自分の住んでいた国とは思えない状態になっていた。
「我が国のアルタナの門が暴走しました。恐らくは人為的なものと思われます」
「王都は壊滅。生き残っている者は…」
圓翔はその惨状に言葉を発するでもなく……ただ、目の輝きを失くしていく一方であった。
数日後、荒れ果てた土地に墓が立てられ、そのうちの一つ…圓翔の帰りを待ちわびていたであろう女の墓の前で、彼はただ佇んでおり。
そして現れたのは宿敵、紫雀であった。
(圓)「初めて戦場から手ぶらで逃げ帰った。だが俺を咎める者はどこにもいなかったよ。…紫雀、何故黙って私を逃がした。何故このスキに我が国を攻めなかった」
(紫)「……言ったハズだ。私は硝煙の皇子の宿敵として恥じぬ戦いをすると。それに、敵は隣国にいるのではなく、別の所にいるのが分かった」
(圓)「硝煙の皇子…国を失った俺を、まだそう呼ぶか」
(紫)「圓翔、そなたは立派に手柄を持ち帰ったではないか。天導衆という不条理な支配者に、共に立ち向かう仲間を得たのだから」
互いを見るでもなく、ただ紫雀は前を向いて、そう告げた。
(紫)「パルティシオン星……あの星には豊富で強力なアルタナがあったとされている。しかし天導衆はその星のアルタナを手に入れ、凶暴さを増した。勿論、その強力なアルタナが暴走して生き残った者は一人もいない。…自分達の犠牲と共に自分達が護ってきたアルタナがこんな風に利用されていると知れば、死のうにも死に切れぬだろう。死んでいった者の分まで、遺された者がやるしかないのだ」
(圓)「国を失おうとも、俺の国 はまだ戦場にあったか…」
そうして決意を固めた圓翔は、集まった天人の群れに向けて語るのだった。
(圓)「ならばその戦場から、の硝煙の中からこの手で掴みとろうではないか! 我等の自由を…我等アルタナ解放軍が、天導衆からこの宇宙を解放するのだ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
歓声が上がるも、圓翔の目はまだ濁ったまま…暗い目をしていたのだった。
(紫)『煌びやかな玉座より戦場の硝煙の中を愛すると言われるそなたも、此度ばかりは
これは、地球に解放軍が攻め入る時よりまだまだ前の事…万事屋がまだくだらなくも笑顔の絶えない日々を送っていた頃の話だ。
宇宙では二隻の戦艦が対峙しており、一方の戦艦に乗り込んでいた紫雀は、相手方の戦艦に無線でそう話しかけていた。
(星)『星に残した妻が出産間近らしいな。こんな所でいつもの如く隣国と粒子砲を撃ち合う暇があるなら、妻の隣でラマーズ法でもしてやったらどうだ。父親の戦場は敵将の前ではない、母親の隣であろう?それとも、戦では万夫不当の英雄が子の親になるのは怖いか? 硝煙の皇子…圓翔よ』
通話の相手は、赤い髪を模した男……圓翔であった。
(圓)「紫雀、それは貴様ら手ぬるき国の父親の話だろう。軍事大国武嶺では、戦場から手ぶらで帰るような無粋な男は父親になれん。妻にケツを蹴られ、戦場に帰される」
圓翔は胸元のペンダントを手に取り、蓋を開けるとそこには美しい女性の写真…彼の妻の写真があった。
(圓)「
(紫)『流石は硝煙の皇子の妻というべきか。ならば、私も硝煙の皇子の宿敵として恥じぬ戦をせねばなるまい。例え生まれてくる子の父親を奪う事になろうとも』
(圓)「宿敵? ほざけ、紫雀。お前には婚礼も爺様の葬儀も邪魔された。お前の首なら生まれてくる子のいい玩具になろう」
とその時…
「皇子 武嶺から報告が…!」
慌てた様子で圓翔の部下が駆け寄ってきて耳打ちする。
(紫)『フッ…どうやら早くも決着がついたらしいな。勝者は私でもそなたでもない、そなたの妻か』
だがその知らせは吉報ではなく、凶報であった。
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部下の知らせを受け、圓翔が紫雀との決戦を放り投げてまでして故郷の武嶺に戻れば、そこは荒れ果てた土地に建物の残骸が転がって、黒煙が上がるのみで、最早自分の住んでいた国とは思えない状態になっていた。
「我が国のアルタナの門が暴走しました。恐らくは人為的なものと思われます」
「王都は壊滅。生き残っている者は…」
圓翔はその惨状に言葉を発するでもなく……ただ、目の輝きを失くしていく一方であった。
数日後、荒れ果てた土地に墓が立てられ、そのうちの一つ…圓翔の帰りを待ちわびていたであろう女の墓の前で、彼はただ佇んでおり。
そして現れたのは宿敵、紫雀であった。
(圓)「初めて戦場から手ぶらで逃げ帰った。だが俺を咎める者はどこにもいなかったよ。…紫雀、何故黙って私を逃がした。何故このスキに我が国を攻めなかった」
(紫)「……言ったハズだ。私は硝煙の皇子の宿敵として恥じぬ戦いをすると。それに、敵は隣国にいるのではなく、別の所にいるのが分かった」
(圓)「硝煙の皇子…国を失った俺を、まだそう呼ぶか」
(紫)「圓翔、そなたは立派に手柄を持ち帰ったではないか。天導衆という不条理な支配者に、共に立ち向かう仲間を得たのだから」
互いを見るでもなく、ただ紫雀は前を向いて、そう告げた。
(紫)「パルティシオン星……あの星には豊富で強力なアルタナがあったとされている。しかし天導衆はその星のアルタナを手に入れ、凶暴さを増した。勿論、その強力なアルタナが暴走して生き残った者は一人もいない。…自分達の犠牲と共に自分達が護ってきたアルタナがこんな風に利用されていると知れば、死のうにも死に切れぬだろう。死んでいった者の分まで、遺された者がやるしかないのだ」
(圓)「国を失おうとも、俺の
そうして決意を固めた圓翔は、集まった天人の群れに向けて語るのだった。
(圓)「ならばその戦場から、の硝煙の中からこの手で掴みとろうではないか! 我等の自由を…我等アルタナ解放軍が、天導衆からこの宇宙を解放するのだ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
歓声が上がるも、圓翔の目はまだ濁ったまま…暗い目をしていたのだった。
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