第二百六話(洛陽決戦篇)
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~no side~
…何年もの長い間続いた兄妹喧嘩…家族喧嘩に終止符が打たれ…膝枕されている神威も、膝枕している神楽も、互いに目を瞑り、ピクリとも動かなかった。
銀時は新八に支えられ、音莉も刀を杖代わりにしてそこになんとか立っていた。
(阿)「つくづくハタ迷惑な兄妹だ。今スグのびてェのは誰かって話だよ」
(銀)「へッ…違ェねェ。こっちも今すぐにでも音莉の膝枕に飛び込みてェ気分だが…生憎、そいつは先になりそうだな」
そう…やっとの事で暴走した子兎をなんとか止められたというのに、今度は…銀時達の周りを、数百人の天人共が取り囲んでいたのだ。
(銀)「野郎の汚ねェ股ぐらしか見えやしねェ。夢見が悪そうだ」
(あ)「何を言ってるんですか。今でも充分…悪夢を見てる気分ですよ、こんな状況で。私だって…銀さんに膝枕してもらえるならして欲しいくらいなのに…」
そう言いながら本当に限界がきたのか…その場に崩れ落ちてしまう音莉。
(新)「音莉さん!」
(銀)「……ウチのお姫さんは誰かさんのおかげで骨も折れちまってるみてーで動けねェし…だったらアンタにちゃんと尻ぬぐいしてもらおうじゃねーか」
銀時と新八、そして阿伏兎が背中合わせになり…それぞれ、臨戦態勢に入る。
だがその時…
(?)「待ちな!!」
その声は桂と戦闘を繰り広げていた猩覚で、天人の一人に肩を貸してもらいながら銀時達の目の前に立っていた。
(猩)「早とちりはよくねーな。俺が手負いの獲物を相手にするようなケチな喧嘩をするかよ」
(阿)「三凶星、猩覚…!」
(馬)「……だったのはさっきまでの話だ」
その声と共に、馬董も群れの中から姿を現した。
(馬)「侍共に負け、主人に捨てられた今では…お前達と同じようなもの」
(阿)「捨てられた? 捨てたの間違いだろ。気にくわなきゃ掟も命令もお構いなし…それが三凶星(てめーら)だ」
(猩)「少なくとも、海賊の矜持も持ち合わせねェ虚(あのおとこ)に、捨てる程の忠誠心も持っていなかったのは確かだ。海賊ってのはもっと自由な生き物だろ? お前達を見て思ったのさ。あっちの方が随分楽しそうだってな」
そして群れの中から現れたのはもう一人…頭や手に包帯を巻いた、子萄もだ。
(阿)「てめーは…! かつて第四師団の団長を務め、今は黒の死神と呼ばれる暗殺者……お前もこんな所にいやがったのか」
(あ)「子萄…」
(銀)「……成程、俺の未来の嫁さんまた傷だらけにしやがったのは…今度はお前ってワケかい。こりゃあ…立派な俺の仇になりそうなもんだ」
(子)「落ち着け、侍。…久しいな、阿伏兎。だが…そんな肩書きは全て捨てる事にしたよ」
そう言いながら、子萄はゆっくりと音莉の方に歩み寄って行く。
(子)「なんせ…この歌姫には何十年、何百年かかっても敵う気がしなかったからな。つまり、俺の肩書きである『狙った獲物は百発百中で仕留める黒の死神』…ってのは、俺は仕事人として客人に生涯偽らなきゃならねェ事になっちまったのさ。だから……お前が苦しまないように、何もかも思い出す前に殺すってのはもうやめだ」
そして…子萄は崩れ落ちたままの音莉に手を差し伸べる。
(子)「これからの俺の使命は…お前がこの先幸せに生きていくために、お前の居場所を護る事にしたよ……音莉」
冷たい目…けれども今初めて…少なくとも彼女の今ある記憶の中では初めて見せられたその笑みに、音莉もふっと笑う。
そして子萄の手をとって、よろめきながらも彼女は立ち上がった。
(あ)「ほら…やっぱりあなたに暗殺者なんて向いてない。そうやって無感情を装ってても…本当はそんな温かい目を誰かに向けられるんだもの」
彼女もまた…子萄がずっと見たかった笑みを、真っ直ぐに向けた。
(銀)「………」
銀時はそんな二人のやり取りを見てそっと子萄の耳元に近づき…
(銀)「てめー…音莉の事好きだろ?」
(子)「は、はぁ!? 貴様…何を言っている! 殺されたいのか!!////」
(阿)「……恋バナが苦手な所も変わってねェワケかい」
(銀)「てめーは音莉でさえ知らねェ過去も知ってるみてーだし、音莉に惚れるのは勝手だが……今の音莉はお前が知ってる音莉とは違う。なんせ俺にベタ惚れだからな。だから…俺から奪い取ろうなんざ考えるんじゃねーぞ? ……音莉の幸せを一番に考えてくれてるんならな」
(子)「分かっているさ。こんなにも手を汚してきた俺に…彼女を幸せに出来るハズもないからな」
(銀)「……ま、そりゃ俺も同類だけどな」
(馬)「そういう事だ。というわけで第七師団、春雨の雷槍はまだ折れていないか?」
(阿)「…さあな。俺にも分からんよ。ここに転がってんのが団長なのか、それとも…ただの兄貴なのかも。ただ一つだけハッキリ言えんのは……似合わねーなァ。戦場だろうと妹の膝だろうと、お前が転がってんのは…やられたまんまで、負けたまんまで転がってんのは」
神威の寝顔を見下ろしながらそう告げた阿伏兎。
すると真っ赤に染まった包帯を巻いた神威の手が…真っすぐに伸びてきた。
(威)「もう…負けないさ、誰にも……」
(阿)「………」
そんな神威の手を取り、引っ張り上げては肩を貸す阿伏兎。
そのまま前のめりに倒れこんできた神楽の身体を、音莉が咄嗟に受け止め……そして、眠る子供に、よく頑張ったと言う母親のように、優しく抱き締める。
(威)「俺は…息子としてより、兄貴としてより、海賊として長く生きてきた。今さら引き返すつもりは、毛頭ない。妹が追いつけない程、ずっと先へ。親父を見下ろす程、ずっと高みへ。母(あのひと)に届くくらい、遥か遠くへ。そこまで行くつもりがなきゃ…追いつけやしない、帰れやしない。家族(あそこ)には…」
一歩を踏み出した神威を先頭に…続けて春雨の男達、三凶星や子萄達も着いていく。
その背中を、銀時や音莉達もじっと見つめていたのだった。
…何年もの長い間続いた兄妹喧嘩…家族喧嘩に終止符が打たれ…膝枕されている神威も、膝枕している神楽も、互いに目を瞑り、ピクリとも動かなかった。
銀時は新八に支えられ、音莉も刀を杖代わりにしてそこになんとか立っていた。
(阿)「つくづくハタ迷惑な兄妹だ。今スグのびてェのは誰かって話だよ」
(銀)「へッ…違ェねェ。こっちも今すぐにでも音莉の膝枕に飛び込みてェ気分だが…生憎、そいつは先になりそうだな」
そう…やっとの事で暴走した子兎をなんとか止められたというのに、今度は…銀時達の周りを、数百人の天人共が取り囲んでいたのだ。
(銀)「野郎の汚ねェ股ぐらしか見えやしねェ。夢見が悪そうだ」
(あ)「何を言ってるんですか。今でも充分…悪夢を見てる気分ですよ、こんな状況で。私だって…銀さんに膝枕してもらえるならして欲しいくらいなのに…」
そう言いながら本当に限界がきたのか…その場に崩れ落ちてしまう音莉。
(新)「音莉さん!」
(銀)「……ウチのお姫さんは誰かさんのおかげで骨も折れちまってるみてーで動けねェし…だったらアンタにちゃんと尻ぬぐいしてもらおうじゃねーか」
銀時と新八、そして阿伏兎が背中合わせになり…それぞれ、臨戦態勢に入る。
だがその時…
(?)「待ちな!!」
その声は桂と戦闘を繰り広げていた猩覚で、天人の一人に肩を貸してもらいながら銀時達の目の前に立っていた。
(猩)「早とちりはよくねーな。俺が手負いの獲物を相手にするようなケチな喧嘩をするかよ」
(阿)「三凶星、猩覚…!」
(馬)「……だったのはさっきまでの話だ」
その声と共に、馬董も群れの中から姿を現した。
(馬)「侍共に負け、主人に捨てられた今では…お前達と同じようなもの」
(阿)「捨てられた? 捨てたの間違いだろ。気にくわなきゃ掟も命令もお構いなし…それが三凶星(てめーら)だ」
(猩)「少なくとも、海賊の矜持も持ち合わせねェ虚(あのおとこ)に、捨てる程の忠誠心も持っていなかったのは確かだ。海賊ってのはもっと自由な生き物だろ? お前達を見て思ったのさ。あっちの方が随分楽しそうだってな」
そして群れの中から現れたのはもう一人…頭や手に包帯を巻いた、子萄もだ。
(阿)「てめーは…! かつて第四師団の団長を務め、今は黒の死神と呼ばれる暗殺者……お前もこんな所にいやがったのか」
(あ)「子萄…」
(銀)「……成程、俺の未来の嫁さんまた傷だらけにしやがったのは…今度はお前ってワケかい。こりゃあ…立派な俺の仇になりそうなもんだ」
(子)「落ち着け、侍。…久しいな、阿伏兎。だが…そんな肩書きは全て捨てる事にしたよ」
そう言いながら、子萄はゆっくりと音莉の方に歩み寄って行く。
(子)「なんせ…この歌姫には何十年、何百年かかっても敵う気がしなかったからな。つまり、俺の肩書きである『狙った獲物は百発百中で仕留める黒の死神』…ってのは、俺は仕事人として客人に生涯偽らなきゃならねェ事になっちまったのさ。だから……お前が苦しまないように、何もかも思い出す前に殺すってのはもうやめだ」
そして…子萄は崩れ落ちたままの音莉に手を差し伸べる。
(子)「これからの俺の使命は…お前がこの先幸せに生きていくために、お前の居場所を護る事にしたよ……音莉」
冷たい目…けれども今初めて…少なくとも彼女の今ある記憶の中では初めて見せられたその笑みに、音莉もふっと笑う。
そして子萄の手をとって、よろめきながらも彼女は立ち上がった。
(あ)「ほら…やっぱりあなたに暗殺者なんて向いてない。そうやって無感情を装ってても…本当はそんな温かい目を誰かに向けられるんだもの」
彼女もまた…子萄がずっと見たかった笑みを、真っ直ぐに向けた。
(銀)「………」
銀時はそんな二人のやり取りを見てそっと子萄の耳元に近づき…
(銀)「てめー…音莉の事好きだろ?」
(子)「は、はぁ!? 貴様…何を言っている! 殺されたいのか!!////」
(阿)「……恋バナが苦手な所も変わってねェワケかい」
(銀)「てめーは音莉でさえ知らねェ過去も知ってるみてーだし、音莉に惚れるのは勝手だが……今の音莉はお前が知ってる音莉とは違う。なんせ俺にベタ惚れだからな。だから…俺から奪い取ろうなんざ考えるんじゃねーぞ? ……音莉の幸せを一番に考えてくれてるんならな」
(子)「分かっているさ。こんなにも手を汚してきた俺に…彼女を幸せに出来るハズもないからな」
(銀)「……ま、そりゃ俺も同類だけどな」
(馬)「そういう事だ。というわけで第七師団、春雨の雷槍はまだ折れていないか?」
(阿)「…さあな。俺にも分からんよ。ここに転がってんのが団長なのか、それとも…ただの兄貴なのかも。ただ一つだけハッキリ言えんのは……似合わねーなァ。戦場だろうと妹の膝だろうと、お前が転がってんのは…やられたまんまで、負けたまんまで転がってんのは」
神威の寝顔を見下ろしながらそう告げた阿伏兎。
すると真っ赤に染まった包帯を巻いた神威の手が…真っすぐに伸びてきた。
(威)「もう…負けないさ、誰にも……」
(阿)「………」
そんな神威の手を取り、引っ張り上げては肩を貸す阿伏兎。
そのまま前のめりに倒れこんできた神楽の身体を、音莉が咄嗟に受け止め……そして、眠る子供に、よく頑張ったと言う母親のように、優しく抱き締める。
(威)「俺は…息子としてより、兄貴としてより、海賊として長く生きてきた。今さら引き返すつもりは、毛頭ない。妹が追いつけない程、ずっと先へ。親父を見下ろす程、ずっと高みへ。母(あのひと)に届くくらい、遥か遠くへ。そこまで行くつもりがなきゃ…追いつけやしない、帰れやしない。家族(あそこ)には…」
一歩を踏み出した神威を先頭に…続けて春雨の男達、三凶星や子萄達も着いていく。
その背中を、銀時や音莉達もじっと見つめていたのだった。
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