第二百三話(洛陽決戦篇)

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名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)

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快臨丸のモニターに、黒煙を上げる三隻の船が映る。


「全弾、敵艦に命中! 奇襲作戦成功したようです」


(辰)「よーし、たたみかけるぜよ。海援隊全艦に告ぐ。超逃げてェェェェェェェェ!!」


そう叫んだ辰馬の隣で、陸奥が溜息をつく。


(陸)「よくもそんな後ろ向きな命令を前向きに放てるものだな」


(辰)「正面から撃ち合うてもあの数に勝てん。だからケツをつついて戦場(いくさば)から少しでも敵を引き剥がすまで。例え後ろ向きだろうが横向きだろうが、気にする事はなか。金時の粗末なチ〇コを嬢ちゃんが気にしてないのと同じぜよ」


(陸)「いや、違うじゃろ」


(辰)「この坂本辰馬の行く道が、未来(まえ)になる」


(陸)「……やれやれ。宇宙のサギ師は 戦場(ここ)にも健在のようじゃ」




とその時…




ドォォォォォォォォォォン!! と快臨丸が何者かの砲撃を受け、船が大きく揺れる。


船内には異常事態を知らせる警報機が鳴り響く。






「艦長ォォォォォォォォォ!!」



(辰)「何事じゃ! 早くも敵が巻き返してきたか!」


「て、敵ではありません。味方です!!」





そう…攻撃してきたのは、快臨丸の後ろからついてきていた、味方の小型船だったのだ。


(辰)「………!」


背後から次々に砲弾が飛んでくる中、モニターには雑音交じりの小型船の乗組員の顔が映る。


『艦長、逃げてください! 我々の船はもう…!』



とここで通信が切断されてしまう。


「通信、遮断されました!」


(辰)「煙幕弾じゃ! 全力で他の船を引き剥がせ! いいか、幾ら撃たれても絶対に反撃するな!! とにもかくにも全速力で逃げ…オボロシャァァァァァァ!!」


とスピードを上げた途端にキタロウ袋に吐いてしまう辰馬。


(辰)「ごめん、ちょっとスピード落として」


(陸)「どうやらバカ艦長に愛想が尽きて謀反を起こしたワケじゃなさそうじゃ。通信を見る限り敵に占拠された様子はなかった。無論、謀反ならば『逃げろ』などと言うワケもない」


(辰)「じゃあ何か。この反逆は見方でも敵でもない、船が勝手に引き起こしてるだとでも言うがか」


(陸)「その通りぜよ。ハッキングじゃ」


(辰)「………!」


(陸)「船の制御システムを乗っ取る事で、敵は一平の兵をも使わず快援隊を船ごと占拠したんじゃ。中にいるのは味方に違いない。だが船は既に敵に操られちゅう。つまりわしらは仲間を人質にとられた上に、自軍の船を奪われ敵に回してしまった。これだけの離れ業をやってのけるとは…敵は化け物レベルのハッカーぜよ」


(?)「その通り」


そんな声と共に、モニターにロボット顔の人物…笵界が映し出されたのだ。


(笵)「貴様らの艦隊は、既にわが手中じゃ」


「き、貴様は…!」


(辰)「……あのォ、もしかして通信先間違ってませんか? ウチはホワイトベースじゃのうて快援隊ですが」


「いや、ザクじゃないです艦長」


(辰)「メモ帳あります? 連邦軍の連絡先教えますんで。よくジオン軍がかけ間違ってくるんですよ」


「だからジオン軍じゃないです、艦長」


(辰)「ああ、じゃあ最近流行りのザクザク詐欺? わしの目は騙せませんぞ!」


「いや、そんな詐欺知らねーし! おもくそザク信じてたし!」


(笵)「我が名は機巧導師笵界。春雨第三師団団長にして三凶星の一人」


「さりげに名前アピってきましたよ」


(陸)「要するに全ては貴様の仕業という事か、ザク」


「何故今のを要約したらザクなんですか、副艦長」


(笵)「その通り。貴様らの艦隊を蹂躙したのも、貴様らの旗艦を敢えて手を付けずにいたのもこのわし。ガンダムよ」


そう言った笵界の顔は、マジであのガンダムの顔になっていた。


「ガンダムに乗り換えた! ザク呼ばわりなら敵機に乗り換えた方がマシってか!」


(笵)「仲間の乗る船を撃墜して生き残るか、仲間を護るために黙って撃墜される道か…好きな方を貴様らに選ばせてやろうと思ってな」


(陸)「貴様ァァァァァァァ!! じゃあザクで!!」


「そっちの選択!?」


(笵)「どちらを選んだとて、貴様らの敗北は必定。仲間を救うため、ここまで来た貴様らが、仲間のために全てを諦める…その瞬間を、このモノアイにおさめてやろうぞ」


と、今度は身体までもがザクに変わっていた。


「諦めたァァァァァァァァ!! 開き直ってザクとして生きていくつもりだ!」


(笵)「決断までの時間はそうないぞ」



とその時、操縦室から通路へと繋がる扉が開いた。






………のだが、そこには驚愕の光景が待ち受けていたのだ。




───まるでゾンビのように、意思を失くした…快援隊の船員だった。


(辰)「お、おまんら…」


(笵)「この機巧導師が自在に操るのは、機械だけとでも?」


直後、操られた者が皆操縦室にいた者に襲い掛かり、あちこちで防御による戦闘が行われる。


辰馬も必死に声をかけるが、全く正気に戻る気配はない。


相手の刀を受け止め、振り下ろされる刀を避け…味方を傷つけないためにはそれしか出来なかったのだ。


(笵)「我ら第三師団は、春雨でも唯一兵を持たぬ師団と言われておる。だがそうではない。見えぬだけよ。わしの兵は目に見えぬ程小さいが、その数も能力も他の師団に優(まさ)る。あるものは敵の中枢システムに侵入し、あるものは人の脳に寄生し、感染する事でその勢力を急速に拡大していく。…そう、わしの体内に飼われた無数の尖兵達(ナノマシンウイルス)。そしてそれらに操られた貴様らの玩具。それこそがわしの第三師団よ」


辰馬の背後から、三人の乗組員が刀を構えて飛びかかる。


「艦長!!」




だが…




(辰)「すまんのう、みんな歯ァ食いしばれ!!」



その言葉と同時に、男三人をまとめて通路の外へと放り投げる。


そして他の操られた仲間も、皆まとめて通路の外へと押し出した辰馬。


(辰)「船の方は頼むぜよ! 入り口を封鎖しろォォォォォォォォ!!」


自身一人…操縦室の外に残りながらも、そう叫ぶ。


「し、しかし…」


だがその時、陸奥が入り口の扉を閉めるボタンを押したのだ。


「か、艦長ォォォォォォォォォォォ!!」





そして…そこには辰馬と操られた味方だけが残っていた…かと思われたが……





(辰)「なんでついてきよった」




…隣には、陸奥が立っていたのだ。


(陸)「選択肢は二つじゃない。ザクを探し出し、ぶちのめして全てを元に戻す。それに艦長が感染したら、真っ先に副艦長が殺してやらんとな」


(辰)「やれやれ。じゃあおまんが感染したらわしが殺すのか…返り討ちにされるのがオチぜよ」


(陸)「感染なら心配いらんさ。もうとっくに感染しとる」




そして二人は同時に地を蹴り…





(陸)「おまんのバカがうつった!」






…味方に突っ込んで行くように走り出した。
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