第百九十八話(洛陽決戦篇)
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パシンッ!! と竹刀の音が響くのは、街外れにある小さな寺子屋…松下村塾。
道場では、ドンッ!! という派手な音と共に、銀髪の少年が地面に叩き付けられる。
(銀)「イテテテ、クソ…まだだ。まだ俺の剣は折れてねーぞ」
そう言いながら、少年は埃をはたき、立ち上がる。
(銀)「もう一本だ、松陽ォォォォォォォォォォ!!」
そして向かっていく先は、少年の師…吉田松陽。
松陽はニッコリ笑いながら竹刀を振り上げ…
パシンッ!!!
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カラスが泣き、夕日が照らす中、二人は並んで縁側に座っていた。
(松)「惜しかったですね、銀時」
だがその少年…銀時はたんこぶを二、三個作り、鼻血が垂れるので鼻の両穴にティッシュを詰め、顔中痣だらけで…いわゆるフルボッコ状態であった。
(銀)「先生、どの辺がですか?」
(松)「その辺です」
(銀)「具体的に」
(松)「やっぱりあの辺でした」
(銀)「…松陽、どうやったらお前みたいに強くなれる? 俺はお前に出会うまで大人にだって負けた事はなかった。お前は大人なんて生易しい生き物じゃねェ。……巨人だ」
(松)「それは違うよ、銀時。私は……
………阪神が好きです」
(銀)「先生、人の話聞いて下さい。お前みたいな化物見た事ねェっつってんの。……お前は俺と出会う前何をやってた。お前は一体何者なんだ」
(松)「『屍を食らう鬼』と呼ばれていた君なら分かるでしょう。化物も化物の子も同じですよ。化物とは人ならざるもの。血塗られた業の中でしか生まれない」
松陽の脳裏には、屍の山の中からそれらを払って立ち上がった銀時が、血濡れた刀を持って涙を流しながらその小さな身体を震わせている…そんな所が浮かぶ。
(松)「化物の剣では私(ばけもの)は斬れません。だから銀時、私の真似事をして強くなろうとするのは、もうやめなさい。私も私の剣を君に教えるつもりはありません。君は君の剣で、人の剣で…私より強くなってくれなくちゃね」
銀時はその言葉の意味があまりよく分からないというように、ニッコリ笑う松陽の横顔を見つめる。
(松)「銀時、楽しみにしていますよ。いつか君が……」
桂や高杉達と道場で戦った事、戦場で敵を斬っていった事、そして黒縄島での虚という男を斬った時の事が浮かぶ中、銀時の刀が虚の左肩を貫く。
だが…
(虚)「私という化物を、退治しにきてくれるのを」
虚が見せた奇妙な笑みに…一撃を食らってももろともしないその男に、銀時は固まってしまい、全ての背景が白黒へと変わっていく。
一太刀入れたハズのその刀は、虚の手によって受け止められており、カタカタと刀が震える。
虚が掴む刀の刀身が、次第に錆びついていく。
(虚)「残念だ。言ったじゃないか」
錆びついた刀が虚によって握りつぶされ、粉々になってしまう。
(虚)「化物(きみ)の剣は…化物(わたし)には届かない」
そしてニッコリ笑った虚の刀が、銀時の脳天へと振り下ろされ…
~銀時side~
はっと目を覚ませば、そこはどこか薄暗い場所。
息を切らせば、額から汗が流れ落ちる。
(銀)「夢か…」
だが頭頂部に違和感を感じ、その感触が何だったかを一生懸命探っていると、行きついた答えは俺の股間にもついているナニの感触…
どうやら俺は…雑魚寝している床に同じように寝転がっているエリザベスの中にいたらしく、中のオッさんのナニが俺の頭に乗っているようだった。
俺は腰にあった木刀に手をかけ…
ザシュッ!!
バッコォォォォォォォォン!!
と木刀をエリザベスに突き刺し、扉を突き破る勢いで蹴り飛ばす。
そして外にいたヅラがそれに反応した。
(桂)「エリザベス! 敵襲か!?」
(銀)「敵襲だ。とんでもねェ凶器が俺の頭頂部に突き刺さらんばかりだった」
(桂)「何だと!? この地下都市アキバにまで幕府の魔手が…!? だが安心しろ、銀時!お前の潜伏生活は我らが護る!!」
新八がよくやっていたオタ芸のようなものが聞こえる中、見渡してみれば家の周りから屋根の上までぎっしりと、ヅラの仲間が刀を構えて立っていたのだ。
(桂)「全方位護りを固めろ! ねずみ一匹隠れ家に近づけるな!! いいか! 誰にも銀時がここにいる事を悟られるなよ!?」
とかいいつつも、バレバレの大人数で厳戒態勢を張っていたヅラ達を思いっ切り蹴り飛ばした。
(銀)「衛星から見ても隠れ家って分かるわ!!」
だが蹴り飛ばした衝撃で、ヅラの仲間が持っていた刀が吹き飛び、それが俺の脳天をめがけて落下してきて…
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(銀)「はっ!」
目を覚ませば、目の前にはなにやら本を読んでいるらしい真剣な音莉の顔。
そこでここが音莉の膝の上…俺が膝枕をされていた事に気付く。
それから…
(あ)《「掛け替えのない命だと
流行りの歌は言うけれど
誰かが僕と代わってても
誰も困りはしない
変わりばえのない日々に
借り物の僕ら椅子を探してる
何にもなれはしないまま
心臓は止まってく
かさぶたになった傷を
引っ張りだしてまた掻き毟って
滲んで来た二度目の言葉
悲しい歌が聞きたくて》
……いつも通り、心地よい透き通った歌声。
(銀)「音莉…」
音莉の頬に手を伸ばして触れると、俺が目を覚ました事に音莉が気づき、歌が途切れた。
(あ)「あ、銀さん。起きました? おはようございます」
(銀)「おはよう」
(あ)「汗だくですけど…大丈夫ですか?」
(銀)「ああ。妙な夢見ちまっただけだ。心配すんな。それよりも…続き、歌ってくれねーの?」
(あ)「えっ? あ、じゃ、じゃあ…」
と少し躊躇った音莉はすっと息を吸う。
(あ)《好きな音楽は何ですか?
好きな食べ物は何ですか?
君の好きな人は誰ですか?
きっとそれは 僕じゃないんだ」 とか
自分勝手に諦めては
独りよがりで傷ついてた
年を取ってやっと気付きました
ねえ まだ
まだ間に合いますか》
(銀)「やっぱ…いい歌声だな、お前の声……」
と身体を起こした俺は、音莉の唇にチュッ…と口づける。
(銀)「久々だな、おはようのキス」
だがとうの音莉はというと、顔を真っ赤にさせてしまっており…
(あ)「は、はうぅ…////」
(銀)「顔真っ赤」
(あ)「だ、だって…その、久々で…しかも急だったから……」
真っ赤にしたまま心臓の鼓動が鳴りやまないのか、胸の辺りを押さえるその仕草ももう愛しくてたまらない。
(銀)「かーわい」
内心ほくそ笑んでからもう一度不意打ちにキスをすれば、「も、もういいですっ!///」という音莉の恥ずかしさで耐え切れない声が漏れだす。
(銀)「チェッ…折角もっとイチャイチャしてやろうと思ったのによォ……」
どうやら最近シリアス続きだったもんだから、こういうのの免疫がまた薄くなってしまったようだ。
(銀)「そういやお前、さっき何読んでたんだ?」
俺の問いかけに音莉がはっとしてそれをなんとなく隠すようにするが、小さな手の隙間から『江戸の習慣』と書かれた本の題名が見えた。
(銀)「江戸の習慣…?」
(あ)「あ、えっと…その、今回色々あったから……その、江戸の事、もっとちゃんと知っておきたくて」
なんて言って笑う#音莉だったが、その言葉は何か嘘で固められているような…急づくろいな言葉な気がした。
そしてその笑みも…どこか悲しそうで、無理をしているように感じた。
(銀)「音莉、お前何か隠して…」
だがその時…
(桂)「起きたか、銀時」
扉を開け、顔を覗かせたのはヅラであった。
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