第百八十六話(歌姫の遺跡篇)
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始まりは、特に何の変哲もないいつも通り幸せな一日に起こった事だった。
お昼ご飯を食べてから少し時間が経ち、現在は午後二時頃。
今日は…というか今日もお仕事はなく、万事屋四人揃ってテレビを見ながらお茶を飲んだりお菓子を食べたり、ゆったりとした時間を過ごしていた。
……と、とにかく一昨日はお仕事もちゃんとあったので、多分大丈夫なハズだ、うん。
そんな中現在テレビではとあるニュース番組がかかっており、健康特集なんてものが放送されている。
しかも……
(銀)「へェ…キス健康法ねェ……」
……銀さんの呟いた通り、そんな特集が織りなされていたのだ。
(銀)「キスするだけで免疫力上がったり…? ディープキスではフェイスヨガ並みのダイエット効果が見られたり…」
するとニヤリ、と怪しい笑みを浮かべながら銀さんがこちらを見た。
(あ)「な、なんですか…?」
(銀)「ディープキスする事で男の唾液に含まれる媚薬みてーな成分が女をその気にさせる事も出来るみてーだぞ」
(あ)「な、なんでそれ私に言うんですか?」
(銀)「いやあ、音莉がキスだけで腰砕けちまうのはそう言う事か…ってな」
そんな銀さんのニヤリと笑う顔と事実に恥ずかしくなって、顔が一気に真っ赤に染まってしまうのが分かる。
(あ)「も、もう…余計な事言わないでください!///」
(銀)「あと音莉がこれだけのキレイを保ち続けてるのも、俺との毎日のキスのおかげ…って事だな?」
すると銀さんの手が私の顎にかかり、紅い瞳が怪しく光って私を捕らえる。
(あ)「へっ、あ…の……////」
神楽ちゃんと新八君が目の前にいるのに、それでも緊張からか拒否の言葉を出す事が出来ず、思考回路も全て固まってしまう。
とその時…
(神)「お前は私の音莉に何やってるアルかァァァァァァァァァァァ!!」
バコッ!! ドコッ!! ドカッ!!
(銀)「ぐあはああああっ!」
……救世主登場。神楽ちゃんが銀さんに飛び蹴りを食らわせ、地面に叩き付けて拳を振り上げる。
銀さんも馬乗りになられながらも夜兎である神楽ちゃんの拳をまともに受ければ無事では済まないと分かっているからか、必死に抵抗している。
(神)「音莉…無事アルかァァァァァァァァ!?」
(あ)「う、うん…あ、ありがと……」
心臓がバクバクのままで赤面硬直状態の私だったが、そんな私を放置で二人はたちまち言い合いを始め…
(銀)「ぐっ、くそっ…! だ、大体お前らの音莉がいつまでも別嬪なのは俺の高テクニックベロチューのおかげなんだぞ!?」
(神)「お前のキスなんかなくたって音莉は元から別嬪アル! 素材が完璧アル!」
(銀)「そりゃ俺が一番知ってるわ! お前になんか言われなくたって音莉は素材が完璧すぎて俺も戸惑ってるわ! 俺と身体を重ねる度に完璧からさらに磨きがかかってて逆に音莉の可愛さが怖くなってくるわ!」
(神)「銀ちゃんみたいな虫ケラが音莉に触る度に音莉が汚れていくアル! 嫌でも不純な事を覚えてしまうアル! 変な病気うつされるアル!」
(銀)「誰が性病だ! 大人の階段を上るには多少の汚れは必要なんだよ! おかげで出会ったっ頃に比べると色気がグンと増してんだろ!? 365日フェロモン大放出してんだろ!? 確かに最初はキスするだけで妊娠しちまうと思ってたみてーだけど! 恋愛成就した日勢い余って俺にキスしちまったからその後妊娠したらどうしよ…って怯えてたけど!」
(あ)「ちょ、恥ずかしいからやめて! やめてェェェェェェェェェ!!/////」
だが私が叫んだその直後…
(あ)「っ……!?」
急に…何の前触れもなく、胸が…心臓が握り潰されるような痛みに襲われる。
(新)「音莉さん…?」
思わず胸の辺りをギュッと押さえるけど、息が出来ない程の痛みに襲われ、持っていた湯呑をゴン!と音を立てて落としてしまい、中身が床にぶちまけられる。
今まで言い合いを続けていた二人も、一気に私の方に視線を浴びせる。
(銀)「オイ、音莉!?」
(神)「どうしたアルか!? 音莉!」
だがそんな二人に「大丈夫」と答えてあげる事も出来ず、それどころか呼吸すらも出来なくなってくる。
(あ)「ぁ……っ……」
身体に酸素が回らなくなって頭が朦朧とし、力が入らなくってソファから落ちてしまいそうになる私を銀さんが受け止めてくれる。
(銀)「しっかりしろ、音莉! 音莉!!」
(新)「僕、救急車を!」
新八君が慌ただしく動いてくれて、銀さんが気道を確保するために私の首を動かしてくれるけど、それでも上手く息が吸えなくてだんだん目の前が真っ暗になってくる。
(あ)「っゲホゲホッ! っ……」
銀さんの焦った表情と、神楽ちゃんの泣き出しそうな表情が霞んで見えた後、胸の痛みと共に「このまま死んじゃうのかな…」なんて頭の片隅で考えながら、私の意識は奥底へと沈んだ。
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(あ)「ん…」
ゆっくりと意識が浮上して最初に感じたのは、ツンと鼻につくアルコールの匂い。
それから…
(神)「音莉!! 起きたアルか!?」
(新)「大丈夫ですか!? どこか苦しい所ありますか!?」
……とても不安そうに顔を歪める二人の顔。
今はどこにも痛みなんて一つもなくて、だからそんな二人にニッコリ笑い…
(あ)「うん、今は大丈夫」
そう伝えると、二人はほっとした表情に変わった。
けれど神楽ちゃんはすぐに真剣な表情に変わり…
(神)「音莉、何があったアルか? また何か隠してるアルか? 私達じゃ力不足なら銀ちゃんに…」
……そう聞いてくれるけど、今回ばかりは本当に、何も隠し事なんてないのだ。そもそも最近は少し前の脅迫の手紙の事もあり、その辺りは銀さんが目を光らせていて隠し事も全部バレてしまうのだ。
(あ)「別に何も隠してないんだよ。ただ急に胸、というか心臓が痛くなっただけで、私も急な事でよく分かんなくって…」
とその時、病室の扉が開いて、銀さんが入ってきた。
(銀)「起きたか。調子どうだ?」
(あ)「今はなんともないですよ」
(銀)「そうか。こっちも医者に話に聞いてきたが、検査の結果特に異状もねェってさ」
(あ)「異常なし、ですか…。なんだか逆に不気味ですね」
(銀)「ああ。どうにも今の音莉の表情見てると何か隠してる様子でもねェしな」
銀さんも私も…神楽ちゃんや新八君も『異常なし』の言葉に顔を曇らせてしまう。
どこか腑に落ちない部分ばかりだったが、異常なしと伝えられた以上入院なんて勿論認められないので、今日はこのまま万事屋に帰る事にした。
帰る前にお医者様から言われたのは、しばらく経過観察で様子を見るという事と、何があってもいいようにしばらくは私一人で行動しないようにという事だけであった。
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