第百七十五話(愛染香篇)
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~no side~
今から十年ほど前…まだその常世の国に鳳仙が君臨していた頃。
二人の幼い女が、男の欲を満たす街…吉原の街を、淡い光が照らし、一夜の夢だと知りながらも、腕を組みながら行く男女がいる中、並んで歩いていた。
(螢)「ねえ、ここがどんな場所か教えてもらった? 好きでもない人を好きにならなきゃいけない所なんだって。でもね、どうしても好きになれない娘(こ)のために、吉原には知る人ぞ知る秘薬があるんだってさ。それを飲んだら、私達も男の人をとっかえひっかえ好きになるのかな?」
一人の女…螢が問いかけたその相手は、まだ顔に傷もない程の、幼き頃の月詠であった。
(月)「知らん。男など好きになった事はない」
(螢)「……そう。私は故郷に一人…。でも、何も言えないままサヨナラしてきちゃった。惚れ薬なんてそんな便利な薬が本当にあるなら、素直に伝えられたのに…」
持っていた包みを胸に抱え、少し後悔を交えたように…つらそうにそう言葉を紡いた螢。
(月)「螢、そんな物にまで頼って気持ちを伝えて、意味があるのか?」
(螢)「そうだけど…色々難しいんだよ、人を好きになるっていうのは。いつか分かるよ。本当に好きた人が出来たら、月詠ちゃんにも」
月詠は不思議そうに、蛍の顔を見つめた。
そしてこの数年後、吉原、万事屋……とある少女が崩壊を始める出来事の始まりであった。
────今まで彼女が流した"涙"で錆び付いた歯車は、崩れていく事を止められない。
今から十年ほど前…まだその常世の国に鳳仙が君臨していた頃。
二人の幼い女が、男の欲を満たす街…吉原の街を、淡い光が照らし、一夜の夢だと知りながらも、腕を組みながら行く男女がいる中、並んで歩いていた。
(螢)「ねえ、ここがどんな場所か教えてもらった? 好きでもない人を好きにならなきゃいけない所なんだって。でもね、どうしても好きになれない娘(こ)のために、吉原には知る人ぞ知る秘薬があるんだってさ。それを飲んだら、私達も男の人をとっかえひっかえ好きになるのかな?」
一人の女…螢が問いかけたその相手は、まだ顔に傷もない程の、幼き頃の月詠であった。
(月)「知らん。男など好きになった事はない」
(螢)「……そう。私は故郷に一人…。でも、何も言えないままサヨナラしてきちゃった。惚れ薬なんてそんな便利な薬が本当にあるなら、素直に伝えられたのに…」
持っていた包みを胸に抱え、少し後悔を交えたように…つらそうにそう言葉を紡いた螢。
(月)「螢、そんな物にまで頼って気持ちを伝えて、意味があるのか?」
(螢)「そうだけど…色々難しいんだよ、人を好きになるっていうのは。いつか分かるよ。本当に好きた人が出来たら、月詠ちゃんにも」
月詠は不思議そうに、蛍の顔を見つめた。
そしてこの数年後、吉原、万事屋……とある少女が崩壊を始める出来事の始まりであった。
────今まで彼女が流した"涙"で錆び付いた歯車は、崩れていく事を止められない。
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