第百六十九話
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~幾松side~
「ヘイ、ラーメン一丁」
大晦日の夜、そのみすぼらしい男が頼んだのは年越しそばではなく一杯のラーメンだった。
「こんなにたくさん食えねーな」
男はそう言うと小皿にラーメンを取り分け、3つにして私と夫にラーメンをふるまった。
そして自分のラーメンを貪るように一瞬でたいらげると、寒い夜道を腹を鳴らせて帰って行った。
翌年もその翌年も、大晦日が来る度に男は店にやってきた。
そしていつものようになけなしの金をはたき、一杯のラーメンを頼み、どういうワケか、それを私達に振る舞った。
その度に夫は黙ってラーメンを3つに分け、そのうちの一つにありったけのチャーシューを乗せ男に出すと、黙って一緒に汁だけのラーメンをすすっていた。
「幾松、これがウチの店の年を締めくくる毎年恒例の行事だ。俺に何かあった時はオメーさんがキッチリやり遂げるんだぜ」
それが夫の作った最後のラーメンになった。
そして私達三人の大晦日恒例の行事も、それきり最後になった。
「ヘイ、ラーメン一丁」
大晦日の夜、そのみすぼらしい男が頼んだのは年越しそばではなく一杯のラーメンだった。
「こんなにたくさん食えねーな」
男はそう言うと小皿にラーメンを取り分け、3つにして私と夫にラーメンをふるまった。
そして自分のラーメンを貪るように一瞬でたいらげると、寒い夜道を腹を鳴らせて帰って行った。
翌年もその翌年も、大晦日が来る度に男は店にやってきた。
そしていつものようになけなしの金をはたき、一杯のラーメンを頼み、どういうワケか、それを私達に振る舞った。
その度に夫は黙ってラーメンを3つに分け、そのうちの一つにありったけのチャーシューを乗せ男に出すと、黙って一緒に汁だけのラーメンをすすっていた。
「幾松、これがウチの店の年を締めくくる毎年恒例の行事だ。俺に何かあった時はオメーさんがキッチリやり遂げるんだぜ」
それが夫の作った最後のラーメンになった。
そして私達三人の大晦日恒例の行事も、それきり最後になった。
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