第百三十五話※R-18表現アリ

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名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)

1月1日、元旦。


今日はいつも賑やかな街が、いつも以上に華やかに賑わっている。


そんな中、私達はまだ外にも出ず、家でゆっくりしていたのだが…。


(神)「銀ちゃん銀ちゃん、お年玉ちょうだいアル」


こたつに入っていた神楽ちゃんが、向かいで新聞を読んでいる銀さんにそう言った。


(銀)「………」


だがその銀さんは返答なし。


(神)「…お年玉ちょうだいアル」


神楽ちゃんがぜんざいをすすって、もう一度銀さんに言った。


(銀)「………」


だがそれでも返答なし。


(神)「…お年玉……」


(銀)「どこでそんなはしたない言葉覚えてきた。女の子がそんなふしだらな事言っちゃいけません」


(神)「だってみんな言ってたアルヨ? 地球では正月に大人からお年玉がもらえるんだって。ねェ銀ちゃん、お年玉って何アルか?」


(銀)「………」


(神)「ねェねェ、私にもお年玉ちょうだいアル」


(銀)「……本当に…欲しいのか?」


(神)「うん。よく解んないけどタダで貰えるなら」


(銀)「……後悔…しないんだな?」


エラく神妙そうな声でそう尋ねた銀さん。


(神)「えっ?」


(銀)「お年玉を受け取る覚悟が…どんな事になってもお年玉をその手にするが……お前にはあるんだな?」


(神)「大げさアルな。そんな大層な…」


とその時、銀さんが苦しそうに口元を押さえ出した。


(銀)「うっ…」


(神)「銀ちゃん?」


その口から、指の隙間を通って、血…のように、ぜんざいの汁が新聞の上に零れ落ちる。


(銀)「うっ…くっ……」


(神)「銀ちゃ…」


と次の瞬間…


(銀)「ブベラァァァ!!」


銀さんが口から血を吐き出すように、大量のぜんざいの汁を吐き出した。


(神)「はっ…!」


そしてそのまま机の上に倒れ伏せる銀さん。


(神)「銀ちゃんんんんんんんんん!! 大丈夫アルか!? 銀ちゃん!」


それでもまだ苦しそうに口元を手で押さえる銀さんの背中を、神楽ちゃんがさする。


(神)「しっかりしてヨ! 一体…一体何が……」


(銀)「ぐはぁぁっ!」


(神)「銀ちゃんんんんんんんんんんんんん!!」


すると銀さんの口から、ぜんざいの白玉が机の上に落ちた。


(銀)「う、受け取れ…。こ、これが俺の…お年玉だ」


銀さんは今吐き出した白玉を握ると、それを神楽ちゃんに渡す。


そしてそのまま倒れそうになった銀さんを、神楽ちゃんが支える。


(神)「銀ちゃん! コ、コレ…。何アルか!? お年玉って…。一体何アルか!?」


神楽ちゃんが自分の掌に乗っている吐き出された白玉を見つめながら、涙を溢す。


(神)「ひょ、ひょっとして私…銀ちゃんの大切な何かを…大切な何かの玉を……」


(銀)「い、いいんだ。いつか…こんな日が来る事は解っていた。正直、ずっと恐かったんだ。いつかお前がお年玉…言いだすんじゃないかって…。いつかこの生活が壊れてしまうんじゃないかって……」


(神)「ゴ、ゴメンなさい、銀ちゃん! 私知らなかったんだヨ、お年玉がこんな大変なものなんて…。もう要らない! 私、こんなお餅大の謎の玉、もう要らない! だから…銀ちゃん!」


(銀)「神楽…これが大人からお年玉を奪うという事だ。うっ…がはっ!」


(神)「ぎ、銀ちゃん!」


(銀)「だ、だがどんな事があったって…お年玉を手に入れるって…お前は決めたんだろ? だったら、後ろなんて振り向いちゃダメだ。俺の…大人達の屍を越えて行け」


(神)「銀ちゃん…」


(銀)「神楽、その玉を七つ集めるんだ。世界中の親戚達の元に散りばめられた、幻の秘宝…。七つ集めれば、ちびっこ達のどんな願いも叶えてくれるという、伝説の宝玉…お年玉(トレジャーボール)を……。きっと…きっと願いを叶えるんだぞ? 俺の…分…まで……」


そう言うと銀さんの力が抜けて、神楽ちゃんの頬にあったぜんざいの汁まみれの手がしゅるりと地面に落ちる。


(神)「うっ…銀ちゃ…銀ちゃーーーーーーーん!!






………じゃねーアル!!」


と、神楽ちゃんが銀さんの足を持って、銀さんの顔を壁にぶつけた。


(神)「オイ、トレジャーボールって何だ。てめェ! お年玉あげたくねェばかりにどんだけグロテスクなお年玉生みだしてるアルか! 申年なのにトラウマになるわ!」


(銀)「な、なんだオメェ…知ってたのか。人が悪いなぁ…」


(神)「直接交渉しても無理があるとおもってしらばっくれてたら調子づきやがって!」


(銀)「でも大人がお年玉捻出するのがどれだけ大変が勉強になっただろ?」


(神)「お年玉ねだられて口から白玉ひねり出す奴の気持ちなんか解るワケないアル!」


(銀)「仕方ねーだろ! 俺はお年玉(トレジャーボール)は全身釘に打たれた憐れなガキに全部落としちゃったから」


(神)「それただのパチンコ屋だろーが!」


(銀)「そりゃあ口から白玉(トレジャーボール)も出てくるぜ。今朝食べた汁粉(トレジャースープ)も出てくるぜ」


(神)「んなもんに玉落とす位なら私に…!」


(銀)「うるせェ、コラァ!」


いつも通り、お正月からたちまち殴り合いになる二人。


(あ)「はぁ…」


一連の小芝居を見ていた私は、盛大に溜息をつく。


とそこに新八君がやってきた。


(あ)「あ、新八君。明けましておめでとうございます」


(新)「おめでとうございます、音莉さん。…アレ? なんか騒がしいな……」


(あ)「実はね…」


と、私は新八君に先程あった事を話す。


(新)「はぁ…ったく。もう、新年から何騒いでるんですか? 明けましておめでとうございます。はい、神楽ちゃん、コレ」


新八君が部屋に顔を覗かせ、懐からお年玉袋を取りだす。


(神)「何アルか? それ」


(新)「何って…正月って言ったらお年玉に決まってるでしょ?」


(銀)「………」


(神)「うおおおお! マジアルか! 新八、スゲーアル!」


(新)「いやいや、姉上に持って行きなさいって言われて…」


(神)「成程。キャッホーイ!」


お年玉を受け取った神楽ちゃんが、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねる。


(新)「僕もまさかこの歳でお年玉がもらえるとは思わなかったよ。ま、姉上から見たら僕もまだまだ子供なのかな?」


(あ)「ふふっ、じゃあそんな新八君にも神楽ちゃんにも、私からお年玉。はい、どうぞ」


私は二人に用意してあったお年玉袋を差し出す。


(銀)「………」


(新)「えっ…いいんですか!?」


(あ)「うん。まあ私のお給料からだから、あんまり額は多くないけど…」


(神)「やったー! 音莉大好きアル!」


(新)「ありがとうございます」


(あ)「いえいえ、どういたしまして」


こんなに喜んでもらえるなんて…用意してあってよかった。


(新)「でもやっぱなれるなら僕も姉上や音莉さんみたいな大人になりたいな。必要な時にさっとお金が用意出来るような」


(あ)「うん? 私って大人かな…?」


18歳って大人なのか微妙な歳だよね…。あ、でもお妙さんは同い年なのに見た目はもう大人って感じだよね。


(神)「そうアルな。お年玉やるっつって白玉吐き出す大人にはなりたくないアルな」


(新)「そうだね。お年玉ねだられるのが嫌だから正月からひきこもってる大人にもなりたくないね」


(銀)「オイ!! てめーら人が黙って聞いてりゃ、なんで俺だけお年玉ねーんだよ! ズリーよ!!」


(新)「キレるとこそこ!?」


(あ)「仕方ないなぁ…。ホラ、銀さん。明けましておめでとうございます」


私はもう一つ、銀さん用に用意していたお年玉袋を銀さんに差し出す。


(銀)「えっ…マジで? マジでくれんの!? キャッホーイ! 音莉大好き!!」


なんて子供みたいに喜ぶ銀さんに飛びつかれる。


(あ)「ちょ、銀さん!///」


(新)「キャッホーイ…じゃねーよ!! いい加減にしてくださいよ、銀さん! アンタはもうホントは与えられる側じゃなくて与える側なの! 何年下の彼女からお年玉もらってはしゃいでるんですか! 普通逆ですよ、逆!」


(神)「たまにはリーダーらしく気っ風のいいトコ見せてヨ!」


(銀)「なーに言ってんだ、バカヤロー。俺は男だ。死ぬまで玉なんか落とすか」


(あ&神&新)「「「………」」」


そんな銀さんから私は離れ、新八君と神楽ちゃんは銀さんの横にやってきて、新八君が机の上に私達が準備していた封筒を置く。


(新)「ホラ、これ使って下さい」


(銀)「ん?」


(あ)「黙ってたら全部使っちゃうと思って、景気がいい時に私達の給料分は分けておいたんです。これはそのほんの一部です」


(神)「それ使って、たまにはみんなにいいトコ見せてやれヨ」


(あ)「これが私の自慢の恋人なんだって…」


(新)「アレが僕らのリーダーなんだって…たまには自慢したいでしょ?」


(銀)「お前ら…」


(神)「ちゃんと利子つけて返せヨ?」
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