第九十六話

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名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)
スタンドからの呼ばれ方(77話で使用)

現在、江戸の空はいつの間にか星が煌めく夜。


(銀)「流石大企業の社長。浮気もみ消しただけでこの分厚さだ」


銀さんが懐から札束の入った封筒を取り出す。


実は、今日私達は大きな会社の社長さんからの依頼で、これまた大きなビルに来ていたのだ。


(神)「今度は浮気をネタにゆすってやろうかしら」


(銀)「ひい、ふう、みぃ……ひゃっほー! おし、今日は奮発して焼き肉だな」


エレベーターを待つ中、銀さんがそう言った。


(神)「ホントアルか!? 叙々苑アルか!?」


(銀)「俺に首くくらせるつもりか。バイキング形式の食べ放題に決まってんだろ?」


(新)「あはははは。神楽ちゃんと焼き肉は牛一頭飼うようなモンですもんね」


(神)「別に安くてもいいもん」


(あ)「でもどこに行くんですか?」


(銀)「アイスとかも食い放題のトコあったろ? あそこ」


(新)「あっ、自分でソフトクリームとかも作れる所ですか? アレいいですよね」


(銀)「アレはなぁ、いい歳してもやっぱソフトクリームにゅい~んって出てくるとテンション上がっちゃうもんな。アレはなんなんだろうな?」


(神)「私はあんなものよりごはんですね! にゅい~んっ出てきた方がテンション上がるアル」


(銀)「人の夢を壊すな。ガキは黙ってろい」


そうこうしているうちにやってきたエレベータに、私達は乗り込む。


(あ)「ていうかやっぱり甘いものある所なんですね…」


(銀)「ったりめーだ。まァ一番甘いのは音莉だけどな」


(あ)「んなっ!?///」


(神)「甘い…? 音莉おいしいアルか? パフェより甘いアルか?」


(銀)「ああ、そりゃ美味いの甘いのなんの。音莉以上に甘い御馳走なんてモン俺は知らねーな」


(新)「ちょ、子供相手に何言っちゃってんですか!//」


(銀)「黙れ童貞が」


(新)「なっ…! ど、童貞で何が悪い! コノヤロー!」


(あ)「はぁ…」


私が溜息をつくと、同時に誰かがエレベータに駆けこんできた。


(?)「ハァ…あ、スイマセン」


(あ)「いいえ、どうぞ。何階ですか?」


(?)「あ、一階で」


私は言われた通り、一階のボタンを押し、それからエレベーターの扉は閉まった。


(神)「あー、なんかこんな話してたらお腹減ってきたアル」


(銀)「そういや今日、仕事早かったから朝飯食ってねーな」


(神)「はぁ…早くホルモンたらふく食べたいアル……」


(銀)「俺は牛タンかなぁ…。レモン汁つけてメシと一緒にガサァっと」


(新)「いいですねェ」


(あ)「わ、私は太るからあんまり食べないようにしないと…」


(銀)「あのなぁ…大体オメー細すぎるんだよ。普段運動量多いくせに小食なんだからこういう時位たらふく食っとけって。ていうかそんなに細いのにあの胸のデカさはどう考えても比例してねーだろ」


(あ)「胸の大きさは今関係ないでしょうが!///」


(神)「はゃ~う~~…」


(銀)「よだれたれてんぞ」


(神)「ふゃ~う~~…」


(あ)「ふふっ、神楽ちゃん食べる前から幸せそう」


見ているこっちも微笑ましくなる。


とその時…


ガコン…


(銀&あ&神&新&?)「「「「「………」」」」」


……ア、アレ? なんか…音がしなくなったような…。


(銀&あ&神&新&?)「「「「「………」」」」」


なんか…おかしくない? なんか…表示が『14』階から動かないんですけど…。


(新)「なんか…長くないですか?」


(あ)「スゴイ静かだし…」


(銀)「結構な高層ビルだからな。それにこんだけデカい会社だと防音設備も完璧なんだろうよ」


(神)「早くしてほしいアル。お腹と背中がメンチきりあってるアル」


(銀&あ&神&新&?)「「「「「………」」」」」


(新)「銀さん…やっぱりちょっと長くないですか? コレ…。ドルアーガの塔並みですよ?」


(あ)「ていうか…階の表示が14階から全く動かないんですけど……」


(神)「気にすることないネ。きっと14階と13階の間がものスゴーく長いアル」


(新)「そうか…」


(あ)「……ていうか…そんなビルなくない?」


(銀)「ないね。14階だけデカいビルなんて聞いたことないね」


(新)「つーか銀さん、これぶっちゃけ…このエレベータさっきから動いてなくね?」


すると銀さんが開くボタンを何回か押してみる。


(銀)「操作ボタン反応なし。扉も開かない…」


(新)「銀さん、コレ…ひょっとして僕達コレ……」


(あ)「…閉じ込められた? エレベータに!?」


(銀&あ&神&新&?)「「「「「………」」」」」


その場に無言が漂う。


そして…


(神)「最悪アル! よりにもよってこんなお腹ペコペコの時に! 誰か、助けて!! ヘルプ…ヘルプミー!!!」


神楽ちゃんがしばらくしてやっと理解したのか、エレベーターの扉をドンドン! と叩く。


(銀)「待て待て待て。落ちつけ。騒ぐな、バカたれ」


銀さんがそう言うと、神楽ちゃんの動きが止まった。


(銀)「お前こんな事よくあるこったろうよ。これしきで取り乱してんじゃねェ、みっともねェ」


(あ)「いや、エレベーターに閉じ込められるなんて事よくあったら困るんですけど…」


(神)「だって、このまま出られなかったらどうするアルか!? 私スグに餓死してしまうヨ!」


(銀)「んなワケねーだろ? エレベーターってのはな、こういう時の為に非常用ボタンってのがついてんの」


銀さんが操作ボタンの下の方にある、赤い丸いボタンを指さす。


(神)「あっ…ホントアル!」


(銀)「これを押せば、異常が管理室に伝わってすぐ助けがくるんだ」


すると…


バッコォォォォォォン!


(あ)「んなっ!?」


なんと、神楽ちゃんが思いっきりボタンを押してしまった為、操作パネルそのものが破壊されてしまったのだ。


(銀)「どんだけ焦って押してんだ!? 非常用ボタン押せっつったんだよ!? 誰が秘孔押せっつった!」


(新)「どうすんですか! んごっ!」


非常用ボタンを連打する新八君の頭に、操作パネルの残骸が落ちてくる。


(あ)「ホ、ホントにどうしよう…操作パネルごと壊れちゃった…」


(神)「ゴメン。力みすぎたアル」


(新)「ゴメン…ってどうすんだよ、これ! どうやって助け呼ぶの!? これ!」


(銀)「お、おおお落ちつけ。大丈夫。大丈夫だって。非常用ボタンなんてなくてもこのビルの誰かが異常に気づくだろ。お前らホ、ホント焦りすぎなんだよ。こういう時ほど、冷静にならないとダメだよー」


(あ)「いや、銀さんメチャメチャどもってますけど…」


すると…


(?)「あの…スイマセン」


先程滑り込みで乗り込んできた男性が声をかけてきた。


(?)「ここの会社、5時が退社時間でして。今の時間はもうとっくにみんな帰って誰も残ってないと思います」


それを聞いた銀さんの顔が引きつった。


(銀)「あ、ああ…そうなんですか……。あ、で、でも、こんだけデカい会社になると警備員とかもいるだろうし、見廻りとかもあるし、気付いてくれるでしょ。焦る事なんて全然な…」


(?)「あの…すいません。その警備員…私です」


その男性が『御子柴』と書かれた警備服を着て言った。


と次の瞬間…


(銀)「だああああああああ! 助けてくれ、誰か!! ヘルプ…ヘルプミー!!!」


先程の神楽ちゃん同様、銀さんもエレベーターのドアを蹴りだした。


(新)「最終的にあの人が一番取り乱してんですけど」


(あ)「だってさっきから冷や汗流れてたし…」


(銀)「てめェ! ガードマンなんだからなんとかしろよ、この状況! つーかなんでてめーがエレベーター乗ってんだよ! もしもの事考えろ、バカヤロー!」


銀さんが御子柴さんの胸ぐらを掴んで揺さぶる。


(御)「す、すいません。屋上で弁当食べてたらちょっとお腹いっぱいになっちゃって。動きたくなくて。でも明日になればみんな出社してくるし…」


(銀)「明日ってお前、俺達今日まだメシ食ってねーんだぞ!! んなに待てるかぁ!!」


(あ)「ちょ、銀さん落ちついて! 御子柴さん、首がしまって酸欠になって顔真っ赤になってるから!」


(新)「つーか銀さん…今週って明日から土、日、月、って三連休じゃなかったでしたっけ?」


(あ)「あ、そうだ! 確か銀さん、今週ジャンプ土曜に出るとか騒いでたような…」


それを聞いた銀さんの顔が青ざめた。


(銀)「さ、三連休? ちょ、ちょっと待て…。じゃ、じゃあ下手したら四日後までこのビルに誰も人が…」


(御)「いや、でも、いつも誰か休日出勤してくるんできっと大丈夫です」


(銀)「どこにんな保証があんだ!! いい加減な事ぬか…」


ギュルルル…


銀さんが御子柴さんを殴ろうとした時、銀さんのお腹の音がエレベーターの中に鳴り響いた。


(銀)「ダメだ…腹が減って怒る気力もねェ…。本当なら今頃カルビ、ホルモン、お腹いっぱい食べてたハズなのに…。なんでこんな事に……」


銀さんがエレベーターのドアにもたれかかって座り込んでしまう。


それに釣られて神楽ちゃんもドアにもたれかかってどんよりとしてしまう。


(あ)「と、とにかく今は助けがくるのを信じて待ちましょうよ!」


私は銀さんが落としてしまった木刀を拾い上げた。


(新)「そうそう! 社長だってギャラくれたのさっきだし、まだいるかもしれない。それに残業している人もまだいますよ。元気出してください! きっと誰か気づいてくれますって!」


(あ)「きっと助けはきてくれます。だからそれまで頑張りましょう!」


正直言って私も不安だ。けれどもここで私が不安がってたらきっとみんなもそれに釣られて諦めてしまうかもしれない。


だから今は…なんとか自分のモチベーションを上げる為に、「絶対に助かる」と言い聞かせるしかなかった。
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