～それは去年の夏の事～


『かぶき町ラジオ体操第一よーい…』


(あ)「ん…」


遠くから聞こえるその声で私は目を覚ました。


そして…


ドン、ドンガラガッシャァァァァァァン！


(神)「行ってきまーす！」


(あ)「ふわぁ…」


私が部屋を出ると、神楽ちゃんがボサボサの髪で家を飛び出していくのが見えた。


(あ)「行ってらっふぁーい…」


(銀)「だ…」


ソファーで寝ていた銀さんは、神楽ちゃんが部屋中を駆けていった勢いで起こされてしまったのか、そんな神楽ちゃんを見ると再び眠ってしまった。


(あ)「うっ…眠い……」


世間は夏休みシーズン。


そしてその夏休みの期間に、家康像のある公園ではラジオ体操が早朝から行われているのだ。


何でもラジオ体操に来た人には一日一個、カードにハンコが捺(お)してもらえるそうで、神楽ちゃんもそれに参加しているのだ。しかも今の所神楽ちゃんは皆勤である。まあいつもギリギリ滑り込みみたいだけど…。


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そしてその晩…


(あ)「ふわぁ…眠い……」


最近神楽ちゃんを頑張って見送ろうと、私も早く起きるのでとてつもなく眠い。


すると…


(あ)「アレ？」


リビングで魔女の宅急便を見ている神楽ちゃんがいた。


(神)「フンッ…魔女宅をスルーして寝るなんてガキには不可能。精々キキで妄想に耽り夜更かしするがいいネ！」


(あ)「か、神楽ちゃん？ どうしたの？ ていうか夜更かししてるの神楽ちゃんじゃない？」


(神)「大丈夫アル。私はあんな奴には負けないネ！」


(あ)「あんな奴？」


聞けば、ラジオ体操でお年寄りの方しかいない中、神楽ちゃんの他に子供がもう一人…本郷尚君という男の子がいるらしい。


その子は身体が弱いらしく、「健康の為」と言ってラジオ体操に来ているようだ。


(あ)「ふーん…でもよかったじゃない。お友達ができて」


(神)「フンッ、あんなヒョロヒョロのしおれたきゅうりみたいな男がこの私の友達になんて釣り合わないアル。おーっほっほっほ！」







そして結局、次の日の朝は神楽ちゃんは目の下に隈を作り、またギリギリになって家を出て行ったのだった。