(あ)「ふわぁ…」


とある日の朝。身支度を整えた私は、小さくあくびをしながらリビングへとやってきた。


(あ)「おはようございます…」


私があくびを噛み殺しながらそう言うと、リビングはもぬけの殻。


時計に目をやると、時刻はまだ８時。新八君はもうそろそろやってくる頃だろうが、神楽ちゃんが起きてくるのはまだもう少し先だろう。銀さんは…


(あ)「そういや…」


確か昨日の夜は長谷川さんと飲みに行くって私が寝る前に出かけて行ったっけ。もう帰ってきてるかな…？


(あ)「銀さーん、朝ですよー」


私は銀さんの部屋を開けてみる。だが…


(あ)「誰もいない…」


ということは…もしかしてまだ飲んでるのかな？ それなら確実に今日も二日酔い状態で帰ってくるだろう。


(あ)「もう…なんでいっつも自分のお酒の容量わかってないのかなぁ……」


銀さん、自分で思ってる程お酒強くないのに…。


すると…


ガラガラガラ…


(新)「おはようございます」


(あ)「あ、おはよう。新八君」


新八君が出勤してきて、リビングにやってきた。


(新)「アレ？ 銀さんは？ まだ寝てるんですか？」


(あ)「ううん。昨日の夜から飲みに行ってて、まだ帰ってないみたい」


(新)「またですか…」


(あ)「あはは…」


まあ寂しくないって言ったらウソになるけど…。


そんな事を考えていると…


(新)「あ、音莉さん」


新八君が何か言いたげな顔で私に声をかける。


(あ)「どうしたの？」


(新)「実は今日、スナックすまいるがサービス週間で朝から営業してるので姉上の今日の当番お昼までらしいんですけど、丁度その時間まで人手が足りないらしいんですよ。だからちょっと手伝いに来てほしいって」


(あ)「うん、それなら全然構わないよ。でもいつ頃行ったらいいかな？」


(新)「できれば今スグに来てほしいって。何なら朝ごはんも出してくれるそうです」


(あ)「そっか。でもみんなの朝ごはんは…」


(新)「それなら僕が作っておきますよ」


(あ)「うん、ありがとう。じゃあ任せるよ」


(新)「すいません。よろしくお願いします」


(あ)「いいえ。困ってる時はお互い様ですから」


そして一度部屋に引き取った私は、もう一度身だしなみを整えてからいるものだけを持ってスナックすまいるに向かった。









だがこれが、まさか悲劇の幕開けになるなんて…この時の私は微塵たりとも思っていなかった。