第八十六話
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ちょんまげってなんであんな頭の毛剃るようになったか知ってる?」
(銀)「頭に吹き出物でも出来たんじゃねーの?」
「違う違う。あれはな、兜を被る時にムレない為よ。つまり、いつでも戦に行けるという侍の気構えを表しているワケ。いわば侍の魂なワケだよ」
(銀)「魂ねェ…」
「それが今はどうだい。どいつもコイツも髷と共に魂を投げ捨て、やれパーマをあててくれだ、やれ髪を染めてくれだ。侍の国が聞いて呆れると思わないかい? 嘆かわしいねェ。そうだろ?」
銀さんとそんな会話をしているのは、髪結床のご主人。
そう…今日は銀さんの髪の散髪にやってきたのだ。
「…で、今日はどうする?」
(銀)「ストレートパーマで」
「………」
(銀)「親父、しつけーんだよ。そんな話なんべんされたって俺は髷なんか結わねェ。ストレートパーマで」
「旦那、しつこいんだよ。アンタの頭はそんなんじゃ治んないの。性格の捻じれが毛根から出てんだから。髷にしな。中身から叩き直しな」
(銀)「いい加減にしろよ。髷が侍の魂? あんなモンハゲ散らかったオッさん達のただの言い訳だろーが。これはハゲじゃありません、兜被る為なんです? 兜の前にヅラ被れ、コノヤロー」
「解ってないねェ。兜を被る為にハゲになるワケじゃなくてね、兜被るからハゲになるんだよ。セナ様然りバリチェロ然り、イケメンで知られたヴィルヌーブでさえF1に参戦して四年で薄らハゲだよ。恐いんだよ密閉は…」
(銀)「F1ドライバーは髷結ってねーだろ」
「な? 髷は存在証明である一方で、みんなでハゲればハゲじゃなくなるっていう優しさを孕んだ風習でもあるワケだよ。みんなでハゲて一つになろうという…」
(銀)「何それ? 人類補完計画? 俺が一つになるのは音莉一人で充分だ」
(あ)「ちょ、何また変態みたいな事言ってんですか!///」
(神)「終わったアルか? 銀ちゃん」
私の横でゴルゴ17を読んでいた神楽ちゃんが銀さんの方を見る。
(神)「アラ。ちょっと何それ。全然スッキリしてないじゃないの。そんなんじゃまたスグ切りに来なきゃダメでしょ!? もっと短く刈り込んでもらいな。マスター、スポーツ刈りにしてください」
(銀)「お母さん!?」
(神)「パンチパーマでも可アル。出来るだけ時間かかるやつネ」
(あ)「で、でもストレートパーマと髷だけは勘弁してくださいね」
やっぱり天然パーマだからこその銀さんだし…。
(銀)「何ゴルゴ17完全読破しようとしてんの。帰れ、バカ。ここは漫喫じゃねーんだよ」
「あー、いいんだいいんだ。好きなだけ読んでけ」
(神)「マジでか!?」
「ゴルゴ17はいい漫画だよ。頭よくなるよ? 総理にもなれるよ? 口は曲がるけどね」
(神)「それと、あぶさんも読んでいい?」
「いいよいいよ」
(新)「つーか神楽ちゃん、渋すぎだよね、漫画の趣味…」
「あぶさんも良い漫画だよな。まさかあぶ捕るだけで三十年以上連載が続くとは思わなかったけど。もうあぶさん還暦だよ」
(あ)「どんな漫画なの!? それ。全然想像つかないんですけど…」
「ま、どうせ客なんて来ねーんだ。いつでも読みに来いよ」
(新)「えっ? 親父さん羽振り悪いんですか?」
するとご主人は顔を曇らせて、「んー」と唸る。
(あ)「何かあったんですか?」
「向かいに新しい美容院…最近じゃヘアサロンって言うのかい? カットスタジオってのかい? それが出来てな。それから客足がぱったり途絶えちまってよ。カリスマ美容師だかシザーハンズだか知らねーけど、商売あがったりよ」
(あ)「うわぁ…ホントだ」
窓から向かいの店を見てみると、老若男女を問わない行列ができていた。
「高い金ふんだくってチャラチャラチャラチャラ薄っぺらい接客しやがってよォ。髪結床ってのはな、髪結うだけの場所じゃねーんだ。人と人との仲を結う、みんなの社交場だったんだよ。昔は床屋に行けば街の事は大体解るってな、みんな集まってわいわいにぎやかにやってたモンだよ。俺はお洒落だなんだのよりそっちを大事にしたくてねェ。髪は切っても、人の縁は切らねェってな」
ご主人は一度奥に引っ込むと、大量に積み重なったあぶさんを抱えて戻ってくる。
「ホラ、あぶさんの全巻だ」
(神)「ありがとうネ、マスター」
そして神楽ちゃんがさっそくそのあぶさんを読み始めた。
「そんなやり方してたらオメーらみてーな物好きしか来なくなってた。…いやはや、生きづれェ世の中になったもんだ」
ご主人がタバコを吸いながらそう呟く。
(あ)「親父さん…」
(銀)「いやァ、もうそういうのいいから、早く散髪してくんない?」
(新)「大丈夫です。僕らは散髪に来てるだけじゃないですよ」
(あ)「そうですよ! 私達はご主人にも会いに来てるんです」
「おっ、嬉しい事言ってくれるね」
(銀)「そうそう。でも散髪にも来てるワケだから散髪もしようぜ。人との繋がりも大事だよ? でも…」
(神)「マスター。これあぶさん7巻だけないヨ」
「何!?」
(銀)「アレでしょ? 床屋なワケだからやっぱり散髪もしないと…(怒)」
「ホントだ。あぶさん7巻だけねェ。一体どーいう事だ!?」
(神)「どこにも見当たらないヨ」
「バ、バカな…何故7巻だけ……」
(銀)「いやぁ、あぶさんはもういいから散髪を…」
「よーし。じゃあひとっ走りいって7巻買ってくるから、店番頼むぞ」
(あ)「ええええええええええええ!?」
(神&新)「「ラジャー!」」
(銀)「散髪をしろォォォォォォォォォ!!」
(銀)「頭に吹き出物でも出来たんじゃねーの?」
「違う違う。あれはな、兜を被る時にムレない為よ。つまり、いつでも戦に行けるという侍の気構えを表しているワケ。いわば侍の魂なワケだよ」
(銀)「魂ねェ…」
「それが今はどうだい。どいつもコイツも髷と共に魂を投げ捨て、やれパーマをあててくれだ、やれ髪を染めてくれだ。侍の国が聞いて呆れると思わないかい? 嘆かわしいねェ。そうだろ?」
銀さんとそんな会話をしているのは、髪結床のご主人。
そう…今日は銀さんの髪の散髪にやってきたのだ。
「…で、今日はどうする?」
(銀)「ストレートパーマで」
「………」
(銀)「親父、しつけーんだよ。そんな話なんべんされたって俺は髷なんか結わねェ。ストレートパーマで」
「旦那、しつこいんだよ。アンタの頭はそんなんじゃ治んないの。性格の捻じれが毛根から出てんだから。髷にしな。中身から叩き直しな」
(銀)「いい加減にしろよ。髷が侍の魂? あんなモンハゲ散らかったオッさん達のただの言い訳だろーが。これはハゲじゃありません、兜被る為なんです? 兜の前にヅラ被れ、コノヤロー」
「解ってないねェ。兜を被る為にハゲになるワケじゃなくてね、兜被るからハゲになるんだよ。セナ様然りバリチェロ然り、イケメンで知られたヴィルヌーブでさえF1に参戦して四年で薄らハゲだよ。恐いんだよ密閉は…」
(銀)「F1ドライバーは髷結ってねーだろ」
「な? 髷は存在証明である一方で、みんなでハゲればハゲじゃなくなるっていう優しさを孕んだ風習でもあるワケだよ。みんなでハゲて一つになろうという…」
(銀)「何それ? 人類補完計画? 俺が一つになるのは音莉一人で充分だ」
(あ)「ちょ、何また変態みたいな事言ってんですか!///」
(神)「終わったアルか? 銀ちゃん」
私の横でゴルゴ17を読んでいた神楽ちゃんが銀さんの方を見る。
(神)「アラ。ちょっと何それ。全然スッキリしてないじゃないの。そんなんじゃまたスグ切りに来なきゃダメでしょ!? もっと短く刈り込んでもらいな。マスター、スポーツ刈りにしてください」
(銀)「お母さん!?」
(神)「パンチパーマでも可アル。出来るだけ時間かかるやつネ」
(あ)「で、でもストレートパーマと髷だけは勘弁してくださいね」
やっぱり天然パーマだからこその銀さんだし…。
(銀)「何ゴルゴ17完全読破しようとしてんの。帰れ、バカ。ここは漫喫じゃねーんだよ」
「あー、いいんだいいんだ。好きなだけ読んでけ」
(神)「マジでか!?」
「ゴルゴ17はいい漫画だよ。頭よくなるよ? 総理にもなれるよ? 口は曲がるけどね」
(神)「それと、あぶさんも読んでいい?」
「いいよいいよ」
(新)「つーか神楽ちゃん、渋すぎだよね、漫画の趣味…」
「あぶさんも良い漫画だよな。まさかあぶ捕るだけで三十年以上連載が続くとは思わなかったけど。もうあぶさん還暦だよ」
(あ)「どんな漫画なの!? それ。全然想像つかないんですけど…」
「ま、どうせ客なんて来ねーんだ。いつでも読みに来いよ」
(新)「えっ? 親父さん羽振り悪いんですか?」
するとご主人は顔を曇らせて、「んー」と唸る。
(あ)「何かあったんですか?」
「向かいに新しい美容院…最近じゃヘアサロンって言うのかい? カットスタジオってのかい? それが出来てな。それから客足がぱったり途絶えちまってよ。カリスマ美容師だかシザーハンズだか知らねーけど、商売あがったりよ」
(あ)「うわぁ…ホントだ」
窓から向かいの店を見てみると、老若男女を問わない行列ができていた。
「高い金ふんだくってチャラチャラチャラチャラ薄っぺらい接客しやがってよォ。髪結床ってのはな、髪結うだけの場所じゃねーんだ。人と人との仲を結う、みんなの社交場だったんだよ。昔は床屋に行けば街の事は大体解るってな、みんな集まってわいわいにぎやかにやってたモンだよ。俺はお洒落だなんだのよりそっちを大事にしたくてねェ。髪は切っても、人の縁は切らねェってな」
ご主人は一度奥に引っ込むと、大量に積み重なったあぶさんを抱えて戻ってくる。
「ホラ、あぶさんの全巻だ」
(神)「ありがとうネ、マスター」
そして神楽ちゃんがさっそくそのあぶさんを読み始めた。
「そんなやり方してたらオメーらみてーな物好きしか来なくなってた。…いやはや、生きづれェ世の中になったもんだ」
ご主人がタバコを吸いながらそう呟く。
(あ)「親父さん…」
(銀)「いやァ、もうそういうのいいから、早く散髪してくんない?」
(新)「大丈夫です。僕らは散髪に来てるだけじゃないですよ」
(あ)「そうですよ! 私達はご主人にも会いに来てるんです」
「おっ、嬉しい事言ってくれるね」
(銀)「そうそう。でも散髪にも来てるワケだから散髪もしようぜ。人との繋がりも大事だよ? でも…」
(神)「マスター。これあぶさん7巻だけないヨ」
「何!?」
(銀)「アレでしょ? 床屋なワケだからやっぱり散髪もしないと…(怒)」
「ホントだ。あぶさん7巻だけねェ。一体どーいう事だ!?」
(神)「どこにも見当たらないヨ」
「バ、バカな…何故7巻だけ……」
(銀)「いやぁ、あぶさんはもういいから散髪を…」
「よーし。じゃあひとっ走りいって7巻買ってくるから、店番頼むぞ」
(あ)「ええええええええええええ!?」
(神&新)「「ラジャー!」」
(銀)「散髪をしろォォォォォォォォォ!!」
1/10ページ