第六十一話(真選組動乱篇)
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~no side~
ある日の事。
真選組屯所の縁側では二人の隊士がとある話をしていた。
「聞いたか? 近々"あの人”が仕事を終えて江戸に戻ってくるらしいよ」
「先生だろ? 荷物の方が先に屯所に続々届いてるよ。あの人が仕入れた新型武器。なんか上物の刀剣とかも手に入れてきたらしくて、上の連中が取り合ってるって話だ」
その後ろを何者かが通り過ぎて行く。
「いいなァ。俺も欲しいな、おニューの刀」
すると通り過ぎたハズの人物が戻ってきた。
(山)「こほん、こほんこほん」
その声に振り返ると、二人の後ろには少し頬を染めて照れ臭そうにしている山崎が立っていた。
「あ、山崎さん」
そして一人が山崎が腰にさしている刀の方を見る。
「あ! ひょっとしてその刀は…長船M-Ⅱ!?」
「スッゲェ! ブランドもんだ! カッケェ!」
(山)「あの…俺別に自慢しに来たワケじゃないから。たまたま通っただけだから、たまたま」
「いいなぁ…。今渋谷界隈のオシャレ侍はみんな長船らしいっスよ! 最先端っスよ!ちょっと! ちょっとだけ素振りさせてください!」
(山)「ああ、勿論いいよ」
山崎がその刀を隊士に手渡し、その隊士が素振りを始める。
「ああ、やっぱ違うわ、ブランドもんは」
(山)「しかも防水加工らしいよ、なんか。別に自慢してるワケじゃないけど」
その時…
(沖)「オーイ、何を騒いでるんでィ、てめーら」
イヤホンを耳につけながら総悟が歩いてきたのだ。
「あ、沖田隊長」
「見てくださいよ、山崎さんのか…」
だがその隊士の目がイヤホンの繋がっている先…総悟が腰にさしている刀に行く。
「ああ! その刀は…菊一文字RX-78!」
「デジタル音楽(ミュージック)プレイヤー搭載で、連続再生時間最大124時間にも及大業物!菊一文字RX-78!」
「長船の倍の値段だよ! 流石隊長格はさしてる獲物が違う!」
(沖)「あー、コレそんなスゴイんだ。適当に貰ってきたから知らなかった」
すると総悟は隊士が持っている山崎の刀を見て…
(沖)「アレ? その棒? 山崎何? 買ったの? その腐りかけの棒」
(山)「………」
「隊長、ちょっとだけ素振りさせてください!」
総悟がその刀を隊士に手渡し、その隊士が素振りを始める。
「うおおおおおお! やっぱ違うわ、一級品は! 音が全然違うもん! 重低音がスゴイ!」
とその時、目の前の襖が開き…
(近)「オイ、なんだ? やかましいな。朝から騒々しいぞ」
「局長! スイマセン。あの…」
だがその隊士の目が近藤が腰にさしている刀に行く。
「ああああああ! その刀は…!」
「虎鉄Z-Ⅱ! デジタル音楽機器としての機能は勿論、柄に特殊金具を装着させる事により、部屋を掃除するコロコロとしても使える大業物! 虎鉄Z-Ⅱだ! 菊一文字の三倍はするぜ! スゲェ!」
(近)「オメーら、そんな安い刀使ってんのか? 刀は武士の魂だ。そんなヒョロいもん使ってるなんざ、てめーらの魂もしれたもんだなァ」
(沖)「スゲーや、近藤さん。敵わねーや。俺達も頑張ってあれ位の業物持てるようにならねーとな。近藤さん、ちょっとだけ素振りさせてもらってもいいですかね?」
(近)「ああ、別にいいけど…」
すると近藤の刀を手にした総悟は…
(沖)「ふん!」
バキン!
刀を岩に叩きつけ、虎鉄Z-Ⅱが折れてしまった。
(近)「ああああああああああああ!! 虎鉄ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
(沖)「あ、すいやせん。これなら岩も両断出来ると思ったんですけど、ダメでした」
(近)「オメェ! 絶対わざとだろ! 俺と虎鉄っちゃんに嫉妬して…嫉妬してェェェェ!!」
そして土方はというと、そんな声を自室でタバコを吸いながら、眉と口の端ピクピクさせながら聞いていた。
・
・
・
・
~土方side~
刀が武士の魂などとのたまうつもりはねェ。
まして、刀の格式の高さが自分の位も高めてくれるとも思っちゃいねェ。
俺にとっては刀でしかない。いや…それこそが俺にとって最も必要なものだった。
己の位を高めてくれる刀よりも、埃の高い魂よりも、まず俺に必要なのは敵の白刃を斬り抜けるための刀だった。
俺は行きつけの鍛冶屋に入り、ジーさんに自分の刀を渡す。
「相変わらず無茶してるようだな。刀は鍛えりゃまた使えるが、人間はそうはいかんぞ?」
(土)「人間も折れなきゃまた叩き上げられるだろ?」
「刀がこんな様になっちまう戦い方してたら、そのうちオメーさんもポッキリ折れると言っておる」
その時、俺が目につけたのは、壁に飾ってある一本の刀。
(土)「……いい刀だな」
俺はその刀を手に取る。
(土)「ジーさん、俺のが直るまでコイツを使わせてくれ」
「そいつァダメだ」
(土)「あ?」
「妙なモンに目ェつけやがる。そいつはちょっといわくつきの刀でな」
(土)「なんだよ。音楽聞けたりコロコロになったりするっつーのか?」
「恐ろしく斬れる事には違いねェ。だが……呪われとる」
(土)「…呪い? 冗談よせよ」
「並みの使い手じゃ、逆に刀に魂を食われちまうじゃろうて。オメーさんじゃ使いこなせまい。少し昔話に付き合ってもらえるか? その妖刀にまつわる悲しき輪廻の物語を……」
・
・
・
・
鍛冶屋を出て、俺は人気のない通りを歩く。
…そう、聞かなかった。
ジジイの話は総じて長い。俺にはそんな事に付き合っている暇はない。
値が張ろうが張るまいが、音楽が聞けようが聞けまいが、妖刀だろうがなんだろうが、俺には関係ない。
コイツが刀である事が解れば充分だ。
とその時…
(土)「ん?」
目の前に現れたのは、編み傘を被り刀を持った男達。
「真選組副長、土方十四郎殿とお見受けする」
「侍でありながら天人に迎合し、甘い汁をすする売国奴が! 我等攘夷の尖兵が天誅をくださん!!」
(土)「へっ…」
さっそく試し斬りの機会だ。見させてもらおう。妖刀の斬れ味。
(土)「行くぜェェェェェェェェェ!!」
ある日の事。
真選組屯所の縁側では二人の隊士がとある話をしていた。
「聞いたか? 近々"あの人”が仕事を終えて江戸に戻ってくるらしいよ」
「先生だろ? 荷物の方が先に屯所に続々届いてるよ。あの人が仕入れた新型武器。なんか上物の刀剣とかも手に入れてきたらしくて、上の連中が取り合ってるって話だ」
その後ろを何者かが通り過ぎて行く。
「いいなァ。俺も欲しいな、おニューの刀」
すると通り過ぎたハズの人物が戻ってきた。
(山)「こほん、こほんこほん」
その声に振り返ると、二人の後ろには少し頬を染めて照れ臭そうにしている山崎が立っていた。
「あ、山崎さん」
そして一人が山崎が腰にさしている刀の方を見る。
「あ! ひょっとしてその刀は…長船M-Ⅱ!?」
「スッゲェ! ブランドもんだ! カッケェ!」
(山)「あの…俺別に自慢しに来たワケじゃないから。たまたま通っただけだから、たまたま」
「いいなぁ…。今渋谷界隈のオシャレ侍はみんな長船らしいっスよ! 最先端っスよ!ちょっと! ちょっとだけ素振りさせてください!」
(山)「ああ、勿論いいよ」
山崎がその刀を隊士に手渡し、その隊士が素振りを始める。
「ああ、やっぱ違うわ、ブランドもんは」
(山)「しかも防水加工らしいよ、なんか。別に自慢してるワケじゃないけど」
その時…
(沖)「オーイ、何を騒いでるんでィ、てめーら」
イヤホンを耳につけながら総悟が歩いてきたのだ。
「あ、沖田隊長」
「見てくださいよ、山崎さんのか…」
だがその隊士の目がイヤホンの繋がっている先…総悟が腰にさしている刀に行く。
「ああ! その刀は…菊一文字RX-78!」
「デジタル音楽(ミュージック)プレイヤー搭載で、連続再生時間最大124時間にも及大業物!菊一文字RX-78!」
「長船の倍の値段だよ! 流石隊長格はさしてる獲物が違う!」
(沖)「あー、コレそんなスゴイんだ。適当に貰ってきたから知らなかった」
すると総悟は隊士が持っている山崎の刀を見て…
(沖)「アレ? その棒? 山崎何? 買ったの? その腐りかけの棒」
(山)「………」
「隊長、ちょっとだけ素振りさせてください!」
総悟がその刀を隊士に手渡し、その隊士が素振りを始める。
「うおおおおおお! やっぱ違うわ、一級品は! 音が全然違うもん! 重低音がスゴイ!」
とその時、目の前の襖が開き…
(近)「オイ、なんだ? やかましいな。朝から騒々しいぞ」
「局長! スイマセン。あの…」
だがその隊士の目が近藤が腰にさしている刀に行く。
「ああああああ! その刀は…!」
「虎鉄Z-Ⅱ! デジタル音楽機器としての機能は勿論、柄に特殊金具を装着させる事により、部屋を掃除するコロコロとしても使える大業物! 虎鉄Z-Ⅱだ! 菊一文字の三倍はするぜ! スゲェ!」
(近)「オメーら、そんな安い刀使ってんのか? 刀は武士の魂だ。そんなヒョロいもん使ってるなんざ、てめーらの魂もしれたもんだなァ」
(沖)「スゲーや、近藤さん。敵わねーや。俺達も頑張ってあれ位の業物持てるようにならねーとな。近藤さん、ちょっとだけ素振りさせてもらってもいいですかね?」
(近)「ああ、別にいいけど…」
すると近藤の刀を手にした総悟は…
(沖)「ふん!」
バキン!
刀を岩に叩きつけ、虎鉄Z-Ⅱが折れてしまった。
(近)「ああああああああああああ!! 虎鉄ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
(沖)「あ、すいやせん。これなら岩も両断出来ると思ったんですけど、ダメでした」
(近)「オメェ! 絶対わざとだろ! 俺と虎鉄っちゃんに嫉妬して…嫉妬してェェェェ!!」
そして土方はというと、そんな声を自室でタバコを吸いながら、眉と口の端ピクピクさせながら聞いていた。
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~土方side~
刀が武士の魂などとのたまうつもりはねェ。
まして、刀の格式の高さが自分の位も高めてくれるとも思っちゃいねェ。
俺にとっては刀でしかない。いや…それこそが俺にとって最も必要なものだった。
己の位を高めてくれる刀よりも、埃の高い魂よりも、まず俺に必要なのは敵の白刃を斬り抜けるための刀だった。
俺は行きつけの鍛冶屋に入り、ジーさんに自分の刀を渡す。
「相変わらず無茶してるようだな。刀は鍛えりゃまた使えるが、人間はそうはいかんぞ?」
(土)「人間も折れなきゃまた叩き上げられるだろ?」
「刀がこんな様になっちまう戦い方してたら、そのうちオメーさんもポッキリ折れると言っておる」
その時、俺が目につけたのは、壁に飾ってある一本の刀。
(土)「……いい刀だな」
俺はその刀を手に取る。
(土)「ジーさん、俺のが直るまでコイツを使わせてくれ」
「そいつァダメだ」
(土)「あ?」
「妙なモンに目ェつけやがる。そいつはちょっといわくつきの刀でな」
(土)「なんだよ。音楽聞けたりコロコロになったりするっつーのか?」
「恐ろしく斬れる事には違いねェ。だが……呪われとる」
(土)「…呪い? 冗談よせよ」
「並みの使い手じゃ、逆に刀に魂を食われちまうじゃろうて。オメーさんじゃ使いこなせまい。少し昔話に付き合ってもらえるか? その妖刀にまつわる悲しき輪廻の物語を……」
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鍛冶屋を出て、俺は人気のない通りを歩く。
…そう、聞かなかった。
ジジイの話は総じて長い。俺にはそんな事に付き合っている暇はない。
値が張ろうが張るまいが、音楽が聞けようが聞けまいが、妖刀だろうがなんだろうが、俺には関係ない。
コイツが刀である事が解れば充分だ。
とその時…
(土)「ん?」
目の前に現れたのは、編み傘を被り刀を持った男達。
「真選組副長、土方十四郎殿とお見受けする」
「侍でありながら天人に迎合し、甘い汁をすする売国奴が! 我等攘夷の尖兵が天誅をくださん!!」
(土)「へっ…」
さっそく試し斬りの機会だ。見させてもらおう。妖刀の斬れ味。
(土)「行くぜェェェェェェェェェ!!」
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