第五十八話

NameChange

この小説の夢小説設定
主人公の名前(デフォルト:音莉〔おとり〕)
名前をひらがなで(五十八話で使用)

時刻は23時30分をまわった。


秋葉原のとある電気屋にできた長蛇の列…。そこにはそんな列に並んでいる人達に取材をしている花野アナの姿。さらには、その長蛇の列に並ぶ私達万事屋一行の姿もあった。


だがもう真冬ではないとはいえ、やはりこの時間はまだかなり寒い。


何故こんな寒い夜にこんな所にいるのかというと、私達は0時ぴったりに発売が開始される弁天堂OWeeを手に入れるためにここまで来たのだ。しかも、先着百名にしか売ってくれないらしい。


だが、私達は列のかなり後ろの方。とても先着百名の中には入れそうにない。一体どうするのやら…。


しかし…寒い。寒すぎる。


(銀&あ&神&新)「「「「………」」」」


…というワケで、私達はその場で焚き火を焚き始めた。


すると、店の店員さんがこちらにやってきた。


「あの、お客様…焚き火とかそういうのはご遠慮願えますか? 他のお客様のご迷惑…ゴホッ、ゴホッ!」


(銀)「寒いんっス。暖をとる位勘弁してもらえないですかねェ?」


「いや、暖って…。ちょっとしたモヤ騒ぎみたいになってるし…ゴホッ、ゴホッ! みんな並んでるワケですから…」


すると神楽ちゃんが焚き火でチーズを焼き始める。


(神)「わぁ、美味しそう!」


そしてチーズが美味しそうに溶けた所で、神楽ちゃんがお椀を取り出す。


(銀)「よーし。焼けたぞ、神楽」


お爺さんに扮した銀さんが、チーズの入った皿を片手にそう言う。どうやら何か芝居が始まったようだ。


「いや、『焼けたぞ』じゃなくて…聞いてますか? 人の話」


(銀)「ほォ、自分で気がついたか。だがまだ足りないものがあるなァ。コレはどうしようか…」


銀さんがホットミルクの入った鍋を取り出すと、神楽ちゃんがコップを差し出す。


「つーかムダに美味そう! ハイジ!? ハイジが食ってたヤツ!?」


そしていつの間にやらチーズの乗ったパンとホットミルクの入ったコップが並んでいた。


(銀)「さぁ、食べなさい」


すると銀さんと神楽ちゃんがチーズを乗せたパンを美味しそうに食べ始める。


「な、なんだアイツら!? なんでこの列の真ん中でハイジのヤツ食ってんだよ!」


「なんか腹立つ…。腹立つけど美味そう!」


周りに並んでいた人達が羨ましそうに二人を見つめる。まさか…。


すると新八君がモジモジし始めた。


(神)「ペーター!」


(新)「あ、あの…その……」


(銀)「ほっほっほ! 大将、美味しい干し肉もあるから大将もおあがんなさい」


(新)「え!? いいの!?」


(神)「うふふ。ペーター、こっちよ」


(新)「わーい!」


(銀)「ホラ、クララもこっちにおいで」


(あ)「はい!? 私クララですか!?」


でもまあなんとなくみんなの考えてる事が解ったので、一応私もそれに乗っかって、焚き火の前にしゃがんだ。


「イカン、腹が…。食うものも食わず我慢してきたのに…」


すると神楽ちゃんがキョロキョロと他の他のお客さんを見渡し…


(神)「お爺さん、村の人達にも分けてあげようよ。身体も温まるしきっと喜ぶわ」


(銀)「おやおや、神楽。お前は優しい子だねェ。でもいけないよ。これは私達が育てたヤギから絞り取った乳で作られしチーズ。働かざる者食うべからず。可哀想だが…これがアルプスの掟だ!」


…ヤギなんていつ育てましたか? ていうかいつアルプスになんて行きましたか?


(銀)「何かを得るには相応の代償が必要なんだよ。例えばそうだねェ…彼等が並ぶ順番を交代してくれるとか…。勿論、前の人限定だが…」


やっぱりそれが目的かい!


そして銀さんがこれ見よがしに神楽ちゃんが食べているチーズを思いっきり引き伸ばす。


「うぉぉぉ…腹立つ……腹立つけど超美味そう!」


「クッソ…もう我慢できん! 君達、僕が変わってあげるから僕にハイジを!」


「待て! ハイジは俺のものだ! 小さい頃テレビで見てからずっと食べたかったんだ!」


前の方にいたお客さんが次々とこちらに走ってくる。


「あぁ、列を乱さないでください!」


「ハイジ!」


「ハイジじゃなくて…あぶ、危ないから!」


そしてお客さんの間でハイジもといチーズ取り合い合戦が始まった。その間に私達は列の前の方へ進む。


(神)「ちょろいモンよ」


(新)「これで二十番位前に進みましたか」


(あ)「でもまだまだ先は遠いなぁ…」


(銀)「ったく、何が楽しくてこんな時間にガキのおもちゃ買いに並ばにゃならんのだ」


(新)「そう思う人がいるから仕事が回ってきたんでしょ?」


(銀)「欲しいものがあるならてめーで並んでてめーで手に入れやがれっつーの。万事屋って言ったってパシリじゃねーんだよ、パシリじゃ」


(あ)「同じ依頼が五件。ゲーム機が五台ですか…。この状況じゃ手に入れるのは至難の業ですね……」


(銀)「世も末だぜ。たかがガキのおもちゃに並ぶ奴がこれ程いようとは。世の中腐ってやがる。ブッ壊そうとするヅラの気持ちもちっとは解るような気がしてきたよ」


「あの…お侍様、申し訳ありません……」


少し前の方からそんな声がしたのでそちらを見てみると、列の間でこたつに入って鍋を食べている桂さんとエリザベスがいた。


「他のお客様のご迷惑になりますので、こたつはちょっと…」


(桂)「すいません、ちょっと待ってください。エリザベスがまだ食べてるんで」


「いや、それでしたら列を離れて向こうの方で…」


(桂)「ちょっと待ってください、スグ…」


お店の人がこたつを動かそうとし、桂さんがそうはさせまいと二人でこたつを引っ張り合う。


「いや、ちょっと…」


(桂)「いや、エリザベス…」


「だからちょっと…」


(桂)「エリザベス…」


「だから…」


(桂)「エリザベスがまだ食べてるでしょうが!!」


(銀&あ&神&新)「「「「………(怒)」」」」


バコォォォォォン!


(桂)「うがあっ!」


私達はこたつごと桂さんを蹴り飛ばし、その横を通り過ぎてまた前の方に進む。


(新)「やりましたね。これでまた十番位前に進みましたよ」


(あ)「まだまだ先は遠いけどね…」


すると桂さんが起き上がり…


(桂)「武士ともあろうものが横入りとは…銀時、貴様も堕ちたな」


鍋を頭から被った桂さんがそう言う。


(銀)「うるさいよ。光の速さで地上に落下してる奴に言われたかねーよ」


(桂)「こっちは昨日の朝4時から並んでいるんだ。邪魔するとあらばお前でも斬るぞ、銀時」


(銀)「革命家が流行に乗ってゲーム買いに並びに来たんですか?」


(桂)「世の中の流れがどこに向かっているのか、俺達は知る必要がある。例えファミコンの事でもだ」


(銀)「古いよ! ゲームをファミコンって呼んでる時点で流れについていけてねーよ!」


(桂)「なんでも今度のファミコンはスゴイらしいな。ファミコンとディスクシステムが一体化した、ツインファミコンとかいう…」


(銀)「お前ホントにファミコン買いにきたんかい!」


(あ)「なんの為に並んでるんですか、アンタは! そういう列じゃありませんよ、この列は!」


(銀)「つーかねーよ、そんな列! 売ってねーよ、そんなモンもう!」


(桂)「なんだと!? マリオと再び会えると思ったのに…。その道は閉ざされたか…!」


(銀)「再びどころか何十回も蘇ってるよ、あのオッさん!」


(桂)「そうか。あのコンプレックスの塊の弟方も健在なのか?」


(銀)「嫌な事言うんじゃねーよ! お前にルイージの何が解るんだよ!」


(あ)「大体桂さん、変装もせずこんな所に来ていいと思ってるんですか? アナタ、指名手配犯なんですよ!?」


(桂)「フンッ、こんな時間にこんな所にいる暇な警察などおるまい」


(新)「暇な革命家はいるんですね…」


「申し訳ありません、お客様」


また私達の少し前の方で声がしたのでそちらを見てみると、なんと列の間でタオルを巻いて頭を洗っている近藤さんとドラム缶風呂に入っている沖田さんがいたのだ。


「他のお客様のご迷惑になりますので、お風呂はちょっと…」


(沖)「なんだ、コラァ。こっちは徹夜で並んでんだ。風呂位入りたいだろ」


(近)「やめろ、総悟。スイマセン、スグ終わりますんで。まだアソコ洗ってないんで」


「いや、もう警察呼びますよ」


(近)「いや、僕ら警察なんで」


お店の人がドラム缶を動かそうとし、近藤さんがそうはさせまいと二人でドラム缶を引っ張り合う。


「だから警察…」


(近)「だから僕ら…」


「いや、ちょっと…」


(近)「いや、ちょ…」


「いや…」


(近)「いや、まだアソコ洗ってないでしょーが!!」


バッコォォォォォン!


その近藤さん達を、土方さんがドラム缶ごとけっ飛ばした。


近藤さんと沖田さんがこちらに吹っ飛んでくる。


(銀)「だからどこの国から…?」


(新)「とりあえずこの国はもう終わりっスよ」


(桂)「チッ、真選組の連中とこんな所で出くわすとは…」


(あ)「今なら桂さんに同情してあげられます…」


(神)「バカ達による奇跡的な共演アルな」


すると土方さんがチラッとこちらを見た。


(あ)「あ、こっちに気づいちゃいましたよ!?」


(神)「ヅラ、早くこたつの中に隠れるネ」


(桂)「ヅラじゃない、桂だ!」


そして土方さんがこちらに歩いてきた。


桂さんが急いでこたつの中に潜り、私達は何事もなかったかのようにこたつに足を入れる。


(土)「てめーら、こんな所で何してやがる」


(銀)「そのセリフ、そのままバッドで打ち返してやるよ」


(土)「そのセリフをさらにバッドで打ち返してやるよ」


(銀)「そのセリフを…」


(あ)「もういいです。しつこいですから」


すると「寒い、寒い」と言いながら近藤さんと沖田さんが着物を着て走ってきて、こちらに気付いた二人がこたつの中に入ってきたのだ。


(神)「あー、勝手に入るなヨ!」


(沖)「ケチケチするんじゃねーよ、減るもんじゃあるめェし」


(桂)「あ、音莉のパンティーが見えた…//(小声)」


(銀&あ)「「………(怒)」」


バコッ、バコッ!


(桂)「うおおおお…」


私と銀さんに蹴られた桂さんが呻き声をあげる。


(沖)「アレ? 今何か聞こえやせんでした?」


(あ)「気のせいですよ(黒笑)」


(土&沖)「「………(汗)」」


(近)「あ、何々? お前らもひょっとしてゲーム買いにきたワケ? ぷぷー、暇な奴だ」


(沖)「近藤さん、そのセリフは全て俺達にも降りかかってくるんでやめてくだせェ」


(近)「でも残念でしたー。この店のゲームの在庫は百台だけらしい。そうさなァ、列で言うとちょうどトシのいる辺りまでで在庫が切れるだろう。残念ながらお前達の所までゲームは行き届きましぇーん。なーっはっはっは! 悪いな。こっちは昨日の朝から並んでいるんだ。なァ? トシ」


(あ)「すいません。土方さん、私の向かいに座ってるんですが…」


(近)「……アレ?」


近藤さんがタバコを吸っている土方さんの方を見る。


(近)「…なんでここにいるんだ? トシ」


(土)「寒いから」


すると近藤さんが机をドン! と叩く。


(近)「寒いからじゃねーよ! なんで順番確保してくれねーんだよ、オイ! 昨日の朝から並んでたのがパーだろーが! どうするんだ! 俺は…店でお妙さんと約束しちまったってのによォ! 『キャバ嬢全員分のOWee手に入れてこいや。できなかったら眼球にデコピンな』って!」


(新)「それ約束じゃねーよ! 恐喝だよ!」


(土)「近藤さん、心配いらねェ。俺の代わりに山崎が並んでいるハズだ」


(沖)「土方さん、山崎ならあそこでカバディやってますぜ」


後ろを見ると、山崎さんが数人の人と一緒に「カバディ、カバディ…」と言いながら奇妙な動きをしていた。


(土)「山崎! 誰だ、そいつら!」
1/11ページ
スキ