第二十六話
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(銀)「はっ…はっ…はっくしょいっ!」
(新)「はーくっしょんっ!」
(神)「まいけるじゃくそんっ!」
(銀)「オイお前、まいけるじゃくそんはねーだろ。それくしゃみじゃ…じゃねっとじゃくそんっ!」
(神)「まえだたいそんっ!」
(新)「うるせーよ、普通にしろ! あー、ムズムズする…。今年の花粉は例年にも増してヒドイな。もう町中じゅるじゅるのでろでろになってますよ、どうなってんですかね」
そう、現在かぶき町では花粉症が流行しており、万事屋のみんなはおろか、かぶき町どこを歩いていてもあちらこちらからくしゃみの音が響き、鼻をすする音が聞こえてくる始末だ。
銀さんが言うには毎年ここまで酷くないらしいというか、まだ寒い日も多いこの時期は花粉が飛び始めたとしても軽度な症状で済むレベルらしいが、どうしてだか今年は例年より早くくしゃみと鼻水地獄のようで。
というよりも、花粉がピークの時でもここまでにはならないとのことで…これは最早また違うものが原因な気もしてきますが。
おかげで万事屋もここ数日は昼夜問わず誰かがくしゃみをして、誰かが鼻をかんでいる事態に陥っている。
……え、私?
私はどうやら体質なのか、今のところ今年の花粉症とは縁がないようで、万事屋唯一の無傷だ。
だけどそれはもしかしたら。
(あ)「(私が"人"じゃないせいなのかも…)」
……いやダメだ、こんな事ばっかり考えてちゃ。
今は花粉で苦しんでいるみんなの代わりに出来る事をやらなきゃね。
(銀)「なんか今年のはスギ花粉じゃねーらしいぞ。なんかどっかの星の植物で?タチ悪いらし……しゃけんべいべっ!」
(新)「ちょっと、『ソン』縛りから外れてますよ!」
(銀)「いいんだよ、なんたってこの作品は」
(銀&神)「「フィークションっ!」」
(銀)「です。実際の人物団体事件など、一切関係ありません」
(新)「余計な気を回さんでいいわ、今更!」
(銀)「今更かよ。なんか下のババアもよ、寝込んじまって店休んじまってるらしいよ」
(新)「え、お登勢さんがですか!? どっちかって言うと花粉をふりかけにご飯でも食べてそうなあのお登勢さんが!?」
(銀)「気持ちは分かる。そんくらいヒドイって話だ」
(あ)「私昨日様子見に行ったけど、くしゃみのしすぎで喉まで痛いって、かなりしんどそうだったし」
持って行ったおすそ分けのご飯は、なんとか食べてもらえたけど。
(新)「そりゃあんまり家出ない方がいいですね」
(銀)「ウチにとっての唯一の希望は、まだ音莉がまともに機能してるってことくらいだな」
(新)「ほ、本当にすいません…買い出しから家事から、簡単な依頼まで、全部一人でやってもらっちゃって」
(あ)「気にしないで、今の私にはこれくらいしかできないし、困ったことはお互い様だから」
そう伝えると、銀さんと新八君は何故だか目頭を押さえる。
(銀)「新八…俺ァ鼻水が脳まで回ったんだろうか。目の前に菩薩が見える気がする」
(新)「銀さん、多分それ気のせいじゃないですよ。僕もです」
そんな中、ティッシュの箱を抱えていた神楽ちゃんから、「あ、ティッシュが…」という声が聞こえてきてみれば、確かに箱の中身は空っぽになってしまっていた。
(神)「なくなったネ。新八買ってこいよ」
(新)「オイ、話聞いてた!?」
(神)「いいから買ってこいよ。どうせティッシュ買ってくるしか能がないくせに」
(新)「なんだと、クソアマ! お前やっぱり星に帰れ!」
(あ)「お、落ち着いて二人とも! ティッシュなら今から夕飯の買い出しのついでにすぐに買ってくるから!」
花粉症には食物繊維が豊富なものを食べるといいって見たから、丁度今日実践してみるのも兼ねてそろそろスーパーに行こうと思ってたし。
そんな最中、銀さんはくしゃみをしながら机の棚をごそごそと探り始めた。
(銀)「あー…なんか内も外も変わんねー気がしてきたわ。いったいどこから入ってくるんだ? この花粉」
そんなことを言いながら銀さんが取り出したのは、予備のトイレットペーパーだ。
そのトイレットペーパーを短くちぎっては、鼻につめる銀さん。
(銀)「意外と近場から来てたりしてな。いや、でもこのかぶき町に植物なんて…」
とその時。
(神)「おりゃあああああああああああっ!」
と私が銀さんに気をとられているうちに、神楽ちゃんに投げられた新八君が猛スピードで窓に突っ込み、土埃が舞う。
(あ)「ちょ、ちょっと神楽ちゃん! な、何してるの!」
幸いにも新八君は腰が窓の縁に引っ掛かっており、上半身だけ窓の外に出て宙ぶらりん状態だ。
(銀)「オーイ、生きてっか?」
銀さんが新八君に方に近づくと、新八君は静かに首を横に振る。
だがしかし、それよりも窓の外にとんでもないものが見えた気がして、私は思わず二度見してしまった。
(あ)「あ、あれ? なんか、見た事のないものが…」
窓の外…お向かいのおうちなんだろうけれど、長細い塔のような建物の上に大きな木が生えている……なんだかアニメで出てきそうな、この作風に似つかわしくない光景に、私も銀さんも目をこすった。
(銀)「あ、アレ? なんだアレ?」
(あ)「お、おかしいです…私まで花粉症で目がおかしくなってしまったんでしょうか」
とその時、ピンポーン…と玄関から無機質な音が鳴り響いた。
(神)「新八、客だヨ。出ろヨ」
(新)「お前むちゃくちゃだな! よく命令できるな!」
(神)「いいから出ろヨ。客の応対するくらいしか能がないくせに」
(新)「かァァァァァ ムカつく!ムカつきチャンピオンだよ、このアマ!」
しかしその間にも数度インターホンが鳴らされており。
(神)「いませんよォ、居留守ですよォ」
神楽ちゃんはさらさら出る気がないらしく、鼻をほじりながらソファーにドカッと座る。
(新)「正々堂々か!」
(あ)「わ、私が出てくるから、お客さんかもしれないし」
(銀)「ダメだ、もしそいつがお前を狙う悪い輩だったらどうすんだ」
(あ)「いや…そんなことありますか?」
(銀)「お前さァ、いい加減自覚持ってくんない? 俺が普段からどれだけお前に色目使ってる男どもを牽制してるか…」
(あ)「よく分かんないけど、でも何かあったら銀さんが護ってくれるでしょ?」
もしお客さんだったとしたら帰っちゃうかもしれない、そうなると万事屋の貴重な収入がなくなってしまう…とにかく銀さんを黙らせたくてそう伝えれば、銀さんはピシッと固まってしまった。
(神)「あ、銀ちゃん心臓撃ち抜かれて死んだアル」
(新)「……鼻に詰めたティッシュ、真っ赤に染まってますけど」
その隙に「はーい」と返事をしながら玄関へ向かい、「お待たせしました」と言いながら扉をガラッと開いた私は、そこで先ほどの銀さんと同じくピシッと固まってしまうことになる。
目の前に立っていたその人の頭の上には、可愛らしい小さなお花が一輪咲いていて、手にも小さくて可愛いお花が植えてある植木鉢を持っていた。
しかしそんなお花とは対照的に、私の二倍ほどの緑色の図体にエプロンを来て、二本の角を生やし、顔が…失礼ながら鬼のような形相をした人がそこに立っていた。
固まってしまったのは私だけじゃない。
私の後ろから出迎えについてきた三人も、思わず固まってしまっている。
(あ)「ぎ、銀さん…」
「助けて」と言おうとしたが、その銀さんはとても助けてくれそうにない…顔面真っ青で冷や汗ダラダラである。
その人は目を赤く光らせながら、ドスのきいた低い声を唸らせながら、こういった。
(?)「どうも、初めまして。裏隣りに今度越してきました、屁怒絽 です」
(あ)「は、はひ…こ、ここ、こここ、こんにちは……」
震える声でなんとか返事をするが、あまりの威圧に新八君なんか鼻水を噴射させてしまっている。
(屁)「放屁の『屁』に怒りの『怒』、ロビンマスクの『絽』と書いて、屁怒絽です」
状況が分からずに「ん?」と鼻水を垂らしながら突っ立っているのは神楽ちゃんくらいで、私を含め三人は先ほどから震えが止まらない。
そんな私達に構うことなく、屁怒絽さんが玄関の方へと足を踏み入れてきて、私は思わず後ろに後ずさる。
(屁)「今日はご挨拶にあがりました。僕、花屋をやってまして。お近づきの印にコレどうぞ」
屁怒絽さんは持っていた植木鉢を差し出してきて、こういうのは受け取らない方がいいのかもしれないけれど…でもそれはそれで痛い目に遭う気がして、震える手を恐る恐る伸ばせば、屁怒絽さんは私の手の上にポン…と優しく植木鉢を置いてくれた。
その動作に「あれ…」と自分の中で拍子抜けしたのは一瞬、やはりその顔をもう一度見てみれば、どうしても恐怖が勝ってしまって。
(屁)「いろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。では、お邪魔しました」
屁怒絽さんは礼儀よく一礼すると、玄関から出て行って階段を下りて行ってしまった。
(あ)「ど、どうも…」
そんな屁怒絽さんの背中を見送りながら、私は静かに玄関の扉を閉めて、三人の方に振り向けば、緊張が解けたせいか、涙がボロボロと溢れてきてしまって。
(あ)「ぎ、銀さん……怖かったよお」
(新)「すいません音莉さん、僕助けに行けなくて…侍失格です、でも恐ェ…恐すぎるでしょ、あんなん!」
(銀)「アイツ、何俺の音莉ちゃん泣かしてくれてんだよ!」
(新)「つーかお前がいの一番に助けにいかなくてどうすんですか!何一緒に怖気づいてんですか!」
(銀)「いやだって恐ェよ! なんなんだよ、アレは! 隣のヘドロめっちゃ恐ェェェェェェ!!」
(新)「アンタ前話で、『ずっと隣で、一番近くで護らせてくれよ』とか言ってたろ! 全然護る気ねーじゃねーか!」
(銀)「あ、ちょ、お前何盗み聞きしてやがんだ!」
(神)「『もっと自分を大事にして、俺を頼って、俺に縋って』とか言ってたくせに、いざ音莉がヘルプ出すとへっぴり腰アルか」
(銀)「ちょ、やめて…恥ずかしいから、色々と恥ずかしいからやめて!」
(新)「はーくっしょんっ!」
(神)「まいけるじゃくそんっ!」
(銀)「オイお前、まいけるじゃくそんはねーだろ。それくしゃみじゃ…じゃねっとじゃくそんっ!」
(神)「まえだたいそんっ!」
(新)「うるせーよ、普通にしろ! あー、ムズムズする…。今年の花粉は例年にも増してヒドイな。もう町中じゅるじゅるのでろでろになってますよ、どうなってんですかね」
そう、現在かぶき町では花粉症が流行しており、万事屋のみんなはおろか、かぶき町どこを歩いていてもあちらこちらからくしゃみの音が響き、鼻をすする音が聞こえてくる始末だ。
銀さんが言うには毎年ここまで酷くないらしいというか、まだ寒い日も多いこの時期は花粉が飛び始めたとしても軽度な症状で済むレベルらしいが、どうしてだか今年は例年より早くくしゃみと鼻水地獄のようで。
というよりも、花粉がピークの時でもここまでにはならないとのことで…これは最早また違うものが原因な気もしてきますが。
おかげで万事屋もここ数日は昼夜問わず誰かがくしゃみをして、誰かが鼻をかんでいる事態に陥っている。
……え、私?
私はどうやら体質なのか、今のところ今年の花粉症とは縁がないようで、万事屋唯一の無傷だ。
だけどそれはもしかしたら。
(あ)「(私が"人"じゃないせいなのかも…)」
……いやダメだ、こんな事ばっかり考えてちゃ。
今は花粉で苦しんでいるみんなの代わりに出来る事をやらなきゃね。
(銀)「なんか今年のはスギ花粉じゃねーらしいぞ。なんかどっかの星の植物で?タチ悪いらし……しゃけんべいべっ!」
(新)「ちょっと、『ソン』縛りから外れてますよ!」
(銀)「いいんだよ、なんたってこの作品は」
(銀&神)「「フィークションっ!」」
(銀)「です。実際の人物団体事件など、一切関係ありません」
(新)「余計な気を回さんでいいわ、今更!」
(銀)「今更かよ。なんか下のババアもよ、寝込んじまって店休んじまってるらしいよ」
(新)「え、お登勢さんがですか!? どっちかって言うと花粉をふりかけにご飯でも食べてそうなあのお登勢さんが!?」
(銀)「気持ちは分かる。そんくらいヒドイって話だ」
(あ)「私昨日様子見に行ったけど、くしゃみのしすぎで喉まで痛いって、かなりしんどそうだったし」
持って行ったおすそ分けのご飯は、なんとか食べてもらえたけど。
(新)「そりゃあんまり家出ない方がいいですね」
(銀)「ウチにとっての唯一の希望は、まだ音莉がまともに機能してるってことくらいだな」
(新)「ほ、本当にすいません…買い出しから家事から、簡単な依頼まで、全部一人でやってもらっちゃって」
(あ)「気にしないで、今の私にはこれくらいしかできないし、困ったことはお互い様だから」
そう伝えると、銀さんと新八君は何故だか目頭を押さえる。
(銀)「新八…俺ァ鼻水が脳まで回ったんだろうか。目の前に菩薩が見える気がする」
(新)「銀さん、多分それ気のせいじゃないですよ。僕もです」
そんな中、ティッシュの箱を抱えていた神楽ちゃんから、「あ、ティッシュが…」という声が聞こえてきてみれば、確かに箱の中身は空っぽになってしまっていた。
(神)「なくなったネ。新八買ってこいよ」
(新)「オイ、話聞いてた!?」
(神)「いいから買ってこいよ。どうせティッシュ買ってくるしか能がないくせに」
(新)「なんだと、クソアマ! お前やっぱり星に帰れ!」
(あ)「お、落ち着いて二人とも! ティッシュなら今から夕飯の買い出しのついでにすぐに買ってくるから!」
花粉症には食物繊維が豊富なものを食べるといいって見たから、丁度今日実践してみるのも兼ねてそろそろスーパーに行こうと思ってたし。
そんな最中、銀さんはくしゃみをしながら机の棚をごそごそと探り始めた。
(銀)「あー…なんか内も外も変わんねー気がしてきたわ。いったいどこから入ってくるんだ? この花粉」
そんなことを言いながら銀さんが取り出したのは、予備のトイレットペーパーだ。
そのトイレットペーパーを短くちぎっては、鼻につめる銀さん。
(銀)「意外と近場から来てたりしてな。いや、でもこのかぶき町に植物なんて…」
とその時。
(神)「おりゃあああああああああああっ!」
と私が銀さんに気をとられているうちに、神楽ちゃんに投げられた新八君が猛スピードで窓に突っ込み、土埃が舞う。
(あ)「ちょ、ちょっと神楽ちゃん! な、何してるの!」
幸いにも新八君は腰が窓の縁に引っ掛かっており、上半身だけ窓の外に出て宙ぶらりん状態だ。
(銀)「オーイ、生きてっか?」
銀さんが新八君に方に近づくと、新八君は静かに首を横に振る。
だがしかし、それよりも窓の外にとんでもないものが見えた気がして、私は思わず二度見してしまった。
(あ)「あ、あれ? なんか、見た事のないものが…」
窓の外…お向かいのおうちなんだろうけれど、長細い塔のような建物の上に大きな木が生えている……なんだかアニメで出てきそうな、この作風に似つかわしくない光景に、私も銀さんも目をこすった。
(銀)「あ、アレ? なんだアレ?」
(あ)「お、おかしいです…私まで花粉症で目がおかしくなってしまったんでしょうか」
とその時、ピンポーン…と玄関から無機質な音が鳴り響いた。
(神)「新八、客だヨ。出ろヨ」
(新)「お前むちゃくちゃだな! よく命令できるな!」
(神)「いいから出ろヨ。客の応対するくらいしか能がないくせに」
(新)「かァァァァァ ムカつく!ムカつきチャンピオンだよ、このアマ!」
しかしその間にも数度インターホンが鳴らされており。
(神)「いませんよォ、居留守ですよォ」
神楽ちゃんはさらさら出る気がないらしく、鼻をほじりながらソファーにドカッと座る。
(新)「正々堂々か!」
(あ)「わ、私が出てくるから、お客さんかもしれないし」
(銀)「ダメだ、もしそいつがお前を狙う悪い輩だったらどうすんだ」
(あ)「いや…そんなことありますか?」
(銀)「お前さァ、いい加減自覚持ってくんない? 俺が普段からどれだけお前に色目使ってる男どもを牽制してるか…」
(あ)「よく分かんないけど、でも何かあったら銀さんが護ってくれるでしょ?」
もしお客さんだったとしたら帰っちゃうかもしれない、そうなると万事屋の貴重な収入がなくなってしまう…とにかく銀さんを黙らせたくてそう伝えれば、銀さんはピシッと固まってしまった。
(神)「あ、銀ちゃん心臓撃ち抜かれて死んだアル」
(新)「……鼻に詰めたティッシュ、真っ赤に染まってますけど」
その隙に「はーい」と返事をしながら玄関へ向かい、「お待たせしました」と言いながら扉をガラッと開いた私は、そこで先ほどの銀さんと同じくピシッと固まってしまうことになる。
目の前に立っていたその人の頭の上には、可愛らしい小さなお花が一輪咲いていて、手にも小さくて可愛いお花が植えてある植木鉢を持っていた。
しかしそんなお花とは対照的に、私の二倍ほどの緑色の図体にエプロンを来て、二本の角を生やし、顔が…失礼ながら鬼のような形相をした人がそこに立っていた。
固まってしまったのは私だけじゃない。
私の後ろから出迎えについてきた三人も、思わず固まってしまっている。
(あ)「ぎ、銀さん…」
「助けて」と言おうとしたが、その銀さんはとても助けてくれそうにない…顔面真っ青で冷や汗ダラダラである。
その人は目を赤く光らせながら、ドスのきいた低い声を唸らせながら、こういった。
(?)「どうも、初めまして。裏隣りに今度越してきました、
(あ)「は、はひ…こ、ここ、こここ、こんにちは……」
震える声でなんとか返事をするが、あまりの威圧に新八君なんか鼻水を噴射させてしまっている。
(屁)「放屁の『屁』に怒りの『怒』、ロビンマスクの『絽』と書いて、屁怒絽です」
状況が分からずに「ん?」と鼻水を垂らしながら突っ立っているのは神楽ちゃんくらいで、私を含め三人は先ほどから震えが止まらない。
そんな私達に構うことなく、屁怒絽さんが玄関の方へと足を踏み入れてきて、私は思わず後ろに後ずさる。
(屁)「今日はご挨拶にあがりました。僕、花屋をやってまして。お近づきの印にコレどうぞ」
屁怒絽さんは持っていた植木鉢を差し出してきて、こういうのは受け取らない方がいいのかもしれないけれど…でもそれはそれで痛い目に遭う気がして、震える手を恐る恐る伸ばせば、屁怒絽さんは私の手の上にポン…と優しく植木鉢を置いてくれた。
その動作に「あれ…」と自分の中で拍子抜けしたのは一瞬、やはりその顔をもう一度見てみれば、どうしても恐怖が勝ってしまって。
(屁)「いろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。では、お邪魔しました」
屁怒絽さんは礼儀よく一礼すると、玄関から出て行って階段を下りて行ってしまった。
(あ)「ど、どうも…」
そんな屁怒絽さんの背中を見送りながら、私は静かに玄関の扉を閉めて、三人の方に振り向けば、緊張が解けたせいか、涙がボロボロと溢れてきてしまって。
(あ)「ぎ、銀さん……怖かったよお」
(新)「すいません音莉さん、僕助けに行けなくて…侍失格です、でも恐ェ…恐すぎるでしょ、あんなん!」
(銀)「アイツ、何俺の音莉ちゃん泣かしてくれてんだよ!」
(新)「つーかお前がいの一番に助けにいかなくてどうすんですか!何一緒に怖気づいてんですか!」
(銀)「いやだって恐ェよ! なんなんだよ、アレは! 隣のヘドロめっちゃ恐ェェェェェェ!!」
(新)「アンタ前話で、『ずっと隣で、一番近くで護らせてくれよ』とか言ってたろ! 全然護る気ねーじゃねーか!」
(銀)「あ、ちょ、お前何盗み聞きしてやがんだ!」
(神)「『もっと自分を大事にして、俺を頼って、俺に縋って』とか言ってたくせに、いざ音莉がヘルプ出すとへっぴり腰アルか」
(銀)「ちょ、やめて…恥ずかしいから、色々と恥ずかしいからやめて!」
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