第十四話
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ゴキブリ騒動から早数日。
銀さんのおかげでようやく夜も眠れるようになってきていた、ある日の午後だった。
突如、ピンポーン…と鳴り響いた玄関のチャイムに、飛び込みの依頼かな? と思いながらも玄関へ向かう。
(あ)「はーい」
しかし玄関を開けると、そこに立っていたのは見慣れた人物…お登勢さんであった。
(登)「突然押しかけてすまないね。今ちょっといいかい?」
(あ)「お登勢さん、こんにちは。あっ、と…家賃ですよね? 銀さん呼んでくるので少し待っていただけますか?」
(登)「いや、まァ家賃の回収もなんだが…今日はそれはついででね。音莉、アンタに用事があるのさ」
(あ)「えっ、私に…ですか?」
・
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「ちょいと話をさせてくれないかい?」ということで、お登勢さんを万事屋の中に引き入れ、ソファに座ってもらう。
(新)「あ、お登勢さん、こんにちは。今お茶淹れますね」
(登)「構いやしないよ、手短に済ませるつもりだからね」
(銀)「ゲッ、ババア! あ、家賃は……」
(登)「まともに家賃払ったことのねェ奴が何今さら慌ててるのさ。心配せずともあとでこってり絞ってやるさ。払えないなら内臓の一つや二つ売り飛ばしてね」
(銀)「ま、待って…俺今めっちゃ腹痛くなってきたかも。これヤバいかも、死ぬかも。救急車…救急車呼んでェェェェェェェ!!」
(登)「救急車より頭の病院ブチ込んでやろうか、ったく。それに今日はアンタに構ってる暇はないんでね。アタシの今日の本命は、音莉への依頼さ」
「依頼」という久しぶりに聞いた言葉に、銀さんが目を丸くしながらお登勢さんの方を見た。
(あ)「わ、私に依頼…ですか?」
その間にも新八君がお茶を淹れて、私とお登勢さんの前に出してくれる。
(登)「実は一ヵ月後、かぶき町で祭りをやるんだが、そこで幾つか出し物をする事になっていてねェ」
(あ)「お、お祭り…」
それと私と、一体どんな関係があるのだろうか。
(登)「先日の巨大ゴキブリ事件があっただろ? あの一件で町内にアンタの事が一気に広まってね。何者だ、どんな子だなんて、街の奴らが連日うるさくてねェ。それで、あん時聞いたあの歌声を活かした出し物を兼ねて、音莉を引っ張り出してきてほしいって声が多いんだよ。一度お目にかかりたいなんていう奴らのミーハー心さ」
(あ)「そ、そんな。私なんかが、なんで…」
(登)「嫌なら断ってくれて構わない。無理強いするつもりはないよ。人前に出る…それも大勢がいる中好機の目にさらされるのだって勇気がいるもんさ」
(神)「でも、音莉の歌声をもっとみんなに知らしめてやるチャンスアルヨ!」
(あ)「し、知らしめるって、私、そんなんじゃ………」
(新)「僕も賛成です。音莉さんが嫌じゃなければ、ですけど。音莉さんの歌声を聞いてると、不思議と元気が湧くっていうか、明日を生きる力をもらえるから……だから音莉さんの歌声をもっと多くの人に知ってもらえることで、この街ももっと活気づくんじゃないかなって」
(あ)「し、新八君…」
(登)「お礼もちゃんとするって実行委員の奴等は言ってたし、なんならアタシも今月の家賃くらいチャラにしてやるよ」
(神)「お礼…」
(新)「家賃がチャラ…」
その言葉に、必ず目を輝かせているであろう銀さんの方を見てみれば。
(銀)「………」
……私の思っていた反応と違う、銀さんは眉間にしわを寄せていて。
(あ)「銀さん…?」
私なんかが出しゃばるのはまずい…そう思っているのだろうか。
(新)「銀さんはどうですか、この件」
(銀)「……俺は、あんまり気乗りしねーな」
(新)「えっ、でも家賃チャラですよ?」
(登)「今月分だけだよ。滞納分はちゃんと払ってもらうからね」
(銀)「いや、なんつーか…」
(あ)「………」
銀さんに、なんて言われてしまうのだろう……そんな不安でドキドキしていると。
(銀)「音莉の歌声も、音莉の姿も……他の奴らに見せたくねーんだよ、俺ァ」
(あ)「え、それってどういう…」
すると頭をガシガシと掻いた銀さんは、社長椅子をクルリと回して背を向けてしまう。
(銀)「俺が……俺達だけが知ってたいんだよ、お前のその歌声も、お前のその姿も」
(新)「……醜い嫉妬ですね」
(銀)「だって絶対、どう考えても後から変な虫がうじゃうじゃ寄ってくるに決まってんだろーが! そんなん…そんなんお父さん許しませんよォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
(あ)「わ、私が舞台に立って歌ったら虫さんが大量発生…それは、ダメですね……」
(新)「音莉さん、その虫じゃないんで大丈夫です。虫は虫でも形は人型なんで」
(登)「あのバカは放っておいて、どうだい音莉。アンタがこの街を少しでも想う気持ちを持っていてくれてるのなら、この街を助ける意味でも考えてみてくれないかい」
(あ)「え、と……」
……本当に、私がそんなところに出てもいいのだろうか。
みんないい人ばかりの街とはいえ、正体も何も分からない、こんな私が出しゃばっても、いいのだろうか。
(あ)「本当に私でいいんですか?」
(登)「いいもなにも、それが街の奴等の望みさ」
お登勢さんがそう言うなら、きっとそうなんだろう。
ならこれは、普段お世話になっているかぶき町への恩返しっていうことで。
(あ)「……分かりました。よろしくお願いします」
(登)「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
(銀)「……んま、お前がやるってんならしゃーねーな。俺はその後の虫退治に勤しむ準備でもしておくさ」
(登)「何言ってんだい、アンタらもちゃんと準備から手伝うんだよ」
(新)「でも手伝うって言ったって…」
(神)「私達が入ったら音莉の邪魔になっちゃうヨ」
(あ)「せっかくだからみんなで何かできた方が楽しいよね…」
みんなで何か出来る事…か。
私の歌声を使って、みんなで出来ること……なら。
(あ)「……もしみんなでバンド出来たら、楽しいかもな。万事屋バンド、なんちゃって」
半分冗談交じりでそう提案すれば、新八君は「バンドか…いいですね、楽しそう」と、神楽ちゃんも「何か分からないけれどごっさ楽しそうアル!」と言ってくれる。
(銀)「でも楽器とかどーするよ。ウチにはそんなの買う金ねーぞ?」
(登)「街で声かけてみて、アタシが集めてきてやるよ。使わなくなった楽器を町内で集めてくる。それでいいかい?」
(あ)「はい、お願いします!」
……こうして祭りへの舞台出演が決定し、万事屋バンドが結成されることとなった。
銀さんのおかげでようやく夜も眠れるようになってきていた、ある日の午後だった。
突如、ピンポーン…と鳴り響いた玄関のチャイムに、飛び込みの依頼かな? と思いながらも玄関へ向かう。
(あ)「はーい」
しかし玄関を開けると、そこに立っていたのは見慣れた人物…お登勢さんであった。
(登)「突然押しかけてすまないね。今ちょっといいかい?」
(あ)「お登勢さん、こんにちは。あっ、と…家賃ですよね? 銀さん呼んでくるので少し待っていただけますか?」
(登)「いや、まァ家賃の回収もなんだが…今日はそれはついででね。音莉、アンタに用事があるのさ」
(あ)「えっ、私に…ですか?」
・
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「ちょいと話をさせてくれないかい?」ということで、お登勢さんを万事屋の中に引き入れ、ソファに座ってもらう。
(新)「あ、お登勢さん、こんにちは。今お茶淹れますね」
(登)「構いやしないよ、手短に済ませるつもりだからね」
(銀)「ゲッ、ババア! あ、家賃は……」
(登)「まともに家賃払ったことのねェ奴が何今さら慌ててるのさ。心配せずともあとでこってり絞ってやるさ。払えないなら内臓の一つや二つ売り飛ばしてね」
(銀)「ま、待って…俺今めっちゃ腹痛くなってきたかも。これヤバいかも、死ぬかも。救急車…救急車呼んでェェェェェェェ!!」
(登)「救急車より頭の病院ブチ込んでやろうか、ったく。それに今日はアンタに構ってる暇はないんでね。アタシの今日の本命は、音莉への依頼さ」
「依頼」という久しぶりに聞いた言葉に、銀さんが目を丸くしながらお登勢さんの方を見た。
(あ)「わ、私に依頼…ですか?」
その間にも新八君がお茶を淹れて、私とお登勢さんの前に出してくれる。
(登)「実は一ヵ月後、かぶき町で祭りをやるんだが、そこで幾つか出し物をする事になっていてねェ」
(あ)「お、お祭り…」
それと私と、一体どんな関係があるのだろうか。
(登)「先日の巨大ゴキブリ事件があっただろ? あの一件で町内にアンタの事が一気に広まってね。何者だ、どんな子だなんて、街の奴らが連日うるさくてねェ。それで、あん時聞いたあの歌声を活かした出し物を兼ねて、音莉を引っ張り出してきてほしいって声が多いんだよ。一度お目にかかりたいなんていう奴らのミーハー心さ」
(あ)「そ、そんな。私なんかが、なんで…」
(登)「嫌なら断ってくれて構わない。無理強いするつもりはないよ。人前に出る…それも大勢がいる中好機の目にさらされるのだって勇気がいるもんさ」
(神)「でも、音莉の歌声をもっとみんなに知らしめてやるチャンスアルヨ!」
(あ)「し、知らしめるって、私、そんなんじゃ………」
(新)「僕も賛成です。音莉さんが嫌じゃなければ、ですけど。音莉さんの歌声を聞いてると、不思議と元気が湧くっていうか、明日を生きる力をもらえるから……だから音莉さんの歌声をもっと多くの人に知ってもらえることで、この街ももっと活気づくんじゃないかなって」
(あ)「し、新八君…」
(登)「お礼もちゃんとするって実行委員の奴等は言ってたし、なんならアタシも今月の家賃くらいチャラにしてやるよ」
(神)「お礼…」
(新)「家賃がチャラ…」
その言葉に、必ず目を輝かせているであろう銀さんの方を見てみれば。
(銀)「………」
……私の思っていた反応と違う、銀さんは眉間にしわを寄せていて。
(あ)「銀さん…?」
私なんかが出しゃばるのはまずい…そう思っているのだろうか。
(新)「銀さんはどうですか、この件」
(銀)「……俺は、あんまり気乗りしねーな」
(新)「えっ、でも家賃チャラですよ?」
(登)「今月分だけだよ。滞納分はちゃんと払ってもらうからね」
(銀)「いや、なんつーか…」
(あ)「………」
銀さんに、なんて言われてしまうのだろう……そんな不安でドキドキしていると。
(銀)「音莉の歌声も、音莉の姿も……他の奴らに見せたくねーんだよ、俺ァ」
(あ)「え、それってどういう…」
すると頭をガシガシと掻いた銀さんは、社長椅子をクルリと回して背を向けてしまう。
(銀)「俺が……俺達だけが知ってたいんだよ、お前のその歌声も、お前のその姿も」
(新)「……醜い嫉妬ですね」
(銀)「だって絶対、どう考えても後から変な虫がうじゃうじゃ寄ってくるに決まってんだろーが! そんなん…そんなんお父さん許しませんよォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
(あ)「わ、私が舞台に立って歌ったら虫さんが大量発生…それは、ダメですね……」
(新)「音莉さん、その虫じゃないんで大丈夫です。虫は虫でも形は人型なんで」
(登)「あのバカは放っておいて、どうだい音莉。アンタがこの街を少しでも想う気持ちを持っていてくれてるのなら、この街を助ける意味でも考えてみてくれないかい」
(あ)「え、と……」
……本当に、私がそんなところに出てもいいのだろうか。
みんないい人ばかりの街とはいえ、正体も何も分からない、こんな私が出しゃばっても、いいのだろうか。
(あ)「本当に私でいいんですか?」
(登)「いいもなにも、それが街の奴等の望みさ」
お登勢さんがそう言うなら、きっとそうなんだろう。
ならこれは、普段お世話になっているかぶき町への恩返しっていうことで。
(あ)「……分かりました。よろしくお願いします」
(登)「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
(銀)「……んま、お前がやるってんならしゃーねーな。俺はその後の虫退治に勤しむ準備でもしておくさ」
(登)「何言ってんだい、アンタらもちゃんと準備から手伝うんだよ」
(新)「でも手伝うって言ったって…」
(神)「私達が入ったら音莉の邪魔になっちゃうヨ」
(あ)「せっかくだからみんなで何かできた方が楽しいよね…」
みんなで何か出来る事…か。
私の歌声を使って、みんなで出来ること……なら。
(あ)「……もしみんなでバンド出来たら、楽しいかもな。万事屋バンド、なんちゃって」
半分冗談交じりでそう提案すれば、新八君は「バンドか…いいですね、楽しそう」と、神楽ちゃんも「何か分からないけれどごっさ楽しそうアル!」と言ってくれる。
(銀)「でも楽器とかどーするよ。ウチにはそんなの買う金ねーぞ?」
(登)「街で声かけてみて、アタシが集めてきてやるよ。使わなくなった楽器を町内で集めてくる。それでいいかい?」
(あ)「はい、お願いします!」
……こうして祭りへの舞台出演が決定し、万事屋バンドが結成されることとなった。
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