後頭部に暖かさを感じて、アリスは意識を起こした。このままずっと眠り続けていたいと思わせるような温もりが心地よく、だけども今さっきあったことを思い出した瞬間、アリスはとっさに目を開けた。

「あ、おはよう」

　そこには彼がいた。ずっと前に、遙か昔に「絶対に迎えにくる」といってどこかへ言ってしまった彼が、すぐ目の前にいた。

　アリスは思わず抱きつく。

「あ、え～っと。アリス？」

　最初は戸惑った様子を見せたナナシだったが自傷気味に笑うと、アリスの体を包むように抱いた。

「遅くなってごめん」

「遅すぎよ......ばかぁ......」

　アリスはまた泣き始める。ナナシはごめん、ごめん、と呟きながら優しくアリスを抱き続けた。




　アリスが泣きやんだ頃。ナナシは話始めた

「俺がここを出た後、妖怪と戦ったのはまあわかるよね」

　アリスはコク、とうなずく。

「まあその後結局俺は妖怪にやられちゃうんだ。抵抗もしたから少しは生きていられたんだけど、さすがに妖怪が多すぎた」

　その衝撃の言葉にアリスは顔をしかめた。

「じゃああなたは幽霊か何かってこと？」

「いや、違う。そのときに運良く俺は魔界に落ちたんだ。そこでいろいろあって俺は魔法使いになって何とか生き延びた」

「え？　あなた魔法使いの素質があったの？」

　その疑問はもっともだ。ナナシは小さい頃から刀を学び、アリスはずっと将来は剣士にでもなるのかな、と思っていたから彼が魔法使いになっていたことに驚きだった。

「まあね、あのときは必死だったから。アリスに会うために」

　「ようやく会いに来れた」と嬉しそうに言うナナシにアリスは赤面した。