ナナシはすぐに行動を起こした。今は妖怪を倒すのに専念する。

　ナナシは妖怪を押さえつけていた剣に熱を帯びさせ、力一杯振り切った。小さかった頃は妖怪の力に為すすべもなく吹っ飛ばされたが今は違う。妖怪の力に負けることなく、油断していた妖怪はそのまま後方に吹き飛んでいった。

　すぐにナナシは追い打ちをかける。

「サンダガショット！」

　持っている剣を妖怪の方へ向ける。そこから勢い良く電撃を射出した。雷は球体となり、その勢いが止まることはなくそのまま妖怪へと到達して。

　妖怪はその早さに対応することができずに丸焦げとなった。

「はぁ......こんなところで何やってるの。しんぱいしたよ」

　久しぶりに聞いたナナシの声はとても心地よく、そして暖かかった。

「大人しくあの小屋で待っていれば......って、あれから何年も経っているか」

　そうやって自問自答している様を見れば、アリスならすぐにこの青年が誰かなんてわかってしまう。

　この青年は間違いなく《約束の人》だった。

　アリスは事切れたかのように前のめりに倒れた。

「お、おい！　大丈夫！？」

　そんな驚いた声はアリスには届かなかった。