私はずっとある少年にあこがれていた。いや、あこがれと言うよりはそれは恋慕に近かったのかもしれない。




　私が魔法使いになる前、まだ幼かった頃、家族が居なかった私はいつも一人だった。人里にいると周りの子供達にいじめられ、外にでれば妖怪に襲われる。私の周りはすでに生き地獄と化していた。そんな過酷な日々に、私は毎日涙を流していた。




　ある日、いつものようにいじめられていた時のことだった。突然遠くから「やめろよ！」と言う大きな声が聞こえた。足音はだんだんと大きくなっていく。どうせそれは私に対するもの何かではなくほかの人に対するもので、どうせその人もそのまま素通りしていくのだろうと、私はそう思っていた。

　しかし、私の予想は見事にはずれた。少年は私の目の前で立ち止まり、一本の木刀を持ってその間に入っていった。その顔は確かに怒りを表してて、その目線は確かにいじめっ子の方へと向かっていた。

　少年は強かった。子供とは到底思えない程に強く、大人が戦っても良い勝負だと思えるくらいだった。同年代の子になんか負けるわけもなく、少年は私の周りにいる子供を懲らしめ追い払った。

「大丈夫？」

　その優しい声に思わず抱きついてしまった。少年はあわてた様子で私をのぞき込んでいた。

　私はとてもうれしかったのだ。初めて私は人として認めてくれたような気がして、初めて見つけてもらえたような気がしてたまらなくうれしかった。

　それからの日々はとても楽しかった。今までの毎日が何だったのかと思う位に楽しく、すべて無かったかに思えるくらいに私は少年と遊んだ。

　人間の子供として、年相応に遊べることが私は何よりうれしかった。




　しかしそんな楽しかった日々もすぐに終わりを告げた。




　人里に妖怪がやってきた。