「何でなんだ？」

　ナナシの少し悲しそうな言葉に霊夢は何が、と返す。

「どうして霊夢は俺に優しくしてくれるんだよ......誰も俺に近づこうとすらしなかったのに......」

　ナナシの言った言葉に軽くため息を吐く。霊夢はまさかさっき言った言葉が理解されていなかったのかと少しだけ悲しくなった。
　しかし今までちゃんとした対人関係を取っていなかったからかナナシにはわからなかった。

「これはちゃんと言わなきゃダメかしら」

「出来れば、教えて欲しい」

　ナナシはこういうことが今までにはなかったから少しでも霊夢の事を知りたかった。
　その今までとは違う年相応の彼の表情を見て、霊夢は言うことに決める。

「......一目惚れよ」

「......え？」

「さっきも言ったじゃない！　一生離れないって！」

　思い切り顔を赤く染めながら言う霊夢。そして驚きのあまり口をぽかーんと開いている。

「何よ、悪い！？」

　霊夢は顔を背けながら言う。そんな霊夢にナナシは抱きついた。

「え、ちょっ......！」

　霊夢は驚いて反射的に声を出した。急に抱きつかれれば誰でも驚いてしまうだろう。

「......泣いてるの」

　彼は泣いていた。霊夢の反応、言葉、行動全てが彼には頼もしく、そして暖かかったのだ。

「ありがとう.......」

　ナナシは泣きながら消えそうな声でそう言った。霊夢はそんな彼を抱きしめながら、片手でゆっくりと頭を撫でた。