霊夢は地面に座り込んだ。それは安心から来たものか、それとも恐怖から来たものなのか。

　ナナシも何かを察したのか何も言わずに立ち去ろうとした、しかしそれを呼び止める。

「ちょっと、待ちなさいよ」

「......どうした？」

「どうした、じゃないわよ！　ちゃんと説明しなさい！」

　霊夢は声を張り上げてそういった。何を知りたいのか、それは彼の馬鹿げた力、速さのことだろう。彼は少し悩んでいるのか俯いていたがすぐに顔を上げて話し始めた。

「俺はありとあらゆる力を扱うことが出来るんだ」

「ありと......あらゆる......」

　霊夢はそのまま復唱する。

「そうだ。単純に筋力を強めたり脚力を上げて速く走ったり、不良から殴られた時も力を下げて痛くなくすることだって出来る、馬鹿げた能力だ」

「じゃあ......あんたが人を避けるのって......」

「勘がいいな......そうだよ。俺の力は明らかに異質だ。もう誰も傷つけたくない......」

　そういってまた顔を下げた。霊夢は何故彼が周りを遠ざけているかよくわかった。

　本当は誰よりも人の事を思い、とても優しい心を持った人だったということを、霊夢は理解した。