with you
お名前をどうぞ、レディ
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見張り台の上。
わたしの膝に頭を乗せて眠る彼の髪を梳く。
意外と長くて綺麗な彼の髪。
手元をサラサラと流れる。
普段はオールバックだが、こうして前に流しているのも好きだ。
「今時狸だってもう少し上手に寝たふりするわよ?」
寝たふりをしてわたしに好き放題されるクロコダイルに声をかける。
「ふん。何にやついてやがる」
ギロリと睨まれる。
髪の間から見える、すべてを食らいつくそうとする獰猛な三白眼に見つめられたら
何もかもがどうでも良いと思える。
何て、愛おしいのだろう。
愛が狂気のようにわたしを包む。
「クロコダイルの髪って綺麗ね」
「カズヤほどじゃねえよ」
クロコダイルがわたしの長い髪を手に取り指先で弄ぶ。
お互いの黒い髪がまとわりつく。
おかしいな。
空は満天の星月夜なのに。
こんなにも明るく月が降り注ぐのに。
そんな月の面影すら吸い込む黒い髪。
「ねえ、クロコダイル。あなたの言うとおり、わたしは魔女だったみたいなの」
ふと、以前の話題を蒸し返す。
「今更何言ってやがる」
「わたしは腐った海賊を供物に、あなたと言う悪魔を召喚したのよ」
「そうか」
「ええ。だから契約をするの」
「酒でも交わすか」
「アルコールなんて余計な添え物は要らなくてよ」
クロコダイルが返事をする前に、その唇をわたしの唇で塞ぐ。
いや、塞がれたのはわたしの唇か。
本当に食らいつくされてしまうように、唇を奪われる。
お互いの唾液が混ざって混ざって、もうどちらのものかもわからない。
それでも足りなくて、足りなくて。
互いに互いを貪り合う。
先に根を上げたのはクロコダイルだった。
右手でわたしの顔を引き剥がす。
「ぷは……。てめえは本当に魔女か。
喰らいつくされるかと思ったぜ」
「あら、まだまだ足りなくてよ」
自分の自制心が利かなくなっているのがわかる。
もともと穏やかでない性格がますます剣呑になっていく。
「……」
クロコダイルは何やら渋い顔をすると起き上がって、胡座をかきその足の上にわたしを乗せた。
後ろから、クロコダイルの逞しい腕に抱きすくめられる。
「落ち着け。おれはどこにもいかない」
優しい声が上から降ってくる。
わたしは何を、考えていた?
クロコダイルが欲しくて欲しくて、欲しかったから。
だから手に入れようとした。
今まで以上に。
これ以上に。
もっと。
「わたしはわがままね」
「ああ、それ以上に欲張りだ。
だから」
彼がわたしの耳元に唇を寄せた。
「おれのすべてをくれてやる」
何て素敵なお誘いだろう。
でも残念。
まだダメ。
「今はまだ遠慮しておくわ」
クロコダイルの眉間にシワが寄る。
「あなたの言うとおり、わたしはわがままで欲張りなのよ。
だから」
くるりと振り返ってクロコダイルをまっすぐ見つめた。
「あなたがすべてを手に入れたとき、またその言葉をくださる?」
「そのとき、てめえがおれの横に居る確証があるのか」
「居るわよ」
「クハハ、悪くねえ」
再び、クロコダイルにもたれかかり空を見上げる。
満天の星月夜から降り注ぐのは月の面影。
こんなにも明るいのに。
わたしも彼も照らされない。
それでいい。
それがいい。
今、すべてを手に入れてしまっても、つまらないでしょう。
わたしの膝に頭を乗せて眠る彼の髪を梳く。
意外と長くて綺麗な彼の髪。
手元をサラサラと流れる。
普段はオールバックだが、こうして前に流しているのも好きだ。
「今時狸だってもう少し上手に寝たふりするわよ?」
寝たふりをしてわたしに好き放題されるクロコダイルに声をかける。
「ふん。何にやついてやがる」
ギロリと睨まれる。
髪の間から見える、すべてを食らいつくそうとする獰猛な三白眼に見つめられたら
何もかもがどうでも良いと思える。
何て、愛おしいのだろう。
愛が狂気のようにわたしを包む。
「クロコダイルの髪って綺麗ね」
「カズヤほどじゃねえよ」
クロコダイルがわたしの長い髪を手に取り指先で弄ぶ。
お互いの黒い髪がまとわりつく。
おかしいな。
空は満天の星月夜なのに。
こんなにも明るく月が降り注ぐのに。
そんな月の面影すら吸い込む黒い髪。
「ねえ、クロコダイル。あなたの言うとおり、わたしは魔女だったみたいなの」
ふと、以前の話題を蒸し返す。
「今更何言ってやがる」
「わたしは腐った海賊を供物に、あなたと言う悪魔を召喚したのよ」
「そうか」
「ええ。だから契約をするの」
「酒でも交わすか」
「アルコールなんて余計な添え物は要らなくてよ」
クロコダイルが返事をする前に、その唇をわたしの唇で塞ぐ。
いや、塞がれたのはわたしの唇か。
本当に食らいつくされてしまうように、唇を奪われる。
お互いの唾液が混ざって混ざって、もうどちらのものかもわからない。
それでも足りなくて、足りなくて。
互いに互いを貪り合う。
先に根を上げたのはクロコダイルだった。
右手でわたしの顔を引き剥がす。
「ぷは……。てめえは本当に魔女か。
喰らいつくされるかと思ったぜ」
「あら、まだまだ足りなくてよ」
自分の自制心が利かなくなっているのがわかる。
もともと穏やかでない性格がますます剣呑になっていく。
「……」
クロコダイルは何やら渋い顔をすると起き上がって、胡座をかきその足の上にわたしを乗せた。
後ろから、クロコダイルの逞しい腕に抱きすくめられる。
「落ち着け。おれはどこにもいかない」
優しい声が上から降ってくる。
わたしは何を、考えていた?
クロコダイルが欲しくて欲しくて、欲しかったから。
だから手に入れようとした。
今まで以上に。
これ以上に。
もっと。
「わたしはわがままね」
「ああ、それ以上に欲張りだ。
だから」
彼がわたしの耳元に唇を寄せた。
「おれのすべてをくれてやる」
何て素敵なお誘いだろう。
でも残念。
まだダメ。
「今はまだ遠慮しておくわ」
クロコダイルの眉間にシワが寄る。
「あなたの言うとおり、わたしはわがままで欲張りなのよ。
だから」
くるりと振り返ってクロコダイルをまっすぐ見つめた。
「あなたがすべてを手に入れたとき、またその言葉をくださる?」
「そのとき、てめえがおれの横に居る確証があるのか」
「居るわよ」
「クハハ、悪くねえ」
再び、クロコダイルにもたれかかり空を見上げる。
満天の星月夜から降り注ぐのは月の面影。
こんなにも明るいのに。
わたしも彼も照らされない。
それでいい。
それがいい。
今、すべてを手に入れてしまっても、つまらないでしょう。