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お名前をどうぞ、レディ
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「なあカズヤ」
ある日の七武海会議前、わたしはサー・クロコダイルに呼び止められた。
なにかしら。
いつもだと会議終了後に
「今日も遊んでやろうか」
とか
「今日は忙しいから遊んでやれねえが、次までに強くなっておけ」
とかいうのだけれど。
「お呼びでしょうか?」
思わず笑顔でサー・クロコダイルに向き直る。
最近サー・クロコダイルに声をかけられると何故か顔がゆるんでしまう。
そんなわたしを見て、サー・クロコダイルもそのいかつい顔をゆるませる。
それがいつものやり取りだった。
しかし、今日は違った。
サー・クロコダイルは真顔のままだった。
「カズヤ。お前、おれとこないか」
今、何て言った?
"おれとこないか"
どういう意味?
彼とアラバスタへ行くということかしら。
どういうつもり?
わたしに海賊になれということかしら。
「わたしに海賊になれとおっしゃっているのですか?」
慌てて真顔で聞き返す。
海軍が海賊に誘われるなんて、ヘラヘラしている場合ではない。
「ああ」
「わたしは海軍ですよ」
「知っている」
「海賊にはなれません。海軍本部所属、中将補佐官が突然海賊だなんて…」
突然の、しかし計画立てられたラブコール。
いきなりの誘いだったが、何とか理性がまっとうな返事を絞り出す。
心が揺らいでないと言われれば嘘になるかもしれないけれど。
「考える時間ぐらいくれてやる」
「そういう問題ではありません。わたしは海軍所属ですよ」
「それを言うならおれは世界政府公認の海賊だ」
「申し訳ございませんが」
無理やりな笑顔で最後通帳を突きつける。
お願いだから、これ以上誘わないでほしい。
気になる気持ちが、それ以上になってしまったら。
わたしはどうすれば良いのかわからなくなってしまうから。
「ふん、まあいいさ。おれはいつでもお前を歓迎するぜ」
サー・クロコダイルはわたしに近づき右手で頭をぽんぽんと叩く。
子ども扱いが悔しくて、じろりと彼を見上げる。
「善処しますわ」
余裕を見せつけるかのようなサー・クロコダイルに対し、わたしも同じように振る舞う。
その振る舞いが彼の欲を煽っていたことくらいわかっていたのに。
いや、彼の欲を煽りたくて、自分を欲してほしくて、わざとそうしていたんだ。
それがばれる前に、逃げるようにその場を後にした。
「ますます気に入った」
サー・クロコダイルのつぶやきがマリンフォードの一角にひそりと響いた。
部屋に戻って悶々と考え込む。
手は書類をさばいているけど、頭の片隅からは彼の言葉が離れない。
"おれとこないか"
彼が何やらよからぬことを考えているのは
なんとなくわかる。
恐らく、最低で、最悪な野望を彼は秘めている。
もし、わたしがそれに乗ったらどうなるだろうか。
今の海軍本部中将補佐官という立場のわたしが海賊側に立てば最悪大将どもが追ってくる。
小うるさい犬っころや、ヘラついた猿なんかと争いたくはない。
それにガープ中将を裏切るような真似はできない。
ごろつき同然だったわたしをまっとうに鍛え上げてくれた中将には恩を返しても返しきれない。
でも。
サー・クロコダイルの隣を歩くとしたら。
わたしはどんな顔をするだろう。
部屋の隅の全身鏡を見やれば、自分が眉間にしわを寄せて睨んでいた。
先ほどのような作り笑顔は出さなくなるかもしれない。
サー・クロコダイルが声をかけてきた時のような笑顔を浮かべるのだろうか。
きっと今より性格が悪くなることだけは間違いない。
彼は隠しているつもりなのかもしれないし、
アラバスタの英雄という仮面をかぶっているからかもしれないが
その瞳の奥の獰猛な光までは隠しおおせていない。
彼と同じような獰猛な笑顔を浮かべるようになるのかもしれない。
そんな自分は悪くないんじゃないか?
彼の横に立つことを想像したら、それは、そんなに悪い気分じゃないかもしれない。
いったい彼の隣からはどんな風景が見えるのだろう。
「わたしは……。
どうしたいのかな…」
なんとなく流されて海軍になって。
なんとなく意地でここまでやってきたけど。
わたしはどうなりたいだろう。
わたしは…
「いえ……、ダメよ」
彼に、ついていきたいと思う気持ちを書類の山に放り込む。
気のせいだから。
そう自分に言い聞かせる。
悪くない気分も、隣に立ちたい気持ちも、気のせいだから。
ある日の七武海会議前、わたしはサー・クロコダイルに呼び止められた。
なにかしら。
いつもだと会議終了後に
「今日も遊んでやろうか」
とか
「今日は忙しいから遊んでやれねえが、次までに強くなっておけ」
とかいうのだけれど。
「お呼びでしょうか?」
思わず笑顔でサー・クロコダイルに向き直る。
最近サー・クロコダイルに声をかけられると何故か顔がゆるんでしまう。
そんなわたしを見て、サー・クロコダイルもそのいかつい顔をゆるませる。
それがいつものやり取りだった。
しかし、今日は違った。
サー・クロコダイルは真顔のままだった。
「カズヤ。お前、おれとこないか」
今、何て言った?
"おれとこないか"
どういう意味?
彼とアラバスタへ行くということかしら。
どういうつもり?
わたしに海賊になれということかしら。
「わたしに海賊になれとおっしゃっているのですか?」
慌てて真顔で聞き返す。
海軍が海賊に誘われるなんて、ヘラヘラしている場合ではない。
「ああ」
「わたしは海軍ですよ」
「知っている」
「海賊にはなれません。海軍本部所属、中将補佐官が突然海賊だなんて…」
突然の、しかし計画立てられたラブコール。
いきなりの誘いだったが、何とか理性がまっとうな返事を絞り出す。
心が揺らいでないと言われれば嘘になるかもしれないけれど。
「考える時間ぐらいくれてやる」
「そういう問題ではありません。わたしは海軍所属ですよ」
「それを言うならおれは世界政府公認の海賊だ」
「申し訳ございませんが」
無理やりな笑顔で最後通帳を突きつける。
お願いだから、これ以上誘わないでほしい。
気になる気持ちが、それ以上になってしまったら。
わたしはどうすれば良いのかわからなくなってしまうから。
「ふん、まあいいさ。おれはいつでもお前を歓迎するぜ」
サー・クロコダイルはわたしに近づき右手で頭をぽんぽんと叩く。
子ども扱いが悔しくて、じろりと彼を見上げる。
「善処しますわ」
余裕を見せつけるかのようなサー・クロコダイルに対し、わたしも同じように振る舞う。
その振る舞いが彼の欲を煽っていたことくらいわかっていたのに。
いや、彼の欲を煽りたくて、自分を欲してほしくて、わざとそうしていたんだ。
それがばれる前に、逃げるようにその場を後にした。
「ますます気に入った」
サー・クロコダイルのつぶやきがマリンフォードの一角にひそりと響いた。
部屋に戻って悶々と考え込む。
手は書類をさばいているけど、頭の片隅からは彼の言葉が離れない。
"おれとこないか"
彼が何やらよからぬことを考えているのは
なんとなくわかる。
恐らく、最低で、最悪な野望を彼は秘めている。
もし、わたしがそれに乗ったらどうなるだろうか。
今の海軍本部中将補佐官という立場のわたしが海賊側に立てば最悪大将どもが追ってくる。
小うるさい犬っころや、ヘラついた猿なんかと争いたくはない。
それにガープ中将を裏切るような真似はできない。
ごろつき同然だったわたしをまっとうに鍛え上げてくれた中将には恩を返しても返しきれない。
でも。
サー・クロコダイルの隣を歩くとしたら。
わたしはどんな顔をするだろう。
部屋の隅の全身鏡を見やれば、自分が眉間にしわを寄せて睨んでいた。
先ほどのような作り笑顔は出さなくなるかもしれない。
サー・クロコダイルが声をかけてきた時のような笑顔を浮かべるのだろうか。
きっと今より性格が悪くなることだけは間違いない。
彼は隠しているつもりなのかもしれないし、
アラバスタの英雄という仮面をかぶっているからかもしれないが
その瞳の奥の獰猛な光までは隠しおおせていない。
彼と同じような獰猛な笑顔を浮かべるようになるのかもしれない。
そんな自分は悪くないんじゃないか?
彼の横に立つことを想像したら、それは、そんなに悪い気分じゃないかもしれない。
いったい彼の隣からはどんな風景が見えるのだろう。
「わたしは……。
どうしたいのかな…」
なんとなく流されて海軍になって。
なんとなく意地でここまでやってきたけど。
わたしはどうなりたいだろう。
わたしは…
「いえ……、ダメよ」
彼に、ついていきたいと思う気持ちを書類の山に放り込む。
気のせいだから。
そう自分に言い聞かせる。
悪くない気分も、隣に立ちたい気持ちも、気のせいだから。