with you
お名前をどうぞ、レディ
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その日の予定はクロコダイルの執務室で終日事務作業の予定だった。
しかしその予定は、朝一からの一本の電話にてあっという間に覆された。
「そうか、わかった。すぐに向かう」
「なにかありまして?」
「エルマルでバカな海賊が暴れているらしい。
英雄様のお出ましってわけだ」
「手を貸しましょうか?」
「いや、てめえはおれの勇姿をしっかりと目に焼き付けとけ」
先ほどまでの寝不足はどこへやら。
ぶわっとコートを羽織り、さっそうと部屋を出るクロコダイル。
わたしも慌ててその後を追った。
「どうやらアラバスタの英雄様はいらっしゃらないようだぜえ!!!?」
「きひひ、お前らみすてられちまったかあー?」
下種い声を響かせてバカな海賊どもが叫んでいるのが聞こえた。
急ぎということで、昨日まで使用していた引っ越しクラブではなく
クロコダイルがサラサラと地をかけ、わたしはその背中に乗せてもらっている。
…昨日までもこうすれば早かったんじゃ?
そんな突っ込みを入れる暇もなく、クロコダイルはわたしを近くの岩影に降ろす。
「そこからおれの勇姿を見守ってろ。
誰が、見捨てたって?」
「ひっ!!!!クロコダイル!!!!」
それからはあっと今だった。
クロコダイルがぶわりと砂を舞い散らせただけで、
暴れていた海賊どもの過半数が干からびていく。
彼が砂と踊るように体躯をしならせるたびに、海賊たちは枯れて
逃げまどい、三々五々に散っていく。
「かっこいい」
思わず口から言葉がこぼれた。
すでにクロコダイルは海賊の船長を枯らして、首根っこをつかみ
民衆に見せつけている。
その横顔は、この数日間で嫌というほど見た、わたしの知らない英雄の横顔。
なんだろう。
さっきまでの戦ってるところはあんなにかっこよかったのに。
今の英雄面は何か嫌だ。
正論を言えば、今のクロコダイルも、いろんな角度から見た彼の内の一人に過ぎないのだろうけど。
でも。
「なんか違う」
そう。違う。
わたしの執務室で雑談している彼が本物で今あそこで偉そうにしている英雄さんは
クロコダイルのそっくりさんなんじゃないか。
わたしに見せる姿が本物だなんて、とんだうぬぼれなんだろうけど。
「おい、なにしかめっ面してやがる」
「う」
気が付いたら、クロコダイルがわたしの真横に立っていた。
「うーん。クロコダイルって何人いるのか数えてました」
「あ?」
クロコダイルはいぶかしげに眉間にしわを寄せた。
「おれはおれだ。ここにいるおれ一人だけが本物だ」
「そうですか。わたしといるときのクロコダイルと、さっきまで海賊を刈り取っていたクロコダイルと
英雄ぶってるクロコダイルと…。全部違う人に見えたので」
「ふん。そんなことか」
「そんなこととはなんです」
少しむくれてクロコダイルを見上げる。
同時にわしゃっと右手で頭を撫でられた。
「てめえの前で、善人ぶる必要なんかねえからな。それだけだ」
そっか。
「じゃあ、やっぱりあの英雄はわたしの知らない人ですね」
「あれもおれなんだから、てめえには受け入れてほしいんだが」
「そうですね。
わたしは英雄してるあなたは嫌いです」
わたしはきっぱりと断った。
クロコダイルが少しさびしげに見えるのは気のせいだろうか。
それでもわたしは続ける。
「あの英雄、わたしは嫌いです。
だって、嘘くさいですもの。
海賊と戦っていた姿はとてもかっこよかった。
素敵でした。見ほれてしまいました。
でも海賊を打ち取った英雄は、いえ、英雄なんてほめそやされていたけどあれは英雄なんかじゃないです。
偽物です。
あなたが言ったとおりですよ。
英雄ぶってる。
そして裏では何か悪いことを考えている。そんな匂いがします。
クロコダイル。
わたしは戦うあなたや、わたしと二人でいるときのあなたは好きです。
でも英雄ぶっているところは嫌いです」
クロコダイルは何も言わず、わたしを見ている。
わたしも言いたいことだけを一気に言って、あとは黙っている。
「てめえは…変なところするどくて食えねえ女だ」
「ええ。煮ても焼いてもかわいくありませんよ」
そこで彼はふっと顔をほころばせる
「そうだな。だが、案外蒸したらかわいげの一つも滴るってもんだぜ?」
「常識の範囲でお好きにどうぞ」
わたしも笑って返事をした。
「さて、もう昼時だ。なんかうまいもんでも食って、レインベースに帰るか」
「アイアイサー」
クロコダイルのお勧めというレストランで食事にする。
「クロコダイルの連れて行ってくださるお店はいつもおいしいわよね」
「ふん。毎回海軍の食堂で済ませているてめえからしたら何でもうめえだろうが」
少し呆れたように、クロコダイルはワインを口に含む。
「あら、海軍の食堂美味しいじゃないですか。
栄養バランスばっちり、量も十分。何より安い!!薄給の軍人の強い味方です」
「…かわいそうなこと言うんじゃねえよ。
何だったら好きに追加注文しろ」
「けっこうよ。さっきのあなたの勇姿でお腹いっぱいだわ」
「そうかよ」
エルマルでの昼食後、来た時と同様にクロコダイルの背に乗ってレインベースに向かう。
日差しは相変わらずきついが、風が吹いていて気持ちがいい。
「ねえ、なぜ今までこうやって移動しなかったのです?
引っ越しクラブを呼ぶより、よほど早いのでは?」
「これだとてめえに構ってやれねえだろうが」
ちらりとこちらを振り向いて、クロコダイルが答える。
「せっかく気持ちいいのに。
空を飛ぶって素敵ですね。羨ましいわ」
「ふん。この程度自然系なら誰でもできるだろ」
「わたしは能力者じゃないもの。
だから、こうしてあなたの背に乗って空を飛べるのがすごく嬉しいわ」
「安いもんだ」
「そんなことないわ。天下の七武海を足にするなんて、なかなかないわよ?」
「なら、その代償は今晩体で払ってもらおうか」
「はいはい、セクハラ禁止ー」
海楼石の錠をクルリと回してみせる。
「この熱気でさっきのかわいげが干からびちまったか?」
「最初からないですよ」
「クハハ、そういうことにしておいてやるよ」
レインベースに戻り、お互い仕事に取り掛かる。
数時間黙々と働いていると、クロコダイルが声をかけてきた。
「おい、カズヤ」
「はい?」
書類から目を離さずに答える。
「今のおれは好きか?」
「ええ、黙々と働く男は好きですね。
ワノ国ではそういう男性はモテますよ」
一般論ぽく言ってごまかしはしたが、事務仕事をするクロコダイルは確かにかっこよかった。
先ほどの"戦う男"とは違う、"企業戦士"的かっこよさがある。
まあ、クロコダイルは支配人だから企業戦士ではないのだけど。
「その素直さは紙一重だな」
気難しそうにクロコダイルは紫煙を吐く。
「紙一重?」
「かわいげと、かわいげのなさが紙一重だ」
「なんです?それ」
「わからねえならいいさ。
おれだけが知っているっていうのも重要なことだ」
意味の解らないことを言うと、クロコダイルは再び書類に目を落とした。
「そろそろ、おれの体力にも限界ってもんがあるんだが」
夜の寝室でクロコダイルが不平をもらす。
「じゃあ別の部屋にしてくださいな」
「ダメだ」
「じゃあわたしもダメ」
がっくりとうなだれるクロコダイルに、素早く海楼石の錠をはめる。
確かに、クロコダイルにとっては一晩中体力を削られるのだから安眠もなにもあったもんじゃないだろう。
油断すると永眠になりかねない。
とはいえ、わたしにとっても危険であることは理解してほしい。
もし、今、彼に求められたら…。
わたしは100%の自信をもって拒むことなどできないのだから。
そうだ。
ガープ中将の懸念通り。
わたしは彼に、ほだされようとしているんだ。
しかしその予定は、朝一からの一本の電話にてあっという間に覆された。
「そうか、わかった。すぐに向かう」
「なにかありまして?」
「エルマルでバカな海賊が暴れているらしい。
英雄様のお出ましってわけだ」
「手を貸しましょうか?」
「いや、てめえはおれの勇姿をしっかりと目に焼き付けとけ」
先ほどまでの寝不足はどこへやら。
ぶわっとコートを羽織り、さっそうと部屋を出るクロコダイル。
わたしも慌ててその後を追った。
「どうやらアラバスタの英雄様はいらっしゃらないようだぜえ!!!?」
「きひひ、お前らみすてられちまったかあー?」
下種い声を響かせてバカな海賊どもが叫んでいるのが聞こえた。
急ぎということで、昨日まで使用していた引っ越しクラブではなく
クロコダイルがサラサラと地をかけ、わたしはその背中に乗せてもらっている。
…昨日までもこうすれば早かったんじゃ?
そんな突っ込みを入れる暇もなく、クロコダイルはわたしを近くの岩影に降ろす。
「そこからおれの勇姿を見守ってろ。
誰が、見捨てたって?」
「ひっ!!!!クロコダイル!!!!」
それからはあっと今だった。
クロコダイルがぶわりと砂を舞い散らせただけで、
暴れていた海賊どもの過半数が干からびていく。
彼が砂と踊るように体躯をしならせるたびに、海賊たちは枯れて
逃げまどい、三々五々に散っていく。
「かっこいい」
思わず口から言葉がこぼれた。
すでにクロコダイルは海賊の船長を枯らして、首根っこをつかみ
民衆に見せつけている。
その横顔は、この数日間で嫌というほど見た、わたしの知らない英雄の横顔。
なんだろう。
さっきまでの戦ってるところはあんなにかっこよかったのに。
今の英雄面は何か嫌だ。
正論を言えば、今のクロコダイルも、いろんな角度から見た彼の内の一人に過ぎないのだろうけど。
でも。
「なんか違う」
そう。違う。
わたしの執務室で雑談している彼が本物で今あそこで偉そうにしている英雄さんは
クロコダイルのそっくりさんなんじゃないか。
わたしに見せる姿が本物だなんて、とんだうぬぼれなんだろうけど。
「おい、なにしかめっ面してやがる」
「う」
気が付いたら、クロコダイルがわたしの真横に立っていた。
「うーん。クロコダイルって何人いるのか数えてました」
「あ?」
クロコダイルはいぶかしげに眉間にしわを寄せた。
「おれはおれだ。ここにいるおれ一人だけが本物だ」
「そうですか。わたしといるときのクロコダイルと、さっきまで海賊を刈り取っていたクロコダイルと
英雄ぶってるクロコダイルと…。全部違う人に見えたので」
「ふん。そんなことか」
「そんなこととはなんです」
少しむくれてクロコダイルを見上げる。
同時にわしゃっと右手で頭を撫でられた。
「てめえの前で、善人ぶる必要なんかねえからな。それだけだ」
そっか。
「じゃあ、やっぱりあの英雄はわたしの知らない人ですね」
「あれもおれなんだから、てめえには受け入れてほしいんだが」
「そうですね。
わたしは英雄してるあなたは嫌いです」
わたしはきっぱりと断った。
クロコダイルが少しさびしげに見えるのは気のせいだろうか。
それでもわたしは続ける。
「あの英雄、わたしは嫌いです。
だって、嘘くさいですもの。
海賊と戦っていた姿はとてもかっこよかった。
素敵でした。見ほれてしまいました。
でも海賊を打ち取った英雄は、いえ、英雄なんてほめそやされていたけどあれは英雄なんかじゃないです。
偽物です。
あなたが言ったとおりですよ。
英雄ぶってる。
そして裏では何か悪いことを考えている。そんな匂いがします。
クロコダイル。
わたしは戦うあなたや、わたしと二人でいるときのあなたは好きです。
でも英雄ぶっているところは嫌いです」
クロコダイルは何も言わず、わたしを見ている。
わたしも言いたいことだけを一気に言って、あとは黙っている。
「てめえは…変なところするどくて食えねえ女だ」
「ええ。煮ても焼いてもかわいくありませんよ」
そこで彼はふっと顔をほころばせる
「そうだな。だが、案外蒸したらかわいげの一つも滴るってもんだぜ?」
「常識の範囲でお好きにどうぞ」
わたしも笑って返事をした。
「さて、もう昼時だ。なんかうまいもんでも食って、レインベースに帰るか」
「アイアイサー」
クロコダイルのお勧めというレストランで食事にする。
「クロコダイルの連れて行ってくださるお店はいつもおいしいわよね」
「ふん。毎回海軍の食堂で済ませているてめえからしたら何でもうめえだろうが」
少し呆れたように、クロコダイルはワインを口に含む。
「あら、海軍の食堂美味しいじゃないですか。
栄養バランスばっちり、量も十分。何より安い!!薄給の軍人の強い味方です」
「…かわいそうなこと言うんじゃねえよ。
何だったら好きに追加注文しろ」
「けっこうよ。さっきのあなたの勇姿でお腹いっぱいだわ」
「そうかよ」
エルマルでの昼食後、来た時と同様にクロコダイルの背に乗ってレインベースに向かう。
日差しは相変わらずきついが、風が吹いていて気持ちがいい。
「ねえ、なぜ今までこうやって移動しなかったのです?
引っ越しクラブを呼ぶより、よほど早いのでは?」
「これだとてめえに構ってやれねえだろうが」
ちらりとこちらを振り向いて、クロコダイルが答える。
「せっかく気持ちいいのに。
空を飛ぶって素敵ですね。羨ましいわ」
「ふん。この程度自然系なら誰でもできるだろ」
「わたしは能力者じゃないもの。
だから、こうしてあなたの背に乗って空を飛べるのがすごく嬉しいわ」
「安いもんだ」
「そんなことないわ。天下の七武海を足にするなんて、なかなかないわよ?」
「なら、その代償は今晩体で払ってもらおうか」
「はいはい、セクハラ禁止ー」
海楼石の錠をクルリと回してみせる。
「この熱気でさっきのかわいげが干からびちまったか?」
「最初からないですよ」
「クハハ、そういうことにしておいてやるよ」
レインベースに戻り、お互い仕事に取り掛かる。
数時間黙々と働いていると、クロコダイルが声をかけてきた。
「おい、カズヤ」
「はい?」
書類から目を離さずに答える。
「今のおれは好きか?」
「ええ、黙々と働く男は好きですね。
ワノ国ではそういう男性はモテますよ」
一般論ぽく言ってごまかしはしたが、事務仕事をするクロコダイルは確かにかっこよかった。
先ほどの"戦う男"とは違う、"企業戦士"的かっこよさがある。
まあ、クロコダイルは支配人だから企業戦士ではないのだけど。
「その素直さは紙一重だな」
気難しそうにクロコダイルは紫煙を吐く。
「紙一重?」
「かわいげと、かわいげのなさが紙一重だ」
「なんです?それ」
「わからねえならいいさ。
おれだけが知っているっていうのも重要なことだ」
意味の解らないことを言うと、クロコダイルは再び書類に目を落とした。
「そろそろ、おれの体力にも限界ってもんがあるんだが」
夜の寝室でクロコダイルが不平をもらす。
「じゃあ別の部屋にしてくださいな」
「ダメだ」
「じゃあわたしもダメ」
がっくりとうなだれるクロコダイルに、素早く海楼石の錠をはめる。
確かに、クロコダイルにとっては一晩中体力を削られるのだから安眠もなにもあったもんじゃないだろう。
油断すると永眠になりかねない。
とはいえ、わたしにとっても危険であることは理解してほしい。
もし、今、彼に求められたら…。
わたしは100%の自信をもって拒むことなどできないのだから。
そうだ。
ガープ中将の懸念通り。
わたしは彼に、ほだされようとしているんだ。